ボーナスの手取り額の計算方法
毎年、夏や冬の時期になるとニュースになるのが「ボーナス」です。ボーナスとは、定期的な給料を支払われている会社員が、毎月(定期の)給与とは別に受け取ることのできる特別給与のことを指します。
多くの企業では、夏と冬の年2回、ボーナスが支給されますが、なかには年1回や年3回ほどボーナスが支給される企業も存在しています。
ボーナスの手取り額の計算式
ボーナスの時期になると気になるのが「今回のボーナスがいくらいなるのか」という額面ボーナス額や、「ボーナスの手取りがいくらになるか」といった手取りボーナス額でしょう。なかには実際にボーナスが支給される前に手取りボーナス額を計算する人もいるかもしれません。
そこで今回はボーナスについて、額面のボーナスの支給額から手取り額を求めるために知っておきたい税金について解説しながら、実際の手取りボーナス額の計算方法やボーナスの平均金額について見てきます。
社会保険料は3つに分類される
ボーナスは、額面上支給される金額と実際に手元に残る手取り金額が異なることは、多くの社会人が知っていることでしょう。しかし、社会人なりたての場合、「なぜボーナスの額面と手取りが違うのか」というボーナスの仕組みを知らない人も少なくないでしょう。
なぜ額面上のボーナス支給額と手取りのボーナスが異なるのかというと、これは、支給されたボーナスの額面上の金額から、「税金」や「社会保険料」が引かれているからです。
そこでここではまず、社会保険料について詳しく解説をしてきます。社会保険料は主に3つの種類に分類されています。それぞれどのように求めることができるのか、計算方法について見ていきましょう。
健康保険の計算式
社会保険料の1つ目が「健康保険」です。健康保険は日本国民全員が加入している公的医療保険で、ケガや病気などによって医療費を支払う際に給付を受けたり、手当金を受け取ったりすることができる制度です。
健康保険の計算方法は、「標準賞与額×保険料率÷2」です。標準賞与額は、ボーナスから1000円未満の端数を切り捨てた金額のことをさします。例えば、ボーナスが45万6,780円だった場合の標準賞与額は45万6,000円ということになります。
人によって加入している健康保険が異なるため、保険料率はその加入している保険によって変わります。なお、計算上「÷2」をしているのは、健康保険が雇い主(事業者)と会社員(被保険者)とが折半で負担しているからです。
雇用保険の計算式
社会保険料の2つ目が「雇用保険」です。雇用保険は退社などによる失業時や育休時などに給付金を受け取ることができる、雇用を安定させるための保険です。一定の条件を満たす場合、強制的に加入することになります。
雇用保険の計算方法は、「支給されたボーナスの金額×保険料率」です。健康保険とは異なり「÷2」をすることはありませんが、雇い主(事業主)も事業者負担分を納めているため、実質折半負担となっています。
雇用保険の保険料率は、農林水産・清酒製造および建設の事業を除いて、平成31年度は労働者負担が3/1,000、事業者負担分が6/1,000となっています。
厚生年金の計算式
社会保険料の3つ目は「厚生年金」です。会社員の場合、国民年金と厚生年金の保険料を納めています。ボーナスを受け取った際にも、これらの保険料を納めることになります。
厚生年金の計算方法は、「標準賞与額×保険料率÷2」です。厚生年金も健康保険と同じように、雇用主(事業者)と会社員(被保険者)が折半して負担することになるため、計算上「÷2」をしています。
厚生年金の保険料率は、年金制度改正に伴い平成16年から段階的な引き上げがなされていましたが、平成29年からは毎年固定の18.3%となっています。
ボーナスから引かれる税金は?
見てきたように、ボーナスは額面上の金額から3つの社会保険料を引かれることによって手取り額となりますが、実は社会保険料以外にも納めているものがあります。それが「税金」です。
毎月会社から支給されている給料も、額面上の金額から2つの税金「所得税」「住民税」、そして先ほど見てきた「社会保険料」が引かれた状態で手取りの給料として支給されます。
ボーナスから差し引く税金は所得税
このように、毎月の給料からは「所得税」と「住民税」という2つの税金を納めていますが、ボーナスの場合は「所得税」のみ、税金を納めることになります。
そこで気になるのが、ボーナスから差し引かれる所得税の税金額です。ここでは、所得税の計算方法について解説していきます。
所得税の計算方法
ボーナスにかかる税金「所得税」の計算方法は、「(支給されたボーナスの金額-社会保険料)×税率」です。社会保険料はすでに見てきたとおりです。
所得税の税率は、国税庁HP「賞与に対する源泉徴収税額の算出率」で確認することができます。この税率は、「扶養人数」と「前月の給料から社会保険料などを控除した額」によって変わります。
例えば、扶養人数が0人で前月の社会保険料等控除後の給料額が25万円6,000円の場合は税率が6.126%となりますが、扶養人数が1人で同じ給料額の場合は、税率が4.084%となります。
ボーナスから差し引かれない税金もある
このように、ボーナスからは「住民税」という税金や「社会保険料」など、額面上の金額から様々なものが引かれた状態で手取り額として支給されていました。
しかし実は、ボーナスから差し引かれない税金もあります。それが「住民税」です。住民税とは自分が居住している都道府県や地区町村に対して支払う税金のことを指します。
住民税はボーナスから差し引かれない
先ほども見てきたように、毎月支給される給料からは「所得税」と「住民税」の2つの税金が差し引かれていました。
住民税は、前年度の所得に対して支払う税金額が決まり、それを毎月(12ヶ月)に分けて支払うことになっているため、今回支給されたボーナスに対しては支払う必要がありません。そのため、ボーナスの額面金額から住民税が差し引かれることはない、ということになります。
税金が引かれるきっかけを生んだ総報酬制とは?
実は平成15年までは、ボーナスに対して税金がかかることはありませんでした。しかしこの場合、「同じ年収でも支払っている税金額が違う」というケースが生まれてしまいます。
毎月の給料のみで年収600万円の場合、その給料には税金がかかります。しかし、毎月の給料は年収500万円分でもボーナスで100万円もらっているために年収600万円になっている場合、税金がかかるのは給料による年収500万円分のみになります。
このような不公平さをなくすために導入されたのが「総報酬制」というものです。これにより、ボーナスに対しても所得税がかかることになりました。
ボーナスの手取り額のシミュレーション
ここまで、ボーナスの額面金額から手取り金額を計算するための計算方法について見てきましたが、ここからは、より具体的な例を活用しながら、実際にボーナスの手取り額のシュミレーションをしていきましょう。
ボーナスの手取り額の計算方法は、「ボーナス(額面)-(社会保険料+所得税)=ボーナス(手取り)」でした。今回は、扶養家族0人でボーナスが給料1ヶ月分支給される場合を想定して計算していきます。
ボーナス(額面)が30万円の手取りの場合
まずは、ボーナス(額面)が30万円の場合の手取り額を計算します。最初に、ボーナスの額面金額が30万円だった場合に支払う社会保険料について計算していきます。ここでは、健康保険料率9.90%、雇用保険料率3/1000、厚生年金保険料率18.3%と仮定して計算します。
健康保険・雇用保険・厚生年金それぞれの計算式は「(ボーナス額面金額×9.9%)÷2=健康保険料」「ボーナス額面金額×0.003=雇用保険料」「(ボーナス額面金額×18.3%)÷2=厚生年金保険料」でした。ボーナス額面金額30万円を当てはめて計算すると、健康保険料1万4,850円、雇用保険料900円、厚生年金保険料2万7,450円となります。
社会保険料がわかれば所得税・手取り額も計算できる
一方、所得税は「(ボーナス額面金額-社会保険料)×税率」で計算することができます。税率を6.126%として計算すると、「(30万円-4万3,200円)×6.126%=1万5,731円」となります。
つまり、ボーナスの額面金額が30万円だった場合、支払う社会保険料は4万3,200円、所得税1万5,731円となります。これをボーナス(額面)30万円から差し引くと、手元に残る手取り金額は24万1,069円となります。
ボーナス(額面)が40万円の手取りの場合
次に、ボーナス(額面)が40万円の場合の手取り額を計算します。先ほどと同様にまずは社会保険料について計算していきます。それぞれの計算式に当てはめると「(40万円×9.9%)÷2=健康保険料」「40万円×0.003=雇用保険料」「(40万円×18.3%)÷2=厚生年金保険料」でした。
これを計算すると、健康保険料1万9,800円、雇用保険料1,200円、厚生年金保険料3万6,600円となります。一方、所得税は「(40万円-5万7,600円)×税率」で計算することができます。税率を10.210%として計算すると、4万5,169円となります。
つまり、ボーナスの額面金額が40万円だった場合、支払う社会保険料は5万7,600円、所得税4万5,169円となり、手取り金額は29万7,231円となります。所得税の税率が大きくなる分、かかる税金も高くなっているのがポイントと言えます。
ボーナス(額面)が50万円の手取りの場合
最後に、ボーナス(額面)が50万円の場合の手取り額を計算します。まずは社会保険料の計算します。それぞれの計算式に当てはめると「(50万円×9.9%)÷2=健康保険料」「50万円×0.003=雇用保険料」「(50万円×18.3%)÷2=厚生年金保険料」でした。
これを計算すると、健康保険料2万4,750円、雇用保険料1,500円、厚生年金保険料4万5,750円となります。一方、所得税は「(50万円-7万2,000円)×税率」で計算することができます。税率を16.336%として計算すると、6万9,918円となります。
つまり、ボーナスの額面金額が50万円だった場合、支払う社会保険料は7万2,000円、所得税6万9,918円となり、手取り金額は35万8,082円となります。
ボーナスの手取り額の平均は?
このように、ボーナスは額面金額から社会保険料・所得税を納めた上で、手取り金額を手にすることができます。ここでもうひとつ気になるのが、「周りの人がいくらのボーナス手取り額をもらっているのか」というボーナスの平均手取り額でしょう。毎年ニュースで取り上げられることもあり、夏や冬の時期にはこの話題に敏感になる人も少なくないでしょう。
厚生労働省の毎月勤労統計調査で確認可能
ボーナスの平均手取り額は厚生労働省のHPに掲載されている「毎月勤労統計調査」で確認することができます。様々な角度からの調査が行われていますが、見るべきなのは毎年11月に掲載される「全国調査(夏季賞与の結果)」と4月に掲載される「全国調査(年末賞与の結果)」です。
2019年のボーナスの手取り額は?
ではここから、実際のボーナスの手取り額について見ていきましょう。厚生労働省によると、平成30年夏のボーナスの平均手取り額は38万円でした。昨年度から4.7%ほどの増加となっています。とはいえ、支給ができた企業は67%ほどで、給料0.99ヶ月分ほどの金額であることを考えると、厳しい数字であると言えそうです。
平成31年冬のボーナスでも、平均ボーナス手取り額は38万円でした。昨年度から1%の増加にとどまっていますが、支給ができた企業は71%、給料1.03ヶ月分の金額に伸びていることは嬉しいニュースと言えそうです。
ただし、上場企業では、平均70万円以上のボーナスが支給されているとも言われています。よくニュースで取り上げられているのは、上場企業の平均値であることも多いため、実際の現状との乖離があることも少なくありません。
中小企業の平均ボーナス
なお中小企業の平均ボーナスは、厚生労働省の発表する数値とあまり変わりがなく、約38万円ほどのようです。その企業の業績等にもよるため、なかには給料2~3か月分ほどボーナスが支給される企業もあるようです。
ボーナスが高くなれば、もちろんかかる社会保険料や税金も高くなりますが、注意しなければならないのは翌年の税金です。翌年の住民税や所得税は、その年の年収によって決まるため、たくさんボーナスをもらったからと言って、使い過ぎないように注意しましょう。
ボーナスの使い道
ボーナスをもらったら、やはり何に使うのかを考える人が多いのではないでしょうか。そこで、ボーナスをもらった人が平均して何に使っているのかを見ていきましょう。
ボーナスの使い道の多くは「貯金」です。これは現金貯金ではなく「定期預金」として貯金をしている人が多いようです。また、ボーナスをきっかけに大きな買い物をしたり、ローン返済に充てている人も少なくありません。
もちろん、旅行のように、普段はなかなかできないことにボーナスを使う人もいますが、ボーナスを余剰金ととらえて、投資などを始める人も増えているようです。
ボーナスの手取り額は社会保険料の概要把握が大切
このように、ボーナスは額面上の金額がすべて手取りとして手元に残るわけではありません。そこで、手取り額を計算するために、自分が支払う社会保険料や所得税について知識を持っておくことが重要と言えます。
ぜひ、社会保険料や税金の計算方法を知って、有意義な手取りボーナスの活用をしていきましょう!