公務員の平均退職金を紹介
今回は、公務員の方々の退職金について説明をしていきます。民間の企業に勤務する社員と同様、公務員の方々も職を離れるときには退職金が支給されます。その計算方法は、民間企業のものとどのような違いがあるのか、または地方公務員や国家公務員などの区分によってどのくらいの金額上の差があるのかなどについて解説をします。
さらに、公務員に対して支給される退職金の平均金額や退職理由によって変わってくる金額の基準及び平均金額などの調査結果も踏まえて解説していきます。
全国の公務員の8割は地方公務員
公務員の退職金について解説する前に、現在の日本における地方公務員と国家公務員の割合はどれくらいなのか、調査結果があるので紹介します。平成30年度の実績ですが、国家公務員は約58万人で17.5%、地方公務員は約274万人で82.5%となっています。
地方公務員の人数が八割程度を占めているのが現状です。十年ほど前の時点では、地方公務員の割合が74%という実績があるため、地方の自治を重視している方針がうかがえます。地方公務員の人数割合増加は、今後もその傾向が続くとみられています。
公務員の退職金は都道府県・市区町村によって違う
ここでは、自治体の種類ごとに比較して、どの種類の自治体の職員に対する退職金が多くなっているのか、解説していきます。主に支給された退職金の平均と最高額から比較をしていきます。
市区町村よりも都道府県の方が退職金の金額が高いという結果にはなっておりません。また、平均額と最高額の差から、自治体ごとに取り組みや計算方法がかなり異なっています。また、同じ種類の中でも一般職員や行政職員、教育関連の職員などの職種によっても退職金の金額は変わってきます。
指定都市>市区町村>都道府県
自治体の種類ごとに計算された平均額の順に並べると、指定都市が一番、二番は市区町村、三番は都道府県という結果になります。指定都市とは、地方自治法で定められた区分で、「政令で指定する人口50万以上の市」です。全国で20都市が指定されています。
月々の給与の面からみると、都道府県・指定都市・市区町村という順番になります。指定都市が退職時における保障を手厚くしていることが見て取れます。ただ、これは全職種における平均値を計算した結果でありますので、個別に分類ごとに見ると一概に同様の結果になるとは限りません。
国家公務員よりも地方公務員の退職金の方が高い?
国家公務員と地方公務員を比較すると、どちらの退職金支給額の方が多いのでしょうか。調査の結果は、地方公務員の方が高いという意外な結果となっています。平均の金額ですので、個別に見ると一概にいうことはできませんが、地方公務員の方が平均して高い金額の退職金を貰っていることになっています。
国家公務員の方が高額の退職金をもらっているというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、現実は異なっていました。地方公務員の職種にもよりますが、国家公務員よりも報酬が大きいことがあり得ます。
地方公務員の退職金平均支給額
ここからは、具体的に公務員の退職金の金額について紹介していきます。いずれも退職金受領額の平均と最高金額を調査結果を元に記載します。まずは都道府県の退職金支給額、指定都市の退職金支給額、市区町村の退職金支給額についてです。
調査結果は、総務省が発表している「給与・定員等の調査結果(平成28年)」をもとにしています。データの出典元としては、国家がその実績をベースにもれなく集計し取りまとめたものですので、もちろん信頼のおける内容になっています。
都道府県の退職金平均支給額
まずは、都道府県の退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は1,168万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では1,335万円、一般行政職では1,587万円、教育公務員では1,133万円、警察職では1,688万円という結果になっています。
調査結果を見ると、公務員だから極端に退職金が高いということはないということが分かります。平均ではなく最高支給額を見ると、2,000万円を超える結果となっていますが、これも民間の退職金とそれほど大差はありません。
指定都市の退職金平均支給額
次に、指定都市の公務員の退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は1,643万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では1,704万円、一般行政職では2,078万円、教育公務員では1,601万円という結果になっています。警察職は指定都市では該当がありません。
同じ公務員でも、都道府県の職員の方々が受領する退職金と比較してみると、こちらの方がかなり高く支給されていることが分かります。その理由は定かではありませんが、退職金支給計算が地自体ごとにまちまちであることが分かります。
市区町村の退職金平均支給額
続いて、市区町村の公務員の退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は1,611万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では1,625万円、一般行政職では1,853万円、教育公務員では1,243万円という結果になっています。警察職は市区町村では該当がありません。
前述のように、公務員の退職金支給額の順番としては、指定都市、市区町村、都道府県の順番になっています。その理由はよくわかりませんが、指定都市で働く公務員職員が優遇されている事実があります。
地方公務員の定年時の退職金平均支給額
ここまで、地方公務員の退職時の退職金平均支給額について解説してきましたが、続いて定年退職をした場合の支給額についてご紹介します。前述の平均額と比較して、定年退職をした際に受領できる退職金の方が高い結果になっています。
ここでも、調査結果は総務省が発表している「給与・定員等の調査結果(平成28年)」をもとにしています。実際に支給された金額の集計ですので、正確なデータと考えられます。
定年退職時の退職金平均額と、定年以外の理由で退職した方々に支給される退職金は、もちろんですがかなり大きな乖離があります。この乖離が大きいほど、中途で退職してしまう方が多いということにもつながります。
都道府県の退職金平均支給額
まずは、都道府県の公務員の定年時退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は2,296万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では2,241万円、一般行政職では2,266万円、教育公務員では2,333万円、警察職では2,191万円という結果になっています。
さすがに定年退職となるとかなりの高額が支給されています。これは民間企業で支給されている金額よりも高い結果となっています。公務員の退職時における優位性がうかがえます。
指定都市の退職金平均支給額
次に、指定都市の公務員の定年退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は2,337万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では2,338万円、一般行政職では2,357万円、教育公務員では2,366万円という結果になっています。警察職は指定都市では該当がありません。
最高支給額の結果を見ると、4,000万円を上回っている実績があります。これは相当高い水準ですが、都道府県と市区町村の結果と比べてもダントツで高い結果となっています。
市区町村の退職金平均支給額
続いて、市区町村の公務員の定年退職金支給額の平均についてです。全職種の平均は2,144万円となっています。職種ごとに紹介をしますと、一般職員では2,114万円、一般行政職では2,236万円、教育公務員では2,241万円という結果になっています。警察職は市区町村では該当がありません。
以上の結果からみると、地方公務員の定年退職支給時の退職金平均額では、指定都市、都道府県、市区町村という順番で金額が設定されていることになりました。平均額ではどの分類でもそれほど大差はありませんが、民間と比べるとかなり高い水準にあります。
国家公務員の退職金平均支給額
ここまで、地方公務員の退職金支給額について解説してきましたが、続いては国家公務員の方の退職金支給額について紹介していきます。こちらは、地方公務員の時と異なり、内閣人事局「国家公務員退職手当実態調査(退職手当の支給状況)平成29年度」という資料をもとにしている結果です。
こちらも、資料の正当性・信頼性という点では申し分ありません。実際に支給された結果の正確な集計計算結果となっているので、信頼感があります。
退職金は平均1076.3万円
内閣人事局「国家公務員退職手当実態調査(退職手当の支給状況)平成29年度」によると、国家公務員の平均退職金支給額は1076.3万円となっています。この結果は、地方公務員の平均支給額と比較するとかなり低い水準ということが言えます。
支給額自体は、それほど大差はありませんが、自己都合で退職する方が多いことにより、退職金の平均支給額が下がっている結果になっています。地方公務員の方が職場への定着率が高いということを表した結果となっています。
行政職俸給表をベースに計算される
国家公務員の退職金計算においては、「俸給表」を元にされています。これは、国家公務員の職種に応じて定められている表形式の資料で、職種ごとに適用されるべき報酬のことで、民間企業で言えば各種手当を除いた基本給ということになります。
国家公務員の退職金計算では、まずこの「俸給表」でいわゆる基本給を算出し、これをベースに勤続年数や各種係数を乗じ、調整額を増減するという処理がなされます。民間の退職金計算の基本給をベースにしたやり方とほぼ同等といえます。
国家公務員の定年時の退職金平均支給額
続いて、国家公務員の定年退職時の退職金についてみていきます。こちらも先程と同様内閣人事局「国家公務員退職手当実態調査(退職手当の支給状況)平成29年度」をベースに紹介していきます。国家に従事した人が定年で退職するとなると、かなり高額の支給が受けられそうですが、そうとも限りません。
定年退職金は平均2108.5万円
内閣人事局「国家公務員退職手当実態調査(退職手当の支給状況)平成29年度」によると、国家公務員の定年退職時に支給される退職金の平均額は、2108.5万円となっています。これは、地方公務員と比べても高額ではないことが分かります。むしろ地方自治体の方がたくさん退職金を受領しているという結果になりました。
国家公務員退職手当法とは
ここまで、地方公務員と国家公務員に対して支給される退職金の紹介をしてきましたが、地方公務員が地方ごとの特色が反映されていることに対し、国家公務員に対する退職金については、国家公務員退職手当法という法律で明確に規定がされています。
国家公務員退職手当法は法律に分類される法令で、国家公務員の方が退職する際に受領できる計算方式について規定しています。この法律自体はそれほど長文で構成されているわけではないので、比較的読みやすい法令です。
国家公務員の退職金を法令で規定
国家公務員退職手当法では、国家公務員の退職金を法令で規定しています。一般退職、特別退職手当に加え、退職手当支給制限といった内容を含んだ法令です。自由に取り決めをすることができる民間企業とはかなり大きな違いだといえます。国家のお金を退職金として支給されるのですから。きちんと規定されるべきという考え方です。
公務員の退職金計算方法
ここまで、地方公務員と国家公務員のそれぞれの退職金支給額について解説をしてきました。ここでは、公務員の退職金を計算する際に、どのような計算がなされているのかという点について解説をします。民間企業で支給される退職金では企業ごとに計算方式が異なることが多いですが、公務員の場合はある程度基準が定められています。
計算結果を大きく左右する事項として、退職理由が挙げられます。退職の理由によって支給率が定められており、自己都合が退職理由の場合は低く設定されていて、定年退職などの理由の場合は高く設定されています。
退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給率+調整額
公務員の方の退職金計算における計算式は、次のようになります。退職日の俸給月額×(退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額となっています。一般的に、自己都合を理由として退職する際には低い支給率が適用され、定年退職などが理由の場合は支給率が高く設定されています。
退職理由については、民間企業においては情状酌量の部分もありますが、公務員の場合は明確に基準があり、例外は基本的に認められませんので、理由のところで優遇してもらおうと思っても困難であるのが現状です。有利な理由で退職したいと考えても難しいです。
「調整額」は職責ポイント
公務員の退職金計算において、調整額という綱目があります。これは、一般的に職責ポイントと言われています。公務員には第一号から第九号まで十段階の区分があります。職位ともいわれるこの区分ごとに、退職金計算時に加算される金額が定められています。
在籍時の区分で長い順に適用され、合計月数が60ヶ月になるように上位の区分が設定されます。その区分と所属月数によってこの調整額が算出され、公務員の退職金に加算されることになります。
<参考>民間企業勤務者の退職金
ここまで公務員の退職金の平均金額や計算方法などについて解説してきましたが、参考として民間企業で採用されている退職金支給の制度や計算方法、支給平均額などについて解説していきます。公務員に支給される退職金の基準と比較すると、厳しい結果になっていることが分かります。
民間企業で支給されている退職金は、公務員に支給されている退職金の制度及び計算方法以上に、企業ごとの特色や考え方が反映しており、企業ごとにかなり差があるのが現状です。あらかじめ企業の担当者に確認をしておくことをお勧めします。
自己都合と定年退職で大きく異なる
民間企業で支給されている退職金の計算方法は、特に公的に決まった取り決めはないため、結局は企業ごとに取り決めた規則にのっとって支給されているのが現状です。したがって、確かな情報を入手するには企業の就業規則や企業担当者に問い合わせをすることなどが必要になります。
ただ、一般的には退職理由によって支給額に影響が及ぶことが多いです。自己都合による退職理由の場合は支給率を下げるといった対応を取る企業が多くなっています。一方、退職理由が定年退職の場合は、最も有利な受給のされ方がなされることが多いです。
民間企業で勤務して定年退職を迎えた方が受領できる退職金の平均額は、1941万円というけっかがあります。これは、前述してきた公務員の退職金と比べると低い水準となっています。公務員の優位性がよく表れている結果となりました。
計算方法は会社により異なる
民間企業で支給されている退職金は、企業ごとに取り決めが異なり、企業ごとの考え方が反映される部分だといえます。とはいえ、ある程度代表的なパターンはあります。以下に紹介する計算方法を採用する企業が多くなっているのが現状です。
年功序列を重視した企業では、勤続年数などの要素により計算されるケースが多いですが、逆に成果重視型の企業においては、年功序列ではなく退職時の役職や職階手当を重視する傾向があります。企業ごとの考え方は異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
代表例①定額制
民間企業で支給される退職金の計算方法の代表例として、まずは定額制があります。これは、単純に勤続年数に比例して金額が増額していく制度です。10年勤務したら500万円、20年なら1000万円といったように、単純に年数で金額が比例して増加していく形式です。
この制度は、計算しやすく事務処理方の負担がかからないメリットがありますが、従業員ごとの企業に対する貢献度が反映しにくく、社員の向上心を養うことは難しい計算方法といえます。
代表例②基本給連動制
民間企業で支給される退職金の計算方法の代表例として、次に基本給定額制があります。これは、退職時の基本給その他手当てに勤続年数及び一定の係数を乗じて算出する方式です。旧来型の企業では、この計算方式を採用する企業が多くなっています。
この制度は、年功序列を重視しつつ、最終の基本給を採用することからある程度従業員ごとの個別の業績を反映させることができる方式となっています。ただ、これもどうしても年功序列を最も重視している点に変わりはなく、従業員のやる気の醸成の効果は期待できません。この方式は今でも日本の企業では一般的な方式で、利用企業も多くなっています。
代表例③別テーブル制
民間企業で支給される退職金の計算方法の代表例として、続いて別テーブル制を紹介します。これは、退職金の計算をする際にベースとする内容を基本給以外の部分にもち、これをテーブルと呼び、これをベースに金額を算出していく形式になります。
例えば、退職時の職階や勤務先に与えた功績などの条件をベースに計算する退職金単価を設定します。これは、設定次第ですが、従業員ごとの貢献度を細かく退職金額に反映させることができますので、従業員のやる気を増やすには大きな効果があります。
公務員の退職金は非常に充実している!
ここまで、公務員における退職金について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。地方公務員の中でもどの自治体に勤務するかによって退職金の平均金額も異なることや、国家公務員においても諸条件により金額が変動することに加え、民間企業の計算方法も紹介してきました。
いろんな条件や様々なケースがありますが、総じて公務員の退職金は民間企業の退職金と比べて待遇が厚いことが分かります。仕事に対するやる気の面では比較をすることは難しいですが、金銭的な面に限定して考えれば、公務員の方が充実していることが分かります。
安定した収入と退職時の比較的高額の退職金支給を受けることができるという点で、公務員の人気はやはりこれからも続くことが予想されています。ただ、もちろん仕事をすることはただ単に報酬を得るだけが目的ではなく、仕事それ自体に楽しみや価値があるものです。