高齢者の推移
世界各国で高齢者人口が増加、世界は高齢者社会に向かっています。高齢者人口率の推移を見ると、1950年代では世界の総人口の5.1%にあたる1億2866万人が高齢者でした。2015年では世界の総人口8.3%にあたる6億818万人へと増加、2060年には世界の総人口の18.1%にあたる18億4400万人へと増えると予想されています。
国別でみていきましょう。世界各国で高齢者人口率が7%から14%へ到達して高齢者社会になった期間は、ドイツが40年、イギリスが46年、アメリカが72年、フランスが115年です。では、日本の推移はどうでしょうか。
日本
日本の高齢者人口は、1950年は4.9%なのに対し2015年は26.8%となっています。そして2060年には39.9%になると予想されています。日本の現状は、国民の4人に1人が高齢者、現役世代2.3人が1人の高齢者を支えていることになります。こうした現状を受け、政府は増加する高齢者への対策をさまざま講じています。
高齢者人口が増えた背景には、平均寿命が延びたということがあげられます。1950年と2015年では平均寿命が10歳以上違います。平均寿命が延びた理由は、医療技術が進歩したからと考えられます。
高齢者は何歳から?
では、高齢者とはいったい何歳からなのでしょうか。厚生労働省が現役世代4000人に「高齢者は何歳からだと思う」という調査を行ったところ、60歳以上と回答した人が9.8%、65歳以上と回答した人が20.2%、70歳以上と回答した人が41.1%でした。高齢者の定義は時代によって異なります。1980年代は高齢者を60歳以上と定義していました。
国連は高齢者の定義を60歳以上としており、日本は国連の定義を採用しました。1980年代以降は高齢者は60歳以上の人という定義の基、法整備などを行いました。しかし、高齢者人口の増加により高齢者の定義が見直されることになります。
現在では65歳以上の人
日本は高齢者は65歳以上とするWHOの定義を採用し、1989年に高齢者を60歳から65歳とする改正法案を国会に提出、国会で受理されます。その後、1994年に年金の定額部分の支給を12年かけて65歳に引き上げると改正、2000年には年金の報酬部分の支給を12年かけて65歳に引き上げると改正されることになります。
高齢者の定義(意味)は何歳から?
高齢者は何歳からという質問に対し、一般的な認識として現在は高齢者は65歳以上の人を高齢者と定義しています。しかし、「高齢者は何歳から」という高齢者の定義・意味は時代によって異なります。1941年は高齢者を55歳以上と定義、1980年代は高齢者を60歳以上と定義、現在は高齢者を65歳以上と定義しています。
時代によって高齢者の定義と意味が異なる背景には、平均寿命が関係しています。1941年の平均寿命は男性が67歳・女性が72歳、1980年代の平均寿命は男性が75歳・女性が81歳、現代の平均寿命は男性が81歳・女性が87歳となっています。
平均寿命が延びたこともあり、高齢者の定義が65歳と見直されました。高齢者のうち65歳~74歳を前期高齢者、65歳以上を後期高齢者と呼ぶこともあります。
個々の法律によって異なる
個々の法律によって高齢者の年齢が異なります。年齢が異なる理由は、法律制定時の高齢者の定義と意味、法律の目的や趣旨によるからです。年金では高齢者を65歳以上と定義、道交法では高齢者を70歳以上と定義、医療では65歳~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と定義しています。
一方、明確な年齢を定めていなく法律が該当すれば高齢者と定義される法律があります。それは「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」と「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」です。これらの法律では、心身機能が低下した老人、あるいは心身機能に制限があるものと高齢者の意味を定義しています。
法律の趣旨と目的によって高齢者の定義と意味が異なります。現代は元気な高齢者が多いため、法律が見直され、高齢者の定義と意味が改正される可能性が高いでしょう。
高齢者が何歳からかは社会保障制度も関係
高齢者を何歳からかとすることは、社会保障制度にも関係します。現在の社会保障制度は、高齢者は60歳以上という前提で整備されています。現在の社会保障費は、2018年度が33兆円、2019年度が34兆593億円でした。社会保障費に対してGDP率は、2018年度は1.2%、2019年度は0.9%となっています。
前途のとおり現在の社会保障制度は高齢者が60歳以上という前提で整備されており、高齢者に手厚い社会保障制度となっています。しかし、高齢者は65歳以上という前提の場合、社会保障費を2000億~2兆円ほど抑制することができます。GDP率は平均1.3%となります。
①医療・介護サービス
医療制度は2008年に高齢者医療制度が導入されました。高齢者医療制度は前期高齢者医療と後期高齢者医療に分類されます。前期高齢者医療は65歳から74歳までが対象で負担率は3割、世帯年収が520万以下及び単身年収が383万円以下は2割です。後期高齢者は寝たきりの65歳以上と75歳以上が対象で負担率は1割となっています。
介護制度は1997年に制定、2000年に施行、その際に介護保険制度も設立しました。介護保険制度は介護制度の基礎となる制度で40歳から加入が義務付けられています。介護保険では40歳~64歳を第二号被保険者、65歳以上は第一号被保険者と定めています。
介護制度は、介護サービスを被保険者が自由に選択できる利用者本位、被介護者の自立を支援する自立支援、納めた保険料に応じて給付金が受け取れる社会保険方式があります。
②年金制度
年金制度は国民年金と厚生年金があります。国民年金は基礎年金と呼ばれ、支給額は満額で6万4000円ですが、介護保険や高齢者医療の兼ね合いで平均支給額が5万5000円となっています。厚生年金は所得比例と呼ばれ、厚生年金の加入期間、報酬によって支給額が変わり、平均支給額は14万7000円となっています。
年金は2025年から65歳から支給開始され、2019年現在は63歳に老齢年金が支払われます。老齢年金は報酬部分と定額部分にわかれ、報酬部分は厚生年金の報酬部分、定額部分は厚生年金です。
高齢者が何歳からか政府が検討
社会保障費の増大及び元気な高齢者が増えている現状から、日本老年学会と日本老年医学会が2017年に高齢者の定義と意味を75歳以上に変更する旨を国会に提言しました。提言により政府は高齢者の定義と意味の変更について検討開始、人生100年時代の構想と65歳現役というスローガンを打ち出します。
人生100年時代の構想と65歳現役というスローガンのもと、高齢者雇用安定法を改正、次のことを義務付けました。それは「定年の廃止」・「定年を65歳とする」・「65歳までの継続雇用」です。それに対して企業の多くは、65歳までの継続雇用を選択しています。
人手不足・社会保障費増大の解消
厚生労働省が現役の労働力人口に「60歳以上になっても就業したいか」というアンケートを行ったところ、「60歳以上になっても就業したい」と70%の人が回答していることがわかりました。現代は少子高齢化による人手不足と社会保障費が増大しているため、高齢者の就業は人手不足と社会保障費増大の解消につながると期待されています。
現在、高齢者の経験やスキルが企業力向上と働き方改革促進になると注目されています。高齢者を再雇用した企業は若手の育成・技術力の向上・多様な働き方の実現といった実績が生まれているため、高齢者再雇用に向けた環境整備が進められています。
定年を引き上げた場合の経済効果は、消費が4兆円増加、社会保険料も2兆円増加、GPD率も増加するとされています。そのため高齢者の定義が変わることで、社会保障費増大も抑止できると期待できるでしょう。
何歳から高齢者かは今後変わる可能性も
いかがでしたか。今回は高齢者について解説しました。高齢者は歴史によって定義と意味が変わりますが、現在の高齢者の定義と意味は65歳以上です。政府は人生100年時代構想、65歳現役をスローガンに高齢者の定義と意味の変更を検討しています。そのため今後も高齢者の定義と意味が変わる可能性が十分にあります。