お笑いで使われる「天丼」の意味
お笑いで使われる天丼の意味は、芸人さんがよく言うギャグやフレーズ、動き、単語などを一度使った後に、話の流れに合わせて再び使用して笑いを取る手法で、繰り返し何度か同じ単語を使ったりすることです。文章で解説するには限界があり、分かりにくいかも知れませんが、とにかく天丼はたいていの芸人さんが持っているお笑いの技と言えるでしょう。
ボケや単語を繰り返し使う手法
天丼がボケや単語を繰り返し使う手法と言いましたが、具体的にどういう手法かということを解説します。少しややこしいですが、しっかり把握すれば、会話の中に取り入れて日常会話にも使えます。
例えば、ある人が何かキーワードになる言葉を言ってウケた場合、すぐに同じ言葉で返す手法と、そのキーワードはひとまずスルーして、そのまま会話を続け、忘れた頃に再び先ほどウケたキーワードを登場させる手法など、状況によって、天丼を出すタイミングが違い、周りの状況を見ながら一番使えるタイミングを判断します。
お笑い用語「天丼」の由来
天丼の由来というのは、和食屋などで食べる天丼とお笑いの天丼では、意味も由来も違います。そこで、お笑いの天丼についての意味と由来を調べてみました。ただ、検索して出てくる由来には、どうしても腑に落ちないものがあり、必ず腑に落ちる由来があるはずなので、それを見つけるために、色々と調査してみましたので、そちらの由来を解説しましょう。
海老が二本のっている事から
お笑い用語の天丼の由来を検索すると、必ず「天丼にはエビが二本のっているから」と出てきますが、この説明で由来の意味が分かるでしょうか。どこを見てもこの説明以外には見つかりそうにありません。この二本のっているというのは、最近では少なくなりましたが、昔は天丼の海老は二本というお約束になっていたようです。
この「お約束」と言うのが、お笑いで言う天丼の事なのです。もっと明確な意味や由来があるはずですので、さらに調べてみました。すると天ぷらを揚げる時に、「天ぷらが一度沈んでから、また上がってきて、もう一度沈んで上がってくるから」という説を見つけました。天ぷらの揚げ方のようですが、これが何となく腑に落ちます。
お笑いの天丼の意味としては、「繰り返して使う」ことが強調された用語ですので、こちらの方が由来としては、適格に解説せれていると言えるでしょう。ただ、これは海老に限った事ではありませんから、また少し違うのかも知れません。とにかく海老が二本のっている事がお約束という意味で、お笑いの笑いにおける基本のお約束が、天丼の由来になります。
お笑い用語「天丼」の使い方
お笑い用語の天丼の意味が分ったら、次は使い方で、このタイミングでウケるウケないが決まってきます。一つのネタで、キーワードを決めたら、さりげなく天丼を使うという使い方が一番ウケるようです。例えば、天丼ネタをよく使う芸人として有名なのは、タカアンドトシの漫才です。1本のネタの中に、天丼とされるキーワードがいくつも入ってきます。
M1グランプリ2009で使ったネタの「熱血先生」の中では、キーワードが「腹減ってんだろ」と、「こんぺーです」というのが主な天丼キーワードです。「こんぺーです」はオチにも使われています。タカのツッコミが炸裂して、テンポのいい漫才の中で使われるために天丼と気づかれないように上手く漫才として成立していて、タカトシの技が光ります。
バリエーションを駆使した使い方
バリエーションを駆使した使い方というものは、天丼の中にも種類があり、その種類を組み合わせての使い方なのか、主な天丼を繰り返し使い続ける使い方なのか、全く違う天丼を生み出すのかと、様々な使い方が出来ます。
バリエーションを駆使するには、天丼の種類を把握している必要があり、その組み合わせ方を、いくつか試してみるという実践も必要になってきます。通常の天丼を何回か使って、その後に部分天丼や、相方からの天丼返しなど、組み合わせ方は無限にあり、その使い方で漫才師やコントのメンバーの、技量が測られるため、芸人さんたちは必死に工夫します。
お笑い用語「天丼」のバリエーション
天丼の使い方としてのバリエーションは数々あり、それぞれの場面で使い分けてるようです。天丼は面白かった同じ単語や動作を繰り返して笑いを取るものですが、その単語や動作の取り方でも使い方が変わってきます。
その数ある天丼のバリエーション別に、細かく解説していきますが、正解というものは無く、ウケるかウケないかという事が大事なわけで、客席側や全体の空気、認識の違いによっても変わってきます。また、天丼をしたいがために無理矢理ネタを引っ張るのは、ウケない原因を作りますので、「さりげなく」を重視することに、注意しなくてはいけません。
通常の天丼
通常の天丼を動きで表した天丼です。さんまさんの前に立ちはだかって、カメラから消すという動作を、稲垣吾郎さんが最初にして、その後に加藤浩次さんが同じ動作をして、笑いを取るパターンです。通常の天丼とは、最初のキーワードを数回繰り返すことですので、これで天丼は成立しています。後はその動作にスムーズに入れているかが鍵になります。
部分天丼
部分天丼というのは、先ほど解説した天丼の内容と同じなのですが、通常の天丼キーワードから、もっと短く単語や文章の一部分を切り取って、話に加えて笑いを取ることで、これも忘れた頃に使うと効果的です。
例えば、前記のタカトシの漫才を例に挙げますが、その中で、トシが「漫才中に飯食いに行くやついるか」に対して、「イルカって食べれるの?」とタカが聞き返すボケをするのが「食べる」というキーワードの部分天丼になります。これもテンポが大事で、タカアンドトシの2人のテンポは速いですから、部分天丼と気づかないうちに笑いが取れています。
天丼返し
天丼返しというのは、笑いが取れたキーワードを最初に使った人ではなく、他の人が同じキーワードを使ってもう一度笑いを取る手法を言い、漫才ではボケの人が同じキーワードを使って反対にツッコミをする時にも成立します。
天丼返しの手法を最近よく使っている芸人では、漫才師の笑い飯で、キーワードを使って全く違うストーリーを作り出していますので、長い天丼返しになるので、天丼返しとは分りにくいですが、間違えなく天丼返しです。「M-1奈良県立歴史博物館」と検索すると、ユーチューブで見れて、5分10秒あたりから天丼返しが始まり、そちらで確認出来ます。
天丼外し
天丼外しというのは、何度か天丼を繰り返し、次も同じキーワードを言うと思わせて、全く違うフレーズを言って笑いを取る手法で、これも、タカアンドトシが良く使う手法です。タカアンドトシの場合は、ツッコミが天丼になる事が多く、有名なところでは「欧米か」ですが、オチで外すネタもあったり、タカがツッコんで天丼外しをするパターンも見られます。
また、サンドイッチマンのコントでもよく使われている天丼ですが、「薬局」というコントで、始めは普通に店主と客のやり取りがあり、そのやり取り中に店内放送から、キーワードとなる「とみざわたけし」という言葉が流れます。また会話になり、また店内放送で「とみざわたけし」が流れ、最後のオチに「まつもときよし」が天丼外しに使われています。
天丼落語
落語の世界では、天丼落語と言われるくらい、落語は天丼で成り立っていると言えるでしょう。特に、古典落語の「天狗裁き」は、昔からいろんな落語家さんが語ってきた噺で、ユーチューブでも見られます。どんな夢を見ていたかというキーワードで、天丼が使われ、嫁さんは殺せと言い、隣人とは喧嘩になり、大家さんは出て行けと言い出します。
家を明け渡す事を拒否したために、今で言う裁判所の奉行所での裁きとなり、御奉行さんまで、どんな夢だったのかを聞きたがる始末で、見ていない夢の話を出来るはずもなく、結果庭の木にくくりつけられ、吊されることになります。
すると、たまたま奉行所の上空を飛んでいた大天狗が、理不尽な当人の縄をほどいて鞍馬山まで連れて行き、助けた事になるのですが、そこでも大天狗が夢の話を聞きたがるも言えず、大天狗の機嫌を損ねて、拷問に掛けられているところで、嫁に「一体どんな夢見たん?」と起こされ目が覚めるという噺です。
少し長い噺ですが、「見ていた夢を知りたい」というキーワードが、繰り返される天丼で成り立っています。落語には、他にも天丼を使用した噺が数多く存在します。古典落語の中でも、オチの部分に使われる事もあり、古くから天丼は、落語には無くてはならない手法であると言えるでしょう。噺家さんによって、天丼の使い方が、それぞれ魅力的です。
天丼以外のお笑い用語【類似編】
ではここで天丼以外でも、似たような使い方をするお笑い用語をいくつか挙げてみます。お笑いの用語の中には、使い方が似た様なものが多く、これを何と断定付けすることは難しいですが基本、笑いを取るための手法になりますから、その辺りは曖昧でも構わないようです。では、ボケやツッコミはお分かりでしょうから、他の用語を見てみましょう。
かぶせ
かぶせとは、天丼と同じ扱いをされる用語で、やはり相手のボケたキーワードと、同じキーワードを重ねる事で、人が話そうとする時と同時に、同じキーワードを口出しをして、声をかぶせるという使い方をしても構いません。ただ、かぶせの場合は、せいぜい使っても2回まででしょう。あまり何度も使っていると、うるさがられます。
伏線の回収
伏線の回収という用語は、あまりこれを実践している漫才師は少ないかも知れませんが、伏線の回収という技術は、前半の話に何も意味が無いように思わせておいて、後半でその前半の話が活きてくるというもで、ナイツの伏線の回収には、凄まじいものがあり、天才的なネタ作りが見受けられます。
色々なタイトルで伏線の回収をしていますが、特に面白いのが「野球の話」です。前振りとされる時間がかなり長いですが、全て後半の寿限無で回収されています。これほどの技量を持った漫才師は他に見当たりません。見事な話術とテンポで完全に惹きつけられるでしょう。前振りではなく、完全に作り上げられたネタでした。
天丼以外のお笑い用語【前振り編】
漫才や落語には、必ず本題に入る前に観客を惹きつけるための時間が必要です。これは、本題にスムーズに入るための前振りになりますが、長すぎても飽きられてしまいますので、適当な時間というものもあり、それが漫才師や落語家の見せ所でしょう。また、天丼にも関連してくる前振りは重要ですので、その用語について解説します。
つかみ
前記しましたように、客席の気持ちを舞台に集中させるための前振りです。「つかみはOK」とか、ギャグにしてしまった芸人さんもいましたが、このつかみが上手く出来ていないと、本題に入っても集中してもらえない恐れがありますので、ちゃんとつかみで手応えを感じてから、本題に入るべきでしょう。
まくら
「まくら」というのは、主に落語で使われる用語で、漫才やコントなどの「つかみ」と同じ扱いになります。落語の場合は、本題がしっかりと出来上がっていますので、まくらでその落語家さんの色が出ます。まくらについては、長い人や短い人、十人十色です。本題の内容に関連したまくらを使う人もいれば、全く本題とは関係ない世間話から入る人もいます。
お笑い以外の「天丼」
お笑い以外の天丼には、前記の通常の天丼でも紹介しましたが、稲垣吾郎さんがさんまさんの前に立ちはだかるという、動きの天丼です。他にも何があるのかと探してみると、意外と日常にも溢れていることがあるのです。
特に関西地方では、普段の友人との会話などにも含まれています。関西以外の方には分かりにくいでしょうが、関西人には天丼は、会話の中で笑いを取ることは常識とまで言われます。ただ、天丼が普段の会話で成立するには、その場の人たちが全員で天丼のキーワードを認識している事が重要になってきます。
2ちゃんねる
2ちゃんねるでの天丼のスレッドは、食べる天丼の店「てんや」の情報が盛りだくさんの中に、お笑いの天丼を、とても客観的に見てコメントをしているスレッドもあり、2ちゃんねるでは結構好き放題に投稿されています。しかし、やはり食べる天丼についてのスレッドが圧倒的に多いですから、お笑いの天丼評価を探す方がなかなか難しいようです。
お笑いの天丼はボケや単語を繰り返し使うこと
お笑いの天丼についての解説はお分かり頂けたでしょうか。日常の会話の中に取り入れると、会話が盛り上がる天丼ですが、使いすぎるとクドいという印象も与えてしましますので、やり過ぎには注意が必要です。
しかし会話を楽しくするには、使ってもおもしろいでしょう。関西人に限らず、話のうまい人は、少なくとも天丼を活用しているようですし、関西人の中では天丼を使わないと話しにならないとまで言われています。お笑いの天丼を習得しようと思えば、数をこなすことですが、一度試してみてはいかがでしょうか。