親族・身内に対しても香典を渡す必要がある
結婚式に招待されたのであれば、前々から分かっているため落ち着いて準備をすることが可能です。しかし葬儀の場合は突然知らされますし、ショックもあって落ち着いて準備することは難しいです。
だからこそ、常日頃から葬儀についてのマナーを知識として持っておく必要があります。葬儀のマナーはいくつかありますが、その中でも覚えておきたいマナーの一つが、香典についてです。
香典とは、故人の霊前に線香やお花の代わりにお供えする金品の意味があり、日頃の感謝を表す意味ももっています。そのため、親族や身内の葬儀であっても、香典は必要となります。
しかし、香典は個人との関係によって金額の相場が変わりますし、お金の包み方や香典袋への書き方、渡し方など細かいマナーが存在します。今回は、そんな親族の葬儀に渡す香典についてのマナーをご紹介します。
親族への香典の金額相場
香典のマナーで最初に知っておきたいことが、包む金額の相場です。基本的に故人との関係が深いほど相場の金額も上がります。ただし、血縁関係が遠くても親しくお付き合いしていた親族の葬儀であった場合は、相場の金額以上を包んでもいいでしょう。
しかし、反対に香典に包んだ金額が相場より低かったと気づき、後で改めて不足分の香典を持っていくことは、不幸が重なるという考えから香典の重大なマナー違反となっています。
また、香典を渡した相手からは香典返しが贈られるケースが一般的です。香典で包んだ金額が、相場とあまりにも違っていると、香典返しでのトラブルが発生する場合もあります。
そのため、親族の葬儀における香典の金額相場を知っておくことが大切となります。親族へ渡す香典の金額相場は、続柄や自身の年齢によって異なりますので、故人との続柄ごとに香典の金額相場をみていきましょう。
祖父母・配偶者の祖父母
一つ目は、自分の祖父母や配偶者の祖父母の葬儀における、香典の金額相場です。二十代の場合は1万円程度、三十代の場合は1万円から3万円程度、四十代以上では3万円から5万円程度が相場となります。配偶者の祖父母であっても、金額の相場は変わりません。
父母・配偶者の父母
二つ目は、自分の父母や配偶者の父母の葬儀における、香典の金額相場です。二十代では3万円から10万円、三十代以上では5万円から10万円程度が相場となります。配偶者の父母であっても同様の金額相場です。
自分に一番近い親族となるため、香典の金額も高くなる傾向があります。ただし父母の葬儀の場合は、香典を渡す必要性がないケースもあります。後ほど詳しくご紹介しますので、参考にしてください。
兄弟姉妹・配偶者の兄弟姉妹
三つ目は、自分の兄弟姉妹や配偶者の兄弟姉妹の葬儀における、香典の金額相場です。二十代では3万円から5万円ほど、三十代以上では5万円ほどが相場となります。
配偶者の兄弟姉妹の葬儀の場合も、同様の金額となります。兄弟姉妹は、父母の次に近い血縁関係となるため、香典の金額相場も高くなります。
叔父・叔母
四つ目は、叔父や叔母の葬儀における香典の金額相場です。叔父や叔母の場合は、1万円から3万円が相場となっています。血縁関係がご紹介した続柄よりも薄くなることもあり、年齢によってそれほど相場が変わるということはありません。
叔父や叔母の場合は、普段のお付き合いによって相場の金額を決めてもいいでしょう。配偶者の叔父や叔母であっても、同様の相場となります。
その他の親戚
五つ目は、その他の親戚の葬儀における香典の金額相場です。この場合は3千円から2万円程度が相場の金額となります。ご紹介した叔父や叔母の時と同様、普段のお付き合いによって相場を決めましょう。
親族への香典が必要ない場合
続柄や自身の年齢によって金額の異なる、親族の葬儀で渡す香典の金額相場についてみていきました。相場があるように、親族の葬儀でも香典を渡すのがマナーとなっていますが、ケースによっては香典が必要ない場合もあります。続いては、親族への香典が必要ないケースについてみていきましょう。
同居していた親族が亡くなった場合
一つ目のケースは、同居していた親族が亡くなった場合です。ただし、同居していれば絶対に香典を渡す必要がないというわけではありませんので、他の親族や身内の方に確認した方が良いでしょう。また親族と同居していなくても、自分が喪主となっている場合は香典を渡す必要はありません。
故人が香典を辞退していた場合
二つ目は、故人が香典を辞退していた場合です。近年では故人の遺志や喪主の考えにより、香典を辞退するケースも増えています。こういった場合はどんなに親しい親族であっても、香典を渡す必要はありません。
香典を辞退している場合は、葬儀の案内状や忌中に記載されているため、よく確認しましょう。相手が香典を辞退しているのに、香典を渡すのはあまりスマートとはいえません。どうしても何かお供えしたい場合には、事前にご遺族から了承を得るようにしましょう。
ただし、相手によってはお供え物も辞退している場合があります。本来香典を辞退しているということは、相手にとって香典やお供え物が負担になってしまうというケースが大半です。
お世話になった親族の葬儀だからこそ香典を送りたいという気持ちも分かりますが、ご遺族の気持ちを尊重することも忘れてはいけません。
親族への香典の渡し方のマナー
親族の葬儀で渡す香典の金額相場や、香典を渡す必要のないケースについてみていきましたが、香典についてのマナーはまだあります。まずは、親族への香典の渡し方に対する、お札の包み方や金額についてのマナーをみていきましょう。
お札を包むマナー
結婚式やお祝い事に包んでいくお札は、シワのないピン札にするのがマナーです。しかし、香典に包むお札にピン札を使ってはいけません。香典でピン札を包んでしまうと、故人が亡くなるのを予想してピン札をわざわざ用意していたという考えになってしまうからです。
ピン札が普段からたくさんあるという方は少ないため、香典に包むお札がないというケースは少ないでしょうが、万が一ピン札しかない場合は、一度お札を折ってシワをつけてから包みましょう。
ただし、だからといってあまりにもシワだらけのお札や汚れたお札を包むのもマナー違反となりますので、注意しましょう。
お札の向き
香典にお札を包む際のお札の向きについては、マナーが様々あるため、そこまで気にする必要はないでしょう。ただし、一般的にはお札の表面、顔が描かれている方を下に向けて入れる裏向きが良いとされています。
金額のマナー
続いては、金額に対するマナーです。結婚式に渡すご祝儀でも、「2万円は縁起が悪いから避けた方が良い」というマナーがあるように、香典にも避けた方が良い金額があります。まずは2万円、4万円、6万円といった偶数の金額です。
偶数は重なるというイメージがあり、不幸が重なると捉えられています。そのため、香典には1万円や3万円など、奇数のお札を用意しましょう。
また、奇数であっても9が含まれる金額は避けましょう。9は「苦」を表す忌み数字となっているからです。4も「死」を表す忌み数字となりますが、偶数の金額は元々香典には不向きな金額となります。
親族への香典袋のマナー
親族の葬儀で渡す香典の金額相場や、お札の包み方、包む金額で避けるべき数字など、香典の中身についてをみていきました。続いては、香典を渡すタイミングや渡し方、香典袋の書き方や選ぶべき香典袋についてをみていきましょう。
通夜・葬儀・告別式などで渡す
まずは、香典を渡すタイミングや渡し方です。基本的に香典は、相手から訃報を受けた後のお通夜や葬儀、告別式に参列するときに持っていき、受付の方に渡します。受付には記帳台があるケースが多いため、記帳を済ませた後に香典を渡すという流れになります。
香典は相手が読める向きで、両手で渡します。なお、仏葬や神葬の場合は、香典を渡す時に「この度はご愁傷様です」とお悔やみの言葉を一言述べましょう。長々としたお悔やみの言葉はマナー違反となります。
また、お悔やみの言葉ははっきちと告げず、語尾を濁すような小声で告げましょう。急な訃報でお通夜のときに香典が用意できない場合もあります。その時には、葬儀や告別式の時に改めて持参して渡せば問題ありません。
香典を袱紗で包む渡し方
香典袋は、袱紗に包んで渡す渡し方の方がスマートと言えます。汚れを避ける意味合いからも、香典袋は裸で持ち歩かず、袱紗に包んで渡しましょう。ただし、袱紗に包んだまま香典を渡してはいけませんが、かといって相手に渡す前から香典を取り出してもいけません。
袱紗に包んで香典を渡す渡し方としてスマートな方法は、相手に香典を渡す直前まで袱紗で包んでおき、手渡す段階になったらゆっくりと開いて、袱紗を香典と同じくらいの大きさに畳んでから渡します。袱紗の扱いに慣れていないと、いざ渡す時にまごつきがちです。
事前に袱紗の扱いに慣れておくと、スムーズな渡し方ができます。また、袱紗は様々なバリエーションカラーがありますが、葬儀などの弔事では紺やグレー、紫といった寒色系を選びましょう。特に紫は結婚式などの慶事にも使える色のため、袱紗を一枚だけ選ぶ場合には紫を選ぶのがおすすめです。
葬儀を欠席した場合の香典の渡し方
万が一都合がつかず親族のお通夜や葬儀、告別式に欠席しなければならない場合は、まず電話でお悔やみの言葉と共に、「どうしても都合がつけられず」などと欠席の連絡をしましょう。
本来ならばお通夜、葬儀、告別式のいずれかが香典を渡すタイミングとなりますが、後日ご自宅に弔問して香典を渡す方法もあります。ただし、葬儀後は相手も忙しいため、事前に必ず予定を確認することを忘れてはいけません。
葬儀が終わっているため、お悔やみの言葉を必要以上に小声にする必要はありませんが、それでもハキハキと話すのはマナー違反になります。
もし四十九日の法要で香典を渡す場合には、葬儀やお通夜の時と渡し方が異なり、お悔やみの言葉は必要ありません。軽く頭を下げて、両手で香典を渡せばいいでしょう。
包む金額により使い分ける
香典袋は一般的なスーパーや文具店はもちろん、コンビニでも販売されています。しかし、一口に香典袋と言っても、デザインのバリエーションが豊富です。
祝儀袋のときも同じことが言えますが、包む金額に適したデザインの香典袋を選ぶ必要があり、包んだ金額と香典袋のデザインがあまりにもアンバランスにならないようにしましょう。
香典袋の外装には、包む金額の目安が書かれていることが多いため、買う前にきちんと確認する必要があります。また、香典袋に描かれている水引は、結び切りやアワビ結びなど、「一度結んだら繰り返さない」という意味を持つ結び切りの水引を使うのが基本です。
筆で文言を書く
香典袋にお札を包んだらそれで終わりではありません。表袋には表書きと名前、内袋には自分の住所や金額などを書く必要があります。まず、表袋に使う筆は通常の黒色ではなく、薄墨という灰色がかった色を使います。
薄墨は、亡くなったことが悲しくて、涙で墨が薄くにじんでしまったという気持ちを表しているのです。薄墨の筆ペンはコンビニでも手に入る時代ですので、いざというときに使えるように一本は用意しておくと慌てずに済みます。
毛筆や筆ペンではなく、サインペンを使うことは、あまりいい考えとはいえません。サインペンは略式とみなされるためです。ただし中袋に書く場合には、読みやすさを重視するためサインペンを使っても構いませんし、薄墨である必要もありません。
事前に相手の宗教や宗派を確認する
表書きは種類が多く、相手の宗教や宗派に合わせた表書きを使う必要があります。日本は仏葬が多いため、一般的にはお通夜や葬儀で渡す香典の表書きは「御霊前」が知られています。
しかし表書きの種類は他にも、「御香料」や「御香典」「御花料」など実に数十種類が存在します。自分の父母や兄弟の場合は自分と同じ宗派であるケースが多いため迷いませんが、配偶者側の葬儀や叔母、叔父など遠い親族になると、一概に自分と同じ宗派とはいえません。
スマートな香典の渡し方として、事前に相手の宗教や宗派を確認しておくことがおすすめです。また、宗派によっても表書きが異なるため、宗教のみでなく、宗派まできちんと確認しましょう。
親族への香典は関係性で金額が変わる
今回は、親族に渡す香典の必要性から、渡す金額の相場、渡し方や香典袋のマナーについてご紹介しました。親族の葬儀で香典を渡すという経験は避けては通れないものですが、頻繁にあるものではありませんし、縁起のいい話ではありません。
そのため、渡し方や香典袋についてのマナーを積極的に覚えていないケースも多いです。しかし、香典を渡す時は最後のお別れの時です。親族として恥ずかしい思いをしないように、香典の渡し方についてのマナーはしっかりと覚えておきましょう。