自己愛性人格障害の意味
自分に自信を持つことはいいことですが、その自信が過剰な場合、少々厄介です。何かといえば自慢話をしたり、自己中心的な態度をとったりする人が、あなたの周りにいませんか?
そうした相手との付き合い方は非常に難しいと感じていることでしょう。その人は自己愛性人格障害かもしれません。自分は特別だと思い込んだり、自分を褒めたたえることを周囲に要求したりします。
周りの評価には敏感で、非難されたり反対されたりするのを大変嫌がります。その上、相手が迷惑に感じているかどうかという思慮深さはありません。自己愛性人格障害者との接し方には頭を悩ませることでしょう。
本人自身も周りの人も悩ませる人格障害
自己愛性人格障害の意味するところは何なのでしょう?自己愛性人格障害の男性、あるいは女性は傲慢な性格で、自分は他人より優れていることを誇示する傾向にあります。
称賛されたい気持ちはとても強いにもかかわらず、他人と気持ちを分かち合うということができません。身近にこんな性格の人がいたら、周囲は付き合い方に困るでしょう。
露骨に迷惑だという接し方をする人もいるかもしれません。このように自己愛性人格障害の人は周囲を困惑させ、迷わせます。しかし同時に、自己愛性人格障を患う当人にとっても深刻な障害なのです。誰かに相談したくても、なかなか共感してくれる人はいません。
女性よりも男性に多い
自己愛性人格障害者は女性より男性に多い疾患だと言われています。身近にいる男性で「俺は特別な人間なんだ」という態度でくる人との付き合い方は頭を悩ませるものです。
常に優越感を覚えていたいので、1番身近にいる家族である妻を完全に見下して、奴隷のように扱う男性もいます。しかし共感をすることができないので、男性は妻が傷ついているなんて思いもしません。
妻はこのような夫との付き合い方に悩み苦しむことでしょう。誰かに相談ができればいいのですが、妻が自分でため込み、苦しい思いをしているケースも少なくありません。
自己愛性人格障害と間違われやすい障害
自己愛性人格障害の人は、ありのままの自分を認めることができません。自分は優れている、自分は素晴らしいと思い込む、人格障害の一種です。この自己愛性人格障害と似た特徴を表す人格障害があります。
それが境界性人格障害です。境界性人格障害の人には自己愛性人格障害の人と同じ特徴があります。たとえば自己中心的であったり、対人関係で接し方がうまくいかずに情緒不安定になったりするなどです。
境界性人格障害になる原因のひとつに自己愛の未成熟という、自己愛性人格障害と同じ要因があります。2つの障害は医師でも判断が難しい障害です。
人格障害はしばしば共存する
人格障害というのは、そもそも1つ1つ独立しているのではなく、重複して同じ特徴を持ちます。そのためいくつかの人格障害を1人の男性、あるいは女性が抱え込むこともあります。
自己愛性人格障害なのか、他の人格障害なのか、まずは医師に相談してみることが必要です。自己愛性人格障害は、発達障害と合併して症状が出ている可能性もあるのです。
自己愛性人格障害の原因
自己愛性人格障害の男性、もしくは女性はどうして「自分は特別で重要な人間である」と思い込むのでしょう?自己愛性人格障害者の、自分を過大評価するという特徴は、一般の人の青年期によくみられるものです。
しかし青年期のこの特徴は自己愛性人格障害を意味するものではありません。自己愛性人格障害の原因の半分は、遺伝的要因だと言われています。
親の接し方や環境が最も大きい要因
自己愛性人格障害の半分が遺伝的なものだとして、後の半分はどういった原因なのでしょう?自己愛性人格障害は、幼少期に家族に溺愛されて、甘やかされて育った人に多い症状でもあります。
家族が家族として機能しないバランスの悪い養育環境にあった場合も原因となります。逆に大きな劣等感を味わったり、卑屈な幼少期を過ごしたりした人も、自己愛性人格障害になる可能性があります。
身近に自己愛性人格障害の特徴を示す男性、ないしは女性との付き合い方に悩む場合、この症状が意味するものは何かがわかれば、どういう接し方をすればいいかのヒントになります。医師も相談された時、患者の幼少期の環境は重要視します。
自己愛性人格障害の人の特徴
自己愛性人格障害の人は全人口の1パーセント未満であると言われています。100人に1人の自己愛性人格障害者が身近にいて、接し方に悩んでいる人は運が悪いと言ってもいられません。
自己愛性人格障の人とどういう付き合い方をしていくかは大きな課題です。接し方を知るにあたり、覚えておかなければならないことがあります。自己愛性人格障害の人はどのような特徴を持っているかということです。
①自分の重要性に関する誇大な感覚
自己愛性人格障害の人は、自分に過大なまでの自信を持ちます。特に男性の場合、自分は会社で重要なポジションにつくべきであると考えます。そんな男性は自分の才能や成した業績を過大に吹聴します。
なんといっても、他人より自分は優れていると思い込んでいるので、付き合い方に気を付けないとあなたは不当に傷つけられてしまいます。
②成功や権力・理想的な空想に囚われている
自己愛性人格障害の男性は特徴的な言葉をよく使います。「俺はこんなところで終わる人間ではないんだ」という意味の言葉です。自己愛性人格障害の人は男性に限らず「天才」とか「超一流」といった意味の言葉が好きです。
思い通りにいかない時は、自分がなりたい男性像や女性像、成功者の姿を空想します。自分は特別な才能があるから、見る目がない人にはわからないという論理で自分の心を守るのです。だからあまりに無理だろうと思われる目標を定めたりもします。
③地位の高い人にしか自分を理解出来ない
自己愛性人格障害の人は自分の力を自分自身が認めることができず、他人に評価されることを好む特徴があります。しかし実力が伴っていないので、他者が評価してくれない場合があります。
そんな時は相手を口汚く罵ったり、悪口を言ったりします。結局自分は特別なのだから、特別な人、つまり地位の高い人しか自分を理解してくれないという思考回路に陥ります。
④過剰な賞賛を求める
ある男性が称賛に値する仕事を成し遂げた時、人々は当然のように褒めたたえます。しかし自己愛性人格障害の男性は普通に人々が意味する「称賛」では飽き足りません。
この男性の意味する「称賛」はもっともっと強く、絶え間なく続くものでなければならないのです。そんな男性の周囲の人々はどういう接し方をすればいいか悩んでしまいます。
⑤自分の期待に従う事を望む
自己愛性人格障害の人は周囲の人たちは自分の期待に沿う行動をして当然といったとらえ方をします。その意味するところは、自分は他人とは違って、桁外れに素晴らしい才能を持った人間だということです。周囲が自分の期待通りに動かないことには我慢ができず、人間関係で深刻なトラブルを起こすこともあります。
⑥対人関係で相手を不当利用
自己愛性人格障害の人は、自分は能力ある素晴らしい人間だと信じています。その意味するところは、他人は自分より劣っており、素晴らしい自分のために利用するのは構わないということです。自分の理想通りに物事が進むように、他人の邪魔をしたり、時には気に入らない人を印象操作で陥れるようなこともあります。
⑦共感の欠如
自己愛性人格障害の人は相手の立場に立とうと考えたり、相手を思いやったりすることが苦手です。自分中心に世界は回っているので、他人が今何を考えているのかに鈍感です。自己愛性人格障害の人にとって、他人とは自分の価値を確認させてくれる存在であることが多く、他人と思いを共感することが難しいのです。
⑧他人に嫉妬
自己愛性人格障害の人は自分は優れていて、特別であると信じています。それは非常にもろい自尊心を抱えていることを意味しています。劣っているとわかる人には高慢ちきな接し方をしますし、人に嫉妬されているとも思い込んでいます。しかし逆に自分より目立つ人や、自分より才能豊かに見える人に強く嫉妬します。
⑨尊大で倣慢な行動
自己愛性人格障害の人は他人に対して、尊大で傲慢な態度で接します。これは自信満々を意味するように思われるのですが、実は強い劣等感から来るものです。自分が劣っていると感じてしまった時、心が防御するのです。
自己愛性人格障害の人は激しい劣等感の持ち主でもあります。その反動でとる行動が、尊大だったり傲慢だったり、自分は特別な人間だと思い込む行動に表れているのです。
自己愛性人格障害の人との付き合い方のコツ
自己愛性人格障害の人は周囲の理解が得られにくいので、孤立しがちです。自己愛性人格障害の人の特徴を先述しましたが、確かに身近にいて欲しくない、鼻持ちならない性格に思えてしまうかもしれません。
しかしこれは本人の性格なのではなく、障害なのです。もしあなたの家族に、あるいは身近に自己愛性人格障害の人がいたら、避けているだけでは事態は解決しません。自己愛性人格障害の意味を理解し、障害を持った人に配慮を持った接し方をしていきましょう。
付き合い方①障害の理解
身近な人が自己愛性人格障害の場合、まずこの障害について正しい理解をすることが重要です。自己愛性人格障害は深刻な障害ですが、誰でも多かれ少なかれ、考え方に偏りはあるものです。
こうした考え方の偏りによって、自己愛性人格障害の人は社会で活動する時に問題が起きがちなのです。この障害は誰にでも起こるかもしれない、他人事ではない障害なのだと理解しましょう。
また医師に相談することも重要です。医師と相談してみて、治療に時間がかかることや、当人はあまり自覚していないことや、治療のために周囲の助けが必要といった問題を理解しておきましょう。そうすることで治療がスムーズに進みます。
付き合い方②病院に行くよう促す
自己愛性人格障害は精神疾患です。病院に行って、医師と相談して、投薬やカウンセリングといった治療をすることで改善する可能性があります。しかし医師と相談すると言っても、本人が病院に行きたがらなければ意味がありません。
無理やり連れていっても、いい結果は得られません。まず、患者の身近な人が医師と相談し、対策を立てましょう。
自己愛性人格障害の人は物事がうまくいかない理由は自分ではなく、周囲にあると考えがちです。また医師に相談する前から「病気」だとか「障害」だとか決めつけて説得するのはよくありません。
「お医者さんと相談すると、悩みが少しは軽くなるかもしれないよ?」といった形をとってみましょう。医者に行って相談するのは、患者の気持ちが安定している時にしましょう。
付き合い方③ひきこもる気持ちの尊重
自己愛性人格障害の人は周囲とトラブルが絶えません。社会生活がうまくいかなくなった結果、家の中にひきこもってしまう人もいます。社会との摩擦で傷ついてしまった心のまま、外に連れ出すのはよくありません。
家族は無理に外に出そうとせず、ひきこもってしまったのは、それなりの理由があるのだと理解しましょう。そして患者の気持ちを尊重してあげましょう。そのほうが最終的にはいい結果になることが多いようです。
付き合い方④暴言や暴力は冷静な対応
自己愛性人格障害に限らず人格障害を抱えている人の中には、自分の中の感情が処理できず、暴言や暴力で身近な人を攻撃したりする人がいます。こうした暴言、暴力は衝動行為と呼ばれるものです。
感情をコントロールできず、直接的な行動になって爆発するのです。親、子供、配偶者、交際相手などが相手になりやすいです。自己愛性人格障害の人が暴れたり、暴言を吐いたりするとき、周囲の人は冷静に対処することが大事です。
周囲まで動揺してしまったら、患者はさらに動揺します。そして精神が不安定になり、さらなる暴力に発展します。まさに悪循環です。専門の先生と相談しながら、患者を温かく見守る姿勢を崩さずに対応していきましょう。
自己愛性人格障害の可能性がある場合の相談先
「自分は自己愛性人格障害かもしれない」「家族が自己愛性人格障害で悩んでいる」といったケースの場合、家族や身近で抱え込まずに、専門機関に相談してみましょう。
人格障害の診断は、専門医でさえ難しいものですから、素人考えでなんとか解決しようとしないことです。会社や学校のカウンセラーに相談すると、適切な専門機関を紹介してもらえることもあります。
医療機関では精神科
受診する医療機関は、神経科、精神科、心療内科などです。最初は相談という形でもいいですが、一応は受診という形式なので、本人を連れていくのが望ましいです。しかし受診してすぐに、自己愛性人格障害と診断されて治療を開始されることは少ないのが実情です。
二次障害である摂食障害や、うつ病などの治療から開始します。この場合は保険診療で医療保険がききます。治療方法は患者によって異なります。いろいろな治療法を組み合わせ、改善を目指します。
精神保健福祉センター
自己愛性人格障害かもしれないが、医師の診察を受けるほどではないと考える場合、各都道府県の政令指定都市にある精神保健福祉センターか、保健所、保健センターの窓口に相談してみることも有益です。
これらの施設への相談は本人だけでなく家族がすることもできます。また、電話相談からできるので、思い切って相談してみることも重要です。
自己愛性人格障害の人と上手な付き合い方をしよう!
自己愛性人格障害は厄介な精神疾患です。しかし疾患のせいで社会生活や家庭生活がうまくいかないとなると、本人も家族も身近な人も不幸です。自己愛性人格障害の人の特徴と接し方をきちんと理解し、必要なら専門医や専門機関に相談しましょう。適切な対処方法で、身近にいる自己愛性人格障害の人とうまく接していきましょう。