アザミの花とは
日本の野山や田畑、あぜ道などどこにでもに自生しているアザミは雑草としてよく知られています。その紫色の花は美しさもありますが、トゲのある葉などから嫌われることも多い植物です。ただ最近ではアザミの品種改良にともなって園芸用としても人気があります。ここではアザミの花についてくわしく解説します。
ノアザミと呼ばれる事もあるキク科の植物
アザミはキク科のアザミ属に属し、代表的な紫色のアザミはノアザミとして知られています。多年草の植物で毎年その花を楽しむことができます。アザミの最大の特徴はトゲのあるギザギザした葉としっかりしたとても堅い茎といえます。アザミのトゲは触るととても痛いのでアザミが避けられる理由のひとつといえます。
またアザミは日本中に自生しています。自生するアザミの特徴は地域によって種類が違い、開花時期や見頃が違うということです。そのためアザミの花の見頃は長く、いろいろな種類のアザミの花を楽しむことができます。
ただ最近では自生しているアザミが減少しているといわれています。種類によっては保護しなければならない程少なくなっているようです。
アザミにはたくさんの種類がある
アザミは世界では約300種以上、日本には約60種以上の種類が生息しています。ただアザミという名前の植物は単体では存在しているわけではなく、キク科のアザミ属に属している葉にトゲのある花すべての総称になります。
アザミはとても強く交配しやすいという特徴があります。そのため自生しているアザミを品種改良しトゲが少ないアザミなどいろいろな種類がつくられています。またアザミの花はそれぞれよく似ているものが多く、どの種類のアザミかを見分けることがとても難しいといえます。現在でも新しい種類のアザミが発見されることもあります。
ときにはアザミの花とは思えないアザミ属の花もあります。アザミと考えられる花を見たときは花の大きさや色、形、葉にトゲがあるかなどをよく観察することが大切です。
スコットランドではアザミは国花
アザミはスコットランドを象徴する国花として知られています。スコットランドがアザミを国花として定めた由来として歴史的根拠はありませんが魅力的なストーリーがあります。
13世紀から14世紀にかけてスコットランドは独立戦争を戦っています。このときスコットランドをノルウェー軍の夜襲から救ったのがアザミといわれています。スコットランド軍に夜襲をかけたノルウェー軍の兵士が音を消すために素足で歩いたためアザミのトゲが刺さりその痛みのために挙げた声でスコットランド軍が気付き、夜襲が失敗したとのことです。
スコットランドではアザミのおかげで国の危機が救われたということでアザミを国の花としたといわれています。そのためスコットランドでは役所などいろいろなところでアザミが象徴として使用されています。
アザミは食用になる
アザミは種類によっては食べることができます。野山に自生しているアザミは、野草独特の苦みがありこの苦みがおいしいとされています。アザミを食べるときは柔らかい若芽がとくにおすすめです。若芽は油で揚げててんぷらにしたり茹でてあえ物にしたりすることでおいしく食べることができます。
根を食べるときはアクが強くそのままでは食べることができないので茹でた後に米のとぎ汁などに一晩漬けておくことをおすすめします。とくにきんぴらにすると絶品です。
青森などの東北地方や長野県の一部では、アザミはみそ汁の具材としてよく知られています。また春先のアザミの新芽が出る季節には青森のスーパーにアザミの新芽が置いてあることがあります。アザミは食材として楽しむことができる植物です。
民間療法に使われる種類がある
多くの種類があるアザミの中にはアロマや民間療法などに使われている種類のアザミがあります。薬草として使用される代表的な種類はマリアアザミとブレストアザミといわれています。
マリアアザミから抽出されたオイルはヨーロッパでアロマとしてとても重宝されています。マリアアザミのアロマオイルはうつ病に効果が期待できるといわれています。ブレストアザミは腹痛や頭痛などに効果が期待でき、痛み止めとしての効果も期待できます。さらに吐き気止め、解熱剤や肝臓にも効果が期待できるとされています。
アザミの花の由来
アザミという名前の由来には諸説があります。アザミの名前の由来についてはどの説が真実なのかは分からないとされています。ここではそのなかでもとくに有力といわれるアザミの名前の由来である「あざむ」という言葉と沖縄の方言とされる2つの説についてくわしく解説します。
とげに驚き興ざめしてしまう「あざむ」
どこにでも自生しているアザミには紫やピンクなどさまざまな花があり、可憐できれいといえる花もあります。このアザミを美しいと感じ、花を摘もうとしたときアザミの葉や茎にあるトゲに刺さってしまうことがあります。
美しく可憐なアザミを摘もうとしたとき鋭い葉や茎にあるトゲが刺さってしまいとても痛い思いをすることから、アザミに欺かれる、裏切られるという意味の「あざむ」という言葉からアザミという名前が付けられたといわれています。美しさとは裏腹にその名前の由来は少し怖いものがあるといえます。
沖縄の方言から
もうひとつの有力な説は沖縄の方言から名前が付けられたという説です。アザミの特徴として葉や茎にトゲがあります。このトゲを表す沖縄の方言が由来といわれています。
沖縄県・八重山地方ではトゲのことを「アザ」といいます。そのためアザミの持つ葉や茎のトゲからこの「アザ」という方言を連想することができます。この「アザ」という方言に接尾語として「ミ」という言葉が付けられた、またはアザミは食用にもなるので「実」という意味を込めて方言の「アザ」に「ミ」が付けられたともいわれています。
アザミの花言葉と意味
アザミの花のイメージや葉のトゲが刺さると痛いことによるのかはっきりわからないのですが、アザミの花言葉は恐ろしいものが多いといわれています。ただアザミの花言葉には恐ろしいものばかりではないことも確かです。ここではアザミの「独立」「報復」「厳格」「触れないで」など6つの花言葉についてくわしく解説します。
花言葉①独立
アザミの花言葉である「独立」はスコットランドとイングランドとの独立戦争に由来するといわれています。スコットランドの帰属に関しては古くからイングランドとの争いの要因となっています。アザミは13世紀から14世紀にかけて戦った独立戦争においてスコットランドを救った花とされています。このことからアザミの花言葉は「独立」とされています。
またアザミはどこの野山でもしっかりと根付き凛として咲き誇っています。その姿はひとりで生きていくことを決めた力強さを感じさせることから「独立」という意味の花言葉の由来であるといわれています。
さらにスコットランドを敵から守り勝利に導いた花がアザミということでアザミの花言葉として「勝利」という意味もあります。
花言葉②報復
アザミの花言葉として「報復」や「復讐」があります。これはキリスト教の言い伝えやギリシャ神話に由来するといわれています。とくに赤いアザミは激しい報復を意味する花言葉になるのでプレゼントするときは注意が必要です。
キリスト教ではマリアを処刑をした後の十字架のくぎを埋めたところアザミが咲いたといわれています。またギリシャ神話では大地の女神マーテルが好意を寄せたダフニスに気づかれずに通り過ぎられてしまったことに悲しみ、その悲しみのしるしとしてアザミが咲いたという由来があります。
またギリシャ神話の中に人を愛することができない少年と妖精の話があります。少年に愛を教えるため神から使わされた妖精でも愛を成就することができないため復讐として少年の視力を取り上げ悲しんだ少年は川へ身を投げます。その川に咲いていた花がアザミです。
花言葉③厳格
アザミの持つ「厳格」という花言葉はとくに紫色のアザミを連想させます。凛として野山に咲き誇るその姿は気品とともに厳しさ、すなわち厳格さを連想することができます。またアザミはほかの動物や植物を寄せつけないトゲを持っています。その姿が「厳格」という意味の花言葉の由来ともいえます。
またアザミには厳格という花言葉のほかに「気品」や「高貴」という意味があります。アザミの持つ人を寄せ付けない凛とした姿が「気品」や「高貴」という花言葉になったといわれています。
花言葉④触れないで
アザミの最大の特徴は葉や茎にある無数のトゲです。このトゲがあることでアザミは自分自身を守っています。トゲがあることがアザミの持つ「触れないで」という花言葉の由来といえます。またトゲはとても攻撃的なイメージがあります。むやみに近づくとケガをするという意味から「触れないで」というアザミの花言葉とされたといえます。
またアザミの持つトゲは人を近づけないものがあります。そのため「触れないで」という花言葉のほかにも「人間嫌い」という意味があります。トゲを刺すから近づかないでほしいということです。
花言葉⑤安心
アザミの花言葉にはネガティブな花言葉だけではなくポジティブな花言葉もあります。アザミは葉や茎がおおくのトゲに覆われているため触ろうとするととても痛いので野山にきれいに咲いていても持ち帰るという人は少ないといえます。そのため身を守ることができるということから「安心」という意味の花言葉になっています。
ギリシャ神話ではアザミのトゲが魔除けになるといわれています。さらにアザミがスコットランドを守ったという言い伝えも「安心」という意味の花言葉の由来となったといえます。
花言葉⑥治癒
アザミの花言葉には攻撃的で怖いイメージがとても多いのですが、正反対の「治癒」という意味のポジティブな花言葉もあります。
アザミは種類によっては古くから民間療法などで治療薬として使われています。おもにうつ病や乳飲み子を抱えた母親の助けとなる薬草としてよく知られています。そのためアザミには「治療」というポジティブな花言葉があるといわれています。アザミには怖いイメージの花言葉だけではないのです。
アザミの花言葉【種類別】
アザミはとても交配しやすい植物なので世界にはとても多くの種類のアザミがあります。その中にはアザミとしての花言葉のほかに種類別の花言葉を持つアザミがあります。ここでは「朝鮮アザミ」「キツネアザミ」「ルリタマアザミ」の花言葉の意味や由来についてくわしく解説します。
朝鮮アザミ
朝鮮アザミは別名アンティチョークと呼ばれ、イタリアでは開花前のつぼみが食用としてとても重宝されています。開花前のつぼみはそら豆のような味がする塩ゆでが最もおいしいとされています。
朝鮮アザミの花言葉は「警告」「孤独」「独立独歩」「傷つく心」などがあります。食用としてとても重宝される一方でトゲがあり人を刺すことがあるためほかを近づけないということからこれらの花言葉があるといわれています。いずれの花言葉も葉などにあるトゲに由来する少し怖い花言葉です。
キツネアザミ
キツネアザミの花はとてもアザミ属の花に似ています。そのためアザミ属と間違われるのですが、実はキツネアザミはキク科のキツネアザミ属になります。アザミとは全く別の花になります。
キツネアザミの花言葉は「嘘は嫌い」というものです。これはアザミに似た花を持ちながら実は全く別の植物いうことでキツネに騙されたようだということから「嘘は嫌い」という花言葉になったといわれています。実際キツネアザミは本当によくアザミに似ていますが、葉にトゲがなく葉の裏に白い羽毛のようなものがあります。
ルリタマアザミ
ルリタマアザミは別名エキノプスといいます。エキノプスはギリシャ語でハリネズミに似ているという意味です。球状の花の花びらがとがった針のようにみえることからこの名前がついています。
ルリタマアザミの花言葉が「鋭敏」というのは、このとがったように見える花の形が「鋭い」というイメージがあるからといわれています。またもうひとつの花言葉である「傷つく心」というのは、球体の花がとがった針のように見えるため触れると痛いと感じるからといわれています。
アザミの花言葉【色別】
アザミにはいろいろな種類と同時に「白」「紫」「青」「赤」「黄」のさまざまなカラーがあります。またアザミの花のもつ花言葉とは別に色によってそれぞれ違う意味の花言葉を持っています。ここでは「白」「紫」「青」「赤」「黄」という色別のアザミの花言葉の意味や由来についてくわしく解説します。
白
白いアザミの花言葉は「自立心」「独り立ち」です。白いアザミ自体あまり見かけることはありませんが、その清楚な凛とした白い花の姿がひとりでしっかりと自立していると感じさせてくれます。そのため白いアザミの花言葉が「自立心」「独り立ち」といわれるようになったと考えられます。
紫
紫という色は「気品」や「高貴」の象徴とされています。アザミというと紫の花と連想されるほどアザミの中ではポピュラーな色です。紫のアザミの花言葉は「気品」「厳格」とされています。野山の中で凛として咲いている紫のアザミはとても気品があり、花言葉にピッタリのたたずまいといえます。
青
青いアザミの花言葉はネガティブイメージの多いアザミの花言葉の中ではとてもポジティブな「安心」「満足」です。青という色の持つイメージと鋭いとげのある葉を持つアザミの人を寄せ付けないというイメージが危険から身を守ることができるという意味でこの花言葉があると考えられます。
赤
赤はとても目を引く色です。とくに葉・茎すべてにトゲを持つ赤いアザミの人を全く寄せ付けない姿は権威そのものといえます。そのため赤いアザミの花言葉は「権威」といわれています。赤いアザミは美しいですが、力や権威を意味する花言葉を持つためプレゼントにするときはトラブルが起きないよう最大限の注意が必要です。
また赤いアザミは「権威」という花言葉のほかに「報復」「復讐」という少し怖いイメージの花言葉を持っています。
黄
黄色のアザミはノアザミの中のひとつであまり見かけることがないとても珍しいアザミとされています。アザミの黄色は明るい黄色ではなく少しセピアがかった色合いをしているためもの寂しい感じがします。そのため黄色のアザミの花言葉はその寂し気な色合いから「別れ」といわれています。
アザミの見頃や開花時期
アザミには野山で自生する美しいアザミや園芸用としてトゲが少なく育てやすいように品種改良されたり、ノアザミを改良したドイツアザミなどいろいろな種類があります。アザミにはとても多くの種類があり、その種類によって開花時期や見頃が微妙に違っています。ここではアザミの開花時期や見頃についてくわしく解説します。
アザミの開花時期
アザミにはとても多くの種類がありその種類によって開花時期に違いがあります。また地域によって違う種類がある花としても知られています。日本の野山でよく見かけるノアザミは春から秋にかけて開花します。一般的にアザミは初夏から秋の5月から10月にかけて開花するといわれていますが、ノアザミだけが4月ごろから開花します。
フジアザミは8月上旬から9月下旬、キセルアザミは9上旬から10月下旬、ナンブアザミは8月から10月ごろにかけて開花します。
アザミには園芸用として品種改良された種類があります。ドイツアザミなどの園芸種のアザミの開花時期は4月から7月です。
アザミの見頃は夏~秋
野山に自生するアザミはとても種類が多く、種類によって開花時期や見頃が違うという特徴があります。ただ多くのアザミが開花する夏から秋にかけての時期がアザミの見頃といえます。とくにノアザミは開花時期が4月から10月ととても長く見頃が続くことが特徴です。また種類によって見頃が違うため時期によってさまざまなアザミを楽しむことができます。
園芸種のアザミの見頃は開花時期である4月から7月といえます。ただ園芸種の場合長くアザミの花の見頃を楽しむために7月に切り戻しを行います。切り戻しをしたアザミは秋に開花するので花の見頃が長く続きます。
おすすめのアザミが楽しめるスポット
日本ではアザミが群生している場所がとても少なくなっているといわれていますが、群生するアザミの花を楽しむことができる有名なスポットがあります。アザミの見頃となる初夏から秋にかけてアザミを楽しむことができます。ここではきれいに群生しているアザミを楽しめるスポットを2ヶ所紹介します。
薬師山四国八十八ヶ所霊場エリア(滋賀県)
滋賀県の竜王町にある薬師山四国八十八ヶ所霊場の自然・景観エリアでは6月上旬から6月下旬にかけてアザミの花を楽しむことができます。凛としたたくさんのアザミがきれいに咲いている姿を堪能することができます。またアザミのほかにもヒマワリなどのいろいろな夏の花も楽しむことができます。
小田代ヶ原(栃木県)
小田代ヶ原は原っぱの真ん中に「小田代ヶ原の貴婦人」として知られている大きな白樺の木があります。周囲2キロほどの原っぱにはこの白樺の木を中心にいろいろな花が咲き誇ります。アザミの花は7月から8月にかけて見頃になります。小田代ヶ原のアザミはニッコウアザミとも呼ばれ、アザミの群落として有名です。
ただ最近ではニッコウアザミの群落もその数がいちじるしく減少してきています。毎年7月から8月にかけてニッコウアザミの見頃を迎えますがその数は全盛期には及ばないといわれています。
アザミをプレゼントする時は花言葉に注意!
アザミは世界に約300種以上の種類があります。アザミの花言葉の特徴はその種類や色によって違いがあり、怖いイメージの花言葉も良いイメージの花言葉もあるということです。そのためアザミの花をプレゼントするときはアザミの種類別・色別の花言葉をしっかり確認しておくことがトラブルを防ぐ最善の方法といえます。