嘘も方便の意味とは?
嘘も方便とは多くの人が聞いたことがあり、なんとなく意味も知っているはずです。ザックリいえば基本的に嘘は良くないことですが、ケースによっては嘘も有効的な場合もあるというような意味あいです。
よくよく考えてみると、誰もが子供の頃から親の都合の良い嘘によって育てられているはずです。普通、親は子に「嘘は泥棒の始まり」だとか「嘘はついてはいけない」といって教育され、子供が嘘をついたら叱るのが普通です。
ところが、親は子供を教育する際によく嘘をつきます。一般的なのがサンタクロースの問題ではないでしょうか。
子供の頃、サンタクロースの存在を信じ込まされ「良い子にしてないとサンタさんからプレゼントがもらえない」といった類のことを言われた人も多いことでしょう。
また、男の子がテレビのヒーローに憧れているのをいいことに「野菜も食べないとヒーローみたいになれない」など、子供の好き嫌いをなおすことに用いられることもあります。
そういった、嘘は良くないということとは矛盾した使い方もされる嘘も方便ですが、その嘘も方便とは具体的にどんな意味があり、使い方や由来などについて詳しくご紹介していきます。
便宜的手段
嘘も方便を用いる目的には、その場を丸く収めるためやスムーズに物事を進めるためなど、便宜的手段として嘘を利用する意味があります。
例えば、言うことをきかない子供に対して小さな嘘をつき、怖がらせて大人しくさせるという方法を親はよく使います。ビジネスでも、わざと相手に都合の良い言葉を使ってやる気にさせたり、不安を取り除きその気にさせたりといったことにも用いられます。
つまり、嘘をつくことによって何かを良い方向に持っていく、あるいは都合の良い方向に向けるための便宜的手段として嘘も方便は使われます。
「方便」の意味
そもそも嘘も方便の「方便」にはどのような意味があるのでしょうか。実は嘘も方便とは仏教用語で、方便というのは人の教えのために使われる便宜的な手段なのです。
もともとは仏さまの教えによって人々を導く言葉に由来していて、現在では「上手い言い方」のようなニュアンスで多くの人に認識されています。ものは言いよう、という使われ方をするのも一種の方便です。
嘘も方便の類語
嘘も方便には、いくつか似たような意味を持つことわざもあります。嘘も方便と似た意味の類語は「嘘も重宝」・「嘘も誠も話の手管」・「嘘も追従も世渡り」・「嘘は世の宝」などです。
どれも本当のことだけでは世は上手く渡ることはできないため、ときには嘘をつくことも大切だというような意味です。仏教の教えでもある嘘も方便。人を欺くためではなく、導くための嘘ということです。
嘘も方便は「詭弁」とは違う
物事を良い方向へ導くために嘘を用いることが嘘も方便といっても、それは詭弁とは違います。詭弁とは人を言いくるめて騙すということであり、方便にはなりません。本来であれば嘘をつくことは悪いこととされていますが、詭弁においての嘘はまさに悪い意味での使い方となります。詭弁を用いて人を騙すという行為は詐欺にも繋がります。
嘘も方便の由来・語源
仏教に由来している嘘も方便ですが、その由来についてや、どのようなことが語源となっているのでしょうか。人の真の道筋を教える仏さまが、悪い行いであるはずの嘘を用いた教えである嘘も方便の由来や語源をご紹介します。嘘も方便の由来や語源を知ることで、人を騙すための嘘と方便という意味での嘘の違いも理解できることでしょう。
仏教用語の「ウパーヤ」
方便の語源は、サンスクリット語の「ウパーヤ」で英語表記では「Upaya」です。目的に近づくという意味があり、その語源から嘘も方便とは目的に近づくための嘘ということになります。
仏教においての目的とは、悟りの境地でもあり、方便の語源であるウパーヤは悟りを体得することへの手段のために欠かすことのできないものとされています。
仏教用語の「有相方便」
嘘も方便の由来には「有相方便」という仏教用語だとされています。有相とは有の相と表記しているように形が有るものという意味です。
仏さまの教えを形有るもので表現することで真実がわかりやすく、より目的に近づくことができるということです。例えば教えを説く仏さまの絵画や仏像は、本物の仏さまではないものの、限りなく仏さまに近い存在という意味あいです。
「嘘も方便」を使った例文
嘘も方便の由来や語源が仏教用語とはいえ、べつに嘘も方便で用いられる嘘が説教のようなものばかりということではありません。普段から何気ない会話で嘘も方便という意味に当てはまる嘘は活用されているはずです。
例えば、会話の中で相手を気遣ったり、良い方向に導いてあげるために、あえて嘘をつくケースです。これは人を良い道に導くという、嘘も方便の由来や語源である仏教用語にも通ずるといえます。
そこで、普段どのようなケースで嘘も方便が活用されているのか例文でご紹介します。ご紹介する例文を自分の生活や人間関係に当てはめてみてください。
例文①「最近太っちゃって」「そんな風に見えないわ」
女性同士の会話に多いケースですが、女性は体重を気にするため「最近太っちゃって」ということを友人や知人に話すことがあります。それに対し多くの女性は「そんな風に見えないわ」と返します。
この例文は嘘も方便に当てはまるケースがあります。痩せている女性が「最近太っちゃって」と言ったことに「そんな風に見えないわ」と言うのは嘘でも何でもありません。しかし本当に太っている女性が「太っちゃって」と言った場合、その女性に「本当だね」とは言えないはずです。
本当は太っていると思っているにも関わらず「そんな風には見えないわ」と言うのは、相手を気遣うための嘘であり便宜的な手段といえるでしょう。
例文②「手作りクッキーどうだった?」「すごく美味しかった」
手作りクッキーを誰かにプレゼントして、その感想を訊いた場合の例文です。クッキーをあげた人が「手作りクッキーどうだった?」と訊ね、それに対し「すごく美味しかった」と返す場合も嘘も方便が活用されている可能性があります。
まず、そのクッキーが本当に美味しかったのであれば、美味しいという表現は正しいことになります。ですが美味しくなかった場合はどうでしょう。
クッキーが本当は美味しくなかった場合には「すごく美味しかった」は嘘になります。これも相手を気遣う嘘ですし、その嘘に気を良くすることで、またクッキー作りに挑戦する気にもなるでしょう。これは方便の語源でもある、目的に近づくということにも繋がります。つまり、美味しいクッキーを作るという目的に導いてあげるということです。
例文③「飲み会に来なかったから盛り上がらなかったわ」
仕事関係や人間関係では、社交辞令がよく用いられますが「飲み会に来なかったから盛り上がらなかったわ」というのも、まさに社交辞令であり嘘も方便に当てはまる可能性がかなり高い例文です。
もしかしたら本心かもしれません、しかし「あなたが来なかったから盛り上がらなかった」ということを言われれば大抵の男は嬉しいものです。それをこの女性は知っているといえます。
つまり、飲み会は盛り上がっても「盛り上がらなかった」という嘘をつくことで、飲み会に来れなかった人を気遣っているし、自分の好感度も上げることに繋がります。人間関係を円滑にするためには有効な嘘も方便といえるでしょう。
「嘘も方便」を使った具体的場面の例
嘘も方便は具体的にどのような場面で使われているのでしょうか。人間関係を良好にするためには必須ともいえる嘘も方便ですが、普段は意識せずに使っていることが多いため、実際にどういう場面で使っているか思い出せない人もいるのではないでしょうか。
そこで、普段何気なく使っている嘘も方便が、具体的にどのような場面で使われているかの例をご紹介しましょう。
嘘も方便の場面①相手を気遣って本心を言わない
嘘も方便が使われる多くの場面は、相手を気遣うときです。嘘というからには本当のことを言っているわけではありません。そういう意味では、本心を言わないということになります。
例文でもご紹介したように、もし太っている女性に対し太っているという本心を言えばその人は傷付きます。そこで、本心を隠し「そんなことはない」と言ってあげることで相手を気遣ってあげることになるのです。
つまり、自分の本心を言わず、相手を気遣うためにあえて嘘をつくときこそが嘘も方便を使っている場面なのです。
嘘も方便の場面②言わなくてもいいことは言わない
嘘も方便を使う場面として、言わなくていいことは言わないというケースもあります。それは、相手を気遣うという意味にも繋がりますが、言う必要のない言葉を避けたり濁したりするということです。
こういう場面は多くの人も経験しているはずですが、誰かがコンプレックスを打ち明けてきた場合、それに対し、自分もそう思っていたとしても、あえて「わからない」また「気にならない」といったニュアンスで流す場面です。
太っている人に「太っていない」というのも気遣いの嘘ですが、あえて「太っている」とも「太っていない」とも言わないことも嘘も方便を使う場面といえるでしょう。
嘘も方便の場面③相手をかばって自分が悪者になる
嘘も方便を使う場面に、相手をかばって自分が悪者になるというケースもあります。例えば、誰かが犯したミスを自分がしたことにするときです。
本当は自分がやったことではないことを、自分がやったと言うのは嘘です。つまり、嘘をつくことで相手をかばい助けることになります。誰かを助けるための嘘も方便を使う場面ということです。
「嘘も方便」は英語でどう表現する?
方便の語源であるウパーヤは英語表記にするとUpayaとなりますが、嘘も方便そのものを英語ではどう表現するのでしょうか。英語では日本語のように嘘も方便が単語としてあるわけではないため、英語での使い方によって変わってきます。
英語で嘘も方便のポピュラーな表現は、「the ends justify the means」・「The end justifies the means」となります。
この英語表現は「良い結果(目的)のためにはどういう手段を使っても良い」や「結果のための手段は正当化される」といった意味があります。ちなみに英語でendsは結果、meansというのは手段という意味です。そして嘘をつくことを英語では「tell a lie」となります。
嘘も方便を履き違えない
嘘も方便は、その場の状況を好転させたり、人間関係を円滑にしたりするために用いられる場合もあることをご紹介してきましたが、注意も必要です。誰もが知っているように、本来は嘘をつくことは良いことではないためです。
嘘も方便の意味は、嘘をついても良いということではありません。その場の問題を解決するための便宜的処置や、相手を気遣うためにあえて嘘を利用しているということを認識しておきましょう。自分だけの都合のためや、他人を欺くためにつく嘘は方便にはならないということです。
悪い意味での嘘と、方便としての嘘の違いをしっかりと理解したうえで、しかるべきときに方便としての嘘を用いてその場を切り抜けましょう。
人を欺くための嘘
自分の利益のために誰かを騙す嘘は、人を欺くための嘘ということになります。つまり詐欺です。世を賑わわせている振り込め詐欺がその例として挙げられます。息子と偽って老人に電話し、トラブルなどでお金が必要だという嘘をついて言葉巧みにお金を振り込ませるという手口です。
この振り込め詐欺は極端な例ですが、そうではない何気ない日常でも自分の都合で人を欺いている場合もあります。例えば仮病を使って学校や仕事を休んだり、誰かとの約束をスッポかしたりするのも欺くための嘘といえるでしょう。
仮病を使う程度のことは多くの人が経験があることで、誰かのために会社を休む必要があるなどケースによっては嘘も方便となる場合もあります。しかし、基本的には自分の都合のためにつく嘘は全て人を欺く行為です。
嘘も方便の正しい使い方を知っておこう!
今回は嘘も方便について、その意味や由来・語源、英語や例文などもご紹介してきました。嘘も方便についてまとめると、嘘をつくことは本来は良いことではないものの、その場で起きている問題を解決するための便宜的な手段としてや、相手を気遣うための手段として用いるのが嘘も方便ということです。
その嘘も方便の意味や使い方を正しく理解し、必要に応じてときには嘘も使い分けるようにしましょう。真実だけでは乗り切れない場面や、相手を傷付けてしまうケースがあるのも確かです。そのための手段として嘘も方便があるということです。
そんな嘘も方便の正しい意味や使い方をしっかり理解して用いることで、きっと学校やビジネスなどでの人間関係も上手くいくことでしょう。本来は良くないことである、嘘で人間関係を円滑にする不思議なことわざ、嘘も方便を用いて快適な生活を送ってみてください。