アース線の役割・電化製品に取り付ける目的
先進国である現代の日本では、電化製品は日々の生活になくてはならないものです。ほとんどの人々が、毎日何らかの電化製品を使用しています。
ドライヤーや掃除機のようにスイッチを入れたりコンセントを頻繁に抜き差しして使用するものもあれば、冷蔵庫や電子レンジのように据え置きにして日々使用するものまで様々な電化製品があります。
多くの電化製品にはコンセントや電源プラグが付いていますが、そのコンセントと一緒に、細い緑や黄色のコードが飛び出しているものがあります。これはアース線と言って、電化製品とその使用者の安全を守るために備え付けられているコードです。
アース線は洗濯機や電子レンジなどの生活必需品と言われる電化製品にもついており、適切に使用する事で効果を発揮するものです。しかしこの部品の付け方や、どう使えば良いのかがわからずに、そのまま放置されていることも多いです。
今回は、このアース線がなぜ必要なのかその役割について確認し、また正しい付け方や取り付けるべき場所、逆につけてはいけない場所などについてご紹介します。
まずはアース線の取り付ける目的について見ていきます。アース線がなぜ必要なのかを十分理解する事は、アース付きの電化製品を使用する上で大切なことです。
取り付けると電気を逃す・感電を防ぐ
どんな電化製品でも、使用すればその分劣化したり、傷んできたりします。10年以上使用できるような電化製品もありますが、家中の電化製品を毎年(あるいは定期的に)点検しているという方は滅多にいません。
電化製品の異常は、目に見える劣化や使えなくなる、スイッチが入らないなどであれば気がつきます。しかし万が一漏電していた場合には、見た目では気が付かない事が多いです。
漏電はコード・内部部品の劣化や故障で電気が外に漏れている現象であり、漏電に気がつかず電化製品を使用したり触ったりすると感電してしまう可能性があります。感電は最悪の場合命の危険がありますので、防止策をきちんと取っておく必要があります。
漏電した電化製品に触れたり、電気が流れている場所に触れると感電してしまいますので、万が一漏電した際には電気をどこかへ逃す必要があります。通常地面に電気を逃す線を配することで、電化製品から漏れた電気は地面へを逃げていきます。この線がアース線です。
電気は人体よりもアース線の方へ優先的に流れるため、人間が触れている際に漏電していても、アース線があれば感電しにくいということです。電気を逃がし感電を防ぐこと、これがアース線の最も重要な役割です。
ただしそのためにはアース線を適切な端子へ、適切な付け方で接続している必要があります。アース線をどこにもつけることなくそのままコンセントをさしてしまうと、アース線はただの「飾り」となってしまいますので注意してください。
また漏電は火災につながる危険もあり、「漏電火災」と言われています。漏電により電気がスパーク(火花)になって周りに飛び散る事があります。それが燃えやすいものなどに触れると引火し、火災になります。
初めは漏電によるほんの小さな火花でも、燃え広がることによって被害が広がり大火災となることがあります。特に留守中に漏電火災が起きた場合、誰にも気づかれないままに大規模な火災に発展する危険性があります。
電気が流れない状態にするのが一番ですが、家庭でも留守にする時に毎回全てのコンセントを抜くわけにはいきません。漏電火災の発端である漏電の電流を逃がす働きのあるアース線は重要な役割を担っています。
取り付けると電圧をセーブする
アース線は様々な電化製品についており、物によって主な役割が変わります。例えば水回りで使用する電化製品の場合は、上で説明したように主に漏電による感電を防ぐ役割があります。漏電した電気は水を通るため、水濡れしやすい電化製品は感電しやすくもなるからです。
特に水気があったり湿気が多い所(飲食店や工場など)では、漏電による感電の可能性が高くなるためアース工事が法律で義務付けられています。一般家庭の場合でもキッチン付近など、そういった場所のコンセント穴にはアース線が取り付けられる仕様になっています。
また、パソコンやゲーム機、テレビなどの精密機器についているアース線の主な役割は、強い電圧がかかるのを防ぐことです。精密機器は強い電圧により壊れやすくなるため、強すぎる電圧を地面へ逃す役割をアース線が担います。
取り付けると電磁波の予防になる
またアース線は過剰な電磁波を抑制する役割もあります。人体への影響が不安視されている電磁波ですが、電圧の強さに関係していると言われています。強い電圧を逃すことのできるアース線は、電磁波も抑えてくれる事が期待できます。
電気に関するインフラがしっかりと整っている現代の日本では急に大きな電圧の変化が起こることは滅多にないと言われていますが、それでも雷が落ちた時など、強い電圧がかかる場合があります。
漏電や過剰な電圧を防ぎ、更に電磁波を抑える役割を持つアース線は取り付けておくに越したことはありません。
アース線の正しい付け方
アース線には多くの役割があることが分かりましたが、アース線の付け方が分からないという方も多いです。
アース接続はそんなに難しいことはありません。今はする必要がない、困っていないという方も、今後電化製品の買い替えや引っ越しがあるとアース接続をする可能性がありますので、いま覚えておいて損はありません。
また不適切な付け方をすると、アース線としての役割が十分に発揮できないばかりか、逆にトラブルの原因になることもあります。付け方をしっかり確認していきましょう。
付け方①アース接続可能のコンセント確認する
まずアースを取り付けようとするコンセント側を確認する必要があります。電源プラグを接続する端子がコンセントです。コンセントには2種類あり、上記の画像のように、コンセントの下部に小さな窓のような構造がある場合、アース線が取り付け可能です。
アース線の取り付け端子がついているコンセントの場合、その取り付け方にも2種類あります。ねじ式なのか差しこみ式なのかで少し取り付け方が変わります。ねじ式のほうが若干手間がかかりますが、慣れればどちらも数分で取り付け完了する事ができます。
こちらのコンセントには穴も窓も見当たりません。こういったコンセントの場合は基本的にはアースを取り付ける事ができません。その場合は電化製品の置き場所をアース付きコンセントのある位置に変更します。
周りにどこもアース接続不可なコンセントしかない場合は電気工事士にアース工事をお願いする必要がありますが、通常はそう言った事態にならないように、適切な場所にアース付きコンセントが配置されています。
付け方②フタを開けて準備する
まず下準備として、最低でもマイナスドライバー、できればプラスとマイナスのドライバーがあるとスムーズです。コンセントにすでに電源プラグが刺さっていた場合、安全のために全てプラグを抜いておきましょう。
そしてアース線の蓋を開けます。指をかけて開く蓋と、マイナスドライバーでネジを開ける方式の蓋があります。コンセントの内部を触る事には多少気が引ける場合もありますが、アース線用の端子には電気は流れていないので安心してください。
付け方③アース線を差し込む
次にアース線の端子へコードを差し込みますが、ねじ式か差し込み式かで操作方法が多少変わります。どちらの場合も注意して欲しい点は、必ずアース線の端子部分にアース線の金属線(銅線)部分が触るようにする事です。
まれに金属線部分があまり出ていないアース線がありますが、その場合はニッパーなどを使って周りのゴムの部分を剥がし、内部の金属線を露出させるようにしてください。
金属線部分が長すぎても処理に困るので、端子に当てがってみて不十分なら少し金属線部分を出す、という様に調節します。
またくれぐれも、コンセントの電源プラグを差し込む穴にアース線を差し込まないようにしましょう。電源プラグ用の穴には電気が流れているため感電の原因になり、またショートしてしまう可能性もあります。
ねじ式の付け方
ねじ式の場合は、蓋を開けた後に見えるネジをプラスドライバーで緩めます。できた隙間に、アース線の金属線部分を挟み込みます。その後、ネジを締め直します。しっかりついているか、アース線を軽く引っ張って確認することもできます。
その後は再び蓋を閉め直して完成になります。ネジがあるとハードルが高いと感じる方が多いですが、実際はアース線が挟んであれば十分なので取り付けは簡単な作業です。
挿しこみ式の付け方
差し込み式はねじ式よりももっと簡単です。アース線の蓋は壁に対して直角以上になるよう大きく開くのがコツです。そうするとアース線の差し込み口がよく見えます。そこへアース線を垂直にしっかり差し込みます。
そして元どおりカバーを閉めれば完成です。手順の少なさからも、取り付けがかなり簡単にできるという事がわかります。これだけの操作で、漏電による危険を防ぎ電化製品と使用者の安全を守るアース線を有効活用できます。
アース線の端子がない場合の付け方
先にも説明した通り、通常は適切な場所にアース線端子付きのコンセントが設置されていますが、古い間取りの場合、精密機器の使用の為のアース線を取り付けたい場合などは必要な場所にアース線端子付きコンセントが見当たらない場合があります。
この場合はアース線端子を新しく取り付ける必要があります。アース線の端子を付けるには、電気工事士の資格を持った人に工事してもらう必要があり、一般の無資格の人には工事はできません。
アース線端子の取り付け工事は資格を持った人にしかできないので、通常は工務店などに依頼して工事してもらって下さい。
上記の通りアース線端子の取り付けは有資格者でないと工事ができませんが、アース線を端子に取り付ける作業は誰でも行うことが出来ますので、端子の増設が無事に出来たら、あとは自分でアース線を取り付けます。
住宅を新しく建てたり、コンセントなどを含めてリフォームする場合、自分でコンセントの位置を決めることが出来ます。その場合はこのアース線接続端子付きのコンセントが適切な位置にあるかどうかを一緒に確認することで、快適で安全な住環境を作ることが出来ます。
アース線のコードを長いものを選ぶ
また少し離れたところにならアース付きのコンセントがある、という場合にはアース線自体を延長するという方法もあります。
取り付け方もシンプルです。アース線のコードは電化製品にねじでくっついいるので、それを緩めて取り換えるだけです。アース線のコードの太さは端子のねじに合うものを選んでください。
コードに継ぎ足して延長もできますが、強度の問題などもあるので長いものに取り換えてしまった方が見た目にもスッキリします。太さが適切であれば、一度長いコードを買ってしまえば色々な電化製品に使用できます。
このようなコンセントのタコ足は電気接続が混み合い負荷がかかるために一般的にはあまりよくないとされています。ではアース線の端子の方はどうでしょうか?
アース線の接続端子には、複数のアース線を接続しても問題ありません。アース線の役割は漏電した電気や過剰な電圧を地面に流すというものなので、複数のアース線を取り付けた事で問題がおこるという事はありません。
しかしながら、多くのアース線端子は小さなねじや差し込み口で出来ていますので、あまり無理に複数のアース線を接続しようとすると接続しにくくなったり、外す際に絡まってしまったりします。無理な取り付け方はしないように注意してください。
アース線を取り付ける場所
アース線の取り付け方が分かったところで、次はアース線が必要な電化製品や取り付けるべき場所についてご紹介します。主に水回りで使用する電化製品の場合は、感電を防ぐために必ず取り付けることをおすすめします。
まずはいままでに少し触れましたが、特定の場所ではアース線の工事が義務付けられています。商売をされている方にとっては無視できない法律ですのでご紹介します。
湿気が多くなる酒蔵など酒や醤油の貯蔵庫、飲食店の厨房や湿気を吸収しないコンクリートの床などには、アース工事が義務付けられています。
さらに水気が飛び散ることの多い生鮮食品店やその作業場、また土間や地下室などの結露しやすい空間には漏電遮断器を取り付け、漏電による感電や火災の事故を防ぐことが義務付けられています。
ウォシュレット
ウォシュレットはアース線が付いている代表的な電化製品です。ウォシュレットは製品の特性上、水と電気を同時に使用します。そうなると万が一漏電した際などには感電する可能性が高くなってしまいますので、アース線を取り付けておくのが安心です。
そのため、トイレの室内にはアース線接続端子を持ったコンセントが設置させていることがほとんどです。
賃貸の場合はアース線が既に接続されている事もありますが、持ち家の場合、ウォシュレットを取り換える場合は自分で接続する必要があります。一度確認する事をおすすめします。
洗濯機
洗濯機も必ずアース線が付いている電化製品です。水と電気を一緒に使用する洗濯機は、本体が電気を通しにくいプラスチックの素材であっても、中の水や濡れた洗濯物が電気を通す可能性があります。漏電した際にはそこから電気が通って感電する危険性があります。
洗濯機を置くことの多い洗面所などにはほとんどアース接続端子付きのコンセントが設置されています。リフォーム後でもともとの建物が古かったりする場合には適切な場所についていない可能性もあるのでよく確認してください。
電子レンジ
電子レンジもアース線が付いている代表的な電化製品です。飲食物には水分が含まれており、加熱の際には水蒸気も発生するため水と電気が共存する状態で使用する電化製品です。
キッチンにはアース接続端子付きのコンセントが設置されているはずです。冷蔵庫もアースが付いている電化製品の為、冷蔵庫の置き場所となっている場所にアース端子付きコンセントがあることが多いです。
故障や漏電の時の感電防止に、アースを取り付ける事をおすすめします。前述の通り、冷蔵庫と電子レンジで一つのアース端子を使用しても構いません。
アース線を取り付けてはいけない場所
アース線を取りつけるべき場所や電化製品をお伝えしましたが、逆にアース線を取り付けてはいけない場所もあります。取り付けてはいけない場所にアース線を付けると、感電や火災、事故やトラブルに繋がります。
アース線の取り付け方をすでにご紹介しましたが、まれにコンセントのアース線端子以外にアース線を取り付けてしまい事故が起きる事があります。法律で決まっているアース線を取り付けてはいけない場所について、念のため確認していきます。
ガス管
ガス管にアース線を取り付けてはいけません。ガス漏れの際に引火して爆発する恐れがあります。漏電にガス漏れに爆発となると踏んだり蹴ったりなので、ガス管やガス栓にアース線を取り付けることは避けてください。
水道管
水道管は樹脂・プラスチックでできています。そのため通電性が低く、アース線を取り付けても電気を逃すことが出来ず、アースの役割を果たせません。
万が一水漏れした際には水分にも通電してしまい感電の危険があります。水道管にアースを取り付けるのは避けてください。
電話のアース・避雷針
こちらは意外ですが、電話線や避雷針にもアースを接続してはいけません。アースも避雷針なども「電気を逃がす」という意味では同じ使い方をしますが、想定される事態が異なります。
アースは漏電の際の電気を地面に逃がす役割を果たしますが、避雷針は落雷の際の高電圧を地面に逃がす役割があります。アースを避雷針に接続すると、落雷の際に高電圧によってアースから逆に高電圧が入り、電化製品を壊してしまうのです。
電話回線はすでに回路内でアースされているため、同じく落雷などの際に電化製品が壊れるリスクがあります。他の電化製品のアースを接続しないようにしましょう。
アース線の外し方
最後にアース線の外し方についてみていきましょう。アース線は取り付け方と同じく外し方も簡単です。付け方と外し方をマスターできれば、引っ越しなどの際にもスムーズに作業が出来ます。
取り付け方と反対のことをする
アース線の外し方は、基本的にはアース線の取り付け方を逆からなぞっていきます。取り付けた際と同じくドライバーが必要な場合がありますので用意してください。
ねじ式の場合アース線の接続端子のカバーを開け、ドライバーでねじを緩めます。軽く引っ張ってアース線を外し、元通りにねじを締めます。そしてカバーを閉めて終わりです。
差し込み式の場合は、アース接続端子のカバーをドライバーなどで開け、端子が見えるようにカバーを大きく開きます。そして軽く引っ張りアースを外したらカバーを元通り閉めて終了です。いずれの場合も破損を防ぐため強く引っ張らないよう注意してください。
アース線はコンセントに取り付けて効果を発揮
いかがでしたか。アース線は漏電の電気を逃がし感電を防ぐ役割のほかに、過剰な電圧や電磁波を防ぐ役割があることが分かりました。家電製品のアース線はコンセントのアース接続端子に取り付けることで効果を発揮します。
アースが付いている代表的な電化製品とアース付きコンセントが設置されている場所についてもご紹介しました。また取り付けが義務化されている場所、取り付けてはいけない場所があることも分かりました。
アース線は取り付けも取り外しも簡単にでき、ほとんどの場合工具もドライバーのみで接続可能です。これを機会に、身の回りの家電製品のアース線やコンセントを見直してみてはいかがでしょうか。この記事が皆さんの生活の助けになると幸いです。