太陽光パネルとは
太陽光パネルは、ソーラーパネルや太陽電池パネルとも呼ばれ、太陽電池板や太陽電池モジュールとも。最近は、住宅の屋根や空き地にずらりと並ぶ太陽光パネルをよく見かけるようになりました。また、太陽光パネルは人工衛星や宇宙ステーションでも使われています。では、太陽光パネルとはどのようなものか、ご紹介していきます。
太陽光を電気に変えるもの
太陽光パネルとは、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変えるためのパネルです。太陽光パネルは、基本的に小さな太陽電池(光エネルギーを即時に電力に変換して出力する電力機器)を複数つなげて、アルミなどの枠や構造体にはめ込みパネルにしたものです。太陽電池を使っている身近なものでは電卓があります。
一番小さな単位を「セル」、セルを板状につなげたものを「モジュール」、モジュールをつなげた最大単位を「アレイ」と呼びます。1枚のセルは出力が小さいので、設置する場所によってモジュール単位で発電できる出力を計算し太陽電池をのせます。
資源が乏しい日本において、再生可能エネルギーの太陽光は、温室効果ガスを出さず国内で生産できる重要な国産エネルギー源です。
太陽光パネル・太陽光発電システム耐用年数(寿命)
耐用年数とは、製品の寿命と捉えている人も多いですが、厳密には2種類の意味があります。耐久年数という「寿命」の意味で使われるほかに、「法定耐用年数」の意味で使われる場合もあります。つまり、耐用年数と法定耐用年数は全く別の意味ということです。ここからは法定耐用年数と太陽光発電システムの耐用年数(寿命)についてご紹介していきます。
①法定耐用年数(寿命)は目安
法定耐用年数は、太陽光発電システムなど減価償却資産として、どのくらいの期間使うことができるのかを税法上で定められた年数のことです。建物や設備は時間の経過とともに資産価値は下がっていきますが、その資産のことを減価償却資産と言います。太陽光発電システムの法定耐用年数は、国税局の耐用年数省令に基づいて17年と定められています。
つまり、法定耐用年数の「17年」という数字は、法で定められた耐用年数(寿命)であって、太陽光発電システムの耐用年数(寿命)とは異なるということです。
②実際の耐用年数(寿命)は20年~30年
では、太陽光発電システムの実際の耐用年数(寿命)はどのくらいでしょうか。2009年11月1日から太陽光発電システムによる余剰電力買取制度(2012年7月1日より固定価格買取制度に移行)が日本でスタートしました。太陽光発電システムの普及はその頃からと考えられます。
そのため、10年ほど経過した現在では、法定耐用年数の17年以上経過したデータがあまりなく、正確な数値を出すことができません。
一般的には期待寿命として20年~30年が目安となっています。最も古いとされる住宅用太陽光発電システムは1992年から20年以上経過していますが、故障したことはないようです。また、1983年から30年以上経過している奈良県のお寺に設置されている太陽光パネル(ソーラーパネル)は、2016年の調査で出力劣化が少ないことが証明されています。
このことから、法定耐用年数で定められた17年より太陽光発電システムは長く使える可能性があると言えます。年々技術が向上しているため、より長期の使用が期待できます。では、具体的に太陽光発電システムはどのような部品を使っているのでしょうか。
固定価格の買取期間は10年
太陽光発電システムによる余剰電力を固定価格で買い取ってくれる期間は、10年と定められています。10年間の固定価格買取が満了した場合、契約期間が自動継続になっていれば、10年経過後も新しい価格で買い取ってもらえます。
太陽光発電システムを設置してから10年間は、大手の電力会社に買い取ってもらうものが一般的でしたが、10年経過後は自由に会社を選ぶことができます。10年経過後は買取価格の高いところを選ぶとよいでしょう。
太陽光パネル・パワーコンディショナー寿命
太陽光発電システムは、大きく分けると2つの部品から構成されています。具体的には、太陽光パネル(ソーラーパネル)とパワーコンディショナー(パワコン)になり、それぞれ耐用年数(寿命)が違います。ここからは、太陽光パネルとパワーコンディショナーの耐用年数(寿命)についてご紹介していきます。
太陽光パネルの寿命・20年~30年程度
太陽光発電システムのメインとなる太陽光パネル(ソーラーパネル)の場合、構造上モーターのような駆動する部分がなく、摩耗や故障が少ないことから耐久性が高く、劣化のスピードはかなりゆっくりになります。一般的に20年~30年くらいが期待寿命と言われています。
パワーコンディショナーの寿命・10年
太陽光発電システムの心臓部となるパワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電された電気を家庭用の電気に変換する機器です。冷蔵庫や洗濯機などの電化製品と同じく本体自体が電気を流して動く機器のため、一般的に10年くらいが期待寿命と言われています。パワーコンディショナー設置後10年ほどで、一度点検することをおすすめします。
太陽光パネル・寿命が近づく事によるデメリット
太陽光パネル(ソーラーパネル)の寿命は20年~30年くらいが期待寿命と言われており、実際には期待寿命を超えて長期に機能している太陽光パネルがあることもご紹介しました。しかし、期待年数より早く寿命が近づく太陽光パネルも少なからずあります。ここからは、太陽光パネルの寿命が近づくことによるデメリットをご紹介していきます。
①太陽光パネルの劣化
太陽光発電システムは耐用年数(寿命)が近づくにつれ、太陽光パネルの劣化が生じてきます。最も劣化する部分は配線で、そのほかガラス表面やパネルを支える機材なども劣化していきます。配線の劣化には腐食や断線などがあり、ガラス表面の劣化には太陽光パネルの層間剥離(そうかんはくり)やガラス表面の汚れ・変色・変形などがあげられます。
これらの太陽光パネル(ソーラーパネル)の劣化により、太陽光発電システムの発電量に影響を及ぼす場合もあります。つまり、発電量の低下につながる可能性があるということです。
②発電量低下
太陽光パネル(ソーラーパネル)の寿命が近づくことにより、発電量はどの程度低下するのでしょうか。各団体が発表している「発電量の低下」のデータによると、水産庁が2014年3月に提供したデータでは毎年0.5%程度、NTTファシリティーズが2013年7月に提供したデータでは毎年0.25%~0.5%程度とされています。
太陽光パネルの性能劣化の測定方法によっても数値が変動するようで、一概に比べることはできませんが、太陽光パネルの寿命が近づく事によって劣化のスピード(発電量の低下)はおよそ「毎年0.25%~0.5%程度」といえるでしょう。
太陽光パネル・劣化原因
太陽光パネル(ソーラーパネル)が劣化する部品は配線やガラス表面などがあり、配線の腐食やガラス面の変形などの現象が起こるとご紹介しました。では、太陽光パネルが劣化する現象の原因にはどんなものがあるのでしょうか。ここからは、太陽光パネルの劣化原因についてご紹介していきます。
①経年劣化
太陽光パネル(ソーラーパネル)が劣化する原因はいろいろありますが、その中のひとつに「経年劣化」があげられます。どんな機器も長く使っていれば劣化は避けられません。太陽光パネルにはさまざまな種類がありますが、その種類ごとに劣化率は違ってくるのでしょうか。
太陽光パネルの種類は大きく分けると2種類あり、ケイ素(シリコン)を原料とした「シリコン系」太陽光パネルとシリコンを使わない「化合物系」太陽光パネルがあります。
シリコン系には結晶シリコン系の「単結晶シリコン」と「多結晶シリコン」、薄膜型の「アモルファスシリコン」、ハイブリッド型の「ヘテロ接合(HIT)」に分けられます。化合物系は「CIS/CIGS」や「CdTe」が主に販売されています。
太陽光パネルの種類によっても劣化スピードは変わってきます。日本で大部分を占めている単結晶シリコンと、コストパフォーマンスの高さが魅力のCISを比較すると、25年後には10%も劣化率に差が出てきます。劣化率の数値だけ見れば、CISが魅力的と言えます。
しかし、太陽光パネルのメーカーによって製造販売している種類も違えば得意分野も違ってきます。競争率の高い太陽光パネルの種類であれば、割引率が高くなる可能性もあり、その場合はコストパフォーマンスが高くなります。設置する場所、お住まいの地域の気候などによっても耐久性が変わってくるので、設置の際は専門業者とよく相談して決めましょう。
ちなみに、30度を超える猛暑日は太陽光パネル内部は70℃から80℃まで上昇します。発電効率は25℃が最大値で、1℃上昇するごとに0.5%発電量が低下すると言われており、猛暑日は30%近く低下することが予測できます。猛暑日が多い地域は、高温に強い太陽光パネルを選ぶなど予防が必要でしょう。
また、塩害が生じる海沿いの地域や積雪量の多い地域、雷の多い地域なども、それぞれ予防できる太陽光パネル選びが重要になります。
②天災
太陽光パネル(ソーラーパネル)が劣化する原因は、経年劣化以外に「天災」もあります。天災とは、台風・地震・雷・洪水・火山噴火などによる自然現象が原因で起こる災害です。自然災害による被害は年々増加傾向にあり、いつ自分の身に起こるかはわかりません。お住まいの地域によって予防対策は必要になります。
最近では梅雨の時期から夏の終わりごろまで台風が発生します。台風によって強風で飛ばされたものが太陽光パネルに当たり故障するだけでなく、太陽光パネル自体が飛ばされることもあります。豪雨や洪水などによって地盤が緩み家ごと流されたり、土砂崩れや雪崩で家屋が崩壊したり埋まってしまうケースもあります。
天災により太陽光パネル(ソーラーパネル)が故障した場合、どうすればよいでしょうか。各メーカーごとに太陽光パネル専用の保証制度をつけることが可能です。保証内容は各メーカーごとに違いがありますが、最低10年は保証があります。また、天災による太陽光パネルの保証をしているメーカーもあります。最後に詳しくご紹介するので参考にしてください。
③動植物
自然豊かな地域で生活している場合は特に、「動植物」が原因で太陽光パネル(ソーラーパネル)が劣化してしまうこともあります。中でも野生動物による被害が多いようで、太陽光パネルの配線をかじられたり鳥のフンを落とされるといった、日常的によくありそうな光景が原因で劣化することもあります。
鳥のフンはすぐに洗い流せば問題ないですが、粘着質な鳥のフンは放置しておくと砂ほこりなどが付き固まってしまいます。何日も雨が降らない日照りが続くような季節は要注意です。野生の動物が誤って太陽光パネルに激突することも稀にあります。また、植物の落ち葉や枯れ木が詰まっていたり、鳥の巣がつくられていたという事例もあります。
手の届かない高い屋根の上に設置した太陽光パネルのお手入れは難しいですが、定期的に点検するなどして劣化予防が必要になります。太陽光パネルの点検には専用の機材が必要になります。貸出ししているメーカーもありますので、相談してみましょう。
④メンテナンス不足
太陽光発電システムのオーナー様であれば、一度は「メンテナンスフリー」という言葉を耳にした事があると思います。しかし、実際にはさまざまな部品の劣化が時とともに生じてきます。太陽光パネル(ソーラーパネル)は表面が野ざらしになっているので、汚れやすく傷つきやすいです。
また、太陽光パネルの配線のサビや架台のサビ、フィルターの目詰まりなどでも劣化が進んでしまいます。少しでも発電量を低下させず長持ちさせるためには、予防することが大事です。
太陽光パネル・劣化予防
太陽光発電システムの発電量は25℃が最大値とご紹介しました。つまり、猛暑が予想される夏より春先の方が発電率は良く、1年を通して発電率が良いのは5月というデータもあります。台風や猛暑も少ない北海道などは、太陽光発電システムは向いていると言えます。
太陽光パネルの劣化を予防するためには、定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスをすれば完全に予防できるわけではありませんが、予防することで劣化のスピードを抑えることはできます。発電率を維持するためにも、お住まいの地域に合った太陽光パネルの素材選びと定期的なメンテナンスによる劣化予防をおすすめします。
①設備不具合チェック
住宅用の太陽光発電システム(ソーラーパネル)は、2017年4月に再生可能エネルギー特別措置法(電気事業主による、再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)が改正され、メンテナンスが義務化されました。
その内容は、最低4年に1回(初回は設置1年目)のメンテナンスを行うこと。点検個所は7か所で、太陽光パネル・パワーコンディショナー・ケーブル・架台・接続箱(集電箱)・ブレーカー(開閉器)・電力量計(メーター)の機器になります。点検方法は目視や操作・測定の3種類です。費用は設置場所や各メーカーにより違いますが、およそ5万円となります。
太陽光発電システム(ソーラーパネル)のメンテナンスが義務化されたことで、100%劣化予防ができるとは言えません。太陽光パネルの洗浄は義務化されていないので、必要な場合は定期的なメンテナンスの際に依頼するとよいでしょう。また、天災などにより劣化が心配な場合は、早めにメンテナンスの依頼をして予防しましょう。
メーカーが定期メンテナンスで行う「目視」は、配線のサビや汚れ、ねじのゆるみや外れていないか、太陽光パネルが割れていないかなど、目で見て異常がないか点検します。この設備不具合チェックは自分でもできるので、定期的に行うことで劣化予防につながります。
②運転チェック
太陽光発電システムの劣化予防には、運転チェックも必要です。メーカーが定期メンテナンスで行う「操作」は、扉や蓋の開閉の不具合、スイッチによる運転、自立運転機能の確認などです。
太陽光発電システムは日の出とともに自動運転を開始し、日の入りとともに自動運転を終了します。パワーコンディショナーが正常に作動しているか、停電時に使える自立運転機能が作動しているかも自分で確認できるので、定期的にチェックしましょう。
パワーコンディショナーの耐用年数(寿命)は太陽光パネルに比べて半分くらいの年数(寿命)しかなく、10年程度と言われています。いつもと違う異常な音が聞こえたり、形が変形していたりと故障が疑わしい時は早めに修理を依頼しましょう。
自立運転機能の操作方法は、種類やメーカーにより違います。緊急時に備えて、常日頃から取扱説明書などを参考に操作方法を確認しておきましょう。自立運転機能がついていない機器もあるので、事前に確認しておきましょう。
③数値測定
太陽光発電システムの劣化予防には数値の測定も重要です。メーカーの定期メンテナンスの点検方法3つ目の「測定」は、電気がきちんと流れているか、異常発熱していないか、流れている電気がカタログ通りの数値かなど専用の機器を使い、発電状況を調査して性能の低下がないか、電気設備の試験を行い安全面に異常がないかを調べます。
数値測定については、検電器・接地抵抗計・絶縁抵抗計など専用の機器が必要になります。機器はレンタルのほかリースや購入の選択肢もあるので、自分でチェックしたい場合はメーカーと相談してみてください。
④太陽光パネル洗浄
太陽光発電システムの劣化を予防するには、太陽光パネル(ソーラーパネル)の洗浄も忘れてはいけません。しかし、メーカーの定期メンテナンスには太陽光パネルの洗浄が含まれていません。別料金となりますが、定期メンテナンスの際にお願いすれば別日を設ける必要がないので、事前に追加依頼しましょう。
太陽光パネルの汚れは基本的に雨で流れるので気にする必要はありません。しかし、雨が降らない日が続いたり小雨しか降らない場合は、鳥のフンや黄砂などの汚れが流れずこびりついてしまい、配線のサビの原因になることもあります。枯葉などのごみのつまりも発電量の低下につながるので、太陽光パネルの洗浄は重要です。
住宅用の太陽光パネルは屋根に設置することが多く、自分では洗浄が難しい場合が多いです。メーカーに依頼すれば、専用の洗剤を使ってプロが洗浄してくれるので、こびりついた汚れもきれいに洗い流してもらえます。また、精密機器になるので自分で洗浄して壊してしまう危険性もあります。メーカーに依頼して、プロに洗浄してもらうのが安心です。
太陽光パネル・メーカー保証は最低でも10年
産業技術総合研究所の国内で設置された太陽光発電システムの調査によると、設置してから10年の間に太陽光パネルを交換した例は全体の約10%、パワーコンディショナーを交換した例は10年以内での修理や交換は全体の約15%を超える結果が出ています。
一般的な電気機器のメーカー保証は1年ですが、太陽光パネルのメーカー保証は最低10年、長いところは15年の保証を設けています。メーカー保証は大きく2つの保証にわけられ、ひとつはシステム保証(機器保証)、もうひとつは出力保証です。ここからは、それぞれの保証内容についてご紹介していきます。
システム保証は一般的な電気機器のメーカー保証と同じようなもので、機器の故障や不具合が見つかったときに保証されます。保証される機器は太陽光パネルのほか、パワーコンディショナーや接続箱・架台などです。保証される機器の種類はメーカーにより違うこともあるので確認しましょう。
もうひとつの出力保証は、太陽光パネルの出力量が一定期間規定数値より下がった場合に、保証されます。定期的にメンテナンスすることで機器の劣化スピードを抑えることはできますが、経年劣化は免れません。それを考慮したうえで数値設定されてますので、日ごろから数値を確認し、異常な数値が出た場合はすぐメーカーに連絡しましょう。
メーカーによっては、「自然災害補償」を提供しています。まだまだ少ないですが、有名メーカーでは京セラが無料で10年保証、有料で15年保証をしています。自然災害補償の内容は、火災や落雷、台風とメーカーにより違います。きちんと確認をしましょう。
太陽光パネルの寿命が近づいてきたら必ず点検!
太陽光発電システムは電気代を節約できるだけでなく余剰電気を買い取ってくれることもあり、利用者は増加傾向にあります。太陽光発電システムの設置費用は高いため、元を取るには数年かかります。太陽光パネルの種類などでも電気量の低下スピードは変わってきます。
お住まいの地域に合う素材のものを選ぶのと同時に、メーカー保証の内容や保証期間なども業者としっかり相談して決めましょう。
また、定期的なメンテナンスと目視など自分でもチェックすることで、少しでも発電量の低下を予防して長く大事に使いましょう。