奨学金の自己破産・リスク
まずは奨学金で破産・自己破産をした時に、どんなリスクが考えられるか見ていきましょう。破産と聞くと連帯保証人に支払い義務が生じる、自分の財産を没収されるなど、金銭的影響を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし奨学金で破産・自己破産すると就職先が制限される、ブラックリストに載るなど、社会的な影響も決して少なくありません。
近年では、奨学金で破産や自己破産する人の割合が増えています。自分には関係ないと思わずに、万が一に備えて奨学金で破産・自己破産することのリスクをしっかりとチェックしておきましょう。
①連帯保証人に支払い義務
奨学金で破産・自己破産した場合、連帯保証人に支払い義務が生じます。借りた奨学金が高額であればあるほど、保証人に金銭的負担をかけてしまう恐れがあります。
もし奨学金で破産・自己破産を考えるなら、保証人を誰にしたか一度確認してみましょう。可能であれば事前に保証人に相談しておけば、保証人への金銭的影響を最小限に抑えることもできます。
②財産の没収
奨学金で破産・自己破産すると、手元にある財産はすべて没収されます。現金や銀行の預貯金はもちろん、破産者の名義になっている家や車も没収の対象となります。財産をすべて没収されると、いきなり生活に困窮する可能性もあります。破産や自己破産前には、住む場所や当面の生活費を確保できるか確認しましょう。
③ブラックリストに載る
奨学金に限らず、破産・自己破産した人はブラックリストに載るリスクがあります。ブラックリストに載ると、クレジットカードや住宅ローンなどの審査に通りづらくなります。一度破産・自己破産すると、長期に渡って社会的信用が無くなることを覚悟しなければいけません。
④就職先の職業に制限
せっかく学校を卒業して就職しようとしても、奨学金で破産・自己破産していると就業先に制限が出る場合があります。頑張って勉強しても希望の職種につけない、という悲しい現実も十分にあり得ることです。
奨学金が支払えなくなったからといって、安易に破産や自己破産をすると将来を棒に振るかもしれません。のちのち後悔がないよう、奨学金での破産はよく考えなければいけません。
⑤周囲にバレる可能性
破産・自己破産で財産の差し押さえや就業先の制限などを受けると、周りにバレる可能性もあります。たとえ勉強を頑張るために借りる奨学金でも、破産や自己破産したというのはあまり良いイメージを持たれないものです。
場合によっては友達や恋人から信用を失い、大切な人間関係を無くすリスクもあります。うかつに破産や自己破産をすると、社会的信用を失いかねないという認識が必要です。
奨学金の自己破産を防ぐ3つの制度
金銭的に厳しい学生を応援する奨学金には、破産や自己破産を防ぐ制度が用意されています。制度をきちんと知らずにいると、本当は必要のない破産や自己破産をしてしまう可能性もあります。ここからは奨学金の減額や免除など、破産や自己破産を防ぐ制度を3つご紹介します。返済が厳しくなってきたという方は、ぜひ参考にしてください。
①月の返済額を半分に減額
1つ目の制度は、「奨学金の減額返済制度」です。この制度は名前の通り、月々の奨学金返済額を半分に減らすことができます。最長で15年適用可能で、期間が延びることで利息や遅延金は発生しないので安心して利用できます。
減額返済制度を利用することで、返済期間は伸びるというデメリットはあります。しかし、「直近の支払いさえ困難」という破産や自己破産を考える方には、心強い味方になってくれる制度です。
②返済の一時停止
2つ目の制度は、「奨学金の返還期限猶予制度」です。この制度は災害や病気など奨学金返済が難しくなった時に、支払いを一時的に停止できる制度です。支払い停止の理由にもよりますが、通常10年を限度として奨学金の返還を延長することができます。
家計の大きな割合を占めていた奨学金が無くなることで、金銭的に余裕が出る人は多いはずです。その間に生活を立て直すことができれば、奨学金で破産や自己破産をする必要もなくなります。申請も書類を郵送するだけと簡単なので、悩んだ時は返還期限猶予制度を利用してみましょう。
③返還免除制度が利用可能か確認
3つ目の制度は、「奨学金返還免除制度」です。この制度は奨学金返済を全額免除し、奨学金を借りていた人がお金を支払う必要を一切無くす制度です。奨学金で金銭的に困っている人でも、この制度を利用すれば破産や自己破産を免れることができます。
ただし奨学金の返還免除制度は、精神や身体の障害があるなど厳しい条件を通った人だけが利用できます。返還免除制度を利用したいと思った時は、自分が条件に当てはまるか事前にHPなどで確認しておきましょう。
奨学金の自己破産事例
奨学金の破産・自己破産を防ぐ制度をご紹介しましたが、残念ながら破産してしまう人がいるのも事実です。奨学金で破産・自己破産した人はどんな状況だったのか事例をご紹介します。また奨学金の返済を免除できる「免責」についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
体調不良により借金が膨れ上がる
奨学金で破産や自己破産を選択した人の中には、体調不良が原因になった人も少なくありません。奨学金を借りた時は元気でも、体調不良や病気はいつどんなタイミングで来るか分かりません。バイトなど就業が不可能になれば収入も無くなり、奨学金返済は難しくなるものです。
免責許可がおりると返済義務が無くなる
体調不良で破産・自己破産を検討している人は、「免責許可」という言葉を覚えておきましょう。免責許可とは心身の不調など正当な理由で支払が出来ない人に対して、借金の返済義務を無くす制度です。自己破産を申し入れて免責許可が下りれば、それ以降奨学金の返済義務は無くなり、請求や取り立てに怯える心配もありません。
ただし、自己破産したからといって必ず免責許可が下りるわけではありません。財産を隠していたり虚偽の事実を裁判所に報告したりすると、「免責不許可」として免責を認めてもらえません。
自己破産したのに借金が残るという最悪の事態を引き起こす可能性もあるので、免責許可を申し出る時には注意しましょう。
奨学金の契約時に親の保証人は避けよう!
奨学金を借りる時に、保証人を親にしている人も多いでしょう。しかし、親を保証人にすることはおすすめできません。なぜなら、万が一本人が奨学金の支払いが困難になった時、保証人である親に残額の請求が行くからです。高額な奨学金を負担した親は、金銭的にかなり厳しい状況に立たされます。
さらに債務者である本人が自己破産して免責許可が下りても、保証人である親の支払い義務はなくならないことも注意しなければいけません。
高額な奨学金を親も支払えない場合、家族全員で自己破産しなければいけない可能性もあります。そんな最悪な状態を避けるためにも、親を保証人にするのはやめておきましょう。
機関保証の利用で自己破産も安心
奨学金を借りる時は、機関保証を利用しましょう。機関保証とは「日本国際教育支援協会」などをはじめとする保証機関が、連帯保証人になってくれる制度です。機関保証を利用すると返済額とは別に保証料がかかりますが、保証人不要で奨学金を借りられます。親や親族、友人など保証人探しに悩むことがないのが、機関保証のメリットといえます。
さらに機関保証を利用していれば、万が一自己破産する時も安心です。なぜなら保証人は保証機関なので、支払えなかった奨学金の請求が家族や友人に行くことがないからです。自己破産する時のリスクに備え、奨学金を借りる時は機関保証も利用するのがおすすめです。
奨学金を返せない人の割合は年々上昇
奨学金を返済できない人の割合は、年々増えています。さらに学費の値上がり・上がらない給料・非正規雇用の増加なども重なり、奨学金で自己破産する人の割合も増えています。2016年度には3451人もの人が自己破産しており、今後さらに割合が増えることが予想されます。
奨学金を返せない人や自己破産する人の割合が増えている今、奨学金で苦しむことは決して他人事ではありません。今奨学金を借りている人はもちろん、これから借りようとしている人は支払額に無理がないか・保証人は親ではないかなど確認しましょう。
奨学金の返済に困ったら周りや専門家に相談しよう
奨学金の返済に困ると、思い詰めて破産や自己破産に踏み切ってしまう人も多いものです。しかし、さまざまな制度をうまく利用すれば、破産や自己破産を免れる可能性もあります。また身近な人であれば、一時的にお金を借りて奨学金の返済をすることもできます。奨学金の返済に悩んだら、一人で抱え込まず周りの人や専門家に相談してみましょう。
奨学金の自己破産は良く考えて実行しよう!
奨学金で破産・自己破産するという行為は、さまざまなリスクが伴います。どんな影響があるのかを把握した上で、万が一に備えて「減額免除制度」や「機関保証」などの便利な制度も覚えておきましょう。奨学金で破産や自己破産に追いつめられる人の割合は、年々上昇しています。困った時は周りの人や専門家のアドバイスを貰い、よく考えて実行しましょう。