「陥れる」の意味
陥れる(おとしいれる)という言葉は日常でもたびたび使われています。陥れるの言葉と使う際の状況や、前後の言葉の意味から大体の予想はついても、「陥れる」の言葉の定義までしっかりと理解している方はなかなかいないのではないでしょうか。
今回はこの「陥れる」の言葉の意味をご紹介して行き、「陥れる」の言葉を使用するシーンから例文、英語表現などを順番にご紹介して行きます。
計略や罠にはめて追い込む
先ず、「陥れる」という言葉の意味を考えた際に、最も連想しやすい意味とは、「計略や罠にはめて追い込む」事ではないでしょうか。「陥れる」を違う漢字で当てはめると「落とし入れる」とも書けます。こう表現すると意味が連想しやすいものになります。
自分の仕掛けた罠や策略に相手を「落とし」、自分の策略の中に相手を「入れて」しまう。と解釈すると、この一番一般的な意味での使い方が出来ます。
騙して失脚・失敗させる
次に、相手を「騙して失脚・失敗させる」という意味もあります。前述の相手を「落とし」て「入れる」という意味合いとは、少しニュアンスが変わりますが、概ね同じような意味と言えます。
こちらの表現は、地位や名声がある程度高い相手に対して、活躍の檀上から引きずり下ろす様な場合に使われます。ただ、泥沼の争いの末の結果というよりは、もっとずる賢く、自身はほとんど被害は無い状態で、相手を失脚・失敗させる。といったニュアンスがあります。
攻め落とす・陥落させる
又、「攻め落とす・陥落させる」と言った意味合いも陥れるという言葉には含まれています。これは、主に民族同士の戦闘などの場面において使われる表現です。
相手方の基地や拠点などを攻め落とした際にも、この「陥れる」の表現を使いますが、上記の2つの意味に比べると、一般的な使用頻度は高くありません。上記の2つの意味では、人の心理に対して意味合いを持っていますが、こちらの表現だと壊滅させる、占領するといった状態に対しての意味合いが強いものとなっています。
「陥れる」の使い方・例文
それでは、前述の3通りの意味を踏まえながら、実際に使用する心理、場面や、「陥れる」を使用した例文などを順番ご紹介して行きます。口語表現、文語表現問わずに一般的に使用される表現となりますので、「陥れる」の言葉を使う場面や、使う人の心理なども合わせてチェックしましょう。
他人を陥れる人と一緒にいたくない
一つ目の例文として、第三者を陥れた相手に向けて放つ表現になります。過去に相手が誰かを陥れた事実が判明し、一緒にいたくないと伝えています。
「陥れる」という言葉にはこの様なネガティブな印象をもちます。誰かを陥れる心理というものは、決してポジティブなものではなく、自身の目先の利益のためなら、相手を蹴落としてでも利益の獲得に走る、といった印象をこの例文から感じてしまいます。
人気を妬んだ人が彼女を罠に陥れる
こちらの例文は、上記のものと同じようなニュアンスになります。ただ、一つ目の例文との違いは、相手を陥れる動機が第三者の憎しみから来ている点です。
この様に、相手を陥れるという事は、自身の自己肯定感を満たす目的で陥れる事が一般的で、相手を陥れた事実や、陥れた動機が公にされると、周りからの印象がすごく悪くなってしまう。という事には注意が必要となります。
陥れる人の特徴
「陥れる」の使用する場面は、上記の例文からある程度分かる様になったところで、続いて陥れる人の特徴についてご紹介して行きます。多くの場面では、人を陥れるという事は心理的には悪意をもって相手を陥れる事が多いのが一般的です。
「陥れる」という行動に対して、本人が罪悪感を重く抱えているケースは少なく、自身の思想やプライドを突き通す目的で、手段として陥れる行動に出るという事が考えられます。
上記を踏まえ、陥れる人が持つ特徴をご紹介して行きます。身の回りにこの様な人がいれば、疑いまではしなくても注意しておいて損な事にはならないので、是非チェックしておきましょう。
嘘をつくのが上手い
先ず、嘘をつくのが上手いことが挙げられます。陥れるという行動には、心理としては、人を騙すことになります。したがって、陥れる事を得意としている人の必須条件として、嘘をつくことが上手いという事が挙げられます。
ただ、嘘をつくとはいっても無意味な嘘ではなく、頭で計算した上で打算的に嘘を上手につけるひとが当てはまります。ここぞというタイミングで、上手に人を騙す事が出来る人に対しては、陥れられる可能性があるため、注意が必要と言えます。
相手によって態度を変える
次に、相手によって態度を変える事を得意としている人があげられます。この様な人は、周りの人から信頼を獲得する事が得意で、相手の心の中に入り込む能力に長けている人と言えます。
この様な人は、言い換えると八方美人であるだとか、二心を持っているだとか、いい顔しいである、などと表現されます。また、上記の様な特徴を持った人も、他人の意見や立場に合わせて右往左往するというよりは、自身の信念や思想の実現のために、場面や状況に合わせて、打算的に立場や考えをころころと変えることの出来る人であると言えます。
陰口を言う
次に、陰口を頻繁に言っている人というのが特徴として挙がります。その中でも、ただ単にストレスのはけ口として陰口を叩くのではなく、陰口を叩く事も多分に打算的であり、陰口を言うこと自体が目的ではありません。
むしろその先に与える影響や状況の変化を予想し、自分に都合の良い状況を作り上げる事に長けている人物が特徴として、陥れる事も得意としていると言えます。
ずる賢い
又、必須条件とも言える特徴が、「ずる賢い」事です。人の性格の中で、実直で素直であり、まっすぐな心を持っている人にとっては、ずる賢く打算的に嘘をついたりすることは決して簡単な事ではありません。
ずる賢く立ち回れる人というのは、実直で素直に行動せず、物事を時に客観的に判断し、自身にとってもっとも都合が良くなる状況を予測し、その状況に至るまでの道すじをしっかりとシミュレート出来る特徴を持っていると言えます。
好印象を持たれる
他には、好印象を持たれる事があげられます。もちろん、好印象を持たれている人は全て、人を陥れる事に長けているという事ではありません。
前述の様に、人を陥れる事を得意としている人は、周りから好印象を持たれるような一面を持ちながらも、ずる賢く、相手にとって態度を変えながら嘘や、陰口を振りまいている人物と言えます。
一見真面目に見える
最後に、一見して真面目そうに見えるという事が挙げられます。こちらも上記の、好印象を与えやすいという特徴と本質的には同じと言えます。
つまり、一方ではさわやかに、気持ちの良い性格の持ち主であると思わせておきながらも、相手や状況に合わせて巧みにキャラクターを作り変える事で、相手を騙し、失敗に追い込む事が出来ると考えられます。
以上が、人を陥れる事が出来る人の特徴と言えます。もちろん、上記の要素に当てはまる人物が全員当てはまるという事ではなく、人を陥れる素質を持っていると、表現する方が正確です。
陥れる人の心理
それでは、ここからは陥れる人の心理について深堀りしていきます。決してポジティブな印象を持たない陥れるという行動には、どの様な状況、心理が絡んでいるのでしょうか。これは、人を陥れる事に対しての目標や、陥れた後の心理や状況の変化を追っていくと自然にわかるでしょう。
邪魔な人を排除したい
一つ目の心理としては、「邪魔な人を排除したい」という心理があります。自身の目指している先の状況において、邪魔者となるような人を排除する目的で、その相手を陥れる。という事が背景としてあります。
こういった人は、障害となる人がいた場合に、共存や共栄といった心理よりは、排除や払い落すといった攻撃的な心理に対しての親和性が高いと言えます。
相手のことが嫌い
次に、「相手の事が嫌いな人物である」という事が挙げられます。これは、上記の邪魔者を排除する心理と共通するところがあります。つまりは、自分の持つ空間を居心地の良いものにしたいがために、その際邪魔になるもの、又は嫌いな人物を排除する心理目的でターゲットと陥れようとします。
自分の身を守りたい
他には、「自分の身を守りたい」がために、相手を陥れる心理も存在します。これは、上記2点とは多少状況が違います。つまり、陥れるという行動が、攻撃や、打ち負かすための手段ではなく、自分の身を守るための手段として、相手を陥れるほかない、といった心理になります。
陥れる人への対処法
それでは、実際に前述したような、陥れる人の特徴が数多く当てはまり、その上その人の邪魔な人物として自分が存在していた場合は、どの様に対処するべきなのでしょうか。
ここからは、実際に陥れられそうになった場合や、相手に陥れられそうとしていると気付いた場合の対処法を、代表的な三つの方法をご紹介して行きます。
相手のペースに巻き込まれない
先ず一つ目の対処として大切なことは、相手のペースに巻き込まれない事です。あいてから投げかけられた言葉や行動を、素直にとらえるのではなく、その先の相手の狙いを予測し、相手のペースに嵌らないようにする事が肝要となります。
相手は非常に打算的でずる賢い可能性があります。まんまと相手の術中にはまってしまうと、うっかりしてると大きな不利益を押し付けられたりする可能性があるため、非常に危険と言えます。この様な場合は慎重に対処しましょう。
冷静さを保つ
また、常に冷静さを保つことも非常に大切です。相手はずる賢く嘘をつき、あなたに対しての周りの人を少しづつ味方につけ、あなたが冷静さを失い、落とし穴に落ちる事を期待しています。この様な場合に遭遇した際には、先ずは深く深呼吸し、冷静に自分がどういった対処をとるべきかを熟考し、行動にうつす事が大切となります。
相手を観察・裏付けをとる
3つめは、相手をしっかりと観察し、裏付けをとる事が大切です。物事の大局を見極めるには、客観的な視点が必要不可欠となります。あいての策略にはまってしまったと気付いた時には、もう成す術が無いと思いがちですが、そういった状況にこそ冷静に客観的にみると、予想外の抜け道から対処できるものです。
また、相手はあなたを陥れるために、いくつかの嘘を振りまいているはずです。しっかりと相手を観察し、相手が嘘をついていると裏付けが取れれば、こちら側の対処の方法はぐんと広がるはずです。
嘘を見抜くには
「陥れる」という行動と、相手を騙し、嘘をつくという行動は大体セットになっています。それでは、嘘を嘘と見抜くことが出来れば、相手から陥れられようとしたとしても、対処がしやすくなります。ここで、全てとは言えないですが、嘘をついている可能性が高いと見抜く方法をご紹介していきます。
相手の予想外な質問をする
人を騙す事を得意としている人は、状況から先の場面を予想し、誘導する能力に長けています。ですので、一つ二つ相手が予想し得ない質問を投げかけてみましょう。そうすることで、思わぬほころびが相手の方から出現する可能性があります。
予想外な質問が来ることで、相手はその場で回答を考えて返事する必要が出てきます。そのようなイレギュラーを作り出す事が大切です。
相手に積極的に話をさせる
次に、相手に思う存分発言する機会を与えましょう。すべきことは聞き役に徹するだけで大丈夫です。そうすることで、嘘をついている相手は、その嘘をさも本当の事の様に話すため、早口な口調になり、より一層嘘で着色する傾向があります。
その様な気配を感じたら、じっと話を聞き、矛盾点が無いか密かに考えましょう。そうすることで、きっと対処の瞬間が現れます。
「陥れる」を含む熟語
続いて、「陥れる」を含む熟語をご紹介して行きます。漢字というものには、ほぼすべてに熟語が存在し、熟語は漢字単体とよく似た意味で、違った表現が可能となります。「陥れる」の意味を理解するついでに、関連のある熟語もセットで覚えてしまいましょう。ここからは、代表的な熟語をいくつかご紹介して行きます。
欠陥(けっかん)
1つめは「欠陥(けっかん)」です。「陥れる」の漢字の頭に「欠ける」の文字をくっつけたこの熟語は、欠けて足りない状態を表す熟語として、広く使われています。
状態を表す熟語のため、「欠陥が見つかる」や「欠陥と見つける」といった使い方をするのが一般的です。この熟語は、人物といった生物に対しても、機械といった生産物に対しても使い、比較的使用頻度の高い熟語と言えます。是非覚えておきましょう。
失陥(しっかん)
次に「失陥(しっかん)」があります。これは、前述した「陥れる」の意味の中でも、基地や拠点を攻め落とすといった意味合いを持つ熟語になりますが、立場としては攻め落とす側ではなく、攻め落とされる側で使用するのが一般的です。
この事は「失う」という漢字が頭についているため、なんとなく予想を立てる事が可能ではないでしょうか。
用例としては、「あの基地を失陥した」や「南方の失陥地を取り戻した」といった使い方をするのが一般的です。この国では、現在は長い間城や基地を攻撃、占領されていないので、なかなか使う機会が無いでしょう。
陥落(かんらく)
最後に「陥落(かんらく)」をご紹介します。この熟語も、上記の失陥と同じ「攻め落とされる」や、「占領される」といった意味合いで使用する事が一般的です。ただ、城や基地といった軍事的な拠点のみではなく、例えば、選挙においての形勢の変化や、異性を口説き落とした際にも使用します。
また、陥落には上記の他に、「おちいる」、「おちこむ」と言った意味も含まれています。これは、そのまま地形の変化に対して使用され、文字通り「落ちて入る」事に対しても使用されます。
「陥れる」の英語表現
ここまで、関連した熟語をご紹介して行きましたが、最後に英語表現も合わせてご紹介して行きます。この様に、ある言葉を学習する上では、よく似た関係する熟語や、よく似た英語表現などを関連付けて一緒に覚える事は非常に効率が良いため、この英語表現まで一緒に覚えていきましょう。
trap
先ず、一番シンプルであり、馴染みのある英語表現である「trap」をご紹介して行きます。「trap」は、名詞では罠、トラップ、落とし穴という意味になり、動詞では、とじこめる、出られなくする。といった意味になります。
この「trap」の英語表現は、やや形式ばった表現になります。文語調で、少し丁寧な印象を受ける表現となります。
ensnare
次に「ensnare」の英語表現をご紹介になります。これは主に動詞として、罠にかける、誘惑するといった意味があります。
「ensnare」という単語を理解するには、「en」と「snare」に分解して理解すると分りやすいです。「en」には、名詞や形容詞にくっつけて、「~にする」や「~ならしめる」といった動詞に変化させることが出来ます。一方「snare」には、名詞で罠、誘惑といった意味があります。
reduce somebody to despair
次に英語の熟語表現となる例文ですが、「reduce somebody to despair」とも表現できます。これで、「絶望に陥れる」という意味になります。これは熟語表現ですので、「reduce somebody to despair」でそのまま覚えてしまいましょう。
英語表現では、代表となる3つをご紹介しました。どれも英語では重要単語、例文で、応用も利くものばかりなので、この際にしっかりと覚えてしまいましょう。
「陥れる」は『騙して失脚させる』という意味
以上が、「陥れる」の言葉意味、例文のご紹介になります。普段の生活の中で何気なく見聞きし、使用している言葉もしっかりと深堀りして意味を理解すれば、新しい気付きや対処にも繋がります。「陥れる」の言葉を使用する心理は、大体がネガティブなもので、攻撃的な意味を含んでいます。ですので、実生活で使用する際には十分に注意するようしましょう。