オクタコアとは?
スマホやタブレット、パソコンなどを選ぶとき、オクタコアという言葉を目にします。このオクタとはギリシャ語から英語に転じた8個という意味、つまりCPUのコアが8個あるという意味です。ここでは、こうしたデジタルグッズの性能を決めるめやすの1つとして、CPUのコアとその働きについて、また複数のコアがもつ意味について徹底的に解説します。
CPUコアの役目
CPUのコアとはプログラムをもとに演算を行い、メモリやネットワークやカメラなどの周辺装置をコントロールする大元となる部分のことです。この性能がCPUのもつ能力、ひいてはスマホやパソコンの性能全体に大きく左右するものなのです。
最初のころは、1つのCPUには1つのコアしか搭載されておらず、同時に複数のタスク(作業)をコンピュータに行わせるためには、複数のCPUを1台のパソコンに搭載し、同時にコントロールするといった手法が取られていました。ところが、技術の発展とともにだんだんと複数のコアが搭載されるようになってきました。
一般に1つのCPUに複数のコアを搭載するとき、コアの数が多いほど性能は高くなると言えます。このコア数を表す際に、英語で個数を意味するクアッドコア(Quad Core)やオクタコア(Octa Core)などといった表現が用いられてきたのです。
スマホに搭載されるコア一覧
スマホやタブレットのCPU(正確には、現在のスマホは複合的なチップセットが使われていますのでCPUも含めSoCと呼ばれています)のコアには、以下のような種類があります。SoCについては後ろの「SoCとは?」の項目で説明します。
Android系では、Qualcomm社(米国)のSnapdoragonシリーズ(SONYのXperiaシリーズなど)。HiSillicon社(中国)のKirinシリーズ(今なにかと話題のHuaway製スマホなど)。Samsung社(韓国)のExynosシリーズ(Samsung社のハイエンド系スマホ)、台湾のMediaTek社製HelioシリーズなどがSoCとして有名です。
また、アップル社のiPhoneやiPadは自社製のSoCであるAシリーズを搭載しており、最近のiPhone XS、XS Max、XR、iPad miniなどではヘキサコアのA12 BionicというSoCが採用されています。
オクタコアとクアッドコアの違い
一般的に、CPUのなかの複数のコアはそれぞれが独立して仕事をします。つまり、クアッドコアであれば、シンプルに言ってしまえば、コアが4個ですから4つの仕事を同時に行えることになります。オクタコアは8個のコアがありますので、8つの仕事を同時にこなせる事になります。
CPUの能力の条件はコア数のほかに動作速度なども関わってきますので、あくまで他の条件が一緒とすればコア数が多いほうが性能は上となります。ただし、実際にはさまざまな条件がありクアッドコアがオクタコアになっても、性能が倍にはなりません。
コア数
現在スマホやタブレットで使われているCPUのコア数は下の表のような種類があり、そのうち主流となっているのはクアッドコア、ヘキサコア、オクタコアの4~8コアのものでデカコアやドデカコアはハイエンドの機種で使用されています。またシングルコアやデュアルコアはほとんど使われる事はなくなっています。
パソコン用ではさらに多くのコアを搭載したCPUが開発されており、18コアや32コアなどといった莫大なコア数を誇るものもあります。
コア数 | 呼び方 |
---|---|
1 | シングルコア(Single Core) |
2 | デュアルコア(Dual Core) |
4 | クアッドコア(Quad Core) |
6 | ヘキサコア(Hexa Core) |
8 | オクタコア(Octa Core) |
10 | デカコア(Deca Core) |
12 | ドデカコア(Dodeca Core) |
消費電力
初期のころ、CPUの性能はほとんど、動作速度を上げることで向上していました。ところが、動作速度の上昇だけでははどうしても限界を迎える事になります。そんな中で考え出されたのが、1つのCPUに複数のコアをもたせるマルチコアCPUです。
マルチコアCPUとは、1つのCPUで同じ動作速度のコアが複数働くことによって、例えば倍の速度のCPUを開発するより、低消費電力でかつ発熱量も抑えたCPUのことです。
コア数がどんどん増えた事によって、当初の省エネ効果は薄まってしまい、クアッドコアからオクタコアとなるにつれ、他の条件が同じでああればコア数の多いほうが消費電力は増え、スマホであれば電池消耗が速いなどという事も起こってきました。
そこで、各社では性能の高いCPUを使いつつも、回路の線の太さなど、さまざまな工夫をこらし消費電力を抑える努力をしています。
価格
CPUには低価格なものから高級品まで、ラインナップが用意されています。同じオクタコアやクアッドコアでも、ラインナップによって性能には上下があります。ただ、その他の性能が同じ条件とすれば、コア数の多い方が価格は高めになります。コア数が倍だからといって、価格が倍になるわけではありません。予算と性能を比べて選択するようにしましょう。
オクタコアをスマホに使用
最近のスマホではオクタコアが搭載される事が多くなってきています。スマホではCPUやグラフィック表示用のGPU、センサーなどが一体化されたSoCとしての性能となります。さらに例えばオクタコアの場合、4つが高性能用コア、4つが省エネ用コアなどという構成で性能と省エネのバランスをはかっています。
スマホに使うメリット
近年のスマホ用のOSはマルチタスクに対応しています。マルチタスクとは同時に複数のアプリを実行したり、作業を行ったりする事です。オクタコアのCPUを搭載したスマホなら、マルチタスクを軽々とこなすことができるのがメリットと言えます。また、省エネ用のコアをうまく使う事により、高性能を保ったままバッテリーの消耗も抑える事ができます。
スマホに使うデメリット
コア数が増える事により、消費電力はどうしても増えますが、これはさまざまな工夫によってバッテリーの消耗は押さえられるようになっています。あと、SoC自体の価格がどうしても上がってくる分、本体価格は高めになります。高性能なスマホが必要なのか、自分の使いかたに沿って選択する必要があります。
クアッドコアと比較
クアッドコアとオクタコアの違いは、性能。ただし、高性能をフルに使えばバッテリーは多く消費されますし、発熱も高くなる傾向があります。ゲームなど負荷の高いアプリを多く使うのであれば性能優先に、電話とメール、SNS程度の使いかたであれば、価格も安めのクアッドコアでも十分という考え方もできます。自分の使い方をしっかり掴んで選びましょう。
オクタコアをタブレットに使用
タブレットの場合、スマホよりもノートパソコンに近いような使い方で、ビジネスシーンでの利用や、電子書籍や動画コンテンツをたっぷり楽しむ、キッチンでレシピ動画を観ながら料理するなど、ヘビーな使い方がとなる事が多いため、性能の高いオクタコアが使われるケースが増えています。
タブレットに使うメリット
タブレットの場合、スマホよりも画面が大きく、当然筐体も大きさがあるため、比較的電池も大容量のものを搭載しやすく、また廃熱も楽な造りになっています。このため、高性能のCPUを搭載するSoCのメリットを享受しやすいのです。筐体が大きければ回路設計にも余裕がありますので、比較的高性能でも価格も抑えやすい点もメリットの1つです。
タブレットに使うデメリット
タブレットの場合、スマホよりも使い方が定まっているケースが多いため、使用目的からのデメリットはあまりありません。ただし、スマホの場合と同様にコア数が増えればそれだけ消費電力も増えますので、長時間持ち歩くような使用方法の方はバッテリー容量を十分確認する必要があります。
クアッドコアと比較
タブレットの場合、仕事に使う、動画や電子書籍などのコンテンツを見るなど、使用目的がはっきりしている事が多いため、クアッドコアかオクタコアかはほとんど予算の差になります。ただしコア数だけで性能が決まるわけではなく、動作速度なども含めて総合的に判断する必要はあります。使用目的と価格のバランスで考えていく事になります。
オクタコアをパソコンに使用
現在のパソコンにつかわれているCPUは大きくわけてIntel社製とAMD社製の2つがあります。パソコンのCPUはスマホのSoCほどの多機能を集積していませんが、グラフィック機能やマルチメディア機能などを統合しているものがほとんどとなります。また、モバイル機器用に省電力機能を優先したシリーズなどもあります。
Intel社製では、core i7シリーズとcore i9シリーズがオクタコアを搭載。AMD社製では、Ryzen 7シリーズがオクタコアを搭載しています。パソコンのCPUは8コア16スレッド、8コア8スレッド、4コア8スレッドなどと表記します。
スレッドとは、1つのCPUのコアに2つのタスクを同時に行わせる機能の事です。ハードウェア的にコアを増やすマルチコアより若干性能は下がりますが、マルチタスクの作業にとっては強い味方となります。
パソコンに使うメリット
パソコンでは、スマホよりも比較的重い処理を行う事が多く、広い画面にたくさんのウィンドウを開いてマルチタスクをするケースも多いため、コア数が多く同時処理の能力が高いほうがよりさくさくと作業がすすみます。現在上位CPUに搭載されているオクタコアは、処理能力を優先する場合にそのメリットをフルに発揮することができます。
パソコンに使うデメリット
パソコンのCPUの場合も、コア数が増えればそれだけ消費電力も高く、また発熱も激しくなります。そのためモバイル用のCPUではそのためコア数をおさえているものもあります。また、オクタコアは上位のCPUに搭載されることが多く、周辺のチップセットなどもそれに見あったものとなりますので本体の価格が高めになります。
クアッドコアと比較
パソコンでは、クアッドコアは多くの場合中位のCPUに使われています。中位CPUではその他にもヘキサコアのものなどもあります。現在のパソコン用CPUは大変高性能でオフィス製品とメールチェック、Webを見るなどであれば、クアッドコアでも十分ですが、ゲームや動画編集など重い作業があれば上位CPUが必要になります。
またモバイルPCの場合は、外出先での作業が多いなどの場合、電池保ちを考え、消費電力が低いCPUを選ぶという考え方もあります。ここでも自分の使い方を見極めた選択を行う必要があります。
オクタコアの注意点
オクタコアのCPUは、ここまで書いてきたように、大変高い性能をもっていますが、ハードウェア的には電力消費や発熱の問題、またコストがどうしても高くなるなどの注意点があります。また、ソフトウェア的にも、次の項目で解説しますが、いくつかの注意点があります。
これは、スマホ、タブレット、パソコンのどの場合にも言えることですが、こうした注意点を踏まえて自分の必要とする性能や環境、コストから選択する機器のスペックを導きだすようにしましょう。
マルチコア対応のアプリ使用者以外には不向き
現在では、Windows、OS X、Android、iOSなどほとんどのOSはマルチコア対応となっており、たとえマルチコア非対応のアプリであっても、OS側でマルチコアを割り当てるような仕様となっています。ただし、こうした場合、複数のコアを使用したとしても、期待通りの性能が発揮できない場合もあることに注意が必要です。
SoCとは?
ここまで、スマホやタブレットの説明で、CPUと書いたりSoCと書いたりしてきました。現在のスマホ、タブレットでは、省スペースの中に高性能を詰め込む必要があります。
そこで役立つのが、1つのダイの中に、CPU、グラフィック、入出力などの基本機能のほか、カメラ、通信およびネットワーク機能などほとんどの機能をまとめたSoCが使われるようになりました。SoCとはSystem on a Chipが略されたものです。またダイとはSoCやCPUなどのチップの外装となるものの事です。
オクタコアは高性能だがスマホ・タブレットが高価になる
スマホの世界はオクタコアというスペックが急速に普及をはじめています。コア数が増えれば、それだけ処理できることも増え、また高性能と省エネのコアを使いわけることのメリットもあります。ただ、SoCの高級化は価格にも直接反映されます。自分の使い方、目的などをしっかり見極めてストレスのないデジタルライフをおくりましょう。