証券アナリストとは
証券アナリストという名前自体はよく知られています。しかし、証券アナリストが実際何をやっているかというのを知っている方はそんなに多くありません。証券アナリストの仕事内容をあまりよく分かっていない方のためにまずは、証券アナリストは一体どんなことを会社で行っているかを説明していきます。
投資助言や投資管理サービスを提供
証券アナリストの仕事は一言で表せばアドバイザーです。証券アナリストは自ら市場での調査に基づいて企業などに対する投資価値の有無を見抜きます。そして顧客に対して投資助言や投資管理サービスを提供します。
そして証券アナリストは特定の協会によって認められた民間資格です。多くの企業は投資の安全性を考慮して証券アナリストを採用していることが多いです。そのため、証券アナリストの資格を取ることで職の幅を自動的に広げることも可能です。
近年では資本社会の発達に伴い、経済がかなり複雑な構成になっています。そのような状況で企業が頼れるのが証券アナリストであり、現在には社会のニーズに伴い投資アドバイザーやマーケット・アナリスト、リサーチ・アナリスト様々なものがあります。
証券アナリストは前述したように民間資格なので、国内のみで通用します。ワンランク上の資格だと米国証券アナリストや国際公認投資アナリストというものがあります。
証券アナリスト・資格試験の難易度
市場調査や投資関係の分析となると、証券アナリストの資格を得るのはかなり難易度が高いように感じる方も多いです。実際、証券アナリストの試験はどれほどの難易度なのか分からず、気になっている方も少なくありません。ここでは、学習内容と合格率の2つの観点からその難易度を説明していきます。
①学習内容の難易度
まず、学習内容の観点から言えば難易度はかなり高いと言えます。証券アナリストは色々な市場の調査をするのですが、そこにはかなりの専門知識を必要とします。証券に関する論理的な理解だけにとどまらず、多くの数学的要素も混じっているため、試験の内容だけに関して言えば、難易度は低くありません。
②合格の難易度
幸いなことに合格率から見ればそこまで難易度が高くはありません。国家試験では合格率が大体10%ですが、証券アナリストの試験では約50%の受験者が合格しています。そのため多くの勉強時間を投資すればどれだけ試験内容が難しくても不可能ということはありません。
証券アナリスト・合格率
証券アナリストの資格を得るための試験の合格率についてもう少し詳しく見ていきましょう。証券アナリストの資格を取りたい方で最も気にしているのは試験の合格率です。ここでは試験にどのような方が参加し合格するのか、合格率だけでは見えない隠れた危険性についても解説していきます。
合格率は約半数と難易度は難しくない
先ほども述べたように、証券アナリストの試験では合格率は50%とかなり高めです。そのため、確かに試験を受ければ合格する確率は高いと合格率を見れば分かります。
しかし注意してもらいたいのが、受験者のレベルに関してです。証券アナリストになるには3年の実務経験が必要とされており、試験に臨む受験者もかなりの勉強時間と実務を経験してきた方が多くを占めています。
実際メガバンクや商社に勤めている方が資格取得のために試験を受ける場合が多いです。そのため半分の確立で受かると楽観的に見ていると大変痛い目に遭います。
証券アナリスト・必要な勉強時間
では証券アナリストになるにはどれほどの勉強時間を費やす必要があるのでしょうか。これはもちろん個人差にもよります。これまで証券に携わっている方であれば多少なりとも背景知識をつかむことができます。なのでここでは試験に合格するまでの平均的な勉強時間になります。参考までに見ておくと役に立ちます。
3ヶ月(180時間)
証券アナリストの資格をとるのに勉強時間は180時間ほどと言われています。3か月で資格を取りたい場合には単純計算で週に15時間ほど勉強すれば目標の勉強時間に到達できます。
もちろん勉強すれば勉強するほど合格率は上がります。基本的には1次試験と2次試験のそれぞれに180時間費やすのが理想的です。働いている方であれば勉強時間を充てるのが難しいですが、休日をなるべく利用して試験に臨みましょう。
難易度によって調節
これまでに証券アナリストに関することを何も携わってこなかった方であったら勉強時間を180時間よりももっと増やすと不安は抑えられます。その他にも、理論的にものを考えるのが苦手だったり、数字に抵抗がある方は勉強時間が少しかかります。その分勉強時間を費やして確実に合格率を上げていきましょう。
証券アナリスト・難易度にあった独学勉強法
証券アナリストの資格を取るのに、仕事をしていて塾などに行く余裕もなく、独学で勉強するしかないという方も多いです。ここでは独学をする人に向けた勉強法を紹介していきます。独学は自分で時間を作って自由に勉強時間に充てることができるのがメリットです。時間がある方もない方もそれぞれいるので、自分に合った独学勉強法を見つけましょう。
試験対策に特化した教材を購入
まずは資格を取るためにどんな勉強をするのか大元の説明をしていきます。1次試験では証券分析とポートフォリオ・マネジメント、財務分析、経済の3つの大きな枠組みを学習していきます。
それぞれの科目は細分化することができます。例えば、経済はマクロ経済学とミクロ経済学に分かれます。なので単純に学習内容が3つだけということではありません。
試験に関して言えば、受験者は3つの科目全てに合格する必要があります。そのため独学する際には工夫する必要があります。例えば、試験は1年に2回行われているため、3科目を2つに分けて対策します。
証券分析が3科目の中で難しいと言われているので他の2つと分けてまずは証券分析のみに集中するというのも戦略の内です。
1次試験に合格すると、次は2次試験があります。こちらは1次試験と内容がかなり似ています。というのも、証券分析とポートフォリオ・マネジメント、財務分析、経済までは全て一緒です。2次試験ではそれらに加えて職業倫理・行為基準といい科目が追加されます。
この職業倫理・行為基準というのが2次試験を制する上で重要な要素となってきます。職業倫理・行為基準は他の科目と比べても難易度が低く、点数が稼ぎやすいです。
2次試験は420点満点中、半分の210点で合格ラインと言われていますから、なるべく職業倫理・行為基準で点数を取って合格率を上げていきましょう。
試験内容の大枠がつかめたところで、試験の対策方法に移っていきます。独学をするにはテキストを購入しましょう。独学をするのであれば自分で情報を集めて勉強するのはとても非効率です。学校と同じようにテキストで基礎知識を抑えながら自分のものにしていきます。
協会から出版されたテキストは分かりづらいという意見が多く、評価が高くありません。そこでおすすめなのがTACが出版するテキストです。
TACは証券アナリストを目指す方に向けた、資格をとるための学校です。TACでは授業やオンラインでの講座をとることも可能です。ですが今回は独学がテーマですので、独学に焦点を置いてみていきましょう。
①時間があまりない人
仕事などで時間に追われ、どうしても試験の勉強時間を充てることができない独学受験者におすすめな方法は、とにかく問題集を解くということです。問題集では多くの解放が載せられており、何度も繰り返し問題を解くことで方程式が見えてきます。
これはテキストを開いて1から学習をする時間がないという方に向けた最善の方法です。試験では問題集の中から似た問題が多く出題されるため、問題集を確実にするだけで試験の合格率は格段に上がります。
TACでは過去問題集を踏まえた多くの対策本が出版されています。独学であればできるだけ多くの問題にあたることで解放を見抜き、何度も解きなおして試験に臨みましょう。
②時間がある人
逆に勉強時間を試験に十分に充てることができる独学受験者方は1からの勉強をおすすめします。テキストを購入して、理論的に物事を勉強することで、その後の理解度が変わります。
証券アナリストになれば実践的に仕事をしていかなければなりませんから、中途半端に理解していても仕方がありません。まずはテキストで基本的なことをで独学で勉強しましょう。
その場合に分からない問題があったとしてもテキストに一度戻って確認できます。問題集だけで勉強する場合、理論的に理解できていない箇所がある可能性もあるので、時間があるのであればテキストを使うことは重要です。
証券アナリスト試験の概要
証券アナリストの試験に向けて勉強をしたら次は試験本番です。試験本番で失敗しないためにもあらかじめどのような感じで進行いていくのかを把握している必要があります。ここでは試験のおおまかな流れや試験にかかるお金、試験会場について詳しく説明していきます。意外と知らないでいて試験に臨むと失敗する方も多いので注意が必要です。
試験の流れ
前述したように、試験は1次レベルと2次レベルに分かれています。1次レベルが1年の内に2回あり、3科目すべてが合格した時点で2次レベルに進むことができます。
試験時間は1次レベルにおいてはポートフォリオ・マネジメントが180分、財務分析と経済がそれぞれ90分となっています。2次レベルでは、1次試験の3科目を午前に150分で行い、午後に職業倫理・行動基準で60分の計210分となります。
試験時間がかなり長いため、かなりの集中力が必要とされています。日頃の勉強から本番に近づけた雰囲気で長時間集中を心がけると本番でもうまくいきます。
また、1次レベルと2次レベルではそれぞれ独学とは別に教育講座を受ける必要があります。残念ながら証券アナリスト試験は合格に至るまでにかなり時間がかかるということがデメリットとして言えます。
1次レベルに関しては半年間の通信講座を受けたのち、試験を受けることが可能です。2次試験も同様、同じ期間講座を受講しなければなりません。
そして2次レベルをクリアした後、証券分析業務等の実務経験が3年以上あるか、証券分析に関する学識経験者であった場合に日本証券アナリスト協会検定会員に入ることができます。
ここに来るまで最短で2年半という時間が必要です。加えて、実務経験も問われているため、初めから始める方にとってはかなりハードな試験であると言えます。
試験会場と金額
試験会場は全国で展開されており、東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、金沢、広島、松山、福岡の9か所位置しています。
また、証券アナリスト協会は国外にもテスト会場を設けており、ニューヨーク、香港、ロンドンとかなり広範囲に広がっています。特に日本に滞在することがなく、海外で生活している日本人でも受けることができるためかなり便利です。
金額について、1次レベルの経済、財務分析がそれぞれ3100円、ポートフォリオ・マネジメントは6200円となっています。2次レベルは8200円となっています。
ちなみに通信講座の費用は、1次レベルの通信講座で三科目一括55500円。 2次レベルの通信講座は52500円となっています。
これらの情報からも分かるように、証券アナリスト試験は時間だけでなく、かなりの金額も用意してある必要があるということです。加えて証券アナリスト試験は相対評価に基づいて採点します。
そのため、受験者が少ない場合にはそれだけ合格率も下がってしまうということになります。現在は証券アナリスト試験の受験者が減少しつつあるため、合格率も減少傾向にあつのが現実です。
なので慎重に考え、自分が本当に証券アナリストの資格が必要かをしっかりと見極める必要があります。
証券アナリスト・メリット
多くの実務経験者がこぞって証券アナリストの資格を取ろうと勉強時間を費やしますが、そもそもなぜ証券アナリストの資格を取る必要があるのでしょうか。
もちろんビジネスをする上で知識を蓄える意味でも重要なのですが、実は証券アナリストの資格を持つだけでその他様々なメリットがあります。以下は資格をとることによって得られるメリットの例になります。
①投資の知識を得る
証券アナリストの資格を取ったからといって生活が大きく変わるということはありませんの。実務のない方がいくら証券アナリストの資格をもっていても大手の企業に転職するといったことは難しいです。
しかし、日本証券アナリスト協会も示しているように、重要なのは資格を得る過程です。どれだけ知識を得たかによって自分のスキルを伸ばすことができます。
例えば、投資の仕方は単純ではないため、政治的背景も含め多くの知識を要します。仕事をしている方でも投資はできるため、投資を自分で経験して理解を深めていくのは金銭面の上でもかなりの手助けにもなります。
②キャリアアップの武器
確かに証券アナリストの資格は就職や転職をする上で決定的な要素になるとは限りませんが、少なくとも有利にことを運ぶことができます。証券アナリストの資格を持っているということは経済に関しては幅広い知識を既にもっているということを示唆します。
企業側も証券アナリストの資格をもっている方に関してはある程度の信用をすることができますし、投資アドバイザーとしてほしがっている企業も存在するので、良いチャンスが巡ってくる可能性はあります。
また、学生といった若い資格保持者の場合は証券会社や銀行といった部門での採用試験に有利です。年収という面から見ても証券アナリストになることは決して悪い決断ではないでしょう。
平均的に見て証券アナリストの年収は比較的高く、600万円から700万円程と言われています。
③名刺に記載できる
証券アナリストの資格を持つとそのまま名刺に「日本証券アナリスト協会検定会員」と記載することができます。こちらも相手の信用度を得るといった意味で重要な役割を果たします。証券アナリストの資格保持者と不保持者とでは説得力も違いますし、寄ってくる顧客の数も変わってきます。
証券アナリスト・働き方
それでは証券アナリストの資格を取ったところで、それまで得た知識をどのように生かしていくのでしょうか。証券アナリストが何をしているのかは一般的に知らない人が多いです。ここでは証券アナリストがどのようにして企業に貢献しているのかを具体的に見ていきます。
基本的に総合職の正社員
証券アナリストの仕事内容に関しては総合職の正社員と捉えて間違いありません。企業内で業績の分析や将来性の調査、業界の動向についての調査と企業方針の転換の助言などを行います。
また、決済情報の分析や、投資先を決めるためのインタビューと言った仕事も証券アナリストの仕事です。企業の将来を担っているため決して簡単な作業ではありません。
それ程の責任感も必要になってきます。だからこそ証券アナリストとして優れていればそれだけ企業からの信用度も安定します。
証券アナリストの年収
証券アナリストの年収は600万円から700万円と前述しましたが、もちろん人によっては全然数字が変わってきます。ここでは学歴の違い、企業の規模の違い、そして会社内での自分のステータスの違いによって年収はどれだけ変わるのかについておおよその数字を出していきます。ぜひ参考にしてみて下さい
学歴別の年収
どこの会社もそうですが、特に日本では学歴の差によって年収もかなり変わってきます。50代前半の方の平均年収を基にしたとき、高卒は624万円、短大卒では約733万円、そして大卒の方は975万円という結果でした。やはり大卒は他の学歴保持者によってかなり異なるということが分かります。
企業の規模別の年収
当然のことですが大きな会社に入るほど自分に入ってくる給料は断然違います。大企業に入るにはそれなりに学歴も必要なので、大卒の年収が高いのも企業の規模とかなり関連性があります。
数字を見てみると、小企業の証券アナリストの年収は約566万円、中企業に就職している証券アナリストは624万円、そして大規模に入ると724万円という結果が出ています。
実は、企業の規模別の年収が一番年収の差が少ないということが分かります。後に紹介する、ステータスによる違いが一番年収を左右します。要するに、証券アナリストは自分の実力が最も考慮された職であると分かります。
ステータス別の年収
主任から部長まで様々な責任者が会社の中で存在していますが、証券アナリストの資格を持っていると更にステータスの質に磨きがかかります。
上の部署に上がれば上がるほど証券アナリストは年手が格段に上がります。主任の年収が約558万円で、係長になると694万円程になります。係長にまでなれば917万円、そして部長は1017万円程の年収であるという統計が出ています。
あくまでも統計のため、全員がこのように当てはまるという保証はありませんが、それでもこれらの金額が目安となります。自分がどれだけほしいのかを考えながら自分の目標を設定していきましょう。
証券アナリストの難易度は受験者の約半数が合格する程
何事にも個人差というものがあり、個人レベルで試験が難しいかどうかを一概に判断するのは簡単ではないです。しかし国家試験といった他の試験と比べると、証券アナリストになるには合格率のデータに依ればそこまで難易度が高いということではありません。
また、勉強次第で合格率を何倍にも高めることができるので、証券アナリストを目指している方はぜひ一度挑戦してみて下さい。