「迅速」の意味
「迅速かつ正確な仕事ぶり」「迅速な対応ありがとうございました」「迅速丁寧なご連絡に安心して取り引きができました」などビジネスの世界だけでなく、インターネットオークションなどでも「迅速」という言葉はすっかりお馴染みの言葉となっています。
この記事ではよく使われるこの「迅速」という言葉を取り上げます。この迅速とはどんな意味なのでしょうか。「迅速な対応」という言葉の意味と、その表現をビジネスにおいて目上の人に使ってもいいのでしょうか。
さらに「迅速」の語源や類語の意味も取り上げながら、迅速とは何か、ふさわしい使い方とは何かについて説明します。最後の方では「迅速な対応」に関連する英語表現も取り上げて、このビジネスの世界には欠かせない迅速とは何か、迅速な対応の真の意味とそのイメージを膨らませていきます。
迅速とは「物事をきわめて早くこなすこと」
基本的に言って、迅速とは「物事をきわめて速くこなす」という意味です。つまり迅速な対応とは物事や仕事に取り組む行動面でのすみやかさを評価する表現です。
ただし、たとえ仕事がはやくとも、いいかげんなであったり結果が伴わない場合「迅速」という言葉は使えません。迅速とは物事にすみやかに取り組み、それなりの結果あるいは期待に応える仕方で、もしくは期待以上で結果を出した際に使う、一種の誉め言葉です。
迅速とは「物事の進行がきわめて早いこと」
さらに迅速とは「物事の進行がきわめて速い」という意味です。野球などで「迅速な試合運び」という使い方をすることがあります。この場合もどんなことが連想されるでしょうか。イメージできるのは、無駄な四死球がない、選手交代もすみやかで攻守のきりかえもきわめてスムーズな試合です。このように迅速とはポジティブな意味合いや使い方が伴います。
迅速とはーその語源を探る
迅速とは何かを、ここではさらに語源を考えていきます。「迅速」の「迅」はもともと「足」と「十字路」と「鳥」が組み合わさってできた文字で、「速く進むこと」を表し、そこから「速い」「すみやか」を意味するようになったと考えられています。
「迅速」の「速」も「足」と「十字路」は一緒ですが、そこに「束ねられたたきぎ」が組み合わさってできた文字です。その意味するところは「道を行く時間を束ねるように縮める」ということで、そこから「はやい」を意味するようになりました。
どちらも「はやい」というイメージを伝えますが、「はやさ」のとらえ方が前者は「スピーディー」後者は「時短」で、この2つが組み合わさってできた「迅速」という言葉のイメージがさらに膨らんできます。興味深いことに、迅速とは空間的にも時間的にも「はやい」という意味合いであることが分かります。
「対応」の意味
次に迅速な対応の「対応」を考えます。注意しておきたいのは類語の「応対」との違いです。「対応」も「応対」も「相手に応じて反応する」という意味ですが、類語の「応対」の場合、相手は常に「人」になります。接客での「応対」や電話での「応対」といった使い方が一般的です。
一方「対応」の場合、相手は必ずしも人に限定されていません。「対応」は物事や現象に対しても使う点で類語の「応対」とは違いがあります。
特定の物事や仕事に向きあうこと
「対応」とは上記のように人以外の「特定の物事や仕事に向き合う」という意味です。類語の「対処」と意味合いの違いがあり、「対処」の方は状況に対して積極的に応じる行動が伴います。「対応」は物事に柔軟に応じますが場合によっては行動を起こさないこともあり、やや受け身のニュアンスがある点が「対処」との違いです。
言葉の意味が「1対1に対応」する場合は、2つの言葉が互いに一定の関係にあることを意味します。図形の場合のように互いに向かい合っている角は「対応する2つの角」と表現します。これも「対応」とはどんな意味合いかの理解を広げる例です。
相手の出方に応じた態度をとること
「対応」はさらに「相手の出方に応じた態度をとる」という意味です。たとえば怒り立った相手に対して、穏やかで親切な態度で応じ、関係を改善できるならば「見事な対応」ということになります。
やはりこの場合も上記のように「対応」には必ず相手があって、相手と正面から向き合い、相手に応じてこちらは必要であれば譲歩するという謙虚なイメージがあります。ビジネスにおいて事態に上手に「対応」して方針を変えることが必要なときがあります。
「迅速な対応」の意味
ここまでで迅速とは何かを語源も交えて考えました。迅速とは「物事をきわめて速くこなすこと」であり、また「物事の進行がきわめて速いこと」を意味しました。また対応の意味とは「特定の物事や仕事に向き合うこと」また「相手の出方に応じた態度をとること」でした。以上のことをふまえて「迅速な対応」についてまとめます。
物事に向き合いかつ正確・丁寧に終わらせる
迅速な対応とはただ行動が素早いということだけでなく、「物事を正確かつ丁寧に終わらせ、しかもそれをきちんと正面と向き合って行ったということ」です。迅速な対応とはまさに現代の限られた時間でそれなりの結果が求められるビジネスの世界には欠かせない取り組み方です。
「迅速な対応」には誠実さや謙虚さのニュアンスが織り込まれています。さらには「迅速な対応」にはその行動をした相手に対する感謝や尊敬の気持ち、またねぎらいが含まれています。
言葉には力があり、まさにこの「迅速な対応」という言葉も関係する相手との信頼関係や友情を促進することができます。しかしながら「ご苦労様」を目上の人に使うと失礼に当たるように、この「迅速な対応」も力がある言葉であるだけに適切な使い方を身に着ける必要があります。これから「迅速な対応」の使い方を例文を使いながら考えていきます。
「迅速な対応」の使い方と例文
これから「迅速な対応」の適切な使い方を身に着けるために例文を用いて考えていきます。さらにいつも「迅速な対応」ばかりでは、使う側も聞く側も新鮮味がなくなってきます。それで「迅速な対応」の類語やいくつかの言いかえ表現も取り上げます。
迅速、迅速な対応とその類語も使いこなしてバリエーションが広がれば聞く相手は「この人は自分のことを本当に誠実に気にかけてくれている」と感じてくれ、ビジネスにおける信頼やさらには個人的な友情も深まっていきます。最初に「迅速な対応」を例文とともに考えます。
ビジネスシーンで使われる
「迅速な対応」のビジネスシーンにおける典型的な3つを使い方を例文で示します。「迅速な対応」は通常、相手がしてくれた事柄への感謝やねぎらいの気持ちを伝えるための使い方が一般的ですが、こちらからの依頼を伝えたい場合の使い方、さらには自分の行動する意思を相手に伝える際の使い方にも注目してください。
例文:迅速な対応で感謝を伝える
ネットオークションでは落札者は出品者がすみやかに良い商品を送ってくれたなら「迅速な対応ありがとうございました」出品者も落札者がすみやかに入金してくれたならやはり「迅速な対応ありがとうございました」が一般的です。
ネットオークションでは入金と商品受け渡しが終われば、その時点で取り引きが終了するので「ありがとうございました」と過去形で良いですが、ビジネスでは引き続き取引相手との関係は継続しますので「迅速な対応ありがとうございます」と現在形で表現します。
ビジネスで「迅速な対応ありがとうございます」一点張りだと時にはただ単に決まり文句を使っているに過ぎないと受け取られてしまう可能性があるので「迅速な対応に感謝いたします」「迅速な対応をしていただいたおかげで助かっております(助かりました)」「迅速な対応に痛み入ります」「迅速な対応に御礼申し上げます」とバリエーションを持たせます。
例文:迅速な対応で依頼を伝える
ビジネスでの「迅速な対応」の別の使い方は相手にすぐに行動をおこしてもらいたいときです。「迅速な対応をお願いします」が基本的な使い方で、相手に対して依頼していることは優先度の高い事柄であること、さらに相手がきっとその物事に対してきちんと向き合いすみやかに期待通りの仕事をしてくれるという信頼も伝えられます。
ただしこれは基本催促の表現なので、ビジネスで相手との関係を大切にしたいなら違いをもたせるためにも類語を使い「迅速な対応をおねがいいたします」「迅速な対応を期待しております」と丁寧に依頼しましょう。
さらにはビジネスで大切なクッションとなる表現を織り交ぜます。「大変恐縮ですが、迅速な対応をおねがいいたします」とか「お忙しいところ恐れ入りますが、迅速な対応をお願い申し上げます」とすれば「迅速な対応をお願いします」との違いは明確です。
例文:自分が行動する意思を伝える
自分がビジネス相手に対して「物事や仕事に正面から向き合って、すみやかに相手の期待に応える仕方で取り組む」意思や意味合いを伝える際にも「迅速な対応」を使います。例えば「お問い合わせに関しましては、迅速な対応を心がけます」「迅速な対応をもって、○○を作成させていただきます」と伝えればビジネスの相手は安心します。
実際にビジネスの相手の期待する期日や仕方でこちらが「迅速な対応」が出来たなら、相手からは「迅速な対応感謝いたします」との意味合いの反応を期待できます。
「迅速な対応」の使い方と敬語
迅速な対応の使い方をさらに敬語という観点から深めていきます。特にここで考えるのは、目上の人に対して「迅速な対応」の使い方には注意が必要ということです。たとえば前述したように目上の人に「ご苦労様」はNGで、「お疲れ様です」を使います。同じねぎらいの言葉でも話す相手によって注意が必要です。
結論から申し上げますと「迅速な対応」そのままでは敬語ではありません。目上の人に対して「迅速な対応」を用いる際には少し加工が必要です。では目上の人が物事にきちんと向き合ってすみやかに丁寧に取り組んでくれたことへの感謝をどう伝えるべきか、以下に適切な使い方を例文とともに紹介します。
「迅速な対応」は敬語としてNG
「迅速な対応」は敬語としてはNGです。そもそも「敬語」とは何でしょうか。敬語とは自分と相手との社会的関係と態度を表す表現です。社会的関係とは自分より相手のほうが目上かどうか、ということに加えて相手との関係がどれほど親しいかということも関係しています。その社会的関係をよくわきまえて適切な表現の使い方を意識する必要があります。
英語圏のように、少し親しくなれば年齢的に相手が目上であってもファーストネームで呼び合える間がらになれます。それとは違うビジネス環境にいる日本語ネイティブのわたしたちは特に目上の人に対して神経を使いますが、かと言って「迅速な対応」に関してものすごく高度なスキルが求められているわけではありません。
目上の人には接頭語「ご」「~して頂く」が必要
迅速な対応の少しの加工として、目上の人には接頭語の「ご」を使います。では「ご迅速な対応」「迅速なご対応」「ご迅速なご対応」の3つのうちどれが正しい使い方でしょうか。まず「ご迅速」と「ご対応」は同時に使うことはできませんので、3番目はNGです。一般的にビジネスにおいて目上の人には「迅速なご対応」が正しい使い方とされています。
「迅速なご対応ありがとうございます」では少し堅苦しく感じる場合は「迅速な対応をして頂きありがとうございます」と「して頂き」を使います。この場合「ご」はとります。「頂く」は「もらう」の謙譲語で、敬語表現として目上の人やビジネスにおいて活用できます。
丁寧すぎる表現はかえって相手との距離を広げます。「迅速な対応」という言葉を使う目的は、ビジネスにおいてこちらの誠実な感謝の気持ちを伝えることですから、相手にとって受け入れやすい使い方を選びます。
例文:ご対応を使う
ビジネスにおいて、目上の相手がすみやかに物事と向き合って行動してくれたことに対する感謝を伝えるべく「迅速なご対応」の使い方の例文を以下に示します。口頭やメールで使うことができます。
「先日はトラブルが生じた際にサポートして頂き感謝しております。迅速なご対応、まことにありがとうございました」
「先ほど資料をお送りいただきましたおかげで、プロジェクト完了の見込みができました。迅速なご対応に心から感謝いたします」
「○○マネージャーの迅速なご対応のおかげで、お客様のご要望に沿うことができました。感謝の気持ちをここにお伝えします」
例文:~して頂くを使う
上に出てきた3つの例文を「して頂き」を使ってアレンジしてみると以下のようになります。「迅速なご対応」の使い方と比べて、少し固さがとれて、やわらかめの表現になっています。この場合、接頭語の「ご」をとるのを忘れないで下さい。
「先日はトラブルが生じた際のサポートに感謝しております。迅速な対応をして頂き、まことにありがとうございました」
「先ほどの送っていただいた資料のおかげで、プロジェクト完了の見込みができました。迅速な対応をして頂き、心から感謝いたします」
「○○マネージャーのおかげで、お客様のご要望に沿うことができました。迅速な対応をして頂き、ありがとうございます」
「迅速な対応」の使い方と言い換えの敬語表現
「迅速な対応」という表現一点張りでは、自分も相手もだんだんと新鮮味がなくなってきます。形式的に感謝を伝えているに過ぎないという印象を与えないためにも、「迅速な対応」の言い換えの敬語表現についても考えていきます。
表現にバリエーションを持たせることで、自信をもって自分の相手に対するねぎらいの気持ちや感謝を伝えることができます。「迅速な対応」とは異なる微妙な意味合いの違いにも注意しながら以下に説明していきます。
早急に・早々にで置き換える
「迅速な」をここでは類語の「早急(さっきゅう)に」「早々(そうそう)に」で置き換えて見ます。迅速では「速い」を使い、ここでの類語はどちらも「早い」が使われています。語源のところで説明しましたように「速い」はある事柄を行う際の時間が短い、物事の行い方がすみやかだという意味です。
一方、「早い」はある基準よりも時間的に前という意味があります。たとえば「そう結論するにはまだ早い」と言う場合、まだ結論を下すべき時ではないということです。そんな「速い」と「早い」の違いも意識しながらまずは類語の「早急に」を考えます。
「早急に」の意味
「早急に」は漢字から分かるように「急いで期日よりも前に早く(物事を)する」という意味です。たとえば「環境破壊に関して早急な対策が求められる」という場合、生命が住めなくなる環境になるという手遅れになる前に何らかの対策しなければならないという緊急感が伝わります。
「早急に」には「さっきゅうに」と「そうきゅうに」の2つの読み方があります。「さっきゅうに」はNHKが採用している読み方で、この記事でも発音もし易い「さっきゅうに」で統一します。
物事を期日よりも前に急いで行うという意味の「早急に」はまさにビジネスにおいて大活躍しそうな言葉で「迅速」とはまた別の意味で上手に用いるなら相手が目上であっても好印象を与えるといえます。
例文:「早急に」を使った敬語表現
「早急な対応」だけでは敬語表現にはなりません。目上の人に対して使う場合は「迅速」のときと同じく「ご対応」にして使うことが望ましいといえます。相手が予定を変更して、あるいはデッドラインよりも前に急いで物事を行ってくれたなら「早急なご対応に心から感謝申し上げます」と感謝を伝えましょう。
また、こちらから目上に当たる相手に対して可能であれば期限よりも急いで何かを行ってほしいと依頼したい場合には「申し訳ございませんが、早急なご対応をお願い致します」と敬意を込めて表現するようにします。
「早急なご対応」は「期日よりも前に」「急いで」という意味合いの言葉が含まれているのですから、ビジネスの相手に対して「緊急感」という印象を伝えたいとき、なおかつ敬意をもってそうしたいとき効果的といえます。
「早々に」の意味
「物事を期日よりも前に」という意味合いの「早い」が2つ重なった「早々に」はどんな意味があるのでしょうか。簡単に言うと「直ちに」「すぐに」「直後に」という意味です。類語の「早急に」よりもさらに急がせる意味合いがあります。「試合が始まって早々に」とは試合開始直後ということです。
類語の「早急に」と同様、「早々に」にも「そうそうに」と「はやばやに」の2つの読み方があります。古くからある読み方は「はやばやに」の方ですが、ビジネスの世界では「そうそうに」を用います。
「早々に返信してください」とあるように通常は目上から部下などに使う表現です。ビジネスでは通常目上の人に対して「早々に」を使うことはNGです。
例文:「早々に」を使った敬語表現
「早々に」はなるべく目上に対して自分がこれから行うことに関して用いましょう。たとえば「この件に関しまして、早々に対応させていただきます」と表現すれば、相手は自分が期待する期日よりも前に結果を返してくれるはずと安心してくれます。
「早々に」はビジネスにおいて目上の人に対して用いるのは基本NGですが、すでに完了している物事に対しては目上の人に対してであっても「早々にご連絡くださり、感謝いたします」を使えます。目上の相手が「自分のような者のために、時間や注意を払ってくださった」という感謝とともに、へりくだった気持ちも伝えたいときに用いることができます。
「迅速な対応」の類語
これまで「迅速」の類語である「早急」と「早々」を考えました。基本的な意味は一緒でも微妙に異なる点もあることが感じ取れます。相手に何かを依頼する際の強さは「早々」>「早急」>「迅速」といった感じになります。
これからはさらに「迅速な対応」の別の類語を取り上げて考えます。これまで出てきた類語とは微妙に異なるニュアンスをもくみ取ってまいりましょう。
「素早い対応」の意味
スポーツの世界では「素早い反応」「素早い対応」ということをよく耳にします。ではビジネスの世界における「素早い対応」とはどんなときに使えるのでしょうか。「早い」と「素早い」の違いを考えます。「早い」主に時間的な観点から使います。時間が短いこと、ある時間より前ということです。
一方「素早い」は物事に取りかかる動作に注目して用いられる表現です。ビジネスにおいて「素早い対応」という類語は物事が予定していた時間より早く終わるという側面ではなく、相手が物事に対してすぐに取り組んでくれたというその動作に対して使う表現といえます。
相手に依頼した物事が仮に期日までに終わっていない場合でも、相手がすぐに取り組んでくれたなら「素早い対応には感謝しておりますが、なるべく早急にお願いできれば幸いです」と伝えることができます。
「早速の対応」の意味
「早い」と「速い」が組み合わさった「早速(さっそく)」は、さぞかし時間的にも物理的にもはやいというイメージを伝えていそうですが、基本的に「すぐに」という意味で、ビジネスの世界でこの言葉はどちらかというと「起こし言葉」としての役割です。つまり「早速ですが」と何かを始める際に用いられます。目上にも目下にも使えます。
「早速の対応」は「すぐに物事に取り組んでくれた」ということで、これまで考えた種々の類語や類似表現と比べて可もなく不可もなしといったところです。いつも「迅速な対応」では新鮮味がなくなっていると感じる際の便利な代替え表現という位置づけといえます。
「早々なご対応」の意味
単に「すぐに」を意味する「早速」でしたが、類語の「早々」は上記のように非常に急ぐ、急がせる強い意味合いをもった言葉でした。それゆえこの「早々に」は自分と同等もしくは目下に対して用いるのがふさわしいとされ目上の人に対してはNGです。
それでも「迅速な対応」の場合と同じように「早々なご対応」とすれば、目上の人に対しても用いることも可能です。自分のような目下の者に時間をとってくれたという感謝や謙虚な気持ちが目上の人に伝わればよいですが、「早々」を目上の人に対して用いることにはリスクがともなうゆえ、わざわざ「早々なご対応」を使うことはないでしょう。
「迅速」と「早々」は類語ではあっても、必ずしも交換可能な表現ではないことを覚えておく必要があります。
迅速とは他の言葉で言い換えできる
これまで「迅速」や「迅速な対応」の類語や類似表現を考えてきました。どれも同じ「物事に向き合ってすぐに取り組む」という意味合いがあります。その中で「迅速な対応」という表現は自分や相手に対してもそれほど心理的な圧迫感を感じさせない表現であることを感じました。
「迅速」にはポジティブな意味合いがあるものの、漢字表現から少し堅苦しいイメージがないわけではありません。人によっては同じ意味合いを持つもっとやわらかく、やさしい表現を使いたいと思う人もいます。表現にバリエーションを持たせる意味でも「迅速」のやさしい言いかえ表現を考えてみます。
例文:すみやかにを使った場合
「迅速」という言葉の意味は「物事への取り組み方がすみやか」だということでしたので、「迅速な対応」を「すみやかな対応」と言い換えることが一番素直な方法です。「この度の案件、すみやかに対応してくださりありがとうございます」でしっくりきます。
「すみやか」とは「間を置かずに」ということです。ただし「迅速」には良い結果を出すという言外の意味合いがありましたので、「すみやか」では少し物足りません。
例文:いち早いを使った場合
「いち早い」とは「何かに先んじる」という意味です。文字通りだれかに先駆けてある事柄に取り組んだ場合はふさわしい言い換え表現と言えます。「いち早い対応」と「迅速な対応」では伝えるメッセージが若干異なります。
たとえば自然災害が迫っているときなど、被害が生じるのに先駆けて対応する必要があるとき「いち早い対応が必要」という表現をすることがあります。「地元自治体のいち早い対応によって大きな被害を避けることができました」という報道を聞くことがあります。
例文:スピーディーを使った場合
カタカナ英語が氾濫している中にあって「迅速」よりも「スピーディー」を使う方がイメージしやすいでしょう。speedyには確かに「迅速な」という意味があります。「スピーディーな対応ありがとうございました」は確かに「迅速な対応」の言い換え表現として可能です。
さらに「お客様のご要望に関してスピーディーな対応を心がけます」という表現もあります。カジュアルな印象を与えてしまう場合もあるので、あくまで自分が行うことに限定して用い、相手に対して用いることには慎重である必要があります。
英語表現での迅速とは?
最後に「迅速」「迅速な対応」の英語表現を考えます。前述のspeedyには確かに「迅速」という意味がありますが、「迅速な対応」という表現を考える場合にspeedyはネイティブの感覚から言ってあまり使いません。
他の言葉同様同じ「迅速」「迅速な対応」も文脈によってさまざまな訳語をあてる必要があります。日本語を英語に訳すことが簡単ではない理由は以下の記事でよくまとめられていますので、参考にしてください。
英語で迅速とは「swift」
「迅速」の持つ「すみやかさ」のイメージを伝えるうえでぴったりなのがswiftです。"sw"ではじまる単語には他にもswim sweep sway swingなどがありますが、すみやかな動きを連想させる言葉が多いです。swiftを使って「迅速な対応」を表現するとswift responseになりますが、意味合い的には「すみやかな対応」になります。
英語で迅速とは「rapid」
「迅速な」を意味するもう一つの言葉はrapidです。動きのすみやかさを意味するswiftと比べてこちらは「短い時間内で何かを行うこと」「急速に何かが起きること」に重きが置かれています。rapid responseは「迅速な対応」との訳でもちろんOKですが「即座の対応」「即応」に近く、文脈を選びます。
英語での例文
同じ「迅速な対応」と訳せても文脈によって適切な言葉を使い分ける必要があります。これからはら3つの例をご紹介します。まずこれまで考えたswiftとrapidをどんな状況、文脈で用いるのかを見てみます。最後に日本語の「迅速な」にもっとも近いある言葉を使って「迅速な対応」を表現します。
迅速とはを使った例文①
こちらの懸案に対してすみやかに返事が返ってきたのであれば"Thank you for your swift response."もっとていねいに伝えるには"I appreciate your swift response to my concerns."と表現します。
「御社のすみやかなる対応のおかげで助けられました」は"We were helped by your swift response."になります。
迅速とはを使った例文②
"rapid response"は救急や消防など緊急時の救援要請への即時対応に関連してよく用いられます。「我々は緊急時の出動要請に対して即座に対応しなければならない」は"We need to make a rapid response to calls for service."になります。
「急速な成長」や「急速な回復」などのときもrapidを使って"rapid growth" "rapid restoration"と表現します。
迅速とはを使った例文③
swiftはどちらかというと「見た目の速さ」rapidは「時間的な速さ」を強調していました。では冒頭から考えてきた「迅速」の持つ「見た目にも時間的にもはやい」というイメージを伝えるもっとも近い単語は何でしょうか。それはquickになります。
quickにはもともと「生き生きとした」とか「生きている」という意味があり、ポジティブな意味合いを持っている言葉です。同じくポジティブな意味合いを持つ「迅速」にふさわしい単語といえます。
「迅速な対応ありがとうございます」は"Thank you for your quick response."となり、これがもっともよく目にする表現です。
「迅速な対応」は物事を正確・丁寧に終わらすことを意味する
「迅速な対応」を語源から考えて、類語とも比較しました。目上の人に対する敬語表現という観点からも考慮しました。最後に英語表現を日本語の意味合いと比較したとき「迅速な対応」の持つポジティブな意味合いを一層イメージすることができました。
「迅速な対応」とはたんに物事をはやく終わらせることではなく、「物事に真摯に向き合い、正確にかつ丁寧に終わらせること」です。そうした「迅速な対応」の持つイメージを意識しながらこれからも様々な物事に対して「迅速な対応」を心がけていきたいものです。