バウムテストとは
バウムテストとは、1945年にスイスの心理学者コッホ,K が創案した「投影樹木画法」という心理検査です。この心理検査はとてもシンプルなもので、「一本の実のなる木を描く」というものです。描かれた木がどのようなものかによって、描いた人の深層心理がわかります。これからこのバウムテストについて紹介していきます。
自由に描いた1本の木から心理を診断
バウムテストは絵の描ける人なら子供から大人まで誰でも可能です。用意するものはA4の用紙を1枚と、鉛筆1本、消しゴムです。これらを使って一本の実のなる木を描きます。このテストでは、実際の木を見て描くのではなく、イメージした一本の実のなる木を自由に思いつくままに描くことが重要になります。
バウムテスト・目的
バウムテストは、絵を描いた人の考え方や、言葉で表現されない気持ち、深層心理を理解するために行います。精神科等でも用いられており、日本で多く使われている検査の一つです。
バウムテストは、紙・鉛筆・消しゴムと落ち着いて絵を描ける場所を用意することができればよく、簡単なやり方で実施することができます。そのため、言語表現が苦手な小さな子供や、障害などで言葉を話せない人でも実施することが可能です。
その人の心の内面を判断する
バウムテストでは自由に描いてもらった一本の実のなる木を、絵の全体的な印象、絵を描いているときの鉛筆の動かし方、木の形、木の位置の4つの側面から診断します。そして、4つの側面からさまざまな項目の診断を行っていきます。しかし、その人の深層心理すべてがわかるわけではありません。
バウムテスト・やり方
それでは、バウムテストのやり方を説明していきます。まず、A4の用紙を1枚、鉛筆1本、消しゴムを用意します。そして、落ち着ける場所で絵を描いてもらうようにします。診断を受ける人には「実のなる木を一本描いてください」とだけ指示を与えます。
もし実のなる木が描けないようであれば、どのような木を描いてもらってもかまいません。ただし、写生をしたものは診断に使えません。窓から木を見たり、壁にかかっている絵画の木を見たりせず、自分のイメージした木を描いてもらうようにしてください。
一本の実のなる木を丁寧に書く
バウムテストのやり方は自由度が高くなっています。まず、絵を描く方向が自由です。また、どのくらい時間をかけて絵を描くのかも自由です。バウムテストでは絵の上手さは関係ありません。自由に思いつくままに絵を描いてもらいます。
もし、どんな木を描くこともできなければ、できないという形での診断もします。簡単な検査内容ですが、診断結果を解釈するには経験と知識が必要です。
バウムテスト・診断結果の解釈
バウムテストでは最初に、描かれた絵の全体的な特徴を解釈していきます。それから、細かい部分の特徴を解釈していきます。全部で60項目あり、さまざまな深層心理が表れていると言われています。
バウムテストの診断結果の解釈は主観的なもので、解釈する人によって違いが出てきます。ただ、一定の解釈は存在しており、ここではその例を一部ご紹介していきます。
①用紙の使い方
実のなる木を描く際、用紙をどの方向で使ったかによって描いた人が現状をどう捉えているかがわかります。横向きに使った場合は、「自分の置かれた現状に不満がある」と言われています。縦向きに使った場合は、「自分の置かれた現状に満足している」と言われています。
②筆圧
実のなる木を描く際、どのような筆圧で描いたかによって描いた人の積極性がわかります。筆圧が強い場合は、「積極性が高く、活発で攻撃的でもある」と言われています。筆圧が弱い場合は、「積極性が低く、無気力で不安がある」と言われています。
筆圧が意図せず安定していない場合は、「情緒不安定で、常識から外れた行動をとることがある」と言われています。
③木の大きさ
描かれた実のなる木が、どのくらいの大きさであるかによって描いた人に自信があるかがわかります。用紙をはみ出るほどの大きな木を描いた場合は、「自分に自信があり、積極的である」と言われています。用紙に対して普通の大きさの木を描いた場合は、「バランスがとれていて、協調性がある」と言われています。
木の周りに空間ができるほどの小さな木を描いた場合は、「自分に自信がなく、消極的である」と言われています。
④木の位置
描かれた実のなる木が、用紙のどのあたりにあるかによって描いた人の大まかな性格がわかります。用紙の右側にある場合は、「自己肯定感が高く、支配的である」と言われています。用紙の左側にある場合は、「現実逃避しがちで、内向的である」と言われています。
用紙の上側にある場合は、「飽きっぽく、夢見がちである」と言われています。用紙の下側にある場合は、「現実的で、堅実である」と言われています。用紙の真ん中にある場合は、「安定した精神である」と言われています。
⑤木
描かれた実のなる木が、どのような形であるかによって描いた人に不安やいら立ちがあるかがわかります。きれいに左右対称の木の場合は、「抑うつ傾向があり、不安を強く持っている」と言われています。左右対称でなく崩れている木の場合は、「気分が不安定で、いら立ちが強くある」と言われています。
⑥枝
描かれた実のなる木の枝が、どのようなものであるかによって描いた人に知性や情緒があるかがわかります。たくさんの枝がある場合は、「気分が高揚しがちで、空想家である」と言われています。枝が大きく広がっている場合は、「寛容だが、注意力が不足している」と言われています。
曲がった枝が四方に広がっている場合は、「こだわりがあり、没入しがちである」と言われています。枝が尖っている場合は、「批判的で、攻撃性が高い」と言われています。枝がない場合は、「引きこもりがちで、今の自分を変えたいと思っている」と言われています。
⑦実
描かれた木の実が、どのようなものであるかによって描いた人の目標についてわかります。実が枝についている場合は、「目標を持っていて、実行しているところである」と言われています。
実が枝から離れている場合は、「目標はあるが、阻まれて上手くいっていない」と言われています。実が落ちている場合は、「目標はあったが、あきらめてしまった」と言われています。
バウムテスト・注意点
バウムテストは簡単なやり方で実施でき、診断結果からさまざまなことがわかります。しかし、あくまでそれは性格や知能、発達などの側面の一部です。
そのため、実際に精神科等では、テストバッテリーといって他の心理検査と組み合わせたやり方で診断を行います。バウムテストは他の心理検査を実施する前の導入として用いられたり、検査を受ける人への理解を深めるために用いられたりしています。
バウムテストは補助的な検査
バウムテストと組み合わされる心理検査としては、知能検査や発達検査などがあります。それらの検査は国語や算数の問題を解くような検査で、知識や問題解決の力を測定するものです。このような検査と組み合わせることで、検査を受ける人をさまざまな側面から深く理解することができます。
異常判断が出ても気にしすぎない
バウムテストの診断結果を解釈するためには、本来、しっかりとした専門的な知識や経験が必要です。また、どうしても診断結果に解釈する人の主観が入ってしまいます。そのため、解釈する人によって診断結果に違いがうまれてしまうこともあります。
描いた絵を見る人によって解釈が違うことがあるので、たとえ診断結果が異常だとしても、あまり気にする必要はありません。もし自宅などで試しにやってみて、異常があるのではないかと思ったとしても、その解釈は必ずしも正しいわけではありません。専門家でない人が解釈するなら尚更です。
絵を描く心理検査について
バウムテスト以外にも、絵を描いてもらい、性格や精神状態などに異常があるか診断する心理検査があります。例えば人物画テストや家族画テスト、HTPテストなどがあります。いずれの検査にも専門的な知識や経験が必要です。また、どうしても診断結果に解釈する人の主観が入ってしまいます。それらについて注意する必要があります。
バウムテストで簡単に心理テストをしよう
バウムテストでは、たとえ診断結果に異常が見られたとしても、あまり気にする必要はありません。むやみに「異常な性格なのではないか」と判断しないようにしてください。それらを頭において、バウムテストをぜひ家族や友人と楽しんでみてください。簡単なやり方で、身近な人の意外な性格や深層心理が見えてくるかもしれません。