12月の時候の挨拶のルール
時候の挨拶とは、手紙やメールを書くときに用いられる冒頭の挨拶のことで、季節に合わせて季語を入れ替える必要があります。
そのため、同じ12月でも上旬、中旬、下旬では、それぞれ使うべき季語も異なり、違った書き方で時候の挨拶を書く必要があるのです。
今回は、12月の時候の挨拶の書き方を例文付きでご紹介。上旬、中旬、下旬まで時期に合わせて使える表現をご紹介していきましょう。
時候の挨拶とは、手紙やメールの冒頭で頭語の後に続く、書き出しの言葉を指しています。季節にちなんだ挨拶をするこの表現方法は、日本独自の伝統的な習慣と言われています。
時候の挨拶にも、俳句の季語と同じく書き方にルールがあり、適切な時期に適切な季語を使用しなければ、受け手にとってはおかしな内容だと判断されてしまうのです。ビジネスシーンでもおかしくない、時候の挨拶の仕方をしっかりと覚えましょう。
上旬・中旬・下旬で書き出しが違う
時候の挨拶は、日本の二十四節気にちなんだ季語を書くことがルールとなっています。冬至を基準として、一年を24分割して季節を表すのが二十四節気です。
二十四節気によると12月は、小雪(しょうせつ)11月22日頃~12月6日頃、大雪(たいせつ)12月7日頃~12月21日頃、冬至(とうじ)12月22日頃~1月4日頃の3つの季節に分かれています。
そのため、同じ12月でも上旬、中旬、下旬ではそれぞれ季節が違うということになりますので、時候の挨拶で季節感を出すためには、この二十四節気に合わせた挨拶文を使うというのが書き方の基本となります。
12月の季語一覧
時候の挨拶に使える12月の季語にはどんなものがあるのでしょうか?以下にメールや手紙を書く時に参考にできる12月の季語の一例をあげてみます。
動物なら、兎(うさぎ)・鴛鴦(おしどり)・白鳥・狼(おおかみ)・狐(きつね)植物なら椿(寒椿)・寒菊・山茶花・シクラメン・柊(ひいらぎ)・白菜・れんこん、風物ならゆず湯、クリスマス、お歳暮、忘年会、冬休みなどがあります。
下旬であれば、御用納めや冬休み、里帰り、大晦日そして大掃除や年越しそばなども季語として時候の挨拶に使用することができます。
12月の時候の挨拶の書き方【丁寧な手紙の場合】
12月の季語と時候の挨拶にまつわる基本ルールも押さえたところで、続いては、時候の挨拶の書き方をシーン別に例文付きでご紹介していきます。
まずは、目上の方や取引先の上司といった方に宛てて「丁寧な手紙」を書く場合の時候の挨拶について見ていきましょう。どんな表現を取り入れるのか?また、書き方の手順もしっかりと覚えて印象の良い手紙をかけるようになりましょう。
季語を取り入れて時候の挨拶にする
12月の時候の挨拶に使える季語の中で、特に丁寧な手紙を書きたい場合には、師走、寒冷、初冬、歳末、歳晩、明冷、初雪、霜夜、霜寒、新雪、極月、孟冬、忙月、短日、厳寒、短日、寒気のような季語を使用するのが適切です。
使用する季語も、上旬、中旬、下旬で異なりますので、必ず日付を確認してからどの季語ならふさわしいかを選んで書く必要があります。例えば、初旬であれば「初冬」が適切な季語の一つです。書き方は、次項目で詳しく説明します。
「~の候」「~のみぎり」「~の折」と組み合わせる
12月の時候の挨拶の書き方は、先ほどご紹介した季語の後ろに「~の候」「~のみぎり」「~の折」を組み合わせて書き出します。例えば「師走の候」「寒気厳しき折から」「厳寒のみぎり」のように使用します。
この時候の挨拶に続けて、安否の挨拶を加える書き方が一般的で、例文としては「師走の候、皆様におかれましては、ますますご清祥のことと心よりお喜び申し上げます。」のように使用します。
時候の挨拶と安否の挨拶を組み合わせた書き方をもう一例挙げてみましょう。「歳末ご多端の折、ますますご清祥でご活躍のことと存じます。」のように表現します。
12月の時候の挨拶の書き方【親しい相手の場合】
丁寧な手紙を書く際に使える12月の時候の挨拶には、二十四節気にそった季語を使用しつつ、「~の折」「~のみぎり」「~の候」と続けて書く書き方が基本です。時候の挨拶にプラスして安否の挨拶を加えれば、大変丁寧な印象の書き出しになります。
しかしながら、親しい間柄の友人や、気心の知れた方にこういったかしこまった挨拶をすると、かえって空々しい感じを与えてしまいます。親しい方に宛てて手紙を書く際には、もう少し打ち解けた雰囲気の書き方をするのが良さそうです。
砕けた表現を使える
親しい方への手紙の書き方として、時候の挨拶にはそれほど改まった季語を入れなくても良いということが挙げられます。「寒さもひとしお身にしみるころ」「年の瀬も押し迫ってまいりました」のような少し砕けた表現を取り入れてもかまいません。
時候の挨拶の意味は、あくまでも季節感の演出です。「心せわしい年の暮れ」や「本格的な冬将軍の到来です」といった心情や気候を表す表現なども、季語の代わりに使用することができるのです。
また、季語の代わりに12月の季節感を感じられるような行事や植物を取り入れるというのも、親しい方への手紙を書く際にふさわしい書き出しの表現と言えます。
安否の挨拶と組み合わせられる
以下に、親しい人に宛てた手紙で、12月の時候の挨拶として使えるような例文を少し挙げてみましょう。「寒さもひとしお身にしみるころ、皆様いかがお過ごしでしょうか。」のような表現も親しみがあって大変良い書き出しです。
時候の挨拶に加えて、安否の挨拶もカジュアルにすることで、より親近感がわく表現となっています。もう一つ例文を挙げてみましょう。
「本格的な冬将軍の到来ですね。皆様お変わりございませんか。」このように、少し口語を混ぜて、実際に語りかけているような形で書き出すと、時候の挨拶も安否の挨拶も、砕けた中に相手の配慮や気遣いが感じられる表現となるのではないでしょうか?
12月の時候の挨拶の書き方【漢語調】
12月の時候の挨拶の書き方、続いては、かしこまった挨拶やビジネスで使う文書などに用いる「漢語調」の挨拶の書き方を見ていきましょう。
漢語調の挨拶文の場合も書き出しは、他のビジネスレターの書き方と同様で前文には「頭語+時候の挨拶+相手の安否を気遣う挨拶+日頃の感謝+(主文・末文)+結語」という順序で認めます。
書き出しに入れる「頭語」と、本文の終わりを締める「結語」の使い方によって、より相手に丁寧な印象を与えることができます。目上の方や取引先の上司といった方に宛てて書くときは、この点に特に注意が必要です。
12月上旬の時候の挨拶
まずは、漢語を使った12月上旬の時候の挨拶から例文を見ていきましょう。12月上旬(12月6日頃まで)の季節は、小雪と言います。この時期の季語は、以下のどれかを使えば問題ありません。
師走の候(しわすのこう)、初冬の候(しょとうのこう)、初雪の候 (はつゆきのこう
)、孟冬の候 (もうとうのこう)、季冬の候 (きとうのこう)の5つです。
最後にご紹介した季語「季冬」には、「冬の終わり」という意味がありますが、陰暦12月を表しているとも言われる季語ですので、12月上旬に使用してもまったく問題はありません。
12月上旬の例文
非常に丁寧な時候の挨拶の例文としては「謹啓 初冬の候、貴社ますますご隆盛のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。」そして文末に「謹白」の結語を入れましょう。
続いて一般的な漢語を使った時候の挨拶の例文です。「拝啓 初雪の候、貴殿におかれましてはますますご健勝の由、何よりと存じます。日頃は特別のご厚情にあずかり心より御礼申し上げます。」結語は「敬具」で締めます。
同じ12月上旬でも、北海道や東北、北陸といった地域の方に手紙を出す場合には、初雪の時期が関東以西の地域よりも早いという特徴があります。暦だけでなく、受け取る方の地域の気候にも配慮して季語を選びましょう。
12月中旬の時候の挨拶
12月中旬は、二十四節気でいうと大雪に当たります。12月中旬とは12月7日頃から12月21日頃の時期です。この時期の時候の挨拶に使える季語を含めた表現は以下の通り。
「師走の候」(しわすのこう)、 「大雪の候」(たいせつのこう)、「霜寒の候」(そうかんのこう)などです。師走の候は12月上旬にも使える時候の挨拶ですが、12月中旬に使用しても問題はありません。
「今年もいよいよ最後の月を迎えました」という意味がありますので、12月上旬と中旬の両方に使用できるのです。「候」は、漢語で「季節の移ろい」を表す表現です。手紙の書き出しで迷ったら、「候」をつけるのがおすすめです。
12月中旬の例文
12月中旬の時候の挨拶の書き方、続いては例文を見ていきましょう。まずは、丁寧な手紙や目上の方へのビジネスレターの書き出しからご覧ください。
「謹呈 師走の候、貴社にはいよいよご盛栄の段、お慶び申し上げます。平素はなにかとご愛顧にあずかり厚く御礼申し上げます。」のように書き出します。結語には「謹白」を入れましょう。謹呈は拝啓よりもさらに丁寧な表現です。
続いて、一般的な手紙を書く場合の例文です。「拝啓 霜寒の候、貴社益々ご発展のことと大慶に存じます。日頃は特段のお引き立てをいただき誠にありがとうございます。」のように書きましょう。結語は「敬具」です。
12月下旬の時候の挨拶
続いて、12下旬の時候の挨拶を見ていきましょう。12月下旬は、二十四節気の中心となる「冬至」(12月22日頃~1月4日頃)の時期に当たります。まずは、どんな季語を使った時候の挨拶をするのかご覧ください。
12月下旬の時候の挨拶に使える季語は、「冬至の候」(とうじのこう)、 「歳晩の候 」(さいばんのこう)「歳末のみぎり」(さいまつのみぎり )などがあります。年の瀬、年の暮れを表す冬の季語です。
「みぎり」という書き方は、「候」と同じでその季節の天候の様相を表す表現です。ひらがなになる分、やや柔らかい印象を与えるので、女性が手紙を書く際に好まれる表現です。
12月下旬の例文
続いて、12月下旬の時候の挨拶の例文をご紹介していきます。丁寧な手紙や目上の方への手紙を送る場合は、「恭啓 冬至の候、貴社におかれましてはますますご清栄のことと慶賀の至りに存じます。」
続けて「常々ひとかたならぬご配慮を賜り心より御礼申し上げます。」のように書きましょう。結語は「頓首」です。
続いて、一般的な手紙を書く場合の例文を見てみましょう。「拝呈 歳晩の候、貴殿にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。日頃はなにかとお心配りをいただき厚く御礼申し上げます。」のようにまとめます。結語は「敬具」です。
12月の時候の挨拶の書き方【口語調】
ここまで、漢語調の時候の挨拶について、例文を挙げてご紹介致しました。堅苦しくかしこまった表現が多いので、親しい方や友人に手紙を送る際には、漢語調ではなく口語調を用いるのが一般的です。
親しみを感じさせる口語調の時候の挨拶は、どのような書き方が良いのでしょうか?基本は、やはり「季節の挨拶」+「安否の挨拶」を組み合わせて書く書き方がおすすめです。
砕けていながらも、季節感をしっかりと演出できる口語調の時候の挨拶の書き方、12月上旬、中旬、下旬に分けて以下にご紹介していきます。
12月上旬の時候の挨拶
まずは、12月上旬に送る口語調の手紙には、どんな時候の挨拶を書くのがふさわしいのでしょうか?12月上旬(12月6日頃まで)に送る手紙の例文を見てみましょう。
「寒気日増しにつのり、冷え込みの激しい毎日ですが、お変わりございませんか。」、「 暦の上でははや大雪を迎えますが、いかがお過ごしでしょうか。」といった表現を使ってみましょう。
手紙の結びの書き方は、「寒さ厳しくなります折、くれぐれもお体にはご留意なさってください。」あるいは、「今年も残りわずかとなりました。悔いのない一年にしましょう。」といった表現を入れると良いでしょう。
12月上旬の例文
12月上旬に使える時候の挨拶の例文を見てみましょう。まずは、丁寧な表現からです。「謹啓 朝夕の凍てつくような北風が肌身にしみるこの頃です。」のように書き出します。
続けて安否の挨拶を「ご健勝にてお過ごしのことと拝察申し上げます。平素は種々のお心遣いを頂戴し、ここに厚く御礼申し上げます。」とまとめます。結びは「寒さ厳しくなります折、くれぐれもお体にはご留意なさってください。」
結語は「謹白」です。続いて一般的な表現の例文を見てみましょう。「拝啓 庭に咲いたさざんかが凛とした美しい姿を見せております。」のように書き出します。
その後、安否に関する挨拶に続けます。「皆様にはその後お変わりなくお過ごしのこととお喜び申し上げます。常々たくさんのお心尽くしをいただき、感謝の念にたえません。」などを付け加えましょう。
結びの部分は、「木枯らしに負けませんよう、どうぞお元気でお過ごしください。」のようにまとめます。結語は「敬具」にしましょう。時候の挨拶には、季節の移ろいをうまく取り入れるのがポイントです。
12月中旬の時候の挨拶
続いては12月中旬の時候の挨拶を見ていきましょう。12月中旬は、大雪(12月7日頃~12月21日頃)の時期に当たります。まずは文頭の書き方から解説します。
「今年も押し迫り、とりわけご多忙のことと拝察いたします。」あるいは「師走のみぎり、お忙しくご活躍のことと拝察いたします。」などを使いましょう。
結びの言葉には「気ぜわしい毎日かと存じますが、お体を大切になさってください。」あるいは「これからなにかと飲む機会も多くなります。体調をくずされませんよう。」などを入れましょう。
12月中旬の例文
12月中旬の時候の挨拶、続いては具体的な例文を見ていきましょう。まずは、丁寧な手紙の例文からご覧ください。「粛啓 今年も押し迫り、とりわけご多忙のことと拝察いたします。」から書き出します。
続けて、安否の挨拶ですが「ますますご隆盛の由、欣快の至りに存じ上げます。平素は過分のご高誼を賜り、まことにありがたく御礼申し上げます。」のようにまとめます。
結びの表現には、「気ぜわしい毎日かと存じますが、お体を大切になさってください。」と締めくくり、結語に「頓首」と書いてください。
12月下旬の時候の挨拶
続いては、12月下旬の時候の挨拶を見ていきましょう。まずは、季節感を表す季語を入れた文頭の書き方からご覧ください。
書き出しは「年の暮れを迎え、街を行き交う人々の足どりにもあわただしさが感じられるようになってまいりました。」「余日少なくなりました歳晩のこの頃、いかがお過ごしでしょうか。」のような表現を使ってみましょう。
結びの言葉には、「皆様おそろいで、よき春を迎えられますことをお祈りいたしております。」や「今年も余日わずかとなりました。どうぞよいお年をお迎えください。」のような安否を気遣う一文を加えてください。
12月下旬の例文
12月下旬に使える時候の挨拶、続いては、例文をいくつか挙げてみます。まずは、丁寧な手紙を書く際の例文です。
「謹呈 年末厳寒の候、お変わりなくお過ごしのことと存じます。ますますご勇健の段、慶賀の至りに存じます。私どもは皆変わりなく壮健に暮らしておりますので、余事ながらご休心ください。」のように書きましょう。
締めの一文には、「今年も余日わずかとなりました。どうぞよいお年をお迎えください。」、結語には「謹白」を書いてください。季節感を演出する季語を入れるのがポイントです。
12月の時候の挨拶に使える言葉
12月の時候の挨拶を用途別に紹介してきましたが、最後に、時候の挨拶として使える言葉や、12月にあるイベントなどを通して、手紙に季節感を加えてくれる言葉をまとめてみます。
12月は、特に中旬から下旬にかけて様々な行事が目白押しです。そういったイベントを入れることで、手紙やメールにも季節感がプラスされますので、ぜひ、気軽に取り入れてみてください。
12月の歳時記
まずは、手紙に季節感を出す12月の歳時記からみていきましょう。12月の歳時記には、針供養、御事始め・御事納めなどがあります。
私たちの暮らしにとってもう少し身近なところで言うと「お歳暮」なども、12月の歳時記の代表的なものです。
12月上旬
12月上旬の時候の挨拶に使える言葉を以下に例文付きでご紹介していきます。まずは、上旬ですが、カジュアルな手紙であれば、「急に寒くなりましたね。元気ですか。」のような書き方でも構いません。
あるいは、「寒気きびしき折柄、皆様いかがお過ごしですか。」といった表現なども良いでしょう。
12月中旬
12月中旬の時候の挨拶に使える言葉ですが、カジュアルな手紙なら、「初雪の便りが聞かれるこのごろ、御地ではまだですか。」のような語りかけもよさそうです。
近況を知らせる所から始める場合は「こちらでも初雪が降りました。」のように続けても良いでしょう。
12月下旬
12月下旬の時候の挨拶に使える言葉は、「木枯らしが吹きすさぶころとなりましたが、皆様いかがお過ごしですか。」のように凍てつく寒さを表現してみましょう。
また、12月の行事を取り入れて「クリスマスが終わるといよいよ年の瀬と迎えたと感じます。」と書いてみても季節感が増します。
12月の行事
最後に12月の行事ですが、12月のイベントで代表的なものと言えば、冬至、クリスマス、大掃除などがあります。
正月準備や御用納め、そしてすす払いなども12月の歳時記として手紙に取り入れるのにふさわしい言葉です。他にも、年越しそばや年賀状などの準備も12月の風物詩と言えるでしょう。
12月の時候の挨拶は上旬・中旬・下旬に適したものを選ぶ
12月の時候の挨拶を上旬、中旬、下旬に分けてそれぞれご紹介致しました。日本では、二十四節気に則って、同じ12月でもまったく違った季語を使うのが習わしです。
今回ご紹介した例文と書き方を参考に、自分の言葉を少し添えると、オリジナルでより親しみのある暖かい手紙を書いてみてください。