粗利(粗利率)とは?計算する方法や原価率との違いも詳しくレクチャー!

粗利(粗利率)とは?計算する方法や原価率との違いも詳しくレクチャー!

ビジネスでは欠かすことのできない売上と原価の関係を正しく理解していますか?粗利と粗利率の違いとは?原価率とは?利益率の計算方法とは?そんな会計上の専門用語や、基本中の基本である粗利と粗利率について計算方法も含めて詳しく説明します。

記事の目次

  1. 1.粗利(粗利率)とは
  2. 2. 粗利(粗利率)の計算式とは
  3. 3.粗利(粗利率)と利益の違い
  4. 4.粗利(粗利率)と原価率の違い
  5. 5.粗利(粗利率)と値入
  6. 6.平均的な粗利率
  7. 7.粗利(粗利率)は売上高と売上原価から計算できる

粗利(粗利率)とは

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「売上髙」から「売上原価」を差し引いた「売上総利益」のことを、「粗利」と呼びます。「販売費」や「一般管理費」などの「必要経費」は差し引かれておらず、様々な種類の「利益」を計算していく中で、最も基本となります。粗く計算しての「利益」なので「粗利」と呼ばれます。

その「粗利」を、「売上髙」で割ったものが「粗利率」となります。企業の決算書などを読み解く上で、最も基本的な概念になるのでしっかりと押さえておきましょう。

売上総利益を計算する方法

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「売上総利益(粗利)」とは、「売上髙」から「売上原価」を引いたものです。この時に注意が必要なのが「売上原価」を計算する方法です。製造業であれば、材料費やその製品の製造にかかった人件費も全て「原価」に含まれるため、「製造原価」となります。一方で、商社や卸売業などの業態であれば、「原価」として計算するのは「仕入れ原価」となります。

場合によっては、製造に必要な装置を購入した費用、高額な材料を購入するために銀行から借り入れた費用の利息なども「原価」として計上する方法もあります。

売上原価とは

「売上原価」とは、販売した製品の「仕入れ」や「製造」にかかった費用のことです。ですから、仕入れたり、製造しても販売しなかった製品については、費用を計上することはできません。その場合は、次期に繰り越します。よって、「売上原価」を表すと、「前期からの繰り越し在庫」+「今期の仕入れ、製造分の在庫」から「売れ残り」を引いたものです。

計算式にすると、「売上原価=前期からの在庫分+仕入れ、製造の当期在庫分-売れ残り分」となります。製造業であれば、仕入れていても使用していない材料、商社であれば売れ残ってしまった製品などについては、「売上原価」としては計上できません。

粗利(粗利率)から付加価値がわかる

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「付加価値」とは、「粗利」から「外部購入費用」を引いて求めることができます。計算式は、「付加価値=粗利-外部購入費用」となり、「付加価値」が大きい方が、その製品、その企業の価値が高いと判断することができます。「外部購入費用」とは、原材料などの仕入れ費用や自社でできない加工などの外注費用などのことです。

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他社に真似のできない製品を開発したり、独自の製品流通ルートを作ったりすることが「付加価値」を生み出す源泉となります。前述のとおり、「粗利」には「販売費」や「一般管理費」などの経費が含まれておりませんので、「粗利」よりも「付加価値」の方が製品や企業の利益(利益率)を見るための重要な指標であると言えます。

「付加価値」から見えてくるものは、「労働生産性」です。同じ「材料費」や「外部購入費」を使って、どれだけの「利益」を生み出せるかの「差」が見えてきます。平均的な企業では20%程度と言われていますので、目安にしてください。

粗利(粗利率)の計算式とは

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「粗利」を求める計算式とは、「粗利=売上高-売上原価」となり、「粗利率」を求める計算式は「粗利率=粗利÷売上高」となります。「粗利」と同様に「粗利率」が最も基本的な利益率となりますが、同様の計算式を利用することで、決算で必要となる「利益」および「利益率」を求めることができます。

売上高に対する営業利益の割合を示す指標である「営業利益率」を求めるには、「営業利益率=営業利益÷売上高」となります。「営業利益」とは、「粗利」から「販売費」と「一般管理費」などの経費を引いた数字になります。「営業利益率」から分かるのは、本業でどれだけの利益があがっているのかどいうことです。

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売上高に対する経常利益の割合を示す指標である「経常利益率」を求めるには、「経常利益率=経常利益÷売上高」となります。「経常利益」とは、「粗利」から本業以外で発生した損益を加えた数字となります。「経常利益率」から分かるのは、特別な事が起きない時の日常的な利益率となります。

売上高から売上原価を引く

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「売上」から「売上原価」を引くと「売上総利益(粗利)」となることは真っ先に説明しましたが、企業の決算書類には5種類の「利益」が記載されています。「営業利益」、「経常利益」については前の章で既に詳しく述べました。ここでは残る2つについて説明したいと思います。

「税引前当期純利益」とは、税金を払う前の当期利益の合計です。「特別利益」や「特別損失」などの、その期に発生した利益や損失などを含めた利益のことになります。

「当期純利益」とは、会社に最終的に残った利益です。「税引前当期純利益」から「法人税、法人住民税、法人事業税」を引いたものになります。

売上原価の計算式

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「売上原価」を計算するための方法は、在庫を計算することです。「期首商品棚卸髙」とは、その期の最初に既にあった在庫の仕入れや製造にかかった費用のことです。「当期商品仕入高」とは、その期に仕入れたもしくは製造した商品にかかった費用となります。「期末商品棚卸高」とは、その期の最後に売れ残った商品にかかった費用となります。

計算式で表すと、「売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高」となります。不良在庫が多くなると問題になるのは、倉庫のスペースだけでなく、「原価上昇」という問題もあるのです。

実際の計算例

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実例を挙げてみましょう。1つ100円の消しゴムを販売している文房具店があります。この店では、期首に100個の消しゴムの在庫がありました。期首にあった消しゴムの仕入れ価格は、1つ25円でした。そして、当期に、1つ30円で20個の消しゴムを仕入れました。期末には10個の消しゴムが残りました。

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計算式に当てはめると、「売上原価=期首商品棚卸髙(25円×100個)+当期商品仕入髙(30円×20個)-期末商品棚卸髙(30円×10個)」となります。2,500円+600円-300円となり、売上原価は2,800円であると求めることができます。販売した消しゴムの「粗利」は、(100円×110個)-2,800円」なので8,200円となります。

粗利(粗利率)と利益の違い

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「粗利」とはその名前のとおり、粗いものなのでそのままでは損益の指標にしかなりません。この「粗利」から、各種の経費や本業以外の損益などを含めて計算していくと、「利益」が算出されます。必要経費を差し引いた利益は「営業利益」、本業以外の損益を含めた利益は「経常利益」として区別されます。

利益は粗利から費用を引く

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利益は、「粗利」から「費用」を引けば求めることができます。「売上」を上げるためには各種の「費用」が発生しますが、営業活動に発生する費用には「販売費」と「一般管理費」などがあります。そうすると、売上高に対する営業利益の割合を示す指標である「営業利益率」が求められます。「営業利益率=営業利益÷売上高」となります。

費用とは

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企業活動では様々な「費用」が発生します。販売に関連する各種の費用、つまり営業活動の費用は「販売費」となります。会社を維持するのに必要な各種費用、オフィスの家賃やスタッフの人件費などは「一般費」となり、本業以外の財務活動で発生した費用、つまり借入金の利息や手形に関連する費用などは「営業外費用」となります。

利益率の計算式

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ここで、「利益率」についてまとめておきましょう。営業利益の指標である「営業利益率」とは、「営業利益率=営業利益÷売上高」で計算できます。経常利益の指標である「経常利益率」を求めるには、「経常利益率=経常利益÷売上高」となります。それ以外の、「税引前当期純利益」と「当期純利益」とは「率」ではなく「額」で見る指標となります。

業種や業態によって異なりはしますが、利益率は業界平均の横並びで満足せず、10~20%を目標にするのがよいとされています。利益率が10%を超えてくると、急激に経営や業務の効率が改善されていくことが分かっています。

平均というのは便利な言葉ですが、そこで思考停止する危険性があることを理解する必要があります。

粗利(粗利率)と原価率の違い

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「粗利率」とは「粗利÷売上高」であり、「原価率」とは「売上原価÷売上髙」で表せます。「粗利」とは「売上-売上原価」ですから、これをひとつの式で表すと、「粗利率+原価率=100%」という式と「売上高=売上原価+粗利」という2つの式が成り立ちます。かかった費用に注目するのか、利益に注目するのかの違いです。

原価とは

製造業においては、製品の製造に要した「材料費」や「人件費」なども「原価」に含まれます。飲食店や販売店などでは、製品の仕入れに要した費用を「原価」とします。「売上」が増えれば、当然「原価」も増えます。「原価」が高いほど「利益」は少なくなります。それは「原価率」から求めることができます。

製造業の場合、特定の製品を製造するために導入した設備の「減価償却費」や潤滑油や冷却水などの、どれだけ使用したかを測定することが難しい「間接材料費」なども計算上求めることで計上することができます。

原価率の計算

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「粗利(粗利率)」とは「売上高」から「売上原価」を差し引いたものです。一方で、「原価」とは「販売した製品や提供したサービスに直接必要となる費用」です。そして「原価率」とは「原価」を「売上」で割ったものに100をかけて%で表示するものです。計算式では、「原価率=原価÷売上×100」となります。

実例を挙げると、原価が500円のランチを1,000円で100食販売したとします。そうすると計算式は、「原価率=(500円×100食)÷(1,000円×100食)×100」となり、原価率は50%となります。

原価が500円のランチを1,000円で80食販売して、20食が売れ残って廃棄したとします。そうすると計算式は、「原価率=(500円×100食)÷(1,000円×80食)×100」となり、原価率は62.5%となり、廃棄コストの分だけ原価率が上昇します。

粗利(粗利率)と値入

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製品やサービスを新規に提供する段階では、まだ実際には「売上」がありませんので、計画段階での価格設定を「値入」と呼びます。必要な「利益」分を「原価」に上乗せして価格設定を行い、販売・仕入れ・在庫などの各種計画を立てます。計算式で表すと、「値入=製品価格-原価」となります。

設定した「値入」価格通りに販売できればよいのですが、割引販売を行ったり、廃棄が発生したりすることで「売上原価」が上がってしまいます。よって、「値入」は高めに設定される傾向にあります。

値入とは

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「値入」とは、得られる利益を予測して製品やサービスの販売価格を決定する方法です。つまり、これから販売する予定の製品やサービスに対して行われるものです。対して「粗利」とは、既に売り上げたものから「売上原価」を引いて算出したものです。つまり、販売後の実績を計算したものとなります。

値入率とは

「値入率」とは、ある製品やサービスの販売価格に対する「原価率」を表したものです。「値入率=(製品販売価格-売上原価)÷販売価格×100」の式で計算することができます。繰り返しになりますが、「値入」とは未来に対しての概念です。これを実績に対して計算すると「粗利率=(売上高-売上原価)÷売上高×100」になります。

繰り返しますが、まだ見ぬ未来の話をしている時は「値入」「値入率」となり、現実の話をしている時は「粗利」「粗利率」となるのです。

平均的な販売価格の決め方

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販売価格を決定するためには、「市場価格」と「競合価格」に注意する必要があります。市場に受け入れられない高価格では、消費者から受け入れてもらえません。安すぎると利益が得られず、自分で自分の首を絞めることになります。適切な販売価格を設定する方法をを詳しく見ていきましょう。

市場価値とかけ離れていないこと

似たような製品やサービスが、市場ではいくらくらいで流通しているのかを事前にしっかりと調べておきましょう。価格は常に変動しているので、こまめに情報収集しながら価格を設定することで、消費者に受け入れてもらいやすくなります。そのためには、自社製品の市場における平均的な価値をしっかりと理解しておきましょう。

競合の価格とかけ離れていないこと

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競合の少ない製品やサービスを扱っている場合はよいのですが、競合が多い場合には、しっかりと動向を確認するようにしましょう。競合他社がキャンペーンや値下げを行ったりした場合には、何かしらの対応を取る必要があります。ただし、一度値下げをしてしまうと値上げをすることは困難です。

なので、クーポンを付けたりや各種キャンペーンを展開するなど、価格を変えずに済む方法で対応することが最良策であるとされています。

しっかりと利益が確保できていること

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必要最低限のコストは上乗せして販売価格を決定しましょう。その販売価格が、市場価格として適正ではない場合には、販売そのものを見直すようにしましょう。赤字になる可能性がある価格設定は適切ではありませんし、高すぎて消費者に相手にされない価格設定も適切ではありません。

無理して販売を開始しても、売れずに値引きして販売することになり、平均販売価格は下がります。そうすると、「利益」が得られずに販売を中止することになるかもしれず、よいことはありません。

平均的な粗利率

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利益の出ている企業は、間違いなく「粗利(粗利率)」が高い傾向にあります。しかし、売上はあっても「外部購入費」、「販売管理費」、「一般管理費」などの多い会社は、「粗利(粗利率)」が高くても「利益」が少ないことがあります。その業界によって平均的な「粗利率」は異なりますが、高い業界と低い業界があります。

銀行や証券などの金融業の「粗利率」は80%を超えると言われています。仕入れがないことがその理由で、平均的に高いと考えられます。

一方で、卸売業や商社などの「粗利率」は平均して10%程度と言われています。仕入れた製品に「利益」を上乗せして再流通させるビジネスモデルなので、「付加価値」が付けにくい業態となります。

粗利(粗利率)は売上高と売上原価から計算できる

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まとめると、「売上」を増やして「売上原価」を減らせば「粗利(粗利率)」は増えることになります。「売上」をすぐに増やすことは難しいので、「売上原価」を減らすことが、「粗利」を増やす近道となります。よって、「在庫の圧縮」「人件費の削減」「販売価格の維持」といった方法が簡単に「売上」を増やす方法となります。

それ以外にも、「借入金を減らす」「節税する」なども間接的に「利益」に繋がりますが、「売上」には繋がりません。商売の原点とは「安く仕入れて高く売る」ことです。「平均仕入れ価格」つまり「売上原価」を下げ、「売上髙」を上げるのが基本的な方法です。

業界平均をよしとせずに、常に「売上」を増やし「売上原価」を減らすことに注力することが経営の本質であると言えるでしょう。

kazukdis
ライター

kazukdis

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