【寸志とは】意味
「寸志」の読み方は「すんし」です。寸志とは一般的に目上の人から目下の人へ、お礼や感謝のちょっとした気持ちを金銭や品物で表す際に使う言葉です。別の言い方で「心付け」とも呼ばれます。寸志とはお金で渡す場合はのし袋に入れて渡し、歓迎会や送別会の会費の足しとして、上司から部下へ寸志として現金が渡される場合があります。
寸志を貰ったり、渡す際には実は色々なマナーや決まりごとがあり、特にビジネスシーンで初めて寸志を貰った時の対応やお礼の仕方、また寸志の渡し方や相場など、社会人として知っておくべきことがいくつかあります。
意味①少しの気持ち
寸志とは、お礼の際に「ちょっとした気持ちを込めた贈り物」という意味で使います。寸志の「寸」には「ほんの少しの」という意味、「志」に「気持ち」という意味があります。「ちょっとした気持ちを込めた贈り物」という意味がある為、基本的には寸志を送る側が「へりくだって」使う言葉になります。
意味②御礼
寸志とは、目上の人が目下の人へちょっとした感じのお礼の気持ちを、お金や品物で表すことと先述しましたが、それでは見下の人が目上の人へお礼をする場合どのような言葉が適切なのでしょうか?この場合、寸志という言葉を使うのではなく「御礼」という言葉を使います。同義語に「松の葉」という言葉がありますが、意味は同じです。
【寸志とは】ボーナスとの違い
寸志とボーナスも同じ会社から支給される物ですが、どの様な違いがあるのでしょうか?基本的に、法律上の規定では、寸志もボーナス違いはありません。但し、比較的小規模の中小企業の場合、ボーナス程の金額を出すことができない為、その代わり寸志という形で少ない金額で、気持ちだけでも特別な報酬を給与として社員に与えるケースがあります。
従って、寸志とボーナスの意味は同じですが、大きな違いは、金額が多いか少ないかというところにあります。
ボーナスの意味
ボーナスとは、月の固定のお給料とは別に支払われる、特別な給料のことです。基本的には夏と冬の年2回支給される場合が多いですが、会社によっては年1回や年3回というケースもあり、ボーナスの形態や相場は様々です。ボーナスの金額の相場の平均は中小企業で約1か月、大企業で約2.5か月分と言われています。
但し、全ての会社にボーナス支給の制度がある訳ではなく、もともと制度として導入していない場合もあります。また、初めから特に月給~月分という規定ではなく成功報酬制でボーナスを支給している会社もあります。
寸志とはボーナスと意味はほとんど同じ
基本的に寸志とはボーナスと意味「会社からのお礼」という意味でほとんど同じなのですが、金額にはかなりの違いがあります。一般的な寸志の金額の相場は1万円前後ですが、ボーナスは月給の1か月分以上もらえる場合が殆どの為、仮に月給が20万円だとして、その企業のボーナスの規定が月給2か月分であれば、ボーナスの金額は40万円になります。
寸志とボーナスは経理上扱いも同じ
寸志を現金として会社側から受け取った場合、ボーナス・賞与と同じように会社から社員へ支給されるお金とみなされる為、課税の対象になりますので注意しましょう。従って、会社の経理上の扱いでは、寸志を受け取った社員と、ボーナス・賞与を受け取った社員との違いはなく、同様の扱いになります。
失礼にならない寸志の渡し方
ここでは一般的な寸志の渡し方の説明をします。寸志を現金でのし袋に入れる場合、袋は一般的には水引き無しの、のし袋を使い、表書きは黒墨で「寸志」と書き、下に自分の名前を書きます。また、書くときにはボールペンではなく筆ペンを使う方がより丁寧と言えるでしょう。これが寸志を金品などで上げる場合の一般的な渡し方になります。
また、後述しますが、送別会や歓迎会などの際に、上司が部下の幹事役に会費の足しとして寸志を渡すケースもあります。これについての渡し方の決まりは特にないのですが、大体の予算を事前に聞いておき、それなりに社員の支払いを軽減できるくらいの金額を、幹事に渡しておくのが良いとされています。
寸志とは目下の人に渡すもの
寸志とは大切なのは「目上の人から目下の人に渡すもの」に限って使われる言葉なので注意しましょう。ビジネスシーンに於いては、上司から部下の幹事に忘年会や歓送迎会を開催するにあたり、お礼として寸志が渡されることがあります。あるいは、パーティーなどに主賓として招かれた場合に、参加費用を支払わない代わりに寸志を渡すケースもあります。
また、冠婚葬祭の場でも寸志のやりとりをみにすることがあります。この場合もやはり注意が必要なのは、渡す人と渡される人の関係であり、必ず寸志は「目上の人から目下の人に渡すもの」と決まっているので、必ず覚えておきましょう。
寸志の相場は5000円~10000円
寸志には特に決まった相場がある訳ではありませんが、一般的に相場は、5,000円~10,000円程のケースが多く見られます。ボーナスがない会社でその年の売り上げが特に好調であったりする場合5万円前後の寸志が支払われるケースもあります。また、忘年会などの費用を、部長や社長が全て寸志で支払い、社員の負担を無くすという渡し方もあります。
従って、寸志の相場は場合によって変わることがあると考えて良いでしょう。また、寸志とは全ての場合に於いて現金を支給されることではないので、別の形で寸志を受け取った場合も必ずお礼をすることを忘れない様にしましょう。
寸志を貰った時のマナー
次に、寸志を貰った際のお礼の仕方などの説明をしていきます。寸志とはあくまで杓子定規のようなものではなく、目上の人からの好意によって渡される物なので、貰った際には必ずお礼を述べる必要があります。ただその際にいくつか重要な注意点がありますので、詳しく解説していきます。
お礼を言う
寸志をもらった場合、当然のことながら貰った側はお礼を言うのですが、先ず貰った側は「寸志」を別の言葉に言い方に言い換える必要があります。これは何故かというと、先述の通り寸志とは、送る側があくまで自分自身を「へりくだって」使う言葉です。故に、目上の人から「へりくだって」貰っている為、お礼の仕方に少し工夫が必要になります。
寸志を貰った場合、特別な言い方でお礼をすることがマナーとされています。それが「厚志」という言葉です。
寸志をいただいたとは言わない
先述の通り「寸志」をいただいた場合、「~様から寸志をいただきました」という表現を使ってはいけません。そこで使われる言葉が「ご厚志」です。「厚志」は「こうし」と読みます。但し、目上の人に対して使う言葉の為「ご厚志」と丁寧語を使うのが一般的なマナーです。「ご厚志」の意味は、「厚い志」という意味です。
同義語として「ご芳志」という言葉がありますが、意味はほとんど同じです。「ご厚志」や「ご芳志」の使い方として「~部長からご厚志をいただきました」また「本日の忘年会は弊社~社長からご芳志を頂戴致しましたので、皆さま年始には必ず御礼を言いましょう」などのように使われます。
また、ここで大切なのは寸志をいただいた場合に明確な金額を発表するのことを控えるのがマナーの一つだということです。寸志とは金額は一切関係なくあくまで目上の人からの好意で差し出される物なので、このあたりもわきまえた方が良いでしょう。
寸志とは日本独特の美しい言い回し
これらの「寸志」や「ご厚志」といったマナーやお礼の仕方などは、日本特有の文化であり、このようなやり取りは海外ではほとんど見られません。これは特に日本人が目上の人を敬い接すること、また同時に目上の人も自分ををへりくだって丁寧に話し、相手とのコミュニケーションを取るという、とても美しい日本独特の文化と言えます。
それと同時に、約2600年という長い年月により築き上げられた、日本の文化である「日本語」の奥深さ、繊細さにも気付かされます。
寸志とは気持ちで渡すお金
ここまで寸志についての様々なルールやマナーを説明してきました。冒頭に記した通り寸志とは、あくまで「ちょっとした感謝の気持ち」を目上の人が目下の人対し「敢えてへりくだって」上げるものなので、寸志を貰った場合、それに対して敬意を表したお礼をすることが社会人として大切です。
また、寸志というものは組織の中で生きていく上で、人間関係をより潤滑にするといった意味や効果もあるので、適切な場面でそれに見合った金額を差し出すことも重要だと言えます。組織や企業の中でより良好な人間関係を構築する為にも、この様なビジネスマナーはしっかりと身に着け、一目置かれるような存在を目指してみましょう。