「爆笑」の意味とは?
「爆笑」の意味は広辞苑(第6版)によると、「大勢が大声でどっと笑うこと」とあります。「爆笑」という言葉をよく耳にするシーンとしては「会場は爆笑の渦に包まれた」などの表現があります。
このことから「爆笑」という言葉の意味は1人ではなく大勢の場合にのみ使われる言葉であると考えられます。ところが同じ広辞苑の改訂版である第7版になると、「はじけるように大声で笑うこと」と変わっていて、「大勢が」という文言がなくなっています。
第6版から第7版の改定で変更された、この2つの違いは何なのでしょうか。「爆笑」の意味の説明から「大勢」という言葉が消えた理由や、その背景について解説します。
「爆笑」の由来
「爆笑」はただ単に笑うというのではなく、それよりもさらに大声で笑ったり、弾けるように笑うことを指しています。つまり「爆笑」の「爆」は「爆発的に」という意味を含んでいます。
この場合の「爆発的な」には「一斉に」というニュアンスが含まれています。お笑いのギャグなどでじわじわくる笑いとは違って、すぐに反応して笑うことを意味しています。
「爆笑」は面白いことがあった時、ただ単に「笑う」という言葉ではもの足りない、さらに上の言葉として生まれたのではないでしょうか。
「爆笑」の特徴
「爆笑」の由来のところでも触れましたが、爆笑はただ単に笑うというよりも、さらに激しい笑い方の場合に使われる言葉です。そんな「爆笑」とは笑顔のような笑いに関する類語とどのような違いがあるのでしょうか。
また、よく言われる、「笑いは健康の源」とはどのうな意味なのでしょうか。ここではこれら2点について解説します。
「爆笑」の意味は嬉しいという感情とは違う
笑うという言葉の類語として「微笑む」がありますが、これは何か良いことがあったりしたとき、すなわち嬉しい気分になったときに出る行為です。また、笑い方も大声で笑うのではなく、笑顔の表情になるくらいで、声は出さないのが普通です。
これに対して「爆笑」の意味は「微笑む」とは違い、嬉しい気分というよりも「面白い」ことに直面したときに取る行為です。何か滑稽なものを見たり、お笑いなど面白いギャグを見たときなどに「爆笑」してしまうのです。
「爆笑」することは健康に良い?
よく、「笑いは健康の源」などと耳にしますが、ただ微笑んでいるだけでは健康効果に貢献することは期待できません。大声を出してお腹から笑う、すなわち「爆笑」することこそが健康に結びつくとされています。
ただし今のところ、「爆笑」することが健康に良いという科学的な根拠はないと言われたりもしますが、実際に健康効果があるといいう研究結果も発表されていて、はっきりとした根拠はまだ見出せていません。
科学的根拠がなくても、大声で笑うことは大きな声をお腹から出すことと、明るい気分になるということで、ストレスの発散になります。また、笑うことで身体のいろんなところ、特に腹筋に力が入るので、軽い運動をするのと同じ効果があるようです。
「爆笑」の類語
「爆笑」の類語には「笑う」に関連した単語が多くあります。今回の広辞苑の改定もあって、従来は意味が違って類語とされていなかった言葉の中にも、ほぼ同じ意味になったものもあります。
ここではそんな「爆笑」の類語について、細かい意味と使い方から「爆笑」との意味の違いについて解説します。
「大笑い」と「爆笑」との意味の違いは?
元々「大笑い」は「爆笑」が「大勢で」という意味に対して、1人で笑う場合に区別して使われていた類語で、「爆笑」が「大勢で」というのを指しているのに対して、対象が1人だけの場合には、この「大笑い」を使うのが正しいとされてきました。
広辞苑の第7版への改定により、他の辞書もそれに合わせて人数のことに触れなくなった今は、1人で大声で笑う場合にも「爆笑」を使っても誤用ではなくなったため、「爆笑」の類語となっていた「大笑い」は同じような使い方をるようになりました。
抱腹絶倒の意味と使い方
「抱腹絶倒」の意味はその字のとおり、「腹を抱えて大笑いすること」です。「爆笑」と同じような意味ではありますが、使い方にはちょっとニュアンスの違いがあります。
抱腹絶倒を言い換えると、「大爆笑」が適切かもしれません。そのニュアンスの違いを例を挙げて説明すると、お笑いを見ていて面白いギャグを言われたときには大声を上げて笑います。これは「爆笑」です。
ところが面白いギャグを立て続けに言われ、爆笑がまだ止まないうちにまた爆笑してしまうような場合は「爆笑」のさらに上を行く「大爆笑」となり、これがまさしく「抱腹絶倒」の意味になります。
「爆笑」の使い方
これまで解説した「爆笑」という言葉の意味から、「爆笑」という言葉を使った4つのパターンの例文を紹介します。ここで挙げる例文は、従来の大勢を対象の場合だけでなく、広辞苑の第7版で人数を考えないように改版された「1人で爆笑」の場合の意味も含んでいます。
例文①
「このネタをお笑いライブで披露すれば、観客を爆笑させることができるのは間違いない」この例は「大勢」という意味を込めた、従来の「爆笑」の極めて一般的な使い方です。意識して相手を笑わせるというよりも、爆笑させようとする気持ちが入った表現の例文です。
例文②
「彼の失敗したときのリアクションがあまりに滑稽だったので、思わず爆笑してしまった。」相手が自分を爆笑させようと、意図的に取った行動ではないパターンの例文ですが、日常ではたまにあるような場面です。
意図しないことによる、分予期せぬおかしさで、ついつい爆笑してしまったというので、場合によっては相手に失礼な爆笑かもしれません。
例文③
「家でテレビのお笑い番組を見ていてつい1人で爆笑してしまった」これまでに解説した、以前の正しい使い方では「爆笑」の誤用としていた広辞苑第7版の意味を使った表現です。
今ではこれで間違いではありませんが、以前だと「1人で大笑いしてしまった」が正しい表現とされ、誤用であるとして区別していました。
例文④
「彼の舞台は観客を爆笑の渦に巻き込んだ」、「爆笑」の表現の一つで、「爆笑の渦」とは会場内の観客のほとんどが爆笑している様を表している慣用句です。類似した「笑いの渦」よりももう少し笑いの度合いが強い場合に「爆笑の渦」という表現を使います。
「爆笑」の注意点
「爆笑」の使い方についての注意点としては、特に会社などで仕事上の会話をする際、これまでに紹介した、1人の場合でも「爆笑」は誤用でないがために使用すると、上司などから「その場合の「爆笑」は誤用だ。正しくは「大笑いだ」と注意されることがあるかもしれません。
仕事上の上司やお客様が相手の場合には、「そちらが間違っています」とは言いづらいので、そのような場合には「大笑い」を使うようにした方が無難です。
ただし、すでに「大笑い」ではなく「爆笑」を使っている人は多く、今回の広辞苑の改版が、時代の流れとともに言葉の持つ意味が変わるものと混同されがちですが、「爆笑」の場合はこのパターンではありません。
もともと「大勢が」という意味は誤用だった
広辞苑第7版で改定された「大勢」が外された理由は、本来、「爆笑」にはこの「大勢」という意味は含まれていなかったようだというのでした。つまり、第6版までの意味はある意味で誤用だったとも言えます。
実際、昭和の初めころにこの「爆笑」という言葉が生まれたようですが、そのときには「大勢」という意味はなかったようです。
それは1933年(昭和8年)に小説家の徳田秋声著、『町の踊り場』の中の一節に「そして彼は陰欝に爆笑した。」という表現があって、この場合は「彼」1人を指しています。
ところが辞書作成の段階で複数の辞書に「大勢」と載せてしまったため、それが現在まで正しいとされていたのが原因のようです。広辞苑の今回の修正は誤用となっていた「爆笑」の意味を本来の正しい意味に戻したものともいえるでしょう。
「爆笑」は「人数に関係無く1人でも大声で笑う」という意味
いかがでしたか。「爆笑」の意味が本来の意味と違った解釈をされ、今まで使われてきました。それが今、本来の意味に戻ったという意外な流れに驚かれた方も多いでしょう。
1人で大笑いしている様を「爆笑」と言って、「それは使い方を間違ってるよ」と注意されたことがある方も、これからは間違いでないということで、自信を持って「爆笑」という言葉を使ってください。爆笑することは気分も明るくなり、ストレス発散にもなって、まさに良いとこだらけです。