「斜に構える」の意味とは
冒頭で「斜に構える」という言葉は昔と現代では違う使われ方をされていると記しましたが、実際に本来の意味や由来などを正しく理解していない人も少ない言えるでしょう。まずは「斜に構える」の読み方ですが、読み方は二通りあり、一つは「しゃにかまえる」、そしてもう一つは「はすにかまえる」と読みます。
次に「斜に構える」の語源や、何故現代では本来の意味と違う意味で使われているのかを説明します。
①剣道で刀を斜めに構える
「斜に構える」の語源は剣道にあります。剣道で、両手に刀の柄を持ち、剣先をまっすぐ相手に向けずに「斜めに構える。」という意味が「斜に構える」の語源です。剣道には、上段・中段・下段という三種類の構えがあります。その中でも「中段」の構えは、相手に向かって刀を斜めに延ばした状態であり、最も隙のない構えとされています。
そして、中段の最も隙の無いその構え方を「斜に構える」と呼ぶようになりました。これが「斜に構えるの本来の語源です。
②改まった態度をとる
そして、先述した通り、中段という構えが試合前にお互いが向き合う際の基本姿勢でもあり、最も隙の無い構え方であることから「斜に構える」という言葉は「改まった態度を取る」という意味になったという由来があります。従って「斜に構える」という言葉は、本来は相手と相対して真剣に向き合うことを意味していたのです。
③物事に対して皮肉やからかう態度
現在では「斜に構える」の意味といえば、「物事に正面から対処しないで、皮肉で不真面目且つ、からかったような態度で臨む」という意味だと一般的には認識されています。「斜に構える」の語源は剣道にあり、そして、もともとの意味は「改まった態度をとる」という意味で、現在では「物事に対して皮肉やからかう態度で臨む」という意味になっています。
現在の「斜に構える」の意味の認識は、ほとんどの人が「物事に対して皮肉やからかう態度で臨む」という認識を持っているので、「改まった態度をとる」という意味で「斜に構える」という表現を使う場合は、他の言葉に言い換えた方が良いでしょう。
「斜に構える」の類語
次に、「斜に構える」の類語を紹介していきます。この場合の「斜に構える」は「物事に対して皮肉やからかう態度で臨む」という現在一般的に認識されている意味の「斜に構える」です。「斜に構える」という表現は、先述の様に二つの違う意味を持つという特性上、状況によっては類語を用いた方が無難だと言えるでしょう。
①偏屈
「偏屈」という言葉は「斜に構える」の類語です。読み方は「へんくつ」と読みます。「偏屈」の意味は人間の動作や、性格を表す言葉で「性質が素直でなく、頑固なこと。」または「性質がひねくれていること。」という意味です。使い方としては「あの作家は良い小説を書くが、偏屈者として有名だ」の様な使い方をします。
②根性曲がり
「根性曲がり」も「斜に構える」の類義と言えます。「根性曲がり」の意味はそのまま根性が曲がっている人のことを指しますが、詳しく説明すると「人の性質が後ろ向きで、正々堂々としていないこと」という意味になります。例文として「彼は優しい一面もあるが、基本的には根性曲がりな人だ」の様な文章が考えられます。
③ひねくれている
「ひねくれている」も「斜に構える」の類語の一つです。「ひねくれている」とは「ひねくれた」という動詞を現在進行形の名詞に変えたものです。「ひねくれている」の意味は「人の性質が素直でなく、心がねじけている」という意味になります。使い方として「彼の考え方は非常にひねくれている」の様に使い方ができます。
④あざける
「斜に構える」の類語の一つとして「あざける」という言葉も挙げられます。「あざける」を漢字で書くと「嘲る」という様に書きます。「あざける」とは「人や物事に対し、馬鹿にして悪く言ったり笑ったりする。」という意味です。使い方として「彼女の人の失敗をあざける癖は直した方が良いだろう」といった使い方が挙げられます。
⑤拗ねる
「拗ねる」も「斜に構える」の類義と言えます。「拗ねる」は「すねる」と読みます。「拗ねる」の意味は素直に人に従わず、不平がましい態度をとる」という意味や、「わざとよそよそしく振る舞う。」といった意味があります。「拗ねる」という言葉は、特徴として、小さいに子供などに対して良く使われる言葉です。
例文として、「私の妹ははおもちゃを買ってもらえなかったので拗ねている」または、「あの子は気に入らないことがあるとすぐに拗ねる」といったものが考えられます。
ここまで「斜に構える」の類義を5つ紹介しましたが、他の類語として「天の邪鬼」や「つむじ曲がり」また 「へそ曲がり」といった類語が考えられます。
「斜に構える」の対義語
「斜に構える」の類語はいろいろとありましたが、逆に「斜に構える」の対義語はどうでしょう?ここでは「斜に構える」の対義語の説明をしていきます。「斜に構える」の対義語もいろいろな言葉が考えられます。類語と同様に人の心理や性格を表現する言葉がほとんどになります。
①身構える
まず最初に「斜に構える」の対義語として「身構える」という言葉があります。「身構える」の意味は「迫り来る相手に対応するために体勢を整えている状態」という意味がありますが、その他に比喩的な表現で、「相手に対し、自分の心を許さない様子」という意味もあります。
例えば恋愛に於いて、異性に対して心を許さず、警戒している様子も「身構える」の意味の一つとして捉えることができます。「身構える」の例文として「いざ大地震が来くる時に備え、身構える準備が必要だ」、あるいは「誤解であったことを説明したいが、彼は身構えて、なかなか心を開いてくれない」のような例文が挙げられます。
②気負う
「気負う」という言葉も「斜に構える」の対義語になります。「気負う」の読み方は「きおう」で、もともと「競おう」という言葉から派生した言葉です。「気負う」とは「上手くやらなければいけない、という意識によって招く緊張した状態」という意味です。簡単に説明すると「緊張して肩に力が入っている状態」とも言えます。
基本的に「気負う」のあとには「無理せずに、自然体でいた方が良い」といったアドバイスの様な文章が続くケースが多いのが特徴です。例として「大切な試合の前だからといって、そんなに気負わずにリラックスした方が良い」または「そんなに気負わず、無理するな」のような例が挙げられます。
③うやうやしい
「うやうやしい」という言葉も「斜に構える」の対義語の一つになります。「うやうやしい」を漢字で書くと「恭しい」と書きます。「うやうやしい」の意味は「相手を敬い、礼儀正しく丁寧な様子」または「自らをへりくだり丁寧に振る舞う様」という意味です。例として「彼の誰に対してもうやうやしく振る舞う姿勢を見習うべきだ」の様に使います。
④堅実
「堅実」という言葉も「斜に構える」の対義語です。「堅実」は「けんじつ」と読み、意味は堅実とは、「手堅く確実なこと」あるいは、「物事への取り組み方が危なげのないこと」という意味です。つまり「堅実」とは必要のない危険なリスクを取らず、慎ましい様子を表現する言葉です。
使い方として「彼のように堅実な生活は毎日送ることは、簡単に見えて難しいものだ」または、「彼女のように、堅実に働き続ける社員には高い評価が下されるだろう」のような使い方が挙げられます。
⑤律儀
「斜に構える」の対義語として「律儀」という言葉も挙げられます。「律儀」は「りちぎ」と読み、意味は「とても義理堅く、素直な様子」という意味です。但し、「律儀」という言葉は稀に皮肉や嫌味を込めた表現をするときに使われるケースもあります。それは人によっては「律儀」という言葉は「バカ正直」のような捉え方をする人がいる為です。
そのような捉え方をする人は「そんなに律儀にしても、痛い目を見ますよ。」といった使い方を皮肉や嫌味の意味を込めて使います。しかし、あくまでも「律儀」の正しい意味は、先述した「とても義理堅く、素直な様子」という意味です。使い方としては、シンプルに「彼はとても律儀な男だ」といった使い方ができます。
または、「彼女は横断歩道を渡る際に、車がいない状態で信号が赤でも必ず律儀に信号が青になるまで待つ」のような文章にも使えます。
「斜に構える」人の心理や特徴
冒頭で「斜に構える」という言葉の意味は「物事に対して皮肉やからかう態度で臨む様子」と記しましたが、そのように考えたり、行動する人の心理や特徴はどのようなものなのでしょうか?一般的に考えて、物事に対し「斜に構える」と、他人から「おかしな人・変わった人」と捉えられことが多く、自分に不利益が生じるよう考えらます。
しかしながら、いつの時代でも、どのような場所でも、物事に対し「斜に構える」人は一定数存在します。ここでは「斜に構える」人の心理や特徴を紹介していきます。
①周囲と一緒になりたくない
「斜に構える」生き方をしている人の心理の特徴として、周囲と同じ思考をしないことによって、自分を特別な存在の様に考える、という心理があります。「斜に構える」人は自分が特別な存在で、他人に無知だと思われたくない、などといったと心理がとても強いのが特徴と言えます。
仮に自分があまり知らない話題を周囲がしていても、敢えて議論のすり替えなどをして、本来の会話の筋をずらすようなことをします。この心理は敢えて会話の本筋をずらし、自分が得意としている分野に話を持っていき、あたかも自分が詳しい素振りをしたいという心理が働いているからだと考えられます。
また「斜に構える」人は物事に対し、好き、嫌い、面白いといった感情を素直に表現することを嫌う特徴がある傾向にあります。これもやはり、周囲の人と同じ考え方をしたくないという心理が働いているからだと言えます。例えば何か美味しいものを食べて「美味しい」と感じても「これは美味しいけどちょっと癖があるね」のような表現をする傾向にあります。
②物事に批判的
また「斜に構える」に人は何事に対しても、基本的に批判的、若しくは皮肉の籠ったスタンスを取ることが多い傾向があるのも特徴の一つと言えます。これもやはり自分の意見がマジョリティーのものと違い、特別なものであるということを強調したいという心理が働いていることが理由だと考えられます。
例えば、行列を作っているラーメン屋に並んでいる人達を見て、皮肉を言ってみたり、流行しているファッションを批判したりするのが良い例だと言えるでしょう。
③斜に構える生き方をやめたい
物事に対して「斜に構える」に人の中には、実は「斜に構える」生き方をもう止めて、素直に生きたいと悩んでいる人もいるのも事実と言えるでしょう。先述した通り「斜に構える」生き方はかなり損な生き方と言えます。物事に否定的で、他人の意見を否定し、自分を特別化しながら生き続けるということは決して楽ではないと言えるでしょう。
但し、「斜に構える」生き方を突然止めるのは簡単なことではないので、「斜に構える」生き方を疑問に思いながら、そのスタンスを変えずに生活している人はそれなりの葛藤と闘っていると考えられます。
「斜に構える」のは自分に自信がないから
世の中には何故「斜に構える」生きる人たちが一定数いるのでしょうか?一つの理由として考えられるのが、「自分の考え・発言・行動に自信がない」ということが考えられます。つまり、自分の気持ちを素直に伝えることができなかったり、敢えて他人を否定するということは、自分と違う価値観を素直に認めることができない特徴があると言えます。
これは言い換えると、もしかしたら自分の考え方は間違っているのではないか?自分の根拠のない自信は本当に正しいものなのか?などの自分の自信の無さから逃げているとも言えます。
「斜に構える」の使い方
次に「斜に構える」の使い方の説明をします。どのような状況や場面で「斜に構える」という言葉を効果的に使い、実際に「斜に構える」生き方をしている人をオブラートに包みながら、「もっと良い生き方がある」というアドバイスの仕方の方法などを例文を織り交ぜて紹介していきます。
皮肉で不真面目な態度で臨む
先述の通り、「斜に構える」生き方をしている人は、自分の世界とは違う価値観を素直に認められないという考え方を持っています。しかしそれは、ある意味物事の本質から目を背けているとも考えられます。その結果、他人に嫌われ、自分の成長も妨げ、物事の多様性も受け入れられず、損な生き方になってしまっていると考えることも出来ます。
そのような人には「そんなにいつも斜に構えずに、たまには視野を広く持つことも大切です。」または、少し強い言い方になって強いますが「自分のプライドにいつまでも引きずられて斜に構えて物事を見ていても、何にも好転しませんよ。」のようなアドバイスを織り混ぜた例文が考えられます。
逆に、他の例文として「そんな斜に構えた生き方をしていると、他人に誤解されてしまいますよ。」または「斜に構えた生き方をしていると、友達がどんどん減ってしまったいますよ。」のような例文が考えられます。
「斜に構える」とは皮肉やからかう態度をとる事
ここまで「斜に構える」という言葉の、由来や意味、また類語や対義語、更には「斜に構える」生きている人の心理の特徴などについていろいろと説明してきましたが、如何でしたでしょうか?人の生き方は、十人十色で様々なものがあり、誰もその生き方を否定する権利はありません。「斜に構える」という生き方も、立派な生き方の一つと言えます。
しかし、現代の多様性を認める風潮の世の中に於いて、常に物事を皮肉やからかう態度で臨むような生き方は「模範」と考える人は少ないと言えるでしょう。