再婚禁止期間が短縮された理由とは?制度についてや男性・女性との違いも解説

再婚禁止期間が短縮された理由とは?制度についてや男性・女性との違いも解説

2016年に民法が改正され、離婚後に再婚する際の禁止期間が短縮されました。どのような理由で再婚禁止期間が短縮されたのでしょうか。そもそも再婚禁止期間とは、どういうものでしょうか?女性はもちろん男性もぜひ知っておきたい再婚禁止期間について、基本から解説します。

記事の目次

  1. 1.再婚禁止期間とは
  2. 2.再婚禁止期間・女性限定の理由
  3. 3.再婚禁止期間・短縮に関する改正民法
  4. 4.再婚禁止期間・例外とは
  5. 5.再婚禁止期間・問題点
  6. 6.再婚禁止期間の今後
  7. 7.再婚禁止期間は子供の為にも大切な期間

再婚禁止期間とは

Photo by3dman_eu

再婚禁止期間とは、現在の配偶者と離婚(死別の場合でも同様)した時点から一定の間設けられる、結婚してはいけない期間のことです。簡単に言えば、配偶者と離婚(または死別)した後、すぐに他の人と結婚することはできないという決まりのことです。

法的に新しい婚姻が認められるためには、離婚後一定の期間を空けなければなりません。ただし例外もあり、一定の理由があれば再婚禁止期間を無効にすることも可能です。

女性に限り定められた期間再婚不可

Photo byFree-Photos

この再婚禁止期間という取り決めは、女性だけに適用されます。女性が前夫と別れた後は、一定の期間再婚することができません。

この場合の「一定の期間」とは、具体的には100日間です。女性が離婚成立から100日間を経過していない場合、他の男性との婚姻届けを提出しても受理されません。

この100日間という期間は、離婚が成立した日からカウントします。離婚成立前から夫とはすでに離婚したも同然で長年別居していた、という場合でも法律で離婚が認められた日からでなければ数え始めることはできません。

法改正により現在の期間になる前は、半年間という長い期間が再婚禁止期間として課されていました。今回の法改正で100日間に短縮されたことは、再婚を望む女性にとってもその新しいパートナーにとっても、よいことといえます。

再婚禁止期間・女性限定の理由

Photo bydarksouls1

どうして女性にだけこのような再婚禁止期間が設けられているのでしょうか。その理由は、離婚後に生まれた子どもの親権にかかわっています。

もし離婚後に子どもが生まれた場合、その子どもが前夫と現在の夫どちらの子どもなのかをはっきりさせなければなりません。気持ちの上では「離婚したから前夫とはもう関係はない。子どもは現在の夫の子」と言いたいところですが、法律の上ではそれは違います。

法律では、生まれた子どもが離婚前の夫の子になるか再婚後の夫の子になるかは、きちんとした基準によって決められています。その基準が「出産時に離婚から何日経過しているか」という点なのです。

定められた期間と重複させない為

Photo byClker-Free-Vector-Images

民法では、離婚してから300日以内に生まれた子どもは前夫の子、再婚の日から200日を経過したのち生まれた子どもは現在の夫の子とする決まりがあります。

再婚禁止期間は、「ここまでは前夫の子どもになる」期間と「ここからは現在の夫との子どもになる」期間とが重ならないようにという配慮から生まれたルールです。このように、子どもの親権の所在を定めた期間同士が重複しないようにすることで、親権争いが発生するのを防ぐことができます。

なお、これは法律上の決まりごとなので実際の状況とは関係ありません。たとえ離婚前から前夫と別居して現在の夫と同棲していたとしても、子どもの親権は法律上の夫婦にあります。本当の父親が現在の夫だったとしても、それは法律とは関係のない事実なのです。

男性側には一切禁止期間が無い

Photo byStockSnap

前述のように、再婚禁止期間の定めは女性にだけ発効します。男性には再婚禁止期間はなく、前妻と別れたらすぐに違う人と結婚することができます。女性の負担を減らす今回の改正の後でも、この点は現行のままとなりました。

再婚禁止期間が設けられている理由は、離婚後に妊娠した場合に発生する親権争いの回避です。男性は妊娠する可能性がないので再婚禁止期間がないのは当たり前のことなのですが、このことが男女差別にあたるのではないかという意見もあります。

また、男性側には再婚禁止期間がないといっても、彼と結婚する女性側には再婚禁止期間が適用されます。男性と女性がそれぞれ現在のパートナーと離別して新しいパートナーと結ばれる場合、結局男性側からみても、一定期間が過ぎない限り籍を入れることができないということになります。この点では、男性も女性も変わらないと言えます。

再婚禁止期間・短縮に関する改正民法

Photo bywitwiccan

2016年6月1日に民法が改正され、再婚禁止期間が大幅に短縮されました。法律が改正される前は、再婚禁止期間として6ヶ月間が設定されていました。この期間が改正になったのには、非常に合理的な理由があります。

この改正で具体的には何が変わったのでしょうか。改正の内容とその理由について、少し詳しくみてみましょう。

6ヶ月から100日に短縮

Photo byrawpixel

今回の改正では、再婚禁止期間が約180日から100日へと大幅に短縮されました。その理由として、子どもの父親が誰かを判断する日数の重複が挙げられます。

生まれた子どもが前夫の子とみなされる期間は離婚後300日の間です。この300日間が明ければ子どもの親権争いの危険はなくなります。

いっぽう、民法では婚姻後200日を経過してから生まれた子どもは現在の夫の子とする、という規定があります。300日が経過して前夫の親権が消滅した時点と後夫との婚姻成立後200日の時点が重なれば、最短期間で現在の夫に親権が発生することになります。

このような例では、生まれた子に二重に親権が発生する期間は300マイナス200で100日になります。つまり平たく言えば、生まれた子どもが前夫と現在の夫どちらの子どもか判断するのに、6ヶ月もいらない(最短100日あればよい)ということになります。

再婚禁止期間・例外とは

Photo bykelseyannvere

再婚禁止期間には、例外もあります。もともと再婚禁止期間とは、生れてくる子どもの親権争いを防ぐためのもの。子どもの親権に影響がなければ、禁止期間を守る理由はなくなり、再婚禁止期間内であってもすぐに結婚することができます。こういった例外として、以下のようなケースが考えられます。

①離婚時に妊娠していない

Photo bygrafikacesky

離婚が成立すると、そのときから前夫は他人になります。その時点で妊娠していないことを立証できれば、それ以降に生まれた子どもはすなわちそれ以降に妊娠した子となり、前夫(つまり他人)の子である可能性はないことになります。したがって禁止期間の例外です。

逆に、離婚時に妊娠していることが非常にはっきりしている場合はどうなるのでしょうか。仮に女性が離婚時に臨月だったら、生まれてくる子どもは離婚成立前(つまり前夫と結婚していた時期)に懐妊した子どもなので前夫の子になります。前夫の子であることが確実なので、この場合女性は再婚禁止期間内であっても出産後すぐに再婚することができます。

ただしこういったケースでは、子どもの親権が前夫にあるので、親権争いが発生してしまいます。この問題点については、のちにもっと詳しく解説します。

②同じ相手と再婚

Photo bysusan-lu4esm

一度は離婚が決定したものの、いざ別れてみるとお互いの気持ちに気づき結局復縁することに。そんなラブコメディのような展開が実際にあったなら、これも再婚禁止期間の例外になります。

離婚の時点で女性が妊娠していたとしても、再婚禁止期間の根拠となっている「どちらの子どもかわからない」という問題が発生しないので、禁止期間を設ける理由もないということになります。この場合は当然、例外としてすぐに再婚することができます。

③妊娠の可能性が無い

Photo bycongerdesign

最初から子どもが生まれない、親権争いが発生する可能性がないという場合も例外となります。実際の判例では、過去に67歳の女性から再婚禁止期間の無効を求める申し立てがあり、例外として認められたケースがあります。

年齢によるもののほかにも、病気治療のために子宮を摘出したなど、医学的に妊娠の可能性がないと立証できる場合も例外と認められます。

過去には、優生手術を受けているという医師の証明書で再婚手続きを受けようとした事例もありました。現在では考えられない理由ですが、例外措置の一例として挙げることができます。

④夫の行方が分からない

Photo byFree-Photos

夫が失踪した場合、残された妻は夫からの遺棄を根拠に離婚訴訟を起こすことができます。この場合、妻からの訴えで離婚が成立した時点で、夫はすでに「失踪」とみなされるほど長期にわたって妻との接触を絶っていたことになります。つまり、夫の子を妊娠する機会はまったくなかったと判断されます。

こういったケースでは、離婚が成立すれば例外として100日を待たずに再婚することができます。実際に、夫が3年行方不明だった女性からの訴えで再婚禁止期間が無効とされた判例があります。

また失踪してから7年が経過すると自動的に夫は死亡とみなされ、妻は再婚ができる状態(死別)になりますが、この場合も同様に再婚禁止期間の無効を求めることができます。

再婚禁止期間・問題点

Photo byRobinHiggins

子どもの父親が誰かをはっきりさせるために設定された再婚禁止期間ですが、実際には数々の問題点が指摘されています。男女の間柄、親子の間柄を決定するには、この法律は不十分なのでしょうか。以下では、再婚禁止期間の問題点について、具体的な例を挙げてみていきます。

①女性差別ではないか

Photo bygeralt

すでに述べたように、男性には再婚禁止期間がありません。「子どもの父親をはっきりさせる」という目的から考えれば、女性の側だけに再婚禁止期間があるのは当然のことです。

ところが、女性だけに再婚禁止期間を設けるのは男女平等の原理に反するのではないかという意見もあります。実際には必要のないものであっても男性側にも再婚禁止期間を設ける、女性側の再婚禁止期間を撤廃するなど解決法はいくつか考えられますが、どれも実効性に欠け誰もが納得できるものとはいえません。

再婚禁止期間に限らず、男女の間を平等にするのは難しいもの。簡単に答がでるものではありません。この問題についても、議論が熟するのを待つしかないでしょう。

②離婚が上手く進まなかった

Photo byJosethestoryteller

離婚調停が長引いて、なかなか離婚が成立しないこともあります。その間、前夫とまったく接触がなくても、離婚成立後の再婚禁止期間を守らなければならないというのはナンセンスであると考える人もいます。

法律では、結婚が成立してから離婚が確定するまでは、どんな状態にあっても夫婦と考えられます。夫と妻の間にまったく接触がなかったとしても、離婚が成立するまでは法律上夫婦なのです。ですから、前夫と別居して現在の夫と同棲している場合、離婚が法的に認められるまで法律上の夫は前夫というジレンマを抱えることになります。

しかもその間に妊娠した場合、実際には現在の夫の子であることが明らかなのに、生まれた子どもが前夫の戸籍に入ってしまうという問題が発生してしまいます。その問題については、次の項で解説します。

③離婚前に妊娠が分かっていた

Photo bypedroserapio

前述したとおり、離婚前に妊娠した子どもは前夫の子ということになります。実際に前夫の子どもであるかどうかは関係ありません。

法律では、結婚しているときに妊娠した子どもは、実際の父親が誰であっても夫の子と判断されます。この場合あくまでも法律上の婚姻(離婚が成立していない状態)が基準であるため、前夫と別居中などの事情があっても考慮の対象にはなりません。

離婚前に妊娠がわかっていた場合は、その子どもが前夫の子になることも確実にわかります。離婚後に親権争いになることは確実です。

再婚禁止期間は親権争いを避けるために作られた決まりですが、再婚禁止期間を設けるだけでは、このようなケースでの争いを回避することはできません。そのため、争いを避けるという目的においては、再婚禁止期間は不十分なルールであるとの見方もできます。

再婚禁止期間の今後

Photo bysucco

再婚禁止期間を定めた法律(民法)は、1898年に成立したものです。当然、現在とは世相も大きく異なります。結婚と離婚のスタイルが大きく変わった今も、100年以上昔に作られた法律に重きを置く意味はあるのでしょうか。

再婚禁止期間の制度は、これからどのように変わってくるのでしょうか。これまでに提示された議論と、今後の見通しをまとめました。

再婚禁止期間の過去と現在

Photo byTentes

かつては、再婚禁止期間の定めはある程度の実効性をもっていたと考えられます。しかし結婚と離婚が多様化した現在では、この決まりはあまり意味をもたないことがわかってきました。実際には、再婚禁止期間があっても多くの争いが起きています。

いっぽうではDNA鑑定など血縁関係を証明する技術も進み、妊娠した時期で誰の子どもかを判定する法律はすでに時代遅れで不要なものとの意見もあります。

制度そのものが不要という意見も

Photo byAlexas_Fotos

夫婦の仲や親子の関係を法律から判断するのは、容易なことではありません。ここまでにみてきたとおり、再婚禁止期間を設けることはさまざまな問題があります。

家族、夫婦という形が多様化していく中で、現行の法律にも柔軟な対応が望まれています。再婚禁止期間の決まりも、その一例です。こういった声が多く寄せられれば、将来的には廃止されることも考えられます。

再婚禁止期間は子供の為にも大切な期間

Photo byPublicDomainPictures

再婚禁止期間は、これから生まれてくる子どもの親権をはっきりさせ、争いをなくすための大切なシステムです。離婚から一定の期間をおくことは、自分たちを見つめなおすよい機会にもなります。

とはいえ問題点も多く、現実と乖離しているというのもまた事実です。再婚禁止期間が今後の法改正でよりよいシステムとなることが、強く求められます。

kinokoya
ライター

kinokoya

読書と猫と手作りをこよなく愛する40代です。楽しくて役に立つ情報を発信していきたいと思っています。よろしくお願いします!

関連するまとめ

人気の記事