「なので」の意味
「なので」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、その意味や正しい使い方をきちんと理解している人はあまり多くないかもしれません。
結論を述べる際に使うことの多い「なので」ですが、実はビジネスシーンで使うことはできません。そこで今回は、「なので」の意味を振り返りつつ、正しい使い方やビジネスシーンでも使える正しい敬語表現との言い換えについて解説していきます。
接続詞的な意味
まずは「なので」という言葉の意味を見ていきましょう。「なので」を国語辞典で引いてみると、「断定の助動詞『だ』の連体形または形容動詞の連体形活用語尾+接続助詞『ので』の連語」と説明されています。
なにやら難しい表現ですが、簡単に言えば「~である」という断定の意味を持ち、かつ「だから」「しかし」のような接続詞の使い方をする言葉です。
断定の助詞と接続詞の組合せ
つまり、「なので」を使うときは、ものごとを断定しつつ、その次の文章とつなげて使うことになります。例えば、「風邪である。だから、学校を休んだ。」をいう2つの文は、「なので」を使って、「風邪なので、学校を休んだ。」という1文にすることができます。
つまり、「風邪である。だから、学校を休んだ。」の「である」という断定部分と「だから」という接続詞をまとめた言葉が「なので」ということになります。
口語表現
また「なので」という言葉を調べてみると、近年では主に話し言葉(口語表現)として、順接の接続詞のように用いられることがあるようです。このように「なので」は、最近では口語表現として活用されるため、「なので」をいう言葉をつい気軽に使ってしまいがちです。
しかし、正しい知識を持った人から見れば、かしこまった場で「なので」を使うことに違和感を覚えることも少なくありません。特に、ビジネスシーンなどで誤って使ってしまうと、誤解を受けたり、相手を不愉快にすることもあるので、正しい敬語表現に言い換えるように注意しましょう。
ビジネスシーンでは使わない
「なので」は話し言葉として身近な表現ではありますが、丁寧な意味を持つ敬語表現ではありません。そのため、既にお伝えした通り、ビジネスシーンや目上の人に対して使うことは「マナー違反」と言えるでしょう。
間違った言葉遣いをしないよう、「なので」の意味や言い換え表現を知って、正しい使い方をマスターしましょう!
「なので」の言い換え
ビジネスのようなフォーマルのシーンで「なので」を使うことは、正しい使い方とは言えません。しかし、身近な言葉として親しまれている言葉でもあるので、いざと言う場面で「どのように言い換えたらいいのだろう」と悩む人も少なくないでしょう。そこでここでは、「なので」の言い換え表現について、詳しく解説をしていきます。
「だから」で言い換え
見てきたように、「なので」は「断定」と「接続」の意味を持つ言葉でした。これと同じ意味を持つ言葉に「だから」があります。そのため、「なので」と「だから」は言い換え表現です。
「だから」という言葉を国語辞典で引いて見ると、断定の助動詞「だ」と接続助詞「から」の組み合わせということがわかります。「断定」と「接続」、つまり「なので」と同じ役割を持つ言葉であると言えます。
例文で見てみましょう。「風邪なので学校を休んだ。」「風邪だから学校を休んだ。」どちらも違和感はありません。このことからも、「なので」と「だから」は言い換え表現であると言えるでしょう。
接続詞の種類をおさらい
ここまで見てきたように、「なので」は接続詞のように使われます。接続詞には様々な種類があり、それぞれによって意味が異なります。そこでここでは、接続詞の種類をおさらいしていきましょう。
接続詞には、①順接、②逆説、③補足・理由説明、④並列・付加、⑤対比・選択、⑥転換といった6つの種類があります。接続詞の正しい理解は、話の内容を正しく理解することにつながります。
基本的な接続詞「順接」「逆説」
最も基本的な接続詞は「順接」と「逆説」でしょう。順接とは、前文を原因として後文が結果になる場合に使う接続詞を指します。「だから」や「それで」「すると」「したがった」などがこれに当たります。
逆説とは、前文と後文が対立・反対の内容となる場合に使われる接続詞です。「しかし」「だが」「けれども」「ところが」などがこれに当たります。「とはいえ」や「それでも」なども逆説に当たります。
言い換えや具体例、理由の説明をする「補足・理由説明」
前文の内容を言い換えてまとめたり、具体例を活用して説明したり、理由を説明したりする際に使う接続詞が「補足・理由説明」です。学校で学ぶ国語(現代文)では、この言い換えや具体例、因果関係を正しく理解することが重要だと言われています。
具体的な接続詞を挙げると、前文を言い換える際に使うのは「つまり」「すなわち」です。これらを見たら、前文までの「まとめ」と言えます。一方で、具体例や補足説明を加える場合に使うのは「例えば」「ただし」「ちなみに」という接続詞になります。
理由を説明する場合には「なぜなら」という接続詞が有名でしょう。「なぜなら」を使った文の文末は「~だからだ」で終わるのが決まりとなっています。
話題を膨らませる「並列・付加」「対比・選択」「転換」
それまでの文と同じことを述べたり、内容を付け加えたりする場合の接続詞が「並列・付加」です。「そして」「また」などがこれに当たります。
一方で、それまでの文と比較したり、どちらかを選択する場合には「対比・選択」の接続詞を使います。「一方で」「または」「あるいは」などがこれに当たります。
それまでの文から話題を変える場合の接続詞が「転換」でしょう。話の内容が変わるため、重要な接続詞と言えます。具体的に見ると、「ところで」「では」などがこれに当たります。
「なので」の使い方・例文
「だから」と言い換えることのできる「なので」ですが、ここからは「なので」の実際の使い方を例文を通して見ていきましょう。
「なので」の使い方は主に2種類あります。1つ目は接続詞的に2つの文をつなげる使い方、もう1つ目は文頭で使うことが許容される使い方です。
接続詞的な使い方
「なので」の使い方1つ目は、接続詞的な2つの文をつなげる使い方です。既に見てきたように、「なので」はもともと接続助詞、つまり接続詞としての役割を持っています。そのため、2つの文をつなげて使うことができます。いくつかの例文を活用して確認していきましょう。
例文:読書が好きなので図書館によく行きます
「読書が好きだ。」「図書館によく行く。」という2つの文章をつなげる場合、「読書が好き」という理由のために「図書館によく行く」という結果になっているため、「なので」を使うことができます。
もちろん、「なので」を「だから」に言い換えて書くこともできます。「読書が好きなので図書館によく行きます。」も「読書が好きだから図書館によく行きます。」も、どちらも違和感はありません。
例文:勉強が得意なので学校の成績はよい
「勉強が得意だ。」「学校の成績はよい。」という2つの文章をつなげる場合も、「なので」を使うことができます。「勉強が得意だ」という原因に対して、「学校の成績がよい」という結果になっているからです。
もしこれが「勉強が苦手だ。」という文章が前文に来る場合は、「勉強が苦手だ」という原因に対して「学校の成績がよい」という結果になることはないため、「なので」ではなく「しかし」という逆説の接続詞を使う必要があります。
例文:デスクワークなので肩がよくこる
最後の例文は、「デスクワークだ。」と「肩がよくこる。」という2つの文章をつなげる場合です。この場合も、「デスクワーク」という原因に対して「肩がよくこる」という結果になっているため、「なので」でつなげることが可能です。
一般的に接続詞は、文章と文章をつなげる役割を持ちますが、「なので」は単語(デスクワーク)と文章(肩がよくこる)をつなげることもできます。
文頭で使うことが許容される例文
このように、「なので」は文章と文章をつなげる接続詞として使うことができますが、文頭で使うこともできます。
この場合も見てきた例文と同じように、前文を原因として、後文が結果となる場合に使うことができる点に注意しましょう。
例文:明日は試験です。なのでしっかり勉強してください。
例えば、「明日は試験です。」「しっかり勉強してください。」という2つの文章をつなげる場合、「なので」でつなげることができます。これは、「明日は試験だ」という原因に対して、「しっかり勉強する」という結果になっているからです。
「明日は試験です。なのでしっかり勉強してください。」というように、「なので」を文頭に使ってつなげることもできますが、「明日は試験なので、しっかり勉強してください。」というように、2文を1文につなげて言い換えることも可能です。
「なので」の敬語での正しい言い換え
このように、前文の原因に対して後文が理由となっている場合に使うことができる「なので」ですが、既に見てきたように敬語表現ではありません。そのため、ビジネスシーンなどでは使うことができません。
そこでここでは、ビジネスでも使える「なので」の敬語での正しい言い換えを解説していきます。
「ですので」が敬語での言い換え
「なので」の敬語での言い換え表現は「ですので」になります。例文で見てみると、「明日の天気は雨の予報ですので、傘を持って行った方がよいでしょう。」のようになります。
もちろん、「ですので」を文頭で使って言い換えることもできます。文頭で「ですので」を使うと、「明日の天気は雨の予報です。ですので、傘を持って行った方がよいでしょう。」のようになります。
話し言葉・口語
「なので」と同様に、「ですので」は話し言葉でも使われます。似たような表現としては、「だから」の敬語の言い換え表現となる「ですから」も存在していますが、「ですから」は断定の意味をより強く感じる表現となります。
「したがって」「よって」という表現も「ですので」の言い換えとして使うことのできる意味を持つ接続詞ですが、話し言葉として使うと堅い印象を与えてしまうので、話し言葉では「ですので」を使うとよいでしょう。
尊敬語・謙譲語ではなく丁寧語
「なので」の敬語の言い換え表現である「ですので」ですが、実はこれは尊敬語や謙譲語ではなく、丁寧語に分類される敬語表現です。丁寧語とは、話し手・書き手が聞き手・読み手に対して敬意を表すための丁寧表現です。
丁寧語は、目上の人に使うことができる敬語表現なので、ビジネスシーンや改まったシーンで「なので」を使いたい場合は「ですので」に言い換えて使うようにしましょう。
「なので」の敬語での使い方と例文
それではここからは、「なので」の敬語表現の使い方を例文を通して見ていきましょう。正しい敬語の使い方は、ビジネスや改まったシーンでは非常に重要になります。
正しい敬語表現の使い方を知っておかないと、普段の言葉遣いがつい出てしまうこともありますので、注意するようにしましょう。
例文:立ち入り禁止なので退出してください
最初の例文は、「立ち入り禁止です。」「退出してください。」という2つの文をつなげる場合です。「立ち入り禁止」という原因に対して「退出してください」という結果になっているので、「なので」でつなぐことができます。
より丁寧な表現に言い換えるならば、「なので」を「ですので」に言い換えて、「立ち入り禁止ですので退出してください。」という表現になります。
例文:危険ですので注意してください
次の例文は、「危険です。」「注意してください。」という2つの文をつなげる場合です。これも「危険」という原因に対して「注意してください」という結果になっているので、「なので」でつないだ1文にすることができます。
「なので」でつなげると「危険なので注意してください」になりますが、より丁寧な敬語表現で言い換えると「危険ですので注意してください」になります。
例文:はじめて間もないので不慣れです
最後の例文は「はじめて間もないです。」「不慣れです。」という2つの文をつなげる場合です。原因と結果の関係は上で見てきたものと同じになります。そのため、「なので」でつなげることが可能です。
ただし、そのまま「なので」を使ってつなげると少し日本語として違和感のある表現になります。そのため、「はじめて間もないです。」の語尾を言い換えて「はじめて間もないので不慣れです」という表現になります。
「ですので」を使ってより丁寧な表現に言い換えるならば、「はじめて間もないですので不慣れです。」という言い回しになります。
「なので」の文語での言い換え
ここまで、「なので」の話し言葉における敬語の言い換え表現を見てきましたが、書き言葉(文語)では「ですので」以外の言葉で言い換えることができます。それが「したがいまして」と「そのため」です。話し言葉と書き言葉では、使うべき言葉も変わるので、正しい使い方をしっかりマスターしましょう!
したがいまして
「なので」の文語における敬語の言い換え表現の1つ目は「したがいまして」です。これは、「したがって」の丁寧さを表す言い換え表現です。
「したがいまして」を漢字で表すと「従いまして」となります。そのため、前文を「主」として、後文を「従」とする「主従関係」が成り立ちます。「主従関係」というのは「因果関係」と言えます。
例えば、「A駅で人身事故が発生しました。」「15分の遅延が生じています。」という2つの文章をつなげる場合、「人身事故」という原因に対して「15分の遅延」という結果の因果関係があります。そのため、「A駅で人身事故が発生しました。したがいまして、15分の遅延が生じています。」と言うことができます。
そのため
「なので」の文語における敬語の言い換え表現の2つ目は「そのため」です。これは「そのようなわけで」「それゆえ」を意味しています。「したがいまして」と同じように、前文が理由となり、その結果を後文で表す接続詞です。
先ほど使った例文で見てみると、「A駅で人身事故が発生しました。そのため、15分の遅延が生じています。」と表現することができます。
「なので」を敬語で使う時は言い換えが必要!
このように、話し言葉として身近な「なので」でしたが、実は敬語表現ではなく、ビジネスなどのかしこまったシーンで使うことはマナー違反と言えます。
つい使いがちな「なので」ですが、マナー違反では相手を不愉快な思いにさせたり、自分の評価を下げたりしてしまうこともあります。この機会に「なので」の正しい敬語の言い換え表現をマスターして、正しい日本語表現を使っていきましょう!