共産主義と社会主義の違いとは?
共産主義と社会主義、違うのはわかっているけれど、具体的に何が違うか説明できない人も多いのではないでしょうか。
まずは共産主義、社会主義、それぞれの特徴とその意味、違いを見ていきましょう。共産主義と社会主義にはどのような違いがあるのでしょう。
共産主義の意味・特徴
共産主義とは財産をみんなで共有して平等な社会を作るという考え方です。労働者は誰からも強制されずに進んで働き、生産物を平等に分配するという特徴があります。
自分たちで働き、自分たちで生産し、自分たちで分配する、みんな家族のような社会が共産主義といえるでしょう。これだけ聞くと非常に素晴らしい社会で、ある種のユートピアを意味するといっても良いかもしれません。
しかしながら、共産主義はその成立当初からユートピアと程遠い環境から始まっています。その考えの根底にあるのは、現在が平等でない、つまり労働者は分け合うどころか搾取されているという関係があります。
現在が平等でない、格差のある社会だから平等を作るべきだという考えなのです。そのため、共産主義を確立したマルクスは、労働者による血を流したうえでの革命、プロレタリア革命を提唱していました。
社会主義の意味・特徴
社会主義とは市場経済を国家が統制し、財産の共有、分配により平等な社会を実現しようという考え方です。財産、生産手段を国が所有し、労働の結果、生産されたものを国が統制して分配することにより平等を実現するのです。
このため、何を生産し、流通させ、販売するかを国家が計画・統制する計画経済を採用しているのが特徴です。実際にソ連などは社会主義を採用し、計画経済を行っていましたが、現在ではほとんどの国で採用されていません。
現在、社会主義をとっている国はアジアの一部とキューバに限られます。社会主義国の多くはソ連の崩壊に伴い崩壊しました。現在続いている社会主義国家も厳密に社会主義というわけではなく、資本主義、つまり私有財産を持つという資本主義的な考え方も導入している国が多数となっています。
平等は理想的な考え方だったかもしれませんが、社会主義の目指す理想は現実に必ずしも適用できるわけではなかったという事かもしれません。
共産主義と社会主義の違い
共産主義と社会主義の違いは、政府の有無にあります。先ほど述べたように、共産主義は労働者が自分たちで分配を、社会主義は政府が統制・分配します。どちらも平等な社会を目指していますが、共産主義は労働者が自分たちですべて行うため、それ以上の階層がありません。
社会主義は政府が統制するため、政府に統制される労働者という階層構造が存在します。この階層の有無が最も大きな違いであり、特徴であります。共産主義と社会主義の関係とは何かを理解するうえでこのことは重要な意味を持ちます。
共産主義と社会主義の理想
共産主義と社会主義がなぜよく似ているのでしょうか。それは、その成立過程と理想が同じであることに端を発しています。
その理想とは一体どういうものなのでしょうか。つぎはその理想、そしてその理想を追求した結果がどうなるかについてみていきます。
社会主義の理想は共産主義
共産主義とは何かという考えを構築したマルクス、エンゲルスは階級のない平等な社会を理想として掲げていました。社会主義は分配を行う上で国家に依存しています。このことから階級が存在するため、この理想には不十分なのです。
共産主義の過渡期に、政府による分配で平等を作る社会主義が発生し、いずれは労働者が自分たちで分配する平等な共産主義に移行するとしていました。最終的に社会主義は共産主義に行き着くので、社会主義の理想は共産主義ということができます。社会主義とは理想への発展途上という意味があるともいえます。
「全ての人が平等な社会」という点で共通する
これまで見てきた通り、社会主義も共産主義も生産手段をみんなで共有し、分配するという平等な社会を目指しています。共産主義が芽吹いたころ、労働者は資本家に雇われていましたが、今のように労働基準法といった法令も、労働者の権利というものもない時代でした。
長時間労働、過酷な労働内容、安い賃金で雇われていた労働者に、この平等な社会というのは非常に受け入れやすいものだったでしょう。実際に平等というのは聞こえがいいですし、みんなで助け合う社会であれば確かに理想的です。
共産主義の理想は「無政府状態」
これまで共産主義は政府がなく、労働者が分配すると述べてきました。その結果どのようなことが起きるのでしょうか。この状態を無政府状態と呼びますが、無政府状態とは個人のみが存在し統制する存在がない状態です。
この状態では治安を守る警察機能、道路等を補修する公共機能がなくなり、無秩序な状態が発生するのが特徴とされます。哲学者のホッブスはこれを「万人の万人に対する闘争」と呼びました。実際に内線等で政府が妥当された後、新政府が樹立されない状態はソマリア内戦等で起きていますが悲惨なものでした。
無政府状態が必ずしも地獄のような環境を意味するというわけではありませんが、共産主義の結果が理想的な社会になるとは限らないということです。
歴史的な背景
共産主義、社会主義についてこれまで見てきましたが、歴史に関しても見ていきます。この二つを知るうえで、資本主義の歴史を知るというのは避けて通れないものです。
ここでは資本主義がどこから発生し、どのようにして社会主義の発生したのかという経済の歴史を見ていきます。
資本主義はイギリス発祥
資本主義は資本家に労働者が雇用され、生産物を生み出し、利潤を追求する体制であり、封建主義ののちに現れたとされます。18に産業革命が起き、さらに市民革命が起きると社会構造が大きく変化しました。この大きな変化のひとつが資本主義の発生です。
産業革命、市民革命はどこから始まったかというとイギリスから始まりました。このことから資本主義はイギリスが発祥ということができます。そして瞬く間に世界中に広がり、世界のシステムとなりました。
しかし、資本主義も完全無欠のシステムではなく、様々な弊害を生みだしました。それに対して反対する概念も当然生まれます。その中に共産主義、社会主義があったのです。
はじめに社会主義を実行したソ連
共産主義、社会主義を確立したマルクスは、資本主義により貧富の差が拡大したことから平等な社会を作るために生産手段の共有を主張しました。その手段として労働者による革命、プロレタリア革命を起こし、資本家を打倒して、社会主義国家を樹立することを呼びかけました。
そして、ロシア革命が起きると、ロシア社会民主労働党は権力を掌握し、ソ連を樹立することとなります。その後、プロレタリア革命を拡大し、各地の社会主義国家設立を支援しつつ、計画経済を実行してきましたが、最後は1991年に崩壊することなりました。
資本主義の意味や特徴
資本主義とは市場経済に基づく経済システムです。言い換えれば資本家が主体となり、労働者を雇い利潤を追求する社会システムが資本主義の意味とも言えます。共産主義、社会主義との違いは、私有財産が存在するという点にその特徴は集約されます。
私有財産が存在するとは、誰かと誰かを比べた時に貧富の差、違いが表れることを意味します。共産主義、社会主義が目指す平等な社会の真逆な思想が資本主義の特徴であり、違いであると言えます。
社会主義でほとんどの国は社会主義を採用していないと述べましたが、裏を返せばほとんどの国は資本主義だとも言えます。共産主義、社会主義と資本主義は対立する考え方ではありますが、これをもって資本主義が優れているとも言えないのがまた面白いところです。
実際、資本主義においては不景気、恐慌により多くの人が苦しんでいるという事実があります。共産主義、社会主義は理想ではありませんでしたが、資本主義もまた理想ではなかったという事でしょう。
資本を持つ資本家が主軸
資本主義では先ほど述べた通り、資本家が労働者を雇い利潤を追求する、すなわちメインプレイヤーは資本家となります。実際に日本を見渡してみても、資本、すなわち財産を持っている人物は間違いなく有名になりますし、注目されます。
それは資本主義という市場、お金に価値を置く経済体系であるからでもあります。もちろん、貧富の差がいいものであるとは言い難いので、実際には政府が介入することにより、最低限度の生活を保障する、社会主義的な機能も存在します。しかし、資本主義である以上、主軸は資本家なのです。
資本主義とは自由に商売ができる社会
資本主義の特徴について特徴を更も言えば、自由競争に基づく市場経済となります。完全な資本主義では競争、商売をだれも止めません。利潤を追求するとは、あらゆる手段を使って利益を上げることを意味します。
その結果、誰かが不利益を被ろうとも利潤を資本家が利潤を追求するという行動は正当化されるのが資本主義です。とはいえ、実際にそこまで極端になると市場が逆に崩壊するので、政府なりなんなりが介入し、規制しています。しかしながら、資本主義とは自由に商売ができるというのが最大の特徴なのです。
近づく主義
これまで対立する構造として共産主義、社会主義と資本主義を説明しましたが、双方メリット、デメリットがあります。
そのため、発達する過程でそれぞれのデメリットを補完するために、社会主義は資本主義の、資本主義は社会主義の考え方を取り入れました。ここではどのように取り入れたかを見ていきます。
資本主義的な社会主義
資本主義を取り入れた社会主義の最大の例は中国です。1979年から改革開放を標榜し市場経済を取り入れているほか、様々な面で資本主義を取り入れています。
市場経済を取り入れて社会主義とは矛盾しているように聞こえますが、市場経済を完全競争に任せずコントロールしているため、資本主義には当たらないとしています。中国式社会主義といわれますが、実際に現在でも見ることのできる社会主義の一例です。
社会主義的な資本主義
資本主義国においても税金を取り、公共事業投資や介護事業などを展開しています。利潤が発生し難い分野では競争が発生し難い状態にあります。
しかしながら、必要であるので政府が介入し投資することにより利潤を発生させ整備します。このようにして国民が共有する公共財を構築していく。これは平等という観点からも社会主義的な考え方になります。
民主主義の意味や特徴
民主主義とは、国民の意見により国を運営するという政治体制のことを言います。民主主義は古代ギリシアで生まれた古い歴史を持ちます。今日ではほとんどの国家で民主主義は採用されています。最もポピュラーな政治体制が民主主義ともいえるかもしれません。
しかしながら、民主主義が理想的な政治体制かといえばこれもまた違います。一番は国民が必要な情報を持っているとは限らないという事、次に情報に基づき正確に判断できるとは限らないという事、そして選挙をする場合は代表者が正確に選んだ人間の意見を反映するわけではないという事が挙げられます。
いずれにせよ、民主主義がその理想、国民が国の在り方を決めるを実現するには、国民もまた意見を反映するために情報を収集し、判断ができるよう錬磨し、自らの意見を反映できるよう働きかけることが必要となります。
国民が国のあり方を決める
民主主義の特徴、それは国民が国の在り方を決めるという点です。小さい国であれば直接会議に参加することもできるかも知れませんが、人口が多くなればそうも言えません。現在のほとんどの国では選挙による間接民主制を採用しています。
間接民主制は自分たちを代表する代理人に対して投票し、その得票率で代表者を決めます。そうして選出された代表者が、代表として投票した人たちの意見を反映すべく会議に臨み、国家を運営します。直接自分の意見が反映されませんが、自分が選んだ代表者が間接的に意見を反映する、これが多くの国で採用されている民主主義の形となります。
「共産主義」「社会主義」「資本主義」の違い
共産主義、社会主義と資本主義は平等という軸で違います。共産主義は階層をなくした平等を、社会主義は政府の分配による平等を、資本主義は格差をむしろ許容します。これらの違いは同じ軸である以上、相いれないものです。
しかし、民主主義は経済という軸ではなく、政治という軸の考え方です。だから、共産主義、社会主義、資本主義という経済体制と、民主主義という経済体制は共存します。民主主義とそれ以外の違いは経済か、政治かであり、それらとの決定的な違いとなります。
民主主義と独裁制
民主主義の反対とは何でしょうか。国民の意見を多数の意見と考えれば、個人の意見のみを反映する政治体制が民主主義の反対といえます。個人の意思による恣意的な政治体制は独裁制といわれます、
代表的な例でいえば、中世ヨーロッパの絶対王政があります。その環境下では、国王の言うことに対して一般民衆は何も言うことができませんでした。しかしながら民主主義の手続きに基づき独裁を行った例もあります。
ナチス・ドイツのヒトラーはワイマール憲法に基づく民主主義の手続きにより独裁を行いました。自分たちの意思を反映できる民主主義を自らの手で捨て、他人に任せるとはある意味、民主主義がいいものだという考えのアンチテーゼかも知れません。
民主主義を担保する三権分立制度
民主主義を担保するものに三権分立があります。先ほど述べたように民主主義により選ばれた代表者は国民の意見を反映して政治を行いますが、選ばれた後にその行動を阻害するものはありません。それは国民の意見を反映しない政治を意味し、民主主義に反します。
このため、国家は法を作る立法権、法を執行する行政権、各種法規を執行する司法権に分け、それぞれを別々の機関に分けて適正に実行されているかを監視しあいます。これを三権分立といい、民主主義を保つうえでの基本的な仕組みとなっています。
共産主義と社会主義では管理体制が大きく異なる
共産主義は労働者個々人が自主的に、社会主義は政府が他律的に平等のための管理、分配を行うという管理体制が最大の違いでした。
共産主義は生産から分配まですべて労働者が行います。社会主義は生産をするのは労働者ですが、計画・管理・分配は政府が行います。平等という理想は同じですが、社会の段階が違うのです。それが共産主義と社会主義を分ける違いなのです。