奨学金の返還制度は2種類
高校を卒業して、大学に進学したいと考えているけど、家庭の経済的な事情により、大学の進学を諦める人がいます。そんな人に、授業料や入学金、教材費などの大学の進学にかかる学費を貸して支援してくれるのが奨学金の制度です。その奨学金には、貸与型・給付型の2つの種類があります。
貸与型
貸与型の奨学金とは、貸与(たいよ)すなわち、お金を貸すということですから、返さなければいけない奨学金のことです。お金を借りて返すと聞くと、ローンやキャッシングをした時のように、毎月いくらか返済するイメージを持ちます。しかし、貸与型の奨学金は、大学の在学中に返すのではなく、大学を卒業した後に返済すればいいのです。
貸与型の奨学金は、大学を卒業した後に返済すればいいということですが、返済する際は、どのくらいの利子を支払うことになるのでしょうか。
それは、他項で説明する、日本学生支援機構(旧:日本育英会)、大学独自の奨学金制度、地方自治体の奨学金制度、民間団体の奨学金、新聞奨学生制度などの種類によって違いがあります。奨学金が、最も多くの人に利用されている日本学生支援機構を例にとれば、年利0.2%から0.5%と低金利です。
貸与型の奨学金の家計基準とは
貸与型の奨学金の年利が0.2%から0.5%と低金利と説明しましたが、実は貸与型の奨学金には、利息が付かない奨学金と利息が付く奨学金の2つの種類があります。2種類の奨学金の申し込みには、家計基準があり、それをクリアする必要があります。
貸与型の奨学金の家計基準は、利息が付かない奨学金と利息が付く奨学金では、基準が違います。例えば、日本学生支援機構の貸与型・奨学金の家計基準は、利息の付かない第2種奨学金は3人世帯では、収入金額が657万円以下です。
利息が付く第2種奨学金の3人世帯での収入金額は、1,009万円以下など一覧で詳細に記載されていますので、貸与型の奨学金を申し込む時には、利息などをよく確認しましょう。
給付型
給付型の奨学金とは、給付(きゅうふ)すなわち、物を与えることの意味があり、お金を返すことをしなくてもいい奨学金のことです。支援されたお金の返済の義務がない給付型の奨学金には、申し込みの資格と選考される家計基準があります。
給付型の奨学金の申し込みの資格は、高校を卒業する予定の人、高校を卒業して2年以内の人、給付型の奨学金の選考基準は、高校での成績が5段階評価で3.5以上であること、単に、大学に進学したいだけではなく、将来を考えて、大学に進学するといった、しっかりとした目標と強い意思を持っていることなどが選考基準になります。
給付型の奨学金の家計基準とは
給付型の奨学金の家計基準には、収入基準と資産基準の2つの種類があります。収入基準は、大学への進学のために給付型の奨学金を申し込みをする本人と同居して生活を共にしている親や保護者や、別居して仕送りで生活を支援している親や保護者の市町村民税所得割いわゆる「住民税」が非課税であることです。
生活を支援している人の収入額にも基準があります。基準は、生活を共にしている世帯人数により、複雑に金額が変わります。そのため、世帯人数と申し込みの基準となる収入額が一覧で表示されていますので、給付型の奨学金を申し込む時には、よく確認をしましょう。
資産基準は、預貯金・有価証券などの資産額が、2,000万円未満です。しかし、これも収入基準と同じように、世帯人数により変わり、本人と母親の2人の場合は、1,250万円未満となるなど、給付型の奨学金を申し込む時には、よく確認をすることが必要になります。
奨学金の種類一覧と内容
奨学金の種類には、他項で、紹介したように、日本学生支援機構(旧:日本育英会)、大学独自の奨学金制度、地方自治体の奨学金制度、民間団体の奨学金、新聞奨学生制度の他、あしなが育英会・交通遺児育英会など6つの種類があります。それぞれに申し込むための条件や選考する基準などが違います。
実際に貸与される奨学金の額や利息などにも違いがあります。次項から日本学生支援機構(旧:日本育英会)・大学独自の奨学金制度などの奨学金の種類の一覧を見ながら、どんな制度なのかといった特徴について説明していきます。
また、奨学金を申し込むためには、どんな条件があるのか、また、どんな選考する基準があるのかも含めて奨学金の種類のごとに説明します。
種類①日本学生支援機構(旧:日本育英会)
奨学金の種類「日本学生支援機構(旧:日本育英会)」は、最も多くの人が利用しています。その理由のひとつが、「無利息の第一種奨学金」「利息有の第二種奨学金」「利息有の入学時特別増額貸与奨学金」の3つの種類があることです。無利息の第一種奨学金は、給付型の項で、説明しましたが、高校での成績が5段階評価で3.5以上などの申請基準があります。
第一種の条件
無利息の第一種奨学金は、最高月額とその他の月額の2種類から選択することがが可能です。無利息の第一種奨学金を一覧で確認すると、最高月額を選択すれば、国公立の大学の場合は、月4万5千円から5万1千円、私立の大学の場合は、月5万4千円から6万4千円の貸与金額になります。
また、その他の月額を選択すれば、国公立の大学の場合は、月2万円から4万円、私立の大学の場合は月2万円から5万円の貸与金額になります。
さらに、無利息の第一種奨学金には、高校の成績が5段階評価で3.5以上の条件で、申し込みができる「予約採用」と大学在学中に申請することができる「在学採用」の2種類があり、在学採用には、学部内の成績が上位の1/3以内という成績の基準があります。
第二種の条件
利息有の第二種奨学金は、2万円、4万円と選択することができ、最高で12万円まで選択が可能な奨学金制度です。しかし、医科歯科大学など多くの学費が必要となる大学に入学した場合は、最高で4万円まで増額に変更することが可能です。
第二種奨学金の成績の条件としては、高校での成績が平均点以上、特定分野で能力が高い人、大学の進学に対してしっかりとした目標と強い意欲、このいずれかに該当すれば、申請が可能です。
途中で第一種から第二種に変更も可能
途中で第一種から第二種に変更も可能です。その理由は、無利息の第一種奨学金と利息有の第二種奨学金の成績の基準にあります。無利息の第一種奨学金は、高校の成績が5段階評価で3.5以上に対して、利息有の第二種奨学金は、高校での成績が平均点以上となります。以上のように、無利息の第一種奨学金の方が成績の基準が厳しいということになります。
利息有の入学時特別増額貸与奨学金とは
奨学金の種類「利息有の入学時特別増額貸与奨学金」とは、大学に進学した初年度のみの奨学金のことです。この奨学金は、10万円から借りられますが、50万円までと上限があります。またこの制度には、第一種奨学金、第二種奨学金とは違った収入基準と国の教育に関するローンに不採用になった人といった、条件があります。
条件の変更
第一種奨学金を申し込む時には、学校・学年・通学形態などを申請しています。その申請に基ずき、貸与する月額が決まります。もし、自宅からの通学が変更になり、自宅外からの通学に変更になった時には、申請した内容を変更して、増額を希望するれば、審査はありますが、貸与する月額の変更が可能になります。
第二種奨学金は、増額に変更が可能と他項で、説明しましたが、逆に、減額に変更することも可能です。しかし、増額に変更したり、減額に変更したりすることはできません。
種類②大学独自の奨学金制度
奨学金の種類には、大学独自の奨学金制度を設けている大学があります。その奨学金制度のある大学を一覧で紹介します。東京都では、お茶の水女子大学、北海道は北見工業大学、九州には、北九州市立大学・宮崎公立大学・宮崎大学など全国に多くの大学があります。
大学独自の奨学金制度の場合は、大学を卒業した後、大学で、3年以上働くことを条件にしている大学や家計基準に応じ、第一種の奨学金と第二種の奨学金が併用で利用できる大学もあります。
種類③地方自治体の奨学金制度
奨学金の種類「地方自治体の奨学金制度」は、全国に900以上の団体があります。そのほとんどが、貸与型の奨学金制度です。
地方自治体の奨学金制度は、大学独自の奨学金制度・日本学生支援機構などの他の奨学金の制度よりも成績や収入額などの条件が緩いのが特徴です。
種類④民間団体の奨学金
民間の奨学金の種類を一覧で紹介すると、公益財団法人日本国際教育支援協会・公益財団法人電通育英会・公益財団法人青井奨学会・一般財団法人ジェイティ奨学財団・公益財団法人三菱UFJ信託奨学財団・公益財団法人日揮・実吉奨学会・一般財団法人 鷹野学術振興財団など多くの民間の団体があります。
それぞれの民間の団体には、成績の優秀さと共に、道徳・法律・規範などをしっかり意識した行動が出来ている人など民間の団体ごとに申し込みができる条件が違います。また、民間の団体の奨学金も2万円から15万円までとかなりの差があることがわかります。
さらに、日本学生支援機構の第一種奨学金、第二種奨学金の貸与を受けている者を条件に、返済の補助している民間の団体もあります。
種類⑤新聞奨学生制度
奨学金の種類「新聞奨学生制度」とは、朝日・毎日・読売・産経・日経など大手の新聞社6社が提供している奨学金の制度です。新聞社ということで、朝刊・夕刊の配達と集金などの業務をすることが条件になります。また、朝刊・夕刊の配達のみの業務を選択することも可能です。
朝刊・夕刊の配達と集金などの業務を選択した場合は、4年生の大学で約520万円、3年生の大学で約390万円の奨学金に加えて、月額平均16万円ほどの給料が支給されます。この制度の奨学金は、貸して貰うわけではなく、支給となるため返済する必要がありません。
種類⑥その他(あしなが育英会・交通遺児育英会など)
奨学金の種類「あしなが育英会・交通遺児育英会」とは、病気・災害・交通事故などで両親を亡くしたり、重度の病気で、両親が働くことが出来なかったり、そんな家庭の子供の大学進学を支援するのが目的の奨学金制度です。
奨学金制度の種類として、高校・高等専門学校奨学金、大学・短期大学奨学金など4つがあります。高校・高等専門学校奨学金は月額4万5千円から5万円、大学・短期大学奨学金が7万円から8万円となります。その月額の中には、種類ごとに返済しなくもよい給付金が2万円から4万円あります。
返済しなくもよい給付金を引いた残りの奨学金に関しては、無利子ですが、卒業した後に20年間で分割の返済が必要になります。また、入学のための一時金の制度もあります。
奨学金の申込み方法
奨学金の種類と申し込みができる条件や選考される基準などについて説明してきました。理解していただけましたか。ここからは、日本学生支援機構・大学独自の奨学金制度・民間団体の奨学金・地方自治体の奨学金制度などの奨学金の種類ごとの奨学金の申込み方法について説明していきます。
日本学生支援機構の申し込み
日本学生支援機構の申し込みには、予約採用、在学採用、緊急採用・応急採用の3つの種類があります。予約採用の申し込みの期間は5月から6月と10月から11月の年の2回あります。在学採用は、大学に入学して4月以降で年に1回のみです。
緊急採用・応急採用は、文字通りで大学に入学した後などに、両親などの保護者を、病気・災害・交通事故で亡くしたり、重度の病気で、両親が働くことが出来なかっりした時の奨学金になります。
大学独自の奨学金制度・民間団体の奨学金の申し込み
大学独自の奨学金制度は、他の種類の奨学金制度と同じように給付型と貸与型があります。給付型の奨学金の申し込みは、高校から大学に進学のための入学試験の成績が基準になります。また、大学2年生以降の申し込みは、大学在学中の成績と家計基準により選考されます。
民間団体の奨学金の申し込みには、他の種類の奨学金制度と同じように、成績と申し込みが可能になる基準があり、団体により違いがあります。
民間団体の奨学金の成績には、学業成績の他、文化・スポーツなどの成績が優秀な人が含まれる団体もあり、また、団体によっては、ボランティア活動の実績での選考もあります。民間団体の奨学金は、ほとんどが書類の一覧による選考になります。
地方自治体の奨学金制度の申し込み
地方自治体の奨学金制度は、貸与型の奨学金がほとんどです。しかし、自治体のほとんどが無利息の奨学金になります。奨学金の申し込みの選考基準や条件は、地域によって違いますが、申し込み方法や募集時期は各地方自治体により違いがあります。しかし、多くが地方自治体に設けてある、教育委員会の窓口になります。
新聞奨学生制度の申し込み
新聞奨学生制度は、奨学金の支援の他、月額平均16万円ほどの給料が支給される奨学金制度のため、人気があり、すぐに定員になります。定員になると締め切られるため、大学が決まったら早く申し込む必要があります。申し込みは、各新聞社のパンフレットに添付してある申込書に記入して郵送する方法が一般的です。
また、申込書以外に、別の書類を添付する必要がある新聞社がありますので、よく確認をする必要があります。決定は、申込書などの必要な書類の一覧によって決まります。
奨学金の返還方法
日本学生支援機構・新聞奨学生制度・地方自治体の奨学金制度・大学独自の奨学金制度・民間団体の奨学金などの奨学金の申込み方法について説明してきました。ここからは、奨学金の返還方法について説明します。奨学金の返還方法には、割賦・所得連動返還などの種類があります。割賦方法は、月賦返還と月賦半年賦併用返還方法の2種類から選べます。
月賦返還
奨学金の返還方法の種類「月賦返還」とは、借りた奨学金の額と返還期限によって何回かに分けて毎月払う返還方法です。毎月払う回数が多くければ、それだけ多くの利子を返すことになるので、できれば、少ない回数での返還が理想です。しかし、毎月払う金額が高くなるため、自分の生活のレベルにあった返還方法を選びましょう。
月賦半年賦併用返還
奨学金の返還方法の種類「月賦半年賦併用返還」とは、借りた奨学金の額の半分を月払いにして、残りの奨学金は半年に2回払う方法です。例えば、半年にボーナスで多くの金額を払うと、奨学金の総額が少なくなります。
奨学金の総額が少なくなることは、大学・地方自治体・民間などの団体の奨学金の利息を少なくすることができます。その結果として支払う利子を減少させることができるメリットがあります。
しかし、月賦半年賦併用返還にするか、月賦返還にするかは、誓約書を提出するとき決める必要があり、返還方法が始まったら途中で変更することはできませんので注意しましょう。
高校生がもらえる奨学金の種類一覧
高校を卒業して大学の進学を支援する、奨学金の種類や申し込みの基準、選考される内容、奨学金の返済方法など大学生が受け取れる奨学金を説明してきました。ここからは、高校生がもらえる奨学金には、どんな種類があるのかを、一覧しながら説明してきます。高校生がもらえる奨学金は、就学支援金・奨学のための給付金など4つほどの種類があります。
種類①就学支援金
高校生がもらえる奨学金の種類「就学支援金」とは、国立高校・公立高校・私立高校の高校生を持つ親の経済的負担を少なくする目的で設立された制度です。対象になる条件としては、年収約910万円未満の世帯になります。
就学支援金の申し込みは、入学時の4月に指定された書類を提出する必要があります。支給額に一覧すれば、国立の場合は、月額9,600円、公立は月額2,700円、私立などの高校は月額9,900円です。
種類②奨学のための給付金
高校生がもらえる奨学金の種類「奨学のための給付金」とは、就学支援金と同じように、国立高校・公立高校・私立高校の高校生を持つ親の経済的負担を少なくする目的で設立された制度です。奨学のための給付金は、授業料以外の教科書費・教材費・修学旅行費などを支援する制度です。 生活保護受給世帯、非課税世帯など低所得世帯を対象した支援になります。
支援額を一覧すると、生活保護受給世帯の国立・公立で年額3万2,300円、私立で年額5万2,600円、非課税世帯の国立・公立は第一子が年額8万800円第二子以降が年額12万9,700円、私立で第一子が年額8万9,000円、第二子以降が年額13万8,000円になります。
通信制では、国立・公立で年額3万6,500円、私立で年額3万8,100円です。奨学のための給付金の申し込みは、7月から8月までの必要な書類を提出する必要があります。2人の高校生でも、それぞれに書類を提出しなければなりません。
種類③都道府県ごとの奨学金
高校生がもらえる奨学金の種類「都道府県ごとの奨学金」には、東京の東京都私学財団を始め、神奈川県高等学校奨学金、長崎県育英会、新潟県社会福祉協議会、京都府高校生等修学支援事業など全国に多くあります。この都道府県ごとの奨学金のほとんどは、無利息の貸与型の奨学金です。募集時期や申込資格などは都道府県ごとに違いがあります。
種類④その他
その他の高校生がもらえる奨学金には、日本教育公務員弘済会、社会福祉協議会、あしなが育英会、交通遺児育英会などがあります。日本教育公務員弘済会を例にとれば、25万円以内とし最高100万円までの無利息タイプの貸与型の奨学金です。日本教育公務員弘済会は、約7000人の高校生が利用した実績があります。
奨学金は自分にあった内容・返還方法を選ぶのが大事
高校・大学に進学するための支援となる、奨学金には、日本学生支援機構、大学独自の奨学金制度、民間団体の奨学金などさまざまな種類があり、それぞれの制度について知ることができました。また、奨学金の返還方法も理解していただけたと考えます。今回解説した内容を参考に、奨学金は自分にあった内容・返還方法を選ぶようにしましょう。