以上と以下の意味とは
「以上と以下」「未満と超える」は数の大小を表すときに使われる言葉ですが、その意味や違いを曖昧に覚えているために、解釈に迷ってしまうことがあります。
例えば満18歳の人がイベント会場の入口で「18歳以上の方は左側の入口から入場下さい」「18歳未満の方は右側から」という看板を見て、どちらから入れば良いのか戸惑う方がいるのではないでしょうか。正しい意味を知らないと、このような混乱が起きてしまいます。それでは、以上と以下の正しい意味を紹介します。
「以上」はその数字を含む数よりも上
「以上」はその数字を含み、その数よりも大きいまたは多いことを指します。例えば「18歳以上」といえば、18歳の人を含むそれ以上の年齢の人全てという意味です。前述のイベント会場の看板の例「18歳以上の方は左側の入口から入場下さい」でいえば、18歳の人を含むのですから18歳の人は左側の入口ということになります。
「以下」はその数字を含む数よりも下
「以下」も「以上」と同様にその数字を含み、その数より値が小さいことを指します。例えば「今回のテストは100点満点で、50点以下は不合格とします」の場合では、50点を含むのですから、50点では不合格となります。
合格するためには51点以上取る必要があるということです。「以下」の意味を勘違いして「な〜んだ半分の50点取ればいいんだ」と思うと失敗するので注意して下さい。
以上と以下を記号で表す
以上と以下を記号で表すとどうなるのでしょう。学校の数学で習った不等号記号「≧」「≦」が、以上と以下を表す記号です。数学以外の普段はあまり使わない記号ですが、以上と以下のイメージを解釈するのには都合の良い記号です。それでは不等号記号のそれぞれの意味を解説します。
「>と<」「≧と≦」の使い分け
不等号記号には「≧と≦」の他に「>と<」があり、それぞれ意味や使い方が少し違います。数学の授業を思い出すつもりで考えてみましょう。
数学が苦手な方もいると思いますが、少しの間我慢をして聞いて下さい。等号記号「=」は、左側の数字と右側の値が同じ時「2+2=4」のように使います。では不等号記号の「>と<」「≧と≦」にはどのような意味があるのか、使い方の例を上げて説明します。
「>と<」は「大なり・小なり」
数学で「>と<」は「大なり・小なり」と読みます。少し分かり難い言葉なので、平たくすると「>と<」は、左側と右側の数字の大きさが違うという記号です。
例えば「A>B」「5>4」のように使い、AはBよりも大きな数字、5は4より大きいという意味です。また「A<B」「4<5」のように記号「<」は、左側の数字が右側の数字より小さい場合に使います。
AとBに入る数字はどのような値でもかまいませんが、とにかく左側と右側の数字の大きさが違う場合に使う記号です。「A>B」は「AはBを超える数字」「A<B」は「AはB未満の数字」というイメージです。
「≧と≦」は「以上・以下」を表す記号
「≧と≦」には「>と<」の下に「=(イコール)」がついています。つまり、左側と右側の数字の大きさが同じでも違っても良いということになり、少し頭の中が混乱しそうですが、意外と意味はシンプルです。
例えば「A≧3」の場合、Aは3を含むそれ以上の数という意味です。つまり「≧」は「以上」という意味の記号です。逆向きの「A≦3」の場合は、Aは3または3以下の数「3・2・1・0」という意味です。言い換えれば「≧と≦」は「以上と以下」と同じ意味を表す記号になります。
以上と以下の最終形は無限大とミクロ?
これはあくまで雑談です。ただ「以上と以下」という観念をもっと広い視野で見てみるのも面白いかも知れません。
「以上」には制限がありません。基準の数より上ならどのような数値でも良いという意味です。つまり「以上」とは、数学的にいえば基準値を越えて天文学的無限大な数でもOKということになります。
一方「以下」とは、基準値を下回ればどんな数字でも良いということです。1を基準値とすればゼロ「0」に限りなく近づく数値全てが1以下ということになります。
現実の世界では「0」や「マイナス」の世界は存在しません。これは数学的観念の考え方で実際の世界にはゼロやマイナスは存在しません。
温度でマイナス20℃と表現するのは、基準値の0℃より20度低い状態を示しているだけです。つまり「以下」とは「0.000000001」のようにゼロがいくつあっても「0」の手前の最小の数値・ミクロの世界までが「以下」と言えます。つまり「以上と以下」の最終は無限大とミクロまで広がっていると言えるのではないでしょうか。
以下と未満の違い
辞書を引くと「以下」は「数量・程度・優劣などの比較で、それよりも下の範囲であること」とあり、数量では基準を含んでそれより下をいい、その基準を含まないときは「未満」を使うとあります。
また「未満」は「未だに満ちていない」「基準に満たない」という意味です。数量の場合の「以下」と「未満」の違いは、前述の記号「≦」と「<」の違いと同じです。つまり「以下」は値にイコール(=)の数を含み「未満」はイコール(=)を含まない数という違いです。
例えば「お酒やタバコは20歳になってから」とは「飲酒や喫煙は20歳未満の19歳以下では法律違反」という意味です。
また「この国家試験は3年以下の実務経験では受験資格がありません」は、3年の経験では受験出来ず、3年を超える経験が必要という意味です。つまり対象となる数字を含むのが「以下」で、対象となる数字を含まないのが「未満」です。
未満は「対象となる数字を含まない」
「国会議員の選挙は満20歳未満の人は投票出来ません」の場合の「未満」には20歳は含まれません。満20歳以上なら選挙権があるけれど、19歳以下の人は投票出来ないという意味です。
また所得税の計算などで「100円未満の金額は切り捨て」という表現が使われます。100円に満たない99円以下の金額は切り捨てて良いという意味です。
例えば金額が12,586円の「86円」は切り捨てて12,500円として計算して良いということです。このように「未満」は、対象となる数字を含まない時に使う言葉です。
以上と超えるの違い
「以上」は「以下」とちょうど対称的な意味を持つ言葉で、基準となる数より大きい値を表し、かつ基準の値を含む時に使います。
例えば「2千円以上お買上げの場合には、駐車料が無料になります」の場合は、2千円ピッタリでも駐車料が無料になります。つまり基準の2千円を含むということです。
しかしこの表現が「お買上げ金額が2千円を超えた場合には、駐車料が無料になります」となると、2千1円から駐車料が無料になるという意味になり2千円ピッタリでは有料になってしまいます。
超えるは「対象の数字を含まずにそれよりも多い」
「超える」とは、対象(基準)の数字を含まずにそれよりも多いという意味です。前述の駐車料の例では、お買上げ対象(基準)の数字は「2千円」で、「超える」を使った場合は「2千円」を含みません。
また「本日の特急列車の乗車率は200%を超える見込みです」は、乗車率は最低でも201%以上になる見込みという意味になります。つまり「超える」という言葉を使った場合は、対象の数字を含まずにそれよりも多い数字を表現します。
以上と以下の記号はエクセルでも活用
表計算ソフトのエクセルには、普通の計算の他に「COUNTIF関数」を使って、条件に見合うセルをカウントすることが出来ます。エクセルに不慣れな方もいると思いますが、エクセルにはこんな利用法があると聞き流す程度に考えて下さい。
エクセルでは、これまで解説してきた「以上」「以下」「未満」「超える」という条件を、記号「>=(以上)」「<=(以下)」「<(未満)」「>(超える)」を使って、条件に見合うセルの数をカウントすることが出来ます。それでは具体的な条件の書き方を紹介します。
エクセルで◯以上◯未満の条件の書き方
例えばプロジェクトの外注部分を公募して15社から見積りが上がってきたとします。そんな時に当社の条件に見合う企業が何社あるかを見極めるのに、エクセルの「COUNTIF関数」が役立ちます。
また営業成績を個人別に比較して、目標達成者が何人いるか、目標に到達しない者が何人いるかを調べる時にも利用出来ます。そのためには、エクセルで◯以上◯未満の条件を指定する書き方が必要になります。これからエクセルで条件の書き方、入力方法を紹介します。
「◯以上」のセルのカウント法
今月の営業マン20人の売上実績が100万円〜450万円まであったと仮定します。目標売上は300万円以上、400万円以上の者には記念品が送られることになっています。
目標達成者が何人いるかを調べるには、エクセルの数式バーでCOUNTIFを選択してダブルクリック、それから20人の売上金額が表示されているセルの範囲を指定します。次に条件「">=300万"」を指定してEnterキーを押せばカウント数が返されます。
記念品対象者の数は条件指定に「">=400万"」を入力すればOKです。「以上」の条件には基準値を含むのですから「>」のあとに「=」をつけて指定します。つまり「◯以上」のセルのカウント法は「">=○"」を数式条件として入力すればカウント数が返されます。
「◯以下」のセルのカウント法
「◯以下」ののセルのカウント法を、前述のプロジェクトの外注見積りを例にあげて説明します。15社から800万円から900万円の見積りが提示されました。当社の予算限度額は850万円とします。見積りが850万円以下の企業から選定する必要があります。
それが1社だけなら決まりなのですが、複数社あった場合は検討が必要になります。ですから数をカウントすることは重要になります。
エクセルで「以下」をカウントするには最初にやることは「以上」の場合と同じでが、条件指定のときに記号「>」ではなく「<」を使うだけが違います。
プロジェクトの予算限度額が850万円なのでエクセルの「COUNTIF関数」の条件に「”<=850万”」を指定します。「以下」は「以上」と同じように基準値を含むので、エクセルでもイコールをつけて「”<=○”」と入力して「◯以下」をカウントします。
「◯以上◯以下」のセルのカウント法
「◯以上◯以下」のカウントが必要になる場合はどんなケースなのでしょう。ある大学の入学試験で、本年度の新入生の受入れ人数定数はは400名、入試テスト合格点数が800点以上で考えてみましょう。
テストの成績が800点以上の受験者が400名に満たない場合は、合格基準ラインの変更を検討しなければなりません。こんな時に「800点以上の者が400名以上か以下か」のカウントが必要になります。
エクセルでこの条件をカウントするには、まず受験者全ての点数リストを範囲に選択し、条件に「”>=800”」を指定します。そのカウント数が400名前後なら許容範囲で問題ありません。
しかしその数値が400をかなり下回っていた場合には、合格者を800点以下の中から選ぶ必要が出てきます。点数が700〜800点をカウントするには、「”>=700”ー”<=800”」を条件指定すれば、700点以上で800点以下の数をカウント出来ます。このように「◯以上◯以下」のカウントする場合は「”>=○”ー”<=○”」を入力します。
以上と以下の英語表記
日本語の「以上」「以下」の英語表記は、日本語と少しニュアンスガン違います。例えば日本語で「10歳以上」と表記すれば「10歳または、それを超える年齢」という意味ですが、英語では日本語の意味を直訳したように「〜または、それを超える」と表記します。
つまり英語では基準となる数のあとに、基準値を「含む」「含まない」など条件を表す言葉をつけて表記します。それでは例文を交えて英語表記を紹介します。
以上:or more, and over
日本語の「以上」を表す英語は「or more」「and over」などです。「or」は「〜または」「more」は「より多い」という意味で「I have been living here for 10 years or more.(私は10年以上ここに住んでいます)」のように使われます。
この場合は「10 years 」が基準値になり「以上」は基準の数を含むので「or more(または、より多い)」と表記して「以上」という意味を伝えています。また「10 dollars and over(10ドル以上)」「age 18 or over(18歳以上)」のように「or」「and」「more」「over」の組合せを変えても「以上」の意味を表記出来ます。
以下:or less, or under
「以下」は、基準の数値を含んでそれより少ない、または小さいという意味なので、英語では「or(または・あるいは)」のあとに「less(より少ない・より小さい)」や「under(低い・下の方)」をつけて「以下」の意味を伝えます。
「My budget is $200 or less.(私の予算は200ドル以下です)」「Children of 6 years or under are free.(6歳以下の子供は無料です)」のように表記します。日本語では「以下」とひと言で表記するところを、英語では「or less」や「or under」などの2つの単語で表記する必要があります。
未満:less than, under
「未満」は基準値を含まないで、その値よりも小さいまたは少ないという意味なので、英語表記では「less than〜」や「or」無しの「under〜」を使います。
「than」は「〜と比べて」「〜よりも」という意味なので「less than〜」は「〜よりも小さい」という意味になり「未満」を表します。「under」はより低い、より下の方という意味なので「under〜」は「〜より低い値」つまり「未満」の英語表記になります。
ゴルフでアンダーパーといえば、パー70のコースを70未満の68、69などのスコア回ることで、イメージしやすいのではないでしょうか。英文の例では「His house is less than 2miles away from this office.(彼の家はこのオフィスから2マイルも離れていない)」「under 18 years of age(18歳未満)」などのように表現されます。
以上と以下の違いはその数字を含む数よりも上か下か
「以上と以下」と「未満と超える」の違いは、その基準になる数字を含むか含まないかです。「以上」は基準値を含み「超える」は含まずに上であること。「以下」は基準値を含み「未満」は含まずに下であることです。紹介した記事を参考にして、意味を正しく理解して、誤解や間違いで戸惑わないように役立てて下さい。