住民税非課税世帯とは
今回は、住民税の非課税制度とはどんなものか、解説していきます。通常、収入のある人は住民税を納付する義務がありますが、年収要件など一定の条件を満たす方・世帯の場合は住民税が非課税となります。所得税も住民税も、収入が増えるほど税額も増えるのと同様、収入が少ない世帯からは多くの税を徴収しないという基本原則があります。
住民税非課税かどうかは世帯・年収で決まる
住民税が非課税となるかどうかの判断基準は、その世帯の人数と年収が条件になります。扶養家族が多いなど、世帯の人数が多く、年収が少ない場合は非課税になるケースが増えてきます。自分の世帯が住民税非課税に当たるのかは人数と年収でチェックしてみてください。
世帯の人数により、年収の上限が設定されています。これを下回る世帯に関しては住民税が非課税となるという明確な取り決めがあります。どの自治体でも判断基準は同じですので、あらかじめ自分の世帯の状況をチェックしておくことは可能です。
住民税非課税世帯の条件とは
ここでは、住民税の非課税認定を受けられる世帯とはどんな条件か、解説していきます。基本的には、世帯の人数と年収によって判断がなされます。あるいは、生活保護を受けているかどうか、等の別の要件も判断基準となります。一般的な住民税の計算方法と併せて、どんなケースで非課税の扱いとなるのか、紹介していきます。
住民税の計算
住民税は、基本的に自治体が各個人の確定申告のデータに基づいて計算してくれます。そのため、あまり自分で計算する機会がないので、なじみのない方も多いかもしれませんが、知っておいて損はありません。住民税は、大きく分けて均等割部分と所得割部分の二種類に分類できます。
前者の均等割の方は誰にも一律で課せられる部分です。後者の所得割の方は、収入金額が増えるごとに増加していきます。収入金額は、確定申告あるいは企業の年末調整のデータから引用されるので、個人が申告する必要はありません。
住民税の内訳
住民税を計算する際に、前述のように均等割部分と所得割部分があるので、内訳として分類して理解するべきです。均等割部分は、一律5,000円となっていますが、これには内訳があります。市町村民税が3,500円、道府県民税が1,500円となっています。ほとんどの自治体がこの料率を採用しているのが実態です。
所得割の方は、次の計算式で算出されます。すなわち、課税所得金額×標準税率10%(道府県民税率4%+市町村民税率6%)-税額控除額です。課税所得金額は、各人の確定申告、年末調整のデータから引用されます。
住民税非課税世帯かの判定
住民税の非課税世帯かどうかの判定のポイントは、まず三つの事項があります。第一に、生活保護を受けていること、第二に未成年者もしくは障害者、寡婦・寡夫であって、前年の所得金額が125万円以下であることがあります。
第三の事項は、前年の所得金額が基準となります。扶養家族がない場合は35万円以下、扶養家族がいる場合は35万円×(控除対象配偶者・扶養親族の数+1)+21万円で算出された金額以下の場合に住民税非課税が適用されます。
均等割と所得割が課税されない場合
上記条件のいずれかに当てはまる場合には、住民税が非課税になります。この場合、均等割額も所得割額も負担をする必要が無くなります。住民税が非課税に認定されると、医療費の個人負担部分の軽減が受けられたり、臨時福祉給付金が支給されることもあります。
ただ、これは自治体ごとに取り組み内容が異なりますし、そもそも非課税認定の要件も若干自治体によって異なることもあります。自分が住んでいる自治体に問い合わせをしてみることが最も確実で安心です。
住民税非課税世帯の平均年収
ここでは、住民税が非課税扱いになっている世帯の平均年収について紹介します。世帯人数によって非課税となる年収の基準は異なります。住民税を非課税扱いにしてもらっている世帯の年収平均と、自分の年収を現世徴収票などで確認して、比較してみることをお勧めします。どれくらい非課税基準から乖離しているかが分かります。
住民税の非課税の基準とは
住民税が非課税になる基準はすでに紹介しましたが、具体的に年収がいくらから非課税になるのか、よりわかりやすく明示していきます。前述の計算式で計算をすれば算出されますが、非課税になる年収額を世帯人数ごとに明示していきます。
住民税は自分で申告するタイプではなく、各自治体が計算をしてくれます。どのような計算がされているか理解をしておいた方が、間違いのチェックなどいざという時でも安心です。
例①会社員:年収100万円以下
独身のサラリーマンの場合は、年収100万円というところが基準になります。住民税の非課税控除額が35万円で、確定申告あるいは年末調整時の給与所得控除が65万円となっているため、これらを合算した100万円が非課税基準となります。
これは、独身の方すべてではなく、企業に雇用されているサラリーマンに適用される基準です。給与所得控除の65万円があるために成り立つ基準と言えます。
例②3人世帯:年収205万円以下
配偶者と一人の子供を養うサラリーマン世帯の場合、年収205万円というのが非課税認定される基準となります。その根拠としては、まず住民税の非課税控除額が35万円×(2+1)+21万円=126万円となります。
給与所得控除は年収205万円で扶養家族2名の場合はおよそ80万円です。さきほどの住民税控除額と合わせると、約205万円の年収が基準になっています。給与所得控除額は、国税庁が公表しているので参考にしてみてください。
例③4人世帯:年収255万円以下
配偶者と子供2人を養うサラリーマン家庭の場合の住民税非課税適用となる年収の基準は、255万円となります。その根拠は、まず所得控除額は基礎控除38万円、配偶者控除38万円、給与所得控除65万円の合計が141万円になります。
住民税の控除は、35万円×(控除対象配偶者1人+扶養親族数2人+1人)+21万円の結果、161万円となります。所得控除と住民税控除を合計しても255万円にはなりませんが、規定上住民税が非課税となる基準は255万円と定められています。
所得税の非課税の基準とは
参考までに、所得税が非課税となる基準についてもご紹介します。所得税の非課税基準年収額は、103万円とされています。基礎控除額が38万円、給与所得控除が65万円の合計額で算出されます。これは独身のサラリーマンのケースですので、扶養者がいれば基準は変わってきますので、自分で試算をする際には注意しましょう。
住民税非課税と扶養控除
ここでは、住民税の非課税を考える際に重要となる扶養控除について説明します。扶養控除といえば、所得税の確定申告や年末調整の際によく出てくる言葉ですので、なじみのあるかたも多いかもしれませんが、住民税の算出においても関与してくることは意外に知られていません。
扶養控除金額の計算方法や、扶養控除に当たる家族とはどんなケースか、等について具体例を交えながら解説していきます。
扶養控除額
扶養控除の計算は、所得税と住民税によって異なります。扶養控除の金額は所得税の方が大きく設定されています。したがって、年収金額によっては、所得税が非課税になっても住民税では非課税にならないケースがあるので、注意しておく必要があります。控除計算後、課税所得が0になれば、非課税対象世帯ということになります。
住民税の場合
住民税における扶養控除は、通常の扶養家族においては33万円という規定があります。扶養している家族の状態によってその金額も変わってきます。たとえば70歳以上の高齢者の家族と同居している場合、一人当たり45万円という規定になっています。
同居しているかいないかで控除額も変わってくるので注意が必要です。また、16歳未満の子供については、扶養控除の対象とならない点に注意しておく必要があります。
所得税の場合
所得税における扶養控除の金額は、住民税と同様扶養している家族の状態によって異なってきます。総じて、住民税で適用されている金額よりも若干高く設定されています。
例えば、通常の対象者一人当たり38万円、同居の高齢者の場合は一人当たり58万円といったように設定されています。住民税と同様、16歳未満の子供は扶養控除の対象から外れていますので注意しておく必要があります。
扶養控除の対象になる家族
扶養しているからといってすべての家族が扶養控除の対象になるかといえばそうではありません。16歳未満の子供が扶養控除対象から外れた背景には、こども手当支給の制度が始まり、二重の保障とみなされるようになったことが挙げられます。
扶養控除対象家族とは、16歳以上の親族で、生計を一にしており、年収が38万円以下(給与所得のみの場合は103万円)の3つの条件をすべて満たしている家族が該当することになります。
住民税非課税と世帯分離
ここでは、世帯分離という手段を用いて住民税が非課税になる可能性と、その計算根拠について解説していきます。これまで述べてきたように、住民税が非課税になるかどうかは、世帯の年収合計金額に左右されますので、複数の家族が収入を獲得している場合、世帯分離をすることで年収額が減り、場合によっては非課税条件を満たす可能性があります。
世帯分離とは
そもそも世帯分離とは、生計を一にしていて、これまで住民票上でも一つの世帯として住民票に記載されていたところを、生活基盤の生計などが分かれているなどの理由により、二世帯以上に分割する手続きのことを言います。
世帯分離のケースで多いのが、両親と子供が同居していて、子供が成人となり働きだしたケースです。自分で収入を得て生計を立てているものの、元の両親と同じ住まいで生活している場合は、世帯分離を申請しても何ら不自然はありません。
世帯分離のメリット
世帯分離をするメリットとしては、住民税の非課税世帯ができる可能性があることです。たとえば、両親と子供一人の世帯の場合、子供が働き始めたケースで一人だけの収入額が非課税対象の場合、世帯分離をしないと両親の収入と合算して計算されるところ、子供の生計の部分で非課税対応を受けられることになります。
世帯分離のデメリット
世帯分離をして住民税非課税の認定を受けると、税負担面やその他の優遇措置を受けられるという点でメリットがあります。逆にデメリットを上げるとすると、同じ世帯として生計を一にしていたことで得られていたメリットを手放すことになってしまう点です。たとえば所得税の医療費控除は世帯分離をすることで合算して申告できなくなります。
注意点
世帯分離をするかどうかの判断は、ただ住民税が非課税の世帯を生み出すことができるという点だけで決めるべきではありません。税制はかなり複雑でいろんな優遇措置や税額控除項目があります。世帯を一つしてきてこれまで受けられてきたメリットはどんなものがあったか、十分に確認したうえで総合的に利益が増える選択肢を選びましょう。
世帯分離の手順
世帯分離をするために取るべき手順はどんなものでしょうか。市役所などで必要書類を提出することになります。「異動届」を提出するケースが多いですが、自治体によって異なるケースもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
世帯分離の手続きをする際に必要となる資料としては、運転免許証などの本人確認書類、住民税の納付通知書、印鑑、国民健康保険被保険者証になります。これも自治体によっては異なるケースもあるので、手続きをする際にはあらかじめ確認をして取りそろえるようにしましょう。
住民税非課税の非課税証明書とは
住民税非課税世帯と認定されると、自治体から非課税証明書を発行してもらうことができます。自治体によって名称が若干異なるケースもありますが、一般的には、「住民税証明書・住民税所得証明書」という非課税認定を受けていない方でも受け取れる証明書の名称と同じ設定になっています。
必要書類
住民税非課税の非課税証明書を取得するために必要な資料は、本人確認書類と印鑑のみになります。本人確認書類は運転免許証や健康保険証が該当します。証明書発行申請は、市役所などの窓口に行かなくても、郵便での申請もすることができるので、市役所に行く時間がない場合は事前に確認をして郵送にて手配を依頼しましょう。
住民税非課税認定を受けるとどうなるか
ここでは、住民税が非課税と認定された場合に得られるメリットや優遇措置について解説します。意外にたくさんの優遇措置内容があるので、可能な限り最大限にメリットを活用して、効率の良い生活ができるようにしましょう。保育園に乳幼児を優先して入園させられるなどの目に見えないメリットもあります。
いろんな優遇措置が受けられる
医療費面の優遇が大きいです。高額療養費制度においては、個人負担の上限額が8万円から35,400円に下がります。また、国民健康保険料の負担が減免されます。さらに、場合によってはNHKの受信料が免除されるという可能性もあります。他にも様々な優遇措置が設定されているので調べてみてください。自治体によって取り組みが異なることもあります。
住民税は年収・世帯によって非課税になることがある!
ここまで、住民税が非課税にある条件やその優遇措置、所得税との関係性や非課税証明書のことについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。非課税世帯になる条件は場合によっては難しいケースも多いですが、世帯分離などの手段も検討しながら、活用できそうな場合は最大限に活用してみましょう。