年収300万円・手取り額
年収が300万円台の人は労働人口全体の約20%を占め、年収別統計の中で最も人数が多い層となっています。今後は年功序列制度の崩壊などでこれまでの給与体系から変化を余儀なくされ、「年収300万円時代」が来るのではないかといったことを予測する人たちもいます。
そんな年収300万円の人の手取り額(所得税・住民税の2つの税金+社会保険料)を計算すると238万円となります。年収390万円の場合だと手取り額は309万円です。大まかな計算にはなりますが、年収300万円台の人は額面の80%程度が手取り額となります。
月額約20万円程
上記の金額を単純に12か月分で割ると、年収300万円の人の手取りの月額は19.8万円となり、約20万円が毎月手元に入ってくる計算になります。
もちろん実際にはボーナスなども中に含まれているので、通常の月に手取りとして年収300万円台の人のふところにはいってくるのは16~25万円ほどと若干の個人差があります。
年収300万円・税金
この記事の上の方でも触れたとおり、年収300万円台の人はおよそ年収額面の20%ほどが税金と社会保険料として差し引かれることになります。
ここではその給与から控除される1つ目の要素である税金について詳しく解説したいと思います。給与から差し引かれる税金には、①所得税、②住民税、の2つの税金があります。
①所得税
日本の所得税はいわゆる「累進課税」と呼ばれる税金制度を適用しています。これは、年収が高い人ほど税金として差し引かれる金額が大きくなるシステムのことです。
詳しい計算式の解説は国税庁のホームページに譲りますが、年収300万円台の場合は基本的には年収の2%程度が差し引かれると考えて差し支えありません。
年収300万円ちょうどの場合は5.5万円、年収390万円の場合は8.2万円が所得に対する税金として年収から差し引かれます。厳密には年収に占めるボーナスの金額によって多少の前後はありますが、おおよその税金の金額としてはこのような数字になります。
②住民税
ここで言う住民税は都道府県と市区町村それぞれに対する税金が含まれています。こちらは住んでいる地域によって多少の上下がありますが、年収300万円なら12万円、年収390万円なら17万円程度が住民税として課税されます。
また、上記の金額は配偶者や子どもなどの扶養者(自分の年収で養っている人)がいない場合の税金の額になるため、それらの人がいる場合には住民税は低くなります。同様のことは所得税の計算についても言えます。
年収300万・社会保険料
上記の所得税や住民税と合わせて手取り額から差し引かれるのが年金(国民年金・厚生年金)、健康保険、雇用保険などの「社会保険」です。社会保険料は月収に応じてその金額が決まりますが、合計で収入の14~15%ほどになります。
つまり、年収300万円の場合はおよそ40万円ほどが社会保険料として差し引かれる計算になります。
ここでは主な3つの社会保険である①年金(厚生年金)、②健康保険、③雇用保険について説明していきます。
①年金(厚生年金)
一般的なサラリーマンの場合は「厚生年金」と呼ばれる年金が毎月の給料から差し引かれます。厚生年金の保険料率は年収に関係なく17.828%で、会社と折半で支払いをするので実質負担は8.194%となります。
したがって年収300万円の場合は年間でその8.194%である28.5万円が厚生年金保険料として引かれることになります。月額で計算するとおよそ2.4万円が毎月の給与から天引きされることになるのです。
②健康保険
さらに、厚生年金とは別に健康保険料も毎月の給料から差し引かれます。中小企業のサラリーマンの場合は全国健康保険協会(協会けんぽ)、大企業勤務の場合は企業運営の健康保険組合の保険料になります。
保険料は加入している組合によって異なりますが、例えば協会けんぽの場合は月収の9.97%が保険料です。ただしこれも会社と折半での支払いになりますので実質の負担は4.985%です。
したがって年収300万円の場合の健康保険料は300万円×4.985%=15.4万円となり、毎月1万円強が給料から引かれることになります。
③雇用保険
雇用保険料はサラリーマンの場合、ボーナスも含めた賃金総額の0.005%を負担することとなっています。ここは厚生年金や健康保険とは異なる部分ですので注意が必要になります。
年収300万円の人の場合は、微々たる金額ではありますが年間で1.5万円となるので月の手取りから1000円強がさらに引かれることになるのです。
年収300万円・生活レベル
上記で解説した手取り額を前提として、ここでは年収300万円の人がどれくらいの生活レベルの日常を送れるのかを、①20代独身(配偶者、子供なし)の場合、②子供なし夫婦の場合、③子供あり夫婦の場合、の3つのケースに分けて見ていきます。
実際の金額を見ていくと、年収300万円でも多少の工夫は必要ですが結婚や出産など含めてある程度自由な生活が送れることが分かります。
①20代独身の場合
20代独身の場合、ある程度節約して生活すれば光熱費が1万円、通信費が1万円、食費やその他必要経費が4万円程度になります。都市部に住んでいる場合でも家賃は7~8万円程度になるので、固定費は13~14万円ほどという計算です。
つまり、ある程度節約して生活することで1か月あたり平均で6~7万円は自由に使えるお金が残るということになります。年間で考えると70~80万円程度となり、かなり大きな金額になります。
節約や工夫を重ねながら、年収に見合った無理のない生活を送ることで、旅行に行ったり貯金を貯めていくことも年収300万円あれば可能になるのです。
②子供なし夫婦の場合
既婚の場合、光熱費が1.5万円、通信費が2万円、食費やその他必要経費が7万円程度と考えると、都市部で家賃8万円のところに住んだとして固定費が18.5万円かかる計算になります。
年収300万円の場合の1か月の手取り額が約20万円(ボーナスを考慮しない場合)ですから、配偶者の収入がない場合であっても月に1.5万円ほどのお小遣いがもらえます。
夫婦で共働きをしたり自炊をして食費を節約するなどすれば、より自由に使えるお金を捻出することも可能になります。特に子どもがいない場合はお互いにフルタイムで働くことも可能ですので、場合によってはお互いに独身の場合よりも自由に使えるお金が増えると言ったことも十分に考えられます。
③子供あり夫婦の場合
子どもがいる場合は、さらに食費やその他育児費用が増えるので固定費は増加します。光熱費が2万円、通信費が2万円、食費やその他必要経費が8万円程度とすると、都市部で家賃8万円の家に住むとすれば固定費は20万円になります。
つまり、上記と同様に年収300万円で月の手取りが20万円と考えれば共働きは必須です。子どもが小さいときは預ける環境の有無を考慮したり、育休やその他育児手当を活用することで、持ち家を購入して住宅ローンの支払いがあっても家計をうまく回して貯蓄を行うことも可能になってきます。
年収300万円であっても夫婦二人で協力し合うことで子どもを産むこと、ならびに次に説明する住宅ローンによる持ち家購入も十分に選択肢として持つことができるのです。
年収300万円・住宅ローン
年収300万円であっても日々の生活のなかで節約したり工夫をしてお金を捻出していけば、家を買ってマイホーム生活を実現することも不可能ではありません。ただし、購入する住宅の価格や住宅ローンとして借りる額、頭金として支払える預貯金の有無によって大きく左右されるのも事実です。
年収300万円の場合、住宅ローンの限度額についても後ほど詳しくお伝えしていきますが、購入できる家の金額としては1500~2000万円が目安にはなります。
①頭金を貯める事が最優先
基本的には、住宅ローンによる毎月の返済額による生活負担を極力減らすためにも頭金を貯める事が最優先事項です。住宅ローンとして借りるお金が多ければ多いほど月々の返済額や返済年数が増加するため、日々の生活への負担は大きくなりがちです。
例えば1500万円の物件を全額住宅ローンで支払う場合、諸経費等も含めると借りるお金は1700万円程度になることが多いです。返済期間が30年となると金利もかなりかさむので毎月5~7万円ほどが返済額として必要になります。
後々の住宅ローン金利による負担を抑えるためにも、そして住宅ローンの借入額を抑えて審査に通りやすくするためにもまずは現在の生活費を見直して節約し、頭金を貯めていくのがベストな選択肢です。
②借入可能額は年収の5~6倍が目安
一般的な目安として、住宅ローンで借入可能な金額の上限は年収の5~6倍と言われています。つまり、年収300万円の場合は1500~1800万円ほどが限度額という計算です。
したがって、年収300万円で例えば2000万円の物件を購入したいと考えるのであれば頭金は最低でも200万円、できれば500万円ほどは用意しておきたいところです。
500万円の貯金をするというのは年収300万円の人にとってはかなりハードルが高い目標にはなりますが、どうしても持ち家が欲しいという場合にはより安い物件を探すか現在の生活を切り詰めて節約するといった選択肢が必要になります。
年収300万円・貯金のコツ
上記の住宅購入の頭金の工面や、将来に対する備え、子どもが大きくなってからの教育費用を考慮すると貯金というものは非常に重要になってきます。
一般には年齢が上がって会社での役職も昇進していけば年収は上がる傾向にはありますが、その傾向がこれからの時代に続くとも限りません。だからこそ、現在年収が300万円前後の人は本当に貯金を増やしていけるのか不安な部分があるはずです。
実際のところ、年収300万円・月々の手取り20万円であっても普段の生活における工夫やコツを取り入れれば十分に貯金をすることは可能です。ここでは年収300万円であっても可能な貯金のための8つのコツについてお伝えしていきます。
①目標を決めて貯金
貯金を確実に貯めるためには、まず目標を具体的な数値で設定しておく必要があります。これは貯金に限った話ではなく普段の仕事や生活にも応用できる考え方です。具体的な貯金目標額が決まれば、自分の現在の手取り額と生活にかかっている金額とを見比べてどこをどれだけ節約していけばいいかということが見えてきます。
例えば20代独身で「1年間で100万円の貯金をする」といった目標を立てた場合、月々で8.3万円の貯金が必要なことが分かります。もし現在貯金に回せている金額が7万円であれば、あと1.3万円を捻出するために施策を立てればよいのです。
ここまで明確に必要な金額が月単位でわかれば、あとは具体的に今の生活のどの部分を見直せばいいかがわかるので貯金に必要なアクションが取りやすくなるのです。
②現金で買い物
最近はPayPayやLINE pay、各種クレジットカードなどいわゆる「キャッシュレス決済」が普及してきました。おかげで普段の買い物が便利になった一方で、出費の心理的なハードルは下がっている側面もあります。
最悪の場合、クレジットカードを使えば月収を超えるような支出でも分割払いやリボ払いに回すことで購入できてしまうのでなおさら無駄遣いを促進している部分は否めません。
特に貯金の習慣が身についていないという人の場合はキャッシュレス決済はその妨げになっている可能性が十分あるので、できる限り現金で買い物をする生活に切り替えることで貯金が貯まりやすくなる傾向があります。
③無駄遣いをしないように意識する
そして当たり前ではありますが、「貯金を殖やす」=「無駄遣いを極力減らす」ということは強烈に意識する必要があります。
無駄遣いの例として代表的なものとしては衝動買いのほかにお菓子やドリンク、お酒、たばこなどのコンビニでの小さな支出などが挙げられます。こういった支出が積もりに積もって月々で見るとかなり大きな額になっていることは多いです。
また、ネットショッピングでのセールや「○○円以上で送料無料」といった文言に乗せられてつい無駄なものを買ってしまうことも意外と多いです。大きな支出だけでなく、普段の生活の中での細かな出費を削ることこそが貯金の近道であるケースがほとんどなのです。
④家計簿による支出の見直し
そして生活の中での無駄遣いを「見える化」するために非常に効果的なのが家計簿をつけることです。
特に上記のような細かい支出は一覧にしてまとめておかないと、支出がいくらなのか把握しにくいため貯金の妨げになることが多いです。レシートを貯めておいて月末にまとめる等して生活費の使い方を見直して、おかしな支出がないかを確かめるだけでも貯金につながる施策が見えてきます。
⑤家賃をいかに安くできるか
そして生活費の中で大部分を占めていることが多いのが家賃です。この記事の手取り額の計算では「7~8万円」としましたが、実際には工夫次第でそれ以下に下げることも十分に可能です。
会社によっては家賃補助や社宅制度がありますし、人によっては実家から職場に通うという選択肢も一つです。また、一人暮らしでも現在より安い物件を探し出せるのであれば、そちらに引っ越しして家賃を減らせます。住宅ローンについても購入前であれば慎重に考える必要があります。
持ち家の住宅ローンであれ賃貸であれ、家賃は毎月固定で生活費としての出費に含まれるので、そこをいかに抑えるかは貯金をするために最も重要な項目の一つです。
⑥飲み会はほどほどに
臨時支出として大きな割合を占めることが多いのが「飲み会」です。特に2次会・3次会に頻繁に行くような飲み会の仕方は生活費を大きく圧迫するだけでなく、貯金の妨げになることも多いです。
また、一般的に飲み会でお酒を飲んだり盛り上がったりして楽しくなってしまうとそこで予定以上に散財してしまいがちなのも人間心理です。したがってそういった場面こそ「今日の飲み会で使うのは○○円までにする」といったような上限額を決めることが必要になってきます。
上司や先輩からおごってもらえる場合が多いのであればそれほど負担にはなりませんが、自腹を切らなければいけないような同僚との飲み会はほどほどに抑えるように意識しないと、貯金や生活費を食いつぶす要因になりかねません。
⑦先取り貯金
無駄な出費を抑えるために効果的な方法が「先取り貯金」です。毎月の給料が振り込まれ次第、貯金用の口座に一定の額を移動することで簡単に引き出すことを不可能にし、残りの金額から生活費等を捻出する方法です。
やはり手元にあればお金を使ってしまいたくなるのが人間の真理です。年収300万という額は税金や生活費、住宅ローンを差し引いても十分に余裕のある金額なのですから、そこから余裕分をあらかじめ引いた中で生活するようにすれば自ずと節約や生活の工夫のアイデアも生まれやすくなります。
⑧ボーナスに手を付けない
おそらく1年の中で最もサラリーマンの財布からお金が出ていくのはボーナスが支給された直後です。特に年収300万円の場合だと普段は限られた手取り額の中でやりくりしているので散財してしまいたくなる心理は誰にでもあると考えられます。
しかし、ボーナスが入るということは貯金が一気にできるチャンスでもあります。それこそ毎月の手取りの何倍もの金額が一気に口座に入るからです。そのタイミングでこそグッと我慢をできるかどうかが貯金のコツです。
ボーナスについても普段の月ごとに入る給料と同様に、⑦で紹介した「先取り貯金」を行うのが具体的な施策としておすすめです。年収300万という限られた金額だからこそ、ボーナスは効果的に貯金に回すことが効果的な方法になりうるのです。
年収300万円・職業
現在の段階では、上場企業の正社員で年収が300万円という会社はほとんどありませんが、将来的には賃金の低下で年収300万円となる可能性は十分にあります。逆に、中小企業や大企業・上場企業の非正規雇用者は年収300万円前後が一般的である業界も多いです。
ここでは就職・転職を考えている人向けに現在の時点で年収300万円前後が一般的な職業について紹介していきます。
①警備員
警備員は主に学校や事務所などの施設で事故・不法侵入の防止に関する警備を行う仕事です。警備員は年収が上がるような昇給制度などがなく非正規雇用も多いこと、特別なスキルではなく汎用的な能力が求められるといった職業の性質上、年収300万円前後というのが一般的な年収のラインです。
②飲食物給仕従事者
飲食物給仕従事者というのはいわゆる「ウェイター」「ウェイトレス」のことです。主に食堂やレストラン、ホテルなどで食卓の用意や給仕のサービスを行う職業です。
この職業も警備員と同様に非正規雇用社員が多く、時給換算で考えても年収300万円というのは年収の上限ラインであることが多いようです。
年収300万円・その他の職業
上記2つの職業以外にも、年収300万円前後のものは数多くあります。例えばWebデザイナーなどのフリーランスの職業や、整体師、管理栄養士などといった士業は年収300万円が平均ラインであることが多いです。
また年代的には30代辺りの人が平均年収300万円前後である産業が多く、完全実力主義である外資系企業においても30代で年収300万円という人が多いと言われています。
年収300万円でも貯金をしながら夫婦で生活できる
今回の記事では年収300万円の場合の手取り額や生活レベル、年収300万円でも実践できる貯金のコツや持ち家の購入の仕方について解説してきました。
生活の工夫次第で、年収300万円でそれほど多くない手取りであっても税金や住宅ローンを払いながら貯金もして夫婦で生活することも十分可能です。そしてそのためには、まずは今一度生活支出を見直すことが効果的な方法です。