生命保険・受取人として指定できる人
生命保険の受取人はどなたでも指定出来る訳ではありません。配偶者、ご両親、子供など、身近な人間が生命保険の受取人に指定出来るのは想像がつきます。ここではどういう方が生命保険の受取人になれる資格があるのか、詳しく説明していきます。
法律が変わる事で、受取人に指定出来る方も変わっていく可能性もありますが、常にチェックするように心がけましょう。生命保険に加入済みの方もにこれから加入する方も確認していきましょう。
①基本は配偶者・二親等以内の血族
生命保険の受取人は基本的に配偶者か二親等以内の血族になります。二親等以内というのは、被保険者から見て、親、子供、祖父母、兄弟、姉妹、孫になります。二親等以内の血族がいらっしゃらない方は、三親等以内の血族を受取人に指定する事が可能という生命保険会社もあります。
生命保険は、万が一の時に家族が生活に困らないように資金を残す事を目的に加入するものなので、生命保険金を本当に必要としている人に優先権が与えられます。
②内縁・婚約者でも受取人になれることも
内縁関係者や婚約者でも一定条件を満たせば受取人に指定する事が可能です。お互い独身(戸籍上の配偶者がいない事)である事。生命保険会社が定める期間、生計を共にしている事、婚約している方は、将来、一定期間内に結婚予定である事、などが挙げられます。条件は各生命保険会社によって異なりますので、必ず確認しましょう。
近年では、同性パートナーを受取人として指定出来る生命保険が増えて来ております。二親等以内の血族だけではなく、実生活におけるパートナーに資金を残せるという選択肢があるのは安心ではないでしょうか。
③受取人を複数指定する事もできる
生命保険金の受取人は複数指定出来る事が可能です。子供が複数いる場合などに、生命保険金の割合を指定する事も可能です。例えば、配偶者40%、子供3人20%ずつなど生命保険金を受取る割合を指定出来ます。
受取人を複数指定した場合は、生命保険金の受取時に指定された受取人全員の印鑑証明書や生命保険金受取請求書類などの必要書類を揃えなければ生命保険金は受け取れません。
受取人を複数指定出来る事はメリットでもありますが、デメリットもありますので、受取人を複数指定する場合は気をつけましょう。
生命保険・受取人は変更できる?
生命保険は、長期にわたる保険が多く、基本的に何度でも受取人の変更が可能です。もし不測の事態で生命保険金が支払われる様な状態になってしまってからでは変更が出来ません。適宜、受取人が変更出来る様に受取人変更の手続きの仕方を頭に入れておきましょう。ここでは生命保険金の受取人の変更手続きについてご説明していきます。
①受取人変更手続き
生命保険受取人の変更は何度でも変更可能です。契約の保障となっている被保険者の同意が必要ですが、生命保険受取人の同意は必要ありません。生命保険会社によって必要な書類が違いますので、事前に確認しましょう。
契約者本人の身分証明書の提出や生命保険会社指定の書類が必要になります。また、契約者・被保険者・受取人の関係によって生命保険金受取時などに、適用される税金が異なります。変更までの期間は生命保険会社によっても違いますが、約1週間ほどで変更出来ます。
②遺言によって受取人変更可能
遺言でも受取人の変更が可能です。また契約者が被保険者の同意を得る必要があります。遺言書の書式が法律上、適切でない場合は、変更出来ない可能性が高く、遺言書の有効性などを確認したり、遺言書の作成までに平均で約2〜3週間ほどの時間がかかります。
法律を確認しなかったり、士業などのプロにお任せしなかったり独自の方法で遺言を作成するケースもあります。その場合は、法律上、遺言として認められません。こうなってしまった場合は、契約者の意図と違った方に生命保険金が渡ってしまう事になります。
特殊な環境を除き、受取人を変更する場合は、通常手続きの方が時間がかかりませんので、通常の変更手続きをおすすめします。
生命保険・受取時に発生する税金
生命保険金の受取時には契約者、被保険者、生命保険金受取人の関係によって発生する税金が変わってきます。大きく分けて所得税、相続税、贈与税の3種類の税金に該当します。生命保険金受取人が税金を支払う対象です。
生命保険契約時と受取人を変更した場合は、想定していた税金と違う税金が発生する事もありますので、注意しましょう。ここでは生命保険金受取人の状況別に発生する税金をご紹介していきます。
①所得税
契約者と生命保険金受取人が同じ場合は一時所得として所得税の課税対象になります。生命保険料を支払った本人が受取ったお金については、原則どのような場合でも所得税とみなされます。一時所得は、生命(死亡)保険金額から今までに払い込んだ払込保険料総額と特別控除額の50万円を引いた金額の1/2が課税の対象になります。
②相続税
このパターンが1番多いのですが、契約者と被保険者が同じ場合、受取人が受取った死亡保険金にかかる税金は相続税の対象になります。夫が自分の万が一に備えて契約した場合で、生命保険金受取人が妻や子供の生命保険契約の場合は相続税の対象となります。
生命(死亡)保険金には遺された家族の生活保障という役割があります。相続税の対象ですと、他によほど大きな資産がない場合は、非課税枠が設けられてますのでほとんど税金がかかりません。受取る人が法定相続人の場合は税負担が少なく抑えられるようになっています。
③贈与税
契約者、被保険者、生命保険金受取人がそれぞれ違う名義の場合は、贈与税の対象になります。この場合は、生命保険料を支払った人が死亡したわけでもなく、他人がお金を受け取るため、契約者の生命保険金を生命保険金受取人に贈与したとみなされます。贈与税の場合は、相続税に比べ税率が高く、節税が可能な制度もほぼありません。
受け取る生命(死亡)保険金から基礎控除額の110万円を引いた金額が課税の対象になります。
生命保険・受取人を子供にするメリット
生命保険は、夫が亡くなった場合に家族の生活費に充当する資金を確保しておくという目的で加入される方が多いです。受取人の指定は妻や子供などが一般的で、中でも妻というケースがほとんどです。この場合に関係してくる税金が相続税です。
ここでは生命保険金の受取人に妻ではなく子供を指定した場合に、相続税などの税金を考慮したメリットをご紹介していきます。
①相続税の節約
妻である配偶者が相続した財産については、法定相続分もしくは1億6000万円のいずれか大きい方の金額までの財産を相続しても、相続税がかからないという、相続税法上大きな軽減制度が設けられています。
生命保険金受取人が妻で、のちに妻が逝去したことで再度、子供が相続する場合に二次相続となり、相続税額の軽減がないため、相続税が高くなる傾向にあります。
はじめから子供を生命保険金受取人に指定しておくことで、相続税の控除枠である法定相続人×300万円の金額を控除出来るため、税金を節約できます。
②納税資金準備にもなる
納税資金とは文字通り、税金を納めるための資金のことです。相続税が発生した場合、不動産や土地などのこれらの財産はすぐに現金化出来ず、大変時間がかかります。そして相続人(子供)が支払う相続税を払えない可能性があります。
生命保険の場合は、生命保険会社へ請求手続きを行ってから約1週間前後で生命保険金が指定の口座へ振り込まれ現金が確保出来ます。
生命保険・受取人に関する注意点
生命保険の受取人はいつでも変更が可能で、複数人指定も可能です。独身時代に加入した生命保険の受取人が両親になっているケースがあり、その時の状況に合わせて受取人を変更しなければ、故人が本来生命保険金を受け取って欲しい相手に残せない事もあります。
ここではそうならないように実例を交えながら生命保険金受取人を決めるときの注意点についてご紹介していきます。
離婚が決まった場合にはすみやかに
離婚が決まった場合はすみやかに生命保険の受取人を変更することをおすすめします。離婚決定時に子供がいる場合は子供に、子供がいない場合は両親含む二親等以内の親族に変更しておく必要があります。
実際に離婚したケースでは、夫の生命保険の受取人が元妻であった場合、離婚により親族関係は解消になりますが、離婚前に加入していた生命保険の保険金に関する受取人の権利は有効です。その後、受取人変更をせず夫が亡くなった場合には、受取人である元妻に生命保険の受取人としての権利があり、元妻に生命保険金が支払われることになります。
受取人の状況に応じた対処法
生命保険金受取人は二親等以内の親族がなることが基本ですが、受取人が複数いたり、複数いる中の1名が未成年の場合、受取人がすでお亡くなりになられてるケースも想定出来ます。また親族以外の方も契約者の遺言により生前にお世話になった方を受取人に指定できる生命保険会社もあります。
生命保険は長期でかけていくものがほとんどで、契約者、被保険者、受取人の状況が変わって行く事が想定されます。ここで紹介するのは稀なケースになりますが、何があるか分かりませんので把握しておいて損はありません。
子供が未成年のときの生命保険金受取方法
生命保険金の受取人が未成年でも問題はまったくありません。しかし未成年の場合は、自分自身で保険金を請求する権限がありません。親権者または未成年後見人が代理または、未成年者の請求に同意する必要があります。
未成年後見人は申し立てから選任まで2,3ヵ月かかるため、生命保険金の請求までも時間がかかりますので注意が必要です。未成年の方が受取人の対象になりそうな場合は、事前に身近な親族に受取人を変更する事をおすすめします。
受取人が先に亡くなっていた場合
受取人が亡くなっていた場合、変更手続きをしなければ受取人の法定相続人が生命保険金を受け取る事になります。生命保険金は相続財産ではなく、受取人固有の権利と支払われるお金という位置付けです。法定相続人も複数いる事が考えらえます。
生命保険金の受取人が亡くなった場合、受取人の方についての生命保険契約の内容変更をしなければなりません。ですが生命保険金の受取人の変更をせず、実際に生命保険金を支払うことになるケースがあります。速やかに対処していきましょう。
生前お世話になった人を受取人にする方法
生命保険金絡みの詐欺などの事件が多発して社会問題になったため、生命保険金の受取人には生命保険会社も原則は二親等以内の親族にする会社がほとんどです。ですが、上記に記載している遺言書によって生命保険金の受取人の指定出来るケースもあります。
それぞれの人生があり、お世話になった人に資金を残したいという方もいらっしゃいます。遺言書を有効にするには、しっかりと法律に則った手続きが必要です。費用は多少かかってしまいますが、公正証書遺言にする事をおすすめします。
隠し子がいる場合
もし結婚していない相手の子供がいる場合、認知しているか認知していないかが重要になります。子供が1人でも複数でも同じです。認知している場合は戸籍上、親子関係が証明されます。認知していない場合は、他人となり、戸籍上の親子関係が証明できないため原則、受取人には指定出来ません。
生命保険会社によっては認知していない子供でも生命保険金の受取人に指定出来る可能性もあります。生命保険加入時などに担当の方に相談しましょう。
受取人が同性パートナー
内縁関係、婚約関係についても、生命保険会社の一定の条件を満たせば生命保険金の受取人として指定することが可能な場合があります。そして2015年の渋谷区パートナーシップ証明書発行を皮切りに生命保険会社だけでなく、火災保険会社、自動車保険会社も同性パートナーを受取人として指定出来る会社が増えてます。
受取人として指定するには主に被保険者と生命保険金受取人と2人の住民票や戸籍の写しや自治体発行のパートナーシップ証明書の提出が必要になります。提出書類は生命保険会社によって異なりますので、確認しましょう。
生命保険の受取人は二親等以内の親族を優先する
生命保険の受取人を指定する際には、契約者との関連により発生する税金の種類が異なる点や、契約者本人の状況に応じて受取人を変更しなければ本来の目的を達成出来ずに終わるケース、生命保険の受取人を複数人指定する事などの方法で税金を回避出来ることをご紹介していきました。
生命保険は、万が一の際に残された家族の生活を守ることが目的であり、生命保険金受取人を誰にするかは契約者の思いを最優先に決めるべきです。そのためほとんどの生命保険会社が二親等以内を優先して受取人になるような仕組みになっています。
また生命保険会社も時代に合わせて受取人の指定出来る範囲を狭めたり、広げたりと柔軟に対応しております。生命保険に加入してる方は、関連する情報を随時チェックしていきましょう。