煮沸消毒とは
煮沸消毒(熱湯消毒)とは、食器や調理器具や布類を一度洗ってから熱湯に何分間か浸けて残りの微生物や細菌を滅菌することを指します。微生物や細菌の殺菌方法は他にも高圧蒸気滅菌、乾燥殺菌、紫外線殺菌、消毒液殺菌などたくさんあります。中でも煮沸消毒はとても簡単で特別な器具も要らず、経済的なのが特徴です。
熱湯につけて菌を消毒
煮沸消毒の仕方ですが、方法は至ってシンプルです。消毒したい容器や布類を水の入った鍋にしっかりと浸かるまで入れ、火にかけて沸騰してから5分程放置すれば完了します。100度まで上がった熱湯で容器に残った微生物や細菌を殺菌します。殺菌が終われば容器を取り出し、乾燥させます。
煮沸消毒の時間はだいたい5分程ですが、消毒したい容器の大きさや種類によっては長めに時間をとる必要があります。容器全体に温度が伝わるまでしっかりと時間をかけましょう。
哺乳瓶の煮沸消毒の仕方
哺乳瓶を必要とする生後間もない赤ちゃんは、大人に比べて免疫力が低いので体調を崩し易いです。飲み終わった後の哺乳瓶にはミルクが残りやすく、雑菌が繁殖しやすいので手洗いだけで全てを取り除くのは難しいです。
安全に哺乳瓶を使うには、隅々まで殺菌しておく必要があります。そこで煮沸消毒の登場です。煮沸消毒であれば哺乳瓶全体を殺菌できるので、安心して次回も使うことができます。用意するものは清潔な布を二枚、哺乳瓶がしっかりと浸かる程の鍋、トングの三点です。それでは哺乳瓶の煮沸消毒の仕方をご紹介します。
①鍋に布を敷いて哺乳瓶に水を入れる
まず鍋の底に清潔なふきんを一枚敷きます。これは沸騰したお湯による対流で鍋と容器がぶつかって容器が割れないようにするための物です。次に消毒したい哺乳瓶を鍋に入れます。鍋に入れる哺乳瓶はあらかじめ洗剤などで一度しっかり手洗いしておきましょう。飲み残しのミルクなどがあるとそれが湯に溶け出して雑菌が繁殖する原因になります。
冷たい水を使用
次に鍋の中に常温の水を哺乳瓶がしっかり浸かるまで入れます。使用する水は必ず冷たい、もしくは常温の物を使いましょう。最初から沸騰したお湯を入れると、温度差によって容器が変形したり割れたりする恐れがあります。
耐熱性のない材質の物(ゴムや柔らかいプラスチック等)は熱湯に入れると変形する恐れがあるので水が沸騰したら早めに鍋から取り出すか、最初から鍋の中に入れないようにします。
②水を沸騰させる
鍋の中に水を加えたら、火にかけて水を沸騰させます。煮沸消毒で一番大切なポイントです。グラグラとした熱湯になるまでしっかり水を沸かしきりましょう。煮沸消毒は、湯温を100度まで上げることで初めて高い殺菌性が発揮されます。中途半端な温度だとかえって雑菌が繁殖してしまいとても危険です。
強火で一気に沸騰
鍋の火加減は水がグラグラと沸くまではずっと強火ままで大丈夫です。一度沸いた後は吹きこぼれない程度まで火を弱くしましょう。加熱時間の目安はだいたい5分ですが、熱によって変形しやすい部品や、サイズの小さい部品は早めに取り出しましょう。逆に容器が大きい場合は少し長めに加熱すれば安全です。
③煮沸消毒後にふきんに取り出して自然乾燥
煮沸時間を過ぎたらトングを使って容器を取り出し、清潔で乾いたふきんに容器の口を下に向けた状態で置きます。こうすることで容器内の余熱によって更に殺菌することができます。そのまま放置して、素手で触れるほど冷めたら裏返して自然乾燥させます。容器に水滴が残っていると雑菌が繁殖する原因になりますのでしっかりと乾燥させましょう。
熱くなっているので注意
熱湯の中に入っている容器はとても熱くなっているので、取り出す際は必ずトング等の道具を使いしっかりと掴んで取り出しましょう。保存瓶やガラス製品の容器等は掴む際とても滑りやすいので、誤って容器を落下させたり残った熱湯がかかってしまい火傷を負う恐れがありますので注意しましょう。
煮沸消毒の時間は何分?
では煮沸消毒を行う時、何分間鍋で煮沸すれば大丈夫なのか、容器はいつまで入れておけばいいのかをご紹介します。
煮沸消毒で一番大事なのは「消毒させる物全体に熱湯の温度が行き渡っていること」です。煮沸消毒を行うときは、何分煮沸すればいいのか、いつまで煮沸させればいいのかをしっかり決めてタイマーで時間を計って行いましょう。
消毒させる物の材質も関係してきます。材質によって消毒の仕方が変わる物もあるのでまず消毒したい物が煮沸消毒に向いているのかチェックしておきましょう。サイズが小さい物は長時間いつまでも加熱すると破損する物もあります。一度に複数の物を煮沸消毒するときは、それぞれの加熱時間を何分にしておくか決めておいて時間差で取り出しましょう。
煮沸消毒の時間は5分で十分
食器や調理器具等の容器類は、相当大きな物でない限り加熱時間は5分あれば十分です。ただ気を付けなければならないのが、食器や調理器具等は煮沸消毒する前にしっかりと手洗いをして食べ残しや大きな汚れを取っておく必要があることです。
煮沸消毒は消毒液や洗剤を使わない、熱湯のみによる消毒方法です。なので熱湯では落ちない種類の汚れ(油汚れ、食べ残し、金属の錆つき等)は熱湯で加熱しても落ちない上、汚れが湯に溶け出して容器全体を汚くしてしまう恐れがあります。煮沸消毒は、あくまで手洗いでは落としきれない微生物や細菌だけの消毒の仕方だということを覚えておきましょう。
長すぎると変形してしまう
消毒する物の材質によってはいつまでも加熱していると割れたり変形したりする物や、そもそも加熱してはいけない材質の物もあります。加熱してはいけない物でよく挙げれらるのが、容器の蓋に付いているゴム質のパッキンや耐熱性のないプラスチック容器等です。煮沸消毒をする際は容器の耐熱温度を確かめておきましょう。
種類別の消毒時間目安
煮沸消毒を行う上で加熱時間はとても重要な要素です。通常加熱時間は5分が目安となっていますが、長時間いつまでも加熱していると変形したり破損する物もあります。逆に5分では不十分な物もあります。消毒したい物の適切な加熱時間が何分なのか、いつまで入れておけばしっかり殺菌ができるのか把握しておきましょう。
プラスチック容器
コップやタッパー等のプラスチック製品は熱による変形が起こりやすいので何分加熱すればいいのか、いつまでの加熱なら耐えられるのか判断が難しいです。プラスチックの種類によっては耐熱温度の高い物があります。しかし耐熱性があるからといっていつまでも加熱していると容器が耐えられなくなり変形してしまうこともあります。
プラスチック製品の煮沸消毒時間の目安は、お湯が沸き始めてから5分程度で十分です。それ以上だと変形の恐れがありますので必要な時間が経ったらすぐに取り出しましょう。
瓶、ガラス容器
瓶やガラス製品は他と違い耐熱性に優れている物が多いです。何分煮沸しても変形することはありません。しかしいつまでも鍋に入れていると沸騰によって容器が動いて鍋とぶつかり破損してしまう恐れがあります。規定の時間が経てばすぐに取り出したほうが安全です。
ガラス容器の中にはゴムパッキンが蓋に付いているタイプがありますのであらかじめ分解しておきましょう。ゴム製品はいつまでも煮沸消毒していると劣化してしまうので、沸騰してから3分程度で取り出しましょう。ガラス製の容器本体の加熱時間は5分から10分が目安です。厚みがあり大きいサイズの容器は長めに10分程度まで加熱する必要があります。
消毒に使った鍋
消毒に使う鍋はあらかじめ洗剤等で手洗いしておけば消毒の必要はありません。容器の煮沸消毒を行う際に一緒に加熱されて常に殺菌処理がされている状態なので手洗いで汚れさえ取れていれば大丈夫です。それでも油汚れ等が気になる方は煮沸消毒用の鍋と調理用の鍋を分けて使うことをおすすめします。
煮沸消毒に必要な物
煮沸消毒の消毒の仕方は洗剤等を使わない加熱のみによる消毒です。なので使用する道具はある程度清潔な状態であることが必要です。あらかじめ使う道具が汚れてないか確かめておきましょう。煮沸消毒は凝った道具が要らずとてもシンプルです。全部スーパーで揃えることができるものばかりです。
清潔なふきん2枚
まず必要なものは清潔できれいな状態のふきんを2枚です。1枚は容器と鍋が当たらないように鍋底に敷いておくふきん。もう1枚は煮沸した容器を置いて乾燥させるために台に敷いておくふきんです。乾燥用のふきんは必ずしっかりと乾燥してある物を使いましょう。湿っていたり濡れているふきんだと濡れている部分が容器に触れて雑菌を増やす恐れがあります。
自家製のジャムやリキュールなど長期的に保存する物の場合は少しの雑菌もあってはならないので使うふきんも清潔にしておきましょう。
消毒したい容器
消毒したい容器はあらかじめ洗剤等で洗っておいて目に見える汚れをとっておきましょう。いくつかの部品に分かれてる場合は分解して鍋にいれます。加熱に耐性のない部品は外しておくか、加熱する時間を何分間か短くして早めに取り出すようにしましょう。
加熱に耐性がなく、煮沸消毒をしない部品はアルコール消毒など別の消毒方法で殺菌しておきましょう。
容器が完全に浸る鍋
用意する鍋は消毒したい容器がしっかりと浸かる大きさのものを用意しましょう。容器が浸かるサイズの鍋がなくこれから購入する場合は少し大きめの物を買っておくと使える容器のバリエーションが増えるのでおすすめです。
消毒したい容器を一度空の状態の鍋に入れてサイズが合っているかどうか確かめてから煮沸消毒を行いましょう。
トング
トングは先端が滑り止めになる材質の物を選んでおくと容器を落としにくくなるのでおすすめです。消毒する容器が大きくて重い物は、トングの他にミトンも用意しておくと安全です。熱湯が跳ねて手にかかることもありますので用意するトングは少し長めの物が良いでしょう。
煮沸消毒をする際の注意点
煮沸消毒は用意する道具や消毒の仕方は至ってシンプルで簡単です。ですが火や熱湯を使うのでいくつか注意しておかなければならない点があります。煮沸消毒で一番気を付けなければならないが火傷です。熱くなった容器を素手で触ったりすることや、お湯跳ね等などによる火傷には十分に気を付けましょう。
①煮沸可能か確認
煮沸消毒したい容器に熱耐性があるか確認しておきましょう。また、容器本体に熱耐性があってもパッキンなど容器の別部品に熱耐性がない場合があります。
熱耐性のある部品は煮沸消毒をして熱耐性のない部品は別の消毒の仕方で行うか煮沸時間を何分間か短くして取り出すかしましょう。熱耐性がない製品はいつまでも加熱していると破損したり変形したりする恐れがあります。
②取り出す際にはトングを使用
煮沸した容器はとても熱くなっています。素手で触ると火傷をしてしまうので必ずトングで取り出すか、トングでつまんでミトンで補助する形で容器を取り出しましょう。取り出す際は容器に残ったお湯がかからないように注意しましょう。トングは先がシリコン等滑り止めになっている材質の物を使えば安全に取り出せます。
③沸騰しているお湯の中には入れない
煮沸消毒は必ず常温もしくは冷たい水で行いましょう。沸騰して熱々になっているお湯に冷たい容器を入れると急激な温度の変化で容器が割れたり変形してしまいます。ガラス製品は特に急激な温度変化に弱いです。常温の水の状態から徐々に温度を上げていけばガラス製品等でも煮沸消毒が可能になります。耐熱ガラスでも同じです。
煮沸消毒が必要な場面
消毒を行うとき、消毒したい物それぞれに適した消毒の仕方があります。煮沸消毒が必要な場合もあれば、消毒液による消毒の方が効果的な場合もあります。雑菌や細菌の中には100度以上の温度で加熱し続けても死滅しない種類があります。ここでは煮沸消毒による消毒が最も効果的となる場面をご紹介します。
調理用器具や食器
ジャムやお酒や調味料等、長期的に保存をする類の食品の容器は事前に煮沸消毒を行わなければ、状態が悪くなり易いです。特に手作りの物は保存料等の添加物が入っていないので雑菌が入り込むとすぐに悪くなってしまいます。調理に使う道具と保存する容器は直前に煮沸消毒を行うのが効果的です。
乳児用品
生後間もない赤ちゃんは免疫力が低く、体調が悪くなり易いです。一般的に生後4か月になるまでは哺乳瓶等の乳児用品は消毒して清潔にしておくよう指導されています。哺乳瓶の他にも歯固めやおしゃぶりは乳児の口に入るものなので定期的に煮沸消毒を行うようにしましょう。
近年では簡単に滅菌できる薬剤等も販売されておりそちらを使う人が多いです。しかし薬品等を子供に使いたくないという人は煮沸消毒を行うのが一番良いです。
タオルやふきん
調理道具や食器を清潔にしてもそれを拭くふきんが汚かったら意味がありません。洗い物をして食器を拭いた後のふきんは雑菌が増えやすくなります。毎日使うふきんやタオルは定期的に煮沸消毒を行うことで清潔に長く使うことができます。煮沸消毒した後は日当たりの良い所で干して乾燥させておきましょう。
煮沸消毒は正しい方法で安全に行おう!
とても簡単でオーソドックスな消毒の仕方として人気の煮沸消毒ですが、容器の材質や煮沸時間等をしっかり把握しておかないと失敗してしまいます。消毒したい容器が煮沸消毒可能か、煮沸する時間は何分か、いつまで煮沸すれば大丈夫なのかを知っておいてから煮沸消毒を行うようにしましょう。
煮沸消毒はとても確実で高い殺菌効果があります。雑菌が増えやすい夏場には煮沸消毒は特に有効で食中毒などのリスクをグッと減らしてくれます。正しい消毒の仕方で身の回りの物を清潔に保ちましょう。