奨学金の口座変更とは
奨学金は、成績が優秀であるも経済的な問題を抱える学生を支援するものです。大学、短期大学、高等専門学校、専修学校や大学院で学ぶ者や海外留学をする者に貸与されます。奨学金の申請手続きをする際には奨学金を振込む口座、引落しをする口座の設定を行います。ですが、設定したその口座を変更したいと思ったことはありませんか?
引落しや振込口座の変更
クレジットカードの引落し口座の変更、給料の振込口座の変更など、何かしらの状況で口座変更を行う機会は決して稀なことではありません。
ですが、奨学金は申請の段階でも様々な書類の提出や手続き等があり、他のものと同じように単純に口座変更ができるのかとても不安です。もし結婚して名字が変わることになったら、ただでさえ名義変更の増える期間にちゃんと処理できるのでしょうか。
では本人以外の家族に口座変更を頼めるのか。結婚した相手にお願いできるのか。そんな様々な口座変更の際に起こる複数の疑問を解消していきましょう。結婚した際の処理、本人以外に口座変更はできるのか、残高不足で引落しができなかったら。誰もが陥ってしまいやすい複数の問題を解決していきます。
奨学金の振込口座変更可能タイミング
では、振込の口座変更ができるタイミングはいつなのでしょうか?いつでもできるのか、決まったタイミングがあるのか。まずこの口座変更ができるタイミングを知っていなければ何も始まりません。口座変更ができるタイミングは複数回あります。今まさに変更を考えている方は今自分がその複数のタイミングのどこにいるのかしっかり見極めましょう。
①進学届提出時
まずは進学届を提出するタイミングです。これは高校3年次にその時在籍している高等を通じて進学後の奨学金の予約を行う「予約採用」の場合のみです。進学届は大学等に進学しすぐに提出するものです。学校ごとに割り振られたIDやパスワードを使用しパソコンで入力、制作していきます。その入力時に口座変更を行うことができます。
②返還誓約書の提出時
2つめは返還誓約書を提出するタイミングです。こちらは予約採用、在学採用どちらの場合も可能です。在学採用とは毎年春に奨学生の募集を行う奨学金です。その時点で在学している学校を通して申請を行います。予約採用が通らなかった人も在学採用で再度奨学金の申請を行うことができます。
③貸与中
3つめは奨学金を貸与されている期間内です。こちらも予約採用、在学採用どちらの場合も口座変更できます。しかし、貸与中の変更の場合は変更の手続きにおよそ1ヶ月ほどの期間がかかってしまいますので注意が必要です。又、いずれのタイミングの場合も振込先が完全に変更されるまで、変更前の口座も解約せず残しておきましょう。
奨学金の口座変更方法
口座変更が可能なタイミングが分かれば、次は口座変更の方法です。先に紹介した進学届提出時、返還誓約書の提出時、貸与中、それぞれで口座変更を行う方法が違うため注意してください。又、それぞれで口座変更の際に必要なものもありますので、忘れないように併せてご紹介します。
口座変更方法①進学届提出時
まずは進学届提出時の口座変更手続きです。これは3つの中で一番簡単な手続きで済みます。進学届は先述したように、学校ごとに割り振られたIDやパスワードを使ってパソコン上で入力していくものです。その入力の時点で変更したい口座の情報を入力するだけです。ここでは特に必要なもの、提出するものはありません。
口座変更方法②変換誓約書の提出時
次は返還誓約書の提出時に於ける手続きです。この手続きには「奨学金振込口座変更届」という書類が必要になります。この書類は在学している学校の担当者にもらうことができます。書類を記入し、学校の担当者へ提出します。その後、スカラネットと呼ばれる進学届と同じようなパソコンの画面で、変更する口座情報を入力します。
口座変更方法③貸与中
最後に貸与中の場合です。これは返還誓約書提出時と全く同じ方法で手続きを行います。まずは学校の担当者に「奨学金振込口座変更届」をもらいます。その書類を記入し、学校の担当者へ提出。その後、スカラネットに変更する口座の情報を入力し終わりです。どのタイミングも難しい処理はいらず、提出物も学校の中だけで完結することができます。
奨学金の口座変更は複数ある金融機関から選べる
日本には大きさを問わず複数の金融機関が存在します。都会では種類の違う金融機関が続けて複数並んでいる光景も珍しくありません。では、奨学金の口座変更はそんな日本各地に複数あるどの銀行でも可能なのでしょうか。実は、口座変更のできる金融機関とできない金融機関が存在します。
金融機関が対応しているか確認
では、どの金融機関であれば口座変更が可能なのでしょうか。口座変更が可能な金融機関は複数ありますので、最寄りの金融機関を探してみましょう。
口座変更可能な金融機関は、ゆうちょ銀行、三井住友銀行やみずほ銀行等の都市銀行、各地方銀行及び第二地方銀行、各信用金庫、各労働金庫、JAバンクです。又その他に、各信用組合や信託銀行でも口座変更できますが、一部できない箇所も複数存在します。
では反対に口座変更できない金融機関は、シティバンク銀行やバンク・オブ・アメリカといった外資系の銀行、楽天銀行やジャパンネット銀行等のインターネット専業銀行です。その他にも、新生銀行やあおぞら銀行、セブン銀行やイオン銀行も口座変更できませんので、注意してください。
奨学金の口座変更~結婚~
奨学金の返済は10年以上や20年近くかかる方もいます。その間に就職をしたり、引越しをして地元を離れたり、様々な人生の変化を経験します。結婚もそのうちの一つです。結婚した際に特に女性は名字が変わることが多いです。結婚によって様々な名義を変えなければいけません。では結婚した際の奨学金の名義変更はどうすればいいのでしょうか?
①日本学生支援機構で名義変更
結婚し、名字や住所が変わった場合、奨学金の引落しに使用している銀行口座と日本学生支援機構に変更手続きを行わなければいけません。どちらか片方だけの手続きしかしていなければ、口座と日本学生支援機構での名義が一致しないため引落しができなくなります。それでは、名義を変更する3つの方法をご紹介します。
スカラネットパーソナル
一つ目はスカラネットパーソナルを使用した方法です。スカラネットパーソナルはインターネットの接続環境が整っていれば24時間いつでも手続きできます。
まずはスカラネットパーソナルの公式ホームページへアクセスします。IDとパスワード、そして奨学生番号を入力しログインをします。奨学生番号は奨学金申請の際にもらった書類に記載されていますが、もし分からない場合は電話で返還相談センターへ確認しましょう。
ログインができたら「各種届願・繰上」というタブを選択します。画面を下にスクロールしていくと、「ワンタイムパスワードの取得画面へ」という項目が出てくるので、クリックし中に入ります。名前の変更をする際にはワンタイムパスワードと呼ばれる一時的なパスワードの設定をする必要があります。
では、名義変更の手続きをする前にまずはワンタイムパスワードを取得しましょう。画面通りに進んでいくと元々登録しているメールアドレスにワンタイムパスワードが届きます。
パスワードが届いたら「各種届・願出・繰上返還申込の処理選択画面」へ進み、届いたパスワードを入力します。パスワードを入力すると名義変更を行う画面になります。そこにある「転居・改氏名・勤務先(変更)の届出」という項目の「次へ」をクリックします。
あとは画面に沿って結婚によって変わった名前を入力していき、入力が完了したら最後に「送信」ボタンをクリックします。これで名義の変更は完了します。もし入力した内容に不備等があると、日本学生支援機構から発送される書類等が延着したり、届かなくなる恐れがあるため、入力は間違いのないように行いましょう。
郵送・FAX
2つめの方法は郵送又はFAXで名義変更を行う方法です。「転居・改指名・勤務先(変更)届」を記入し、日本学生支援機構まで郵送もしくはFAXで送信します。この届けは日本学生支援機構のホームページ内にPDFデータでありますので、印刷をして使用してください。提出先の住所やFAX番号もそちらに記載されています。
電話
3つ目は、奨学金相談センター(0570‐666‐301)へ電話をして変更する方法です。一部携帯電話、一部IP電話、又海外からの場合は電話伊番号が異なるため気を付けてください。(03‐6743‐6100)電話は土・日・祝、年末年始を除く平日月曜〜金曜日の9:00〜20:00の間受け付けています。ここでは貸与や給付、返還に関する相談にも対応可能です。
②銀行口座も名義変更
最初に記載した通り、日本学生支援機構の手続きだけでは名義が一致しない為、引落しができなくなります。結婚し、日本学生支援機構での手続きが完了したら、一緒に銀行口座の名義変更も忘れずに行いましょう。銀行口座の変更は銀行で行います。その際に必要なものが複数あります。又、この手続きは本人以外の人に頼んではいけません。
キャッシュカード通帳(複数の場合は全て)
まずは銀行のキャッシュカードと通帳です。もちろん結婚する本人のものであり、本人以外のものではありません。
もし通帳やキャッシュカードを複数持っている場合はその全てを持参するようにしましょう。本人以外の夫や妻等他の家族の名義のものはいりません。
お届印
2つめはお届印、つまり印鑑です。銀行口座を作った際に登録している印鑑が必要になり、口座開設時に登録していない別の印鑑では手続きできません。印鑑も口座ごとに違うものを複数持っている場合はそれら全てを用意し、持参してください。その際に、どれがどの銀行のものかが分からなくならないように気を付けましょう。
新しい氏名の記載書類(運転免許証等)
3つめは結婚後の新しい氏名が記載されている身分を照明できるものです。運転免許証、パスポート、各種健康保険証、在留カード、戸籍記載事項証明書、個人番号カード、生年月日が記載されている住民票、特別永住者証明書、戸籍謄本及び戸籍抄本のいずれか一点を持参します。外国人登録証明書は一定期間在留カード、特別永住者証明書とみなされます。
名義変更は本人以外は不可
奨学金の名義変更は、名義を変更する本人以外の人にはできません。手続きが面倒だから、忙しいからと親等、本人以外の人に頼んで手続きをすることは不可能です。日本学生支援機構のスカラネットパーソナルであればネットで24時間変更できます。口座変更は銀行へ出向く必要がありますが、時間を作って本人以外ではなく必ず変更する本人が行いましょう。
奨学金が口座から引き落とし出来なかった場合
今月給料が少なくて、急な出費があって等、奨学金が引き落とされる口座に引落し相当額の残高がなかった場合。当然引落しはできません。口座を複数持っていて、給料等の振込があれば毎回奨学金用の口座に入れ替えているといった方もいます。故意ではなくうっかりの残高不足は意外と少なくありません。
口座残高不足等による振替不能
上記で述べたように、残高不足で引落しができなかった場合、今後の引落しはどうなるのでしょうか。すぐに延滞扱いとなり延滞金が発生するのでしょうか。
近年では延滞者や滞納者が増加傾向にある為、そういった方への目は若干厳しくなっているようです。しかし、先に述べたように故意ではなくうっかりとした残高不足は往々にしてあることです。
奨学金は返済義務がある為、滞納や延滞はしてはいけないことです。延滞の際に問題とされるのは延滞をした回数であり、そこから長期間に渡って滞納に変わっていくとこです。残高不足により延滞してしまった場合は、延滞した回数及び期間によって対応が変わります。では、延滞回数ごとの対処法を説明しましょう。
振替不能1回目までは延滞金は掛からない
まずは残高不足により、1回延滞してしまった場合です。1回の延滞は多くの人が経験する可能性の高い回数ですので、しっかり対処法を知っておきましょう。
結論から言うと、1回の残高不足による引落し不能は延滞金は発生しません。翌月に2ヶ月分まとめて引き落とされます。奨学金は毎月27日が引落し日ですので、次月の引落し日前日までの期間に残高不足にならないように入金をしておきましょう。
ですが、1回の延滞であっても日本学生支援機構からは催促の電話や振替不能通知が届きます。引落しができなかった月の翌月7日以降に電話。10日以降に本人宛に「奨学金返還の振替不能通知」が届きます。17日以降には本人宛に「個人信用情報機関への登録について」という通知が届き、27日に引落しという流れになります。
2回目以降からは返済開始期間による
では、今月もまた残高不足になってしまった。と2ヶ月連続で残高不足による引落し不能を起こしてしまった場合はどうでしょうか。
2ヶ月連続で引落し不能となると延滞金がかかってきます。延滞金の金額は奨学金の返還を開始した時期によって異なります。2ヶ月連続で引落し不能となると、3ヶ月目の27日に3ヶ月分の奨学金プラス延滞金の引落しが行われます。
1回引落しができなかった場合と同じく、本人には催促の電話や通知が届きます。又本人以外に2回目からは連帯保証人へも連絡がいってしまう為、気を付けましょう。3ヶ月目の月の7日以降に本人宛に催促の電話。10日以降に本人宛に「奨学金返還の振替不能通知」が届きます。
そして11日以降には本人以外に連帯保証人にも「奨学金の返還について」という書類が届きます。ここから本人以外の人にも引落しができなかったことが判明してしまいます。
その後17日以降には再び本人宛に「個人信用情報機関への登録について」という通知が届きます。そして27日に3ヶ月分の奨学金と延滞金の引落しが行われます。少々高額になりますが、必ず引落し日の前日までの期間に残高不足のないように入金しておきましょう。
これ以上の延滞となると、本人以外に連帯保証人だけではなく保証人にも連絡がいってしまいます。そうなればそういった方々に不安を与え迷惑をかけることになります。何か事情があり返済ができない場合は様々な返済猶予措置をとることができますので、延滞をそのままにせず必ず日本学生支援機構に連絡をし、早々に対処するようにしましょう。
個人信用情報機関の登録とは
残高不足により引落し不能となった際に届く「個人信用情報機関の登録について」という通知とはどういったものなのでしょうか。届いてしまった時点で延滞者になるのでしょうか。
これはこのまま延滞を続けていれば、延滞した者の情報を個人信用情報機関という所へ提供するというお知らせなのです。奨学金に限らずクレジットカード等の延滞の場合も同じことが起こります。情報を提供される対象となる者は以下の通りです。
貸与中の者、平成21年度以降の新規採用者、返還中の者です。ただし、毎月残高不足もなくしっかり返している人は登録されることはもちろんありません。登録の対象となるのは延滞が3ヶ月以上となった者です。新規の返還者は返還開始後6ヶ月を経過した時点で延滞3ヶ月以上の場合で、それ以降は3ヶ月以上の延滞で対象となります。
通知は通知ですので、これによりすぐ登録されるわけではありません。あくまで「3ヶ月残高不足により延滞するとこうなりますよ」というお知らせです。
こうならないためには残高不足をしないよう毎月気を付けることが大事です。そして返済ができない事情がある場合は早め早めに連絡を入れること。一度の失敗は誰にでもあることですが、その後の処理ができるかできないかが大事です。
ですが、もし登録されることになった場合、登録される情報は延滞者本人の情報のみです。本人以外の情報は含みません。そして最新の住所情報を必ず入手され、使用されます。もし、別の機関でも滞納をしている場合はその情報も入手され、多重債務になっている場合は即時に法的措置をとられることになります。こうならない為にも十分に気を付けましょう。
返済が難しい場合
では、どうしても返還が難しい時はどうすれば良いのでしょうか。日本学生支援機構では返還が難しい方に向けた手続きの方法を案内しています。返還できない状況に応じて手続きの方法が違う為、自分に当てはまる状況を見て対処しましょう。それぞれの手続きには手続き毎の書類とマイナンバーカードの提出が必要です。
減額すれば返還できる
毎月決められた額の返還は難しいけれども、減額してなら返還ができるという方は「減額返還」という方法があります。
これは災害や傷病、経済困難、失業等によって返還が困難に場合に使える制度です。一定期間の間、毎月返還している割賦金を1/2もしくは1/3の額にして返済します。毎月の額が減る分、奨学金の返還完了までの期間は当然延びることになります。
これは返還する奨学金の総額が減額できるわけではありません。返還する期間が長くなる為、奨学金との付き合いは長くなります。しかし毎月の額が少しでも減れば少しでも返還しやすくなるので、この方法で返還ができそうな方は是非活用しましょう。しかし、返還を元々延滞している方は対象外です。延滞する前に手続きしましょう。
一定期間返還を待ってもらう
今はやむおえない事情があり返せないので、一定期間返還を待ってほしい場合は「返還期限猶予」という制度があります。
こちらも減額返還と同様に、災害や傷病、経済困難、失業などにより返済が困難な場合に使用できます。一定期間返還を猶予し先送りします。この場合も借りている奨学金の全額を返すまでの期間が延びますが、少し休むことで返還しやすくなります。
この制度ももちろん返還すべき奨学金の総額や利息が免除されるわけではないので、必ず最後には全額返金できるようにしなければいけません。ですが、近年災害も多い為こういった制度を使用し奨学金の返還を一旦休むことができるのは大変ありがたいことです。奨学金は返還の義務はあるもののこういった制度も備わっているので活用しましょう。
返還が免除される場合
返還をする本人が死亡又は精神的にもしくは身体的に障害を負い、労働能力を失くしてしまったり、労働能力に高度の制限を要した場合は未返済額の全額もしくは一部が免除されます。これはあまり起こってほしくはないことですが、万が一起こってしまった場合に本人以外の家族の為にこういった対応策も設けられています。
又、平成15年度以前に大学院の第一種奨学生に採用され、奨学金を受けることになった方は、願い出を提出することで奨学金の未返済額の全額もしくは全額を免除されます。免除を受けるには所定の要件を満たし、教育又は研究の職に就いていなければいけません。平成15年度以前の方が対象であり、今から奨学金を受ける方は対象にはなれません。
奨学金の口座変更は間違えの無い様に確実に行おう!
誰もが等しく受けたい教育を受ける為に奨学金は存在します。その奨学金は必ず返すことが義務づけられています。長い付き合いになる奨学金ですから、その間に結婚や転職等、自分自身を取り巻く環境が大きく変化することもあります。その人生の中で起こる変化の際に本人以外の他人任せにするのではなくきっちり自分で対応をできるようにしましょう。