トルクレンチの使い方【種類】
トルクレンチの使い方のコツを見る前に、種類を確認しておきましょう。一口にトルクレンチと言っても、種類はいろいろあります、それぞれの種類で、使い方はもちろん、設定方法、用途なども異なってきます。
単能型の特徴
トルクレンチでボルトやナットを締め付ける場合、トルク値というものを設定します。締め付けが進み、この設定トルク値に達すると、トルクレンチはカチッと手に軽い衝撃を伝えます。これで作業が正しくできたという意味になり、作業が完了します。
ところが、単能型という種類の場合は、このトルク値の設定が自分ではできないようになっています。メモリやダイヤルがないので、設定自体が不可能なのです。では、設定トルク値はどうなるのかというと、メーカーがあらかじめ設定しておきます。
メーカーがあらかじめ設定するトルク値に関しては、購入者が希望を伝えられます。しかし、そのトルク値がいったん決まると、自分で変えることはできません。そして、その設定トルク値までボルトやナットの締め付けをすると、カチッと知らされます。
単能型の用途
単能型の用途ですが、決められたトルク値で何度も同じ作業をする工程に向いています。具体的には、自動車整備工場でのホイールナット締め付け、エアコンのフレアナット締め付け、工場の製造ラインでのボルト・ナット締め付けなどです。
デジタル型の特徴
次にデジタル型トルクレンチという種類を取り上げます。デジタル型の場合は、名称がそのまま体を表していますが、トルク値が液晶画面にデジタル表示されます。まるでデジタル時計のようですが、そのトルク値は自分で自由に設定できます。
デジタル型という種類の場合、設定トルク値はもちろん、締め付けトルク値もデジタル画面に示されます。したがって、現在どの程度ボルトやナットが締め付けられているのかが把握できるようになっていて、作業の上で非常に助かるようになっています。
デジタル型のトルク値表示は2種類あります。トラックモードとピークモードです。トラックモードとは、現在のトルク値をストレートに表示するものです。ピークモードでは加えた最大のトルク値を示しますが、力を抜いても最大値が表示されたままです。
デジタル型の種類によっては、測定したデータをパソコンに直接転送できるタイプもあります。このようなタイプの場合、数値管理がしやすく、作業工程がはかどります。また、データ保存機能・合否判定機能などを持った種類もあります。
デジタル型の場合、設定トルク値に達した場合、カチッと衝撃が伝わるのではなく、音や光、振動などで通知がされます。トルクレンチの種類によって通知方法が異なるのです。
デジタル型の用途
測定トルク値と設定トルク値が示されるデジタル型トルクレンチの場合は、用途も多いです。たとえば、自動車、産業用の各種機械、分析器具、建築や土木物など幅広い用途に使えます。また、初心者でも使いやすくなっています。
ダイヤル型の特徴
続いて、ダイヤル型という種類を紹介しましょう。デジタル型トルクレンチの場合は、トルク値がデジタル表示されますが、ダイヤル型の場合はアナログのダイヤル(目盛)と針で表示がされます。デジタル腕時計とアナログ腕時計の差と同じようなものです。
ただ、ダイヤル型トルクレンチの場合、単能型やデジタル型のようなお知らせ機能がありません。測定トルク値は表示されますが、設定トルク値に達した時の通知がないので、用途は限られています。
ダイヤル型では、トルク値を設定しません。したがって、自分で適切な数値になったら、手を緩めることになります。そのため、用途としては、多くのボルトやナットを締め付ける作業には向いていません。主な用途は、検査や測定、研究などです。
プレート型の特徴
プレート型もダイヤル型と同じ原理で動きます。目盛りと針で測定トルク値を示します。そういうと、違いがないではないかという人も出てきそうですが、目盛りの位置が違います。ダイヤル型の場合はもち手に、プレート型の場合はプレートに目盛りがあります。
目盛りの位置の違いだけで、ダイヤル型トルクレンチとプレート型はほとんど同じ製品です。トルク値の設定はできず、締め付けトルク値のみの表示です。したがって、両方とも用途が限られ、実験や測定、研究用となっています。
外付け型の特徴
外付け型とは、読んで字のごとくハンドルをソケットに外付けして使うトルクレンチの種類です。ハンドルの種類は、ラチェットハンドルやスピンナハンドルと言ったものです。外付け型の場合、外見は違いますが、デジタル型とよく似ています。
どこがデジタル型と似ているかというと、トルク値が液晶画面に表示される点、トルク値を自由に設定できる点、光や音で通知がされる点などです。そういう意味では、デジタル型と同じようにさまざまな用途に使えます。
プレセット型の特徴
トルクレンチにはプレセット型という種類があります。プレセット型トルクレンチというと、あらかじめトルク値が設定されているようにも思えますが、そういうことはなく、設定自体は変更可能です。ただ、単能型同様、設定値に達するとカチッと知らせます。
プレセット型の場合は、使用中の締め付けトルク値の表示はありません。その点はデジタル型より劣りますが、設定値まで達すると通知がされます。そのために安心して使えるので、多くの人が購入し、ボルトやナットの締め付けに利用しています。
左右ねじ対応型
トルクレンチの種類をいくつか見てきましたが、多くの種類が右回転で右ねじの締め付け用となっています。単能型やプレセット型の場合もたいていは右回転用です。しかし、数は少ないですが、これらのタイプにも両回転用があります。
それから、デジタル型の場合は、工具の特徴から言って、両回転対応です。なお、両回転対応となっていても、それは締め付け用であって、ねじを緩めるのには左回転は使用してはいけないことになっています。
トルクレンチの使い方【用途と持ち方】
トルクレンチの用途と持ち方のコツを紹介します。トルクレンチを持っている人でもどのような用途に使い、どう持てばいいのか知らないという人がいます。そのような人を含めて、用途や持ち方の基本をお教えしましょう。
決められた値でボルト・ナットを締めつける
トルクレンチの用途は、決められたトルク値でボルトやナットを締め付ける場合に使用します。おもちゃやちょっとした家具などのボルトやナットの場合、それほどトルク値を気にしなくても大丈夫ですが、重要な機器の場合、トルク値が非常に大きな意味を持ちます。
バイクや自転車、自動車の整備の場合、ボルトやナットをどの程度締め付けるかによって、それぞれの機能を大きく左右します。また、工場や建築・土木現場でも締め付け具合が誤っていると、大変なことになります。
ボルトやナットの締め付けが緩すぎると、外れてしまう場合があり、重大な事故につながる恐れもあります。逆に締め付けが強すぎると、ボルトやナットが切れてしまうこともあります。したがって、適正なトルク値というのは非常に大切なのです。
なお、トルクレンチはボルトやナットを緩める用途にも使います。その場合は、すでに説明したように左回転では用いません。無理にそのようなことすると、トルクレンチの機能を損じ、使えなくなってしまう場合もあります。
トルク値の計算方法
少し難しいかもしれませんが、トルク値の計算方法を示しておきましょう。トルク値は、力×長さで求め、その単位はN・m(ニュートンメートル)となっています。ニュートンメートルとは、物体を回転させる力のことです。
この計算式だけではお分かりにならないでしょうから、具体例を提示します。20cm(0.2m)の長さで、50N・mの締め付けをする場合は、50N・m=250N×0.2mという計算式になり、ハンドルに250Nの力を掛けることになります。
トルク換算表というものがあります。その換算表の計算をもとにすると、250N・mは25.5kgf・mです。kgf・mはキログラムメートルと読み、物体に掛かる力を表します。1933年以前はこの単位が使われていました。
トルク値の計算式を見れば、理解できるかもしれませんが、長さが長いトルクレンチのほうが掛かる力が大きくなります。
複数のボルト・ナットを均等の強さで締め付ける
トルクレンチの第一の用途が、決められたトルク値でボルトやナットを締め付けることであることはお分かりになったでしょうが、第二の用途は何かというと、いくつものボルトやナットを同じ程度の力で締め付けることです。
同じ機器や現場を扱っている場合、ボルトやナットの締め付けには同等の力を用いなければいけません。同じ種類のものに違う力を加えるわけにはいきませんが、それがうまくできるのがトルクレンチです。その使い方は、トルク値を設定して、その値で作業をします。
トルクレンチの作業の種類
トルクレンチの用途を見るために、どのような作業に使われるのかチェックしておきましょう。まず、連続作業に利用されます。連続作業とは、工場などでトルク値を変えずに同じような締め付けを何回も行うことです。この作業の場合は、設定値は同じままです。
次に、汎用作業にトルクレンチを用います。作業現場などで、異なったトルク値で異なったボルトなどの締め付けを行うのです。この場合は。トルク値を自由に変えられるタイプのトルクレンチを使います。
そして、検査や測定用にもトルクレンチが使われます。締め付けが済んだボルトなどのトルク値を調べるのです。このケースでよく使用されるのは、すでに紹介したダイヤル型やプレート型です。
トルクレンチの持ち方について
トルクレンチを使う場合、どう持つかは非常に重要です。持ち方によって力の掛かり具合が変わり、トルク値も異なってくるからです。トルクレンチの持ち方が間違っていると、正確なトルク値が計算できず、トルクレンチの本来の用途が活かせなくなります。
トルクレンチの持ち方のポイントは、どのタイプでもほとんど同じです。基準点という場所が持つところになります。基準点と言ってもお分かりにならないかもしれませんが、グリップの中心だと考えればいいでしょう。
この基準点に中指が来るようにトルクレンチを握り、ボルトやナットに力を加えていきます。こうすれば正しトルク値が測定できます。しかし、この基準点よりも前でも後でも測定値に誤差が生じます。
基準点よりも前でトルクレンチを握った場合はどうなるでしょうか。この場合は、ボルトやナットに力が入り過ぎてしまいます。距離が近くなれば、それだけ加えられる力が増え、オーバートルクとなります。
逆に基準点よりも後ろでトルクレンチを握ると、今度はボルトやナットに掛かる力が弱くなります。多少の場合は何とかなりますが、前すぎても後ろ過ぎてもいけません。
トルクレンチの使い方【設定方法】
トルクレンチの使い方のコツで最も重要な部分であるトルク値の設定方法を確認しておきましょう。設定方法がわからなければ、トルクレンチの意味がなくなってしまい、役に立たなくなりますから、よく勉強して覚えてしまいましょう。
単能型の設定方法
単能型トルクレンチの場合、トルク値の設定はできません。あらかじめ出荷時にメーカーのほうに希望のトルク値を伝え、その値を設定してもらいます。その設定でボルトなどの締め付けを行うと、ぴたりとした位置でカチッと音や衝撃があり、わかるようになっています。
デジタル型の設定方法
デジタル型トルクレンチと言っても、メーカーごとに特徴が違いますが、基本的な使い方のコツは同じです。まず、トルク値の設定は、デジタルでできます。その設定したトルク値をメモリーに覚えさせます。そして、その数値を引き出せば、使えるようになります。
デジタル型トルクレンチのデジタルの設定のコツを具体例を使って説明してみましょう。KTCのデジラチェという製品の場合です。設定方法自体は簡単で、デジタル画面を表示させ、+と-でN・mを調節していくだけです。
ダイヤル型の設定方法
ダイヤル型の使い方のコツは、目盛りを見ながら締め付けトルク値を見ていくのですが、設定方法というのは特にありません。トルク値を設定して使うのではなく、一定の値になったら自分で手を止めるのです。
プレート型の設定方法
プレート型もダイヤル型トルクレンチと同じような使い方となります。トルク値の設定はせずに締め付けトルクのみを見ながら、ちょうどいいところで手を放します。使い方としては難しいので、研究や測定、実験が主な用途です。
外付け型の設定方法
外付け型トルクレンチの使い方はすでに解説済みなので、改めて説明しませんが、その設定のコツは難しくありません。デジタル型の外付けタイプの場合は、デジタル型という名称が示すようデジタル画面で調節をします。普通のデジタル型と同じです。
外付け型トルクレンチにもいろいろありますが、トネ ハンディデジトルクという製品を紹介しましょう。この製品の設定のコツは、デジタル画面を表示させ、上と下の三角マークで調節をすることです。
トルクレンチの使い方【プレセットの特徴】
トルクレンチにプレセット型という種類があることを説明しましたが、この使い方のコツと設定方法は他のトルクレンチより少し難しいです。そこで、これまでの設定方法とは別なコーナーを設け、詳しく解説していきます。
プレセットタイプを使うコツと手順
プレセット型の設定方法や使い方のコツを知る前に、ハンドルのロックの解除をしなければいけません。その方法はおよそ2種類あり、ねじで解除するかスライドで解除するかのどちらかです。
プレセット型の設定では、主目盛りと副目盛りというものを使います。まず、ロックが解除できたら、トルクレンチのハンドルを回しながら主目盛りに合わせます、そして、その主目盛りに適当なトルク値を設定します。主目盛りは縦方向に表示されています。
次に横方向に表示された副目盛りに適当な値を設置するためにトルクレンチのハンドルを回します。これで、主目盛りと副目盛りの設定が完了します。デジタル型より少し面倒ですが、コツを覚えれば簡単です。
なお、プレセット型トルクレンチのトルク値の調節方法ですが、右回転と左回転で動き方が違います。右回転ではトルク値が上昇(トルクアップと呼ぶ)、左回転ではトルク値が減少(トルクダウンと呼ぶ)します。うまく回転させながら調節をしましょう。
プレセット型の使い方の具体例
まず、主メモリを40N・mに設定する方法を見てみましょう。この場合は、縦方向に記載された主目盛りを40の位置に合わせます。そして、横方向に記載された副目盛りは0の位置にします。これで設定が終わります。
もう少し複雑な例も見てみましょう。トルク値を92N・mに設定する場合です。この場合は、まず主目盛りを80、副目盛りを0の位置に合わせて、最初に80N・mという数値を作ります。
そして、副目盛りを12N・mの位置に合わせます。これで、80と12を合わせて、合計92N・mの完成です。
トルク値の設定が終わればそれでいいのかというと、もう一つやることがあります。解除したロックをもう一度掛けなければいけないのです。それをしないと、設定したトルク値が途中で変わってしまう場合があり、トルクレンチの使用に支障が生じます。
トルク値の設定をし、ロックを掛け直したら、後の使い方のコツは通常通りです。まずボルトやネットを締め付け、トルク値に達すると、カチッという軽い衝撃があるのでそこで手を止めます。それ以上回転させないように注意しましょう。
トルクレンチの使い方【ダイヤルタイプの特徴】
ダイヤル型トルクレンチというものを紹介しましたが、同じような名称の製品にダイヤルタイプがあります。ダイヤル型、ダイヤルタイプ、かなり似ているような気がしますが、違うのでしょうか。実は、ダイヤルタイプではトルク値の設定ができるようになっています。
ダイヤルタイプを使うコツと手順
ダイヤルタイプというトルクレンチはやや特殊な種類で、それほど多くは出回っていません。東日やTONEなどのメーカーの製品に同種のタイプがあります。その特徴は、プレセット型トルクレンチより目盛りの確認がしやすく、使い勝手がいいことです。
ダイヤルタイプトルクレンチのうち東日の製品を取り上げてみましょう。東日の場合は、QL型トルクレンチと言いますが、東日のホームページでは、プリセット型(プレセット型)という説明がされています。でも、ダイヤルタイプとして見たほうがいいでしょう。
その使い方のコツは、ダイヤルタイプでもほかのトルクレンチでも同じです。トルク値を設定して設定が済んだらボルトやナットを締め付けて、設定トルク値に達したらきれいなシグナル音で通知がされます。そこで、手を止めます。
ダイヤルセットタイプの設定方法
東日のダイヤルタイプトルクレンチの設定のコツを学んでみましょう。まず、アジャスタータイプの場合はアジャスターがダイヤルの先端部についているので、それを引っ張ります。引っ張ると回転できるようになっています。引っ張っていない状態では、空転します。
樹脂ハンドルタイプの場合は、ロッカーを緩めて、ダイヤルを回します。設定が終わったら、ロッカーをまた締めます。設定時に右回りにするとトルクアップ、左回りにするとトルクダウンとなります。
具体的な設定方法のコツを教えます
5.6N・mに設定する方法を見てみましょう。やはり東日の製品の場合です。まずロッカーを左に回して緩めます。次にダイヤルを回すと、主目盛りと副目盛りのトルク値が設定されます。最後がロッカーを右に回して、ロックします。
もう少し詳しく主目盛りと副目盛りの合わせ方を解説すると、主目盛りを見ながらダイヤルを回し、5.0N・mが近づいたら、副目盛りをチェックします。次に副目盛りの0を赤い線に合致させます。続いて、ダイヤルを回転させ、0.6を赤い線に合わせれば完了です。
トルクレンチの使い方【注意点】
トルクレンチは精密機器であり、慎重な扱いが必要です。それだけに注意点も多く、その注意点を守らないと、トルクレンチの機能に狂いが生じたり、本来の機能が果たさなくなったりと不都合なことが起きます。
ダブルチェックしない
トルクレンチを使い、設定のトルク値に達すると、音や振動でお知らせが出ます。その時点で手をなすべきであり、それ以上締めすぎてはいけません。この注意点を守らないと、ボルトやナットを傷め、機器の故障に繋がります。
それから、もう一つ注意点があり、ダブルチェックをしてはいけません。念には念を入れようとダブルチェックをするのでしょうが、一度音や振動が出た段階で締め付けは完了しています。それ以上やれば、締め付け過ぎになるので、この注意点も守りましょう。
逆回転をしない
トルクレンチの回転に関しては重要な注意点があります。すでに簡単に触れてありますが、トルクレンチは基本的に右回転で使うものです。左回転ではボルトやナットを締めません。一部には両回転用もありますが、普通は無理に逆回転させると、故障の原因となります。
左回転ができるトルクレンチでも、ボルトやナットを緩める場合は右回転で使用します。それを強引に逆回転で使えばよくありませんから、この注意点も忘れないようにしましょう。
保管場所に気をつける
トルクレンチは振動や衝撃に強くありません。したがって、保管場所にも注意点があります。ケースに入れて、振動や衝撃から守り、湿気にも気を付けてください。湿気があると内部部品がさびる場合があり、そうなるとトルク値にも悪影響が出ます。
プレセット型の注意点
プレセット型トルクレンチの場合、中にコイルスプリングが内蔵されています。トルク値を設定する場合、このスプリングを締め込みます。ところが、使い終わってそのままにしておくと、締め込み状態が続き、スプリングの戻りが非常に悪くなります。
そうなると、次に使う時にトルク値がずれてしまうので、トルクレンチの本来の機能が果たせなくなります。この注意点も必ず覚えておきましょう。
精密点検を忘れずに
トルクレンチをしばらく使っていると、精度が少しずつ狂ってくる場合があります。そうなると、トルク値にも問題が生じるので、少なくとも年1回は精度点検をしたほうがいいです。もし異常があるようなら、修理や調整をしましょう。これも大事な注意点です。
ただ、DIYなどで家庭で使う場合は、それほどの回数トルクレンチでボルトやナットを締め付けることにはならないでしょうから、必ずしも年1回の点検という注意点にこだわる必要はないでしょう。
使用後の注意点
トルクレンチの使用後にも注意点があります。トルクレンチでボルトやナットを締め付けると、ホコリや油、砂、水分、泥などがまとわりつきやすいです。それをそのままの状態で保管すると、故障や精度の狂い、さびなどの原因になります。
したがって、保管前には必ずこれらの汚れを落とすようにしましょう。それがトルクレンチの精度を維持するコツであり、長持ちさせるための注意点です。
所定の使用方法を守る
トルクレンチの使い方にはいくつかのコツがありますが、大事なのは所定の使用方法を守ることです。握る位置や力を込める方向などは必ず規則通りにします。と言っても、使い方が難しいという場合もあるでしょうから、経験者の指導を受けるのがいいです。
設定すべきトルク値
トルクレンチの使用ではトルク値を設定しますが、その値は勝手に決めるべきものではありません。作業指示書やマニュアルなどに従い、正しい値を設定しなければいけません。その注意点を守らないと、ボルトやナットを傷めつける原因になります。
扱いには注意を
トルクレンチの扱いには十分気を付けましょう。振動や衝撃にも弱いし、無理な締め付けもよくありません。トルクレンチは精密機器であり、大事な工具ですから、いたわりの気持ちを持って大事に使うようにしましょう。
トルクレンチの使い方【長持ちさせるコツ】
トルクレンチを少しでも長持ちさせるための使い方のコツがあります。そのコツをいくつか紹介しますが、せっかく購入したトルクレンチを長い間使えるようにするためにも、コツを実際に活かしてください。
トルク調整範囲を8割程度にする
トルクレンチを調整トルク値の最大値で使うのはよくないとされています。無理な使い方になり、長持ちしなくなります。それよりも調整範囲の8割程度がおすすめで、これならトルクレンチの機能が長く維持できます。
それなら調整範囲の最低値で使うのはどうだという人も出てきそうですが、これもよくありません。というのは、トルクレンチは最大値に近い値を主な基準として作業ができるように作られているからです。最低値での作業用には向いていないのです。
他のレンチと一緒に使う
最初から最後までトルクレンチを使うという人もいるでしょうが、それだとトルクレンチに負荷がかかり過ぎてしまいます。そうなると、精度が低下する原因にもなりかねません。むしろ途中までは他のレンチで締め付けたほうが、トルクレンチのためになります。
トルク値を戻しすぎない
トルクレンチを使い終わったらトルク値を戻さなければいけないからと言って、戻し過ぎてはいけません。最低の数値で止めるようにします。さもないと、ばねが外れてしまい、使えなくなってしまう場合があるので、この注意点も重要です。
トルクレンチは正しい使い方で長持ちする
ここまで、トルクレンチの種類、用途、持ち方、設定方法などについて解説しました。トルクレンチはボルトやナットを締め付ける場合に活躍しますが、使い方によって長持ちするかどうかが決まります。したがって、大事に使うようにしましょう。