駆使の意味とは?
まず、駆使の読み方ですが「くし」と読みます。駆使という言葉には主に2つの意味があります。1つは「追い立てて使うこと」という意味と「こき使う」という意味があります。この意味での駆使という表現は人権を尊重する現代社会に於いて、かなりネガティブな意味合いが強いと言えるでしょう。
また身近な例で言えば、現在日本に複数存在している所謂「ブラック企業」と呼ばれる企業の従業員も、人権の迫害まではされないものの、生活の為に企業に酷使されているケースがしばしば見られ、問題視されています。
そのような現実から、駆使の意味の1つである「追い立ててこき使う」または「人権を尊重せずに酷使する」という意味はネガティブな駆使の意味として現代でも使われています。
ポジティブな意味での駆使
駆使のもう一つの意味に「使いこなす」という意味があります。時代が進むにつれて、科学も進歩して、コンピューターやスマホといった便利な機能を持つツールが誕生しました。これらのツールは非常に便利ですが、その反面、上手く操作することが出来るようになる為にそれなりの知識が必要です。
それらの知識を得て、コンピューターやスマホといった比較的困難なツールを自由に操作、または操ることが出来る様子を「最新のコンピューターを駆使する」のように表します。
現代社会に於いて、駆使という言葉は、一般的に後者のポジティブな意味で使われることが多いと言えるでしょう。
駆使の類語
続いて駆使の類語にあたる言葉を紹介します。先述の通り駆使という言葉には非常にネガティブな意味もあるため、ポジティブな意味での駆使を使う場合、場所や状況によっては駆使の類語を使って物事を説明した方が無難なケースも少なくないと言えるでしょう。
ここでは「追い立ててこき使う」という意味での駆使の類語と、「使いこなす」という意味での駆使の類語をそれぞれ説明します。
酷使
「酷使」という言葉は「駆使」の類語として現代でも頻繁に使われている言葉だと言えるでしょう。「酷使」の「酷」という言葉の意味には「容赦がない」「厳しい」また「酷い」という意味があり、「酷使」の意味は「人や物を厳しく、容赦なく使う様子」を意味します。
「酷使」という言葉は名詞ですが、多くのケースで「酷使する」という動詞の終止形に変形させて使われることが多く見られます。
「酷使」という言葉はやはりネガティブな意味が強く、使い方の例として「あの企業は社員を酷使することで有名だ。」または、「彼は当時サッカーに夢中で、体を酷使した結果致命的な怪我を負ってしまった。」のような使い方をします。
隷属・隷従
「隷属」という言葉も「駆使」の類語だと言えるでしょう。「隷属」の読み方は「隷属」です。隷属の意味は「他からの絶対的な支配により、言いなりになること」という意味があります。これは良く戦後に植民地とされる国の人々などに対し使われる言葉です。
また「隷属」の類語に「隷従」という言葉がありますが、意味は殆ど同じです。「隷従」の読み方は「れいじゅう」です。
使いこなす
現代に於いて「使いこなす」という表現は「駆使」の典型的な類語だと言えるでしょう。先述でも少し触れましたが「使いこなす」の意味は「便利な近代的ツールなどを、知識や経験を積むことによって、思いのまま十分に使う」という意味があります。
日常生活でも「コンピューターを使いこなす。」また「SNSを上手く使いこなす。」或いは「高齢者にとって最新のスマホを上手く使いこなすことは困難だと言える。」など比較的良く使われる言葉だと言えるでしょう。
意のままに操る
「意のままに操る」という表現も「駆使」の類語だと言えるでしょう。「意のままに」の意味は「自分の意志通り」または「自分が望むように」という意味があります。例として「彼は優秀だが世間知らずの一面があるので、意のままに操ることは比較的容易だろう。」のような使い方が出来ます。
または「彼の有名なスティーブ・カウフマンは語学に非常に長けており、20か国の言葉を意のままに操ることが出来る人物として有名だ。」このような例文も考えられます。
その他に「駆使」を「こき使う」という意味で捉える場合の類語として「馬車馬のように働かせる」「使役」などがあります。「馬車馬」の読み方は「ばしゃうま」で、「使役」の読み方は「しえき」です。
また「使いこなす」という意味での駆使の類語として「巧みに使う」「役立てる」「自由自在に使う」などの類語が考えられます。
駆使の使い方・例文
続いて、駆使の使い方について例文を紹介しながら説明します。現代社会に於いて駆使という言葉は特にビジネスシーンにで良く耳にする言葉だと言えるでしょう。但し、ビジネスシーンで使う場合もポジティブな意味で使うケースと、ネガティブや皮肉の意味合いを込めて使われるケースがあります。
駆使は状況や場面に応じて意味が異なる
ビジネスシーンで多く使われる駆使ですが、駆使という言葉が複数の意味を持つという性質があるため、駆使という言葉は状況や場面に応じて意味が異なります。その為、その時の状況や場面によって上手く使い分ける必要がある言葉だと言えるでしょう。
例文①
ビジネスシーンに於いて、駆使を使った例文として「我が社は最新のAI機器を駆使して、この業界のパイオニアになるつもりだ。」また「あらゆる方法を駆使して、より良い製品を作ることが弊社の強みです。」などの使い方が考えられます。
この2つのビジネスシーンに於ける駆使の使い方は、駆使という言葉をポジティブに使った例文の一つだと言えるでしょう。
例文②
同じくビジネスシーンに於いての駆使を使った例文を紹介しますが、これらは先述の例文と異なりネガティブな意味や、皮肉めいた意味合いが強い使い方と言えるでしょう。例えば「あの企業は社員の人権をほぼ無視して、社員を奴隷の如く駆使している。」のような例文が考えられます。
また「ここまで会社に駆使されているにも関わらず、こんな薄給では納得できない」のような使い方も出来ます。
この様に同じビジネスシーンでも、置かれた環境や地位によって駆使という言葉の意味はポジティブな意味とネガティブな意味に別れます。
例文③
次に「物や技術」に関してして駆使という言葉を使う際に例文を紹介します。この場合も状況によって意味合いが変わってくるので注意しましょう。例えば「彼は得意のドイツ語を駆使して、上手いビジネスの立ち回りをしている。」のような例文が挙げられます。
あるいは「彼女はありとあらゆる最新の機器を駆使して、皆が思いつかないようなビジネスアイデアを出すことに卓越している。」または「彼は弁護士として、法に関するあらゆる知識を駆使して様々な実績を残している。」のような使い方も出来ます。
例文④
「駆使」という表現は時として日常会話でも使われることがあります。例えば仲の良い友人同士で、少し皮肉っぽく「彼女はありとあらゆるダイエット商品を駆使して、ダイエットに挑戦しているが、成功した試しがない。」このような例文が挙げられます。
駆使の由来・歴史
ここでは「駆使」の由来や歴史に関して詳しく説明します。「駆使」という漢字は見て分かるように「駆」という漢字と「使」という漢字が組み合わさって成り立っています。ここでは駆使という言葉の由来を説明するために、駆使の漢字の成り立ちを説明します。
由来
「駆使」の「駆」の読み方は音読みの「ク」が使われていますが、一般的には「駆」は訓読みで使われることが多い漢字です。「駆」の訓読みでの読み方は「か(ける)」です。この言葉の本来の意味は「馬を早く走らせる」という意味があります。
また戦国時代では「駆け武者」という言葉があり、読み方は「かけむしゃ」で意味は「敵陣に向かい、一気に駆け抜ける勇敢な武者」という意味があります。
「駆」を訓読みで使った言葉には「駆除・駆逐・先駆」などがあります。読み方はそれぞれ「くじょ・くちく・せんく」と読みます。
そして「駆使」の「使」も同様に音読みの「シ」という読み方が使われています。「使」の音読みの意味には「他人を自分の為に使わせる」という所謂「使い人」や「召し使い」などを表す際に使われてきました。当時の正確な日本語表記は「使ひ人」ですが、読み方は同じです。
歴史
「酷使する」という表現がありますが、これは古くは約20万年前の古代ギリシャ時代から、1862年の「奴隷解放宣言」がエイブラハム・リンカーンによって配布されるまで長期にわたり続いてきた「奴隷制度」と深く格関係しています。
「奴隷解放宣言」が配布されるまで、人権を全く無視した「奴隷の所有」や「奴隷貿易」が世界各国で頻繁に行われていました。駆使の意味の1つである「追い立ててこき使う」という意味は、言い換えると「人権を無視して、人を酷使する行為」と言い換えることが出来ます。
「奴隷解放宣言」によって「人を酷使する行為」は当然法律によって制限されていますが、現代でも中東エリアを中心に約4500万人の人身売買による奴隷被害者がいるとの報告がされています。
駆使の英語表記
「駆使」と全く同じ意味を持つ英語は存在しません。何故ならば駆使の意味は明確に2つに分かれており、それらの意味を1つの英単語で表記することは不可能だと言えるからです。但し「追い立ててこき使う」という表現と「使いこなす」という表現は様々な形で英語に言い換えること出来ます。
「追い立ててこき使う」という意味での英語表記
「こき使う」という言葉を英語で表現する際には注意が必要です。何故なら、一歩間違えると非常に差別的な言葉になってしまう可能性があるためです。これは、やはり欧米特有の「奴隷制度」という歴史が背景にあるからだと言えるでしょう。
まず、比較的よく使われるフレーズで「One works somboday too hard」(〇〇は△△をこき使っている) この言い回しは差別的な意味はなく例えば「The president of this company works his secretary too hard」(この会社の社長は自分の秘書をこき使っている)などの表現で使われます。
またこの場合「work」という単語を「drive」と言い換えて表現することも可能です。例文として「It seems to be like this business plan drives me too hard」(私はこのビジネスプランの為に、過度の労働を強いられているようなものだ。)などの表現方法があります。
更に強い意味合いで「こき使う」という言葉を英語で表現する際には「slavery」という言葉が使われます。「slavery」は一見形容詞のように見えますが「奴隷制度・奴隷の如く服従させること・骨の折れる仕事」を意味する不可算名詞です。
使い方の例として「This kind of business is totally slavery work」(この類のビジネスは本当に苦労が多く骨の折れる仕事だ) または「You need to choose to be resistance or slavery」(酷使されるか抵抗するか選ぶ必要がある)のような使い方をします。
「使いこなす」という意味での英語表記
「使いこなす」という意味での「駆使」を英語で表現する場合、様々な表現方法があります。単純に「使う」を意味する「use」に「full」を加え「full use」も「使いこなす」という意味になります。また「use something effectively」(〇〇を効果的に使う)のような表現も可能です。
また動詞として「駆使」を英語で表現する際には「utilize」という英語での表現も可能です。いくつか例文を紹介します。「In order to use the latest Iphone effetively, you need some knowladge」(最新のIphoneを使いこなすには、ある程度の知識が必要だ。)
または「By making full use of IT technology, we finally acheved to find the best solution」(最新のIT技術を駆使することによって、我々は遂に最適な解決方法を見つけることが出来た。)のような例文が考えられます。
もう一つの例文として「It is quite important to utilize personal connections in any business」(どのようなビジネスに於いても人脈を駆使することはとても重要だ。)のような使い方が考えられます。
駆使とは「追い使うこと」と「使いこなす」という2つの意味
「駆使」という言葉は如何にも日本文化が籠った日本語らしい言葉だと言えます。先述の通り「駆使」に当てはまる英語は存在しません。これは「駆使」という言葉に「追い使うこと」と「使いこなす」という2つのかなりかけ離れた意味が存在することが理由だと言えるでしょう。