塾講師の平均年収は373万円程度
現在、日本中で学習塾は大流行しています。幼稚園の入園のための塾に始まり、小中学校に入学のための塾、高校に入学のための塾、大学や大学院に進学のための塾まであります。それらの塾の規模も様々で、個人が自宅で運営しているような小規模の塾から全国チェーンの大手予備校まであります。
それらの塾講師も様々で、大手予備校の超人気塾講師でテレビ・タレントも兼ねていたり、飛行機で各地の分校を飛び回っているような人も居るかと思えば、また自宅の庭にプレハブの教室を設けて、近所の子供を集めてコツコツと勉強の面倒を見ているオジサン塾講師のような人もいます。
従って一口に塾講師と言っても、その年収は誠に様々で年収が億単位の人もいれば年収が百万単位の人もいます。これらのヴァラエティーをすべて含んだ塾講師の平均年収は約373.96万円という値が出されています。これは2015年度の賃金構造基本統計調査に基づく塾講師の平均年収です。
正社員かどうかで平均年収が変わる
さて、上記の塾講師の平均年収は約373.96万円というのは、いろいろな塾講師全部の年収を平均した値です。これを公立学校の教員の平均年収と比べてみると、公立小・中学校の教員の平均年収は約660万円、公立高校の教員の平均年収は約690万円ですから塾講師の方が低いと言えます。
しかし塾講師と言ってもその塾の正社員という立場の塾講師と大学生や大学院生が非常勤講師として勤める塾講師とでは、平均年収にも違いがあり、正社員の塾講師の平均年収は約395万円、非正社員の塾講師の平均年収は約260万円で、正社員の塾講師の方が約135万円平均年収が高いです。
上記の平均年収の値は厚生労働省の平成29年賃金構造基本統計調査によるものです。また私的なデータですが、ある大手塾に正社員として勤務している男性の塾講師の年収は、34歳で約430万円、37歳で480万円、39歳で約460万円というものがあり、上記の平均年収より高いです。
塾講師の平均年収の差
塾講師の平均年収を取り上げていますが、最初に示した約373万円という年収の値は日本全国津々浦々にある個人経営の塾の塾講師から町の~塾という類の中小規模の塾の塾講師、さらに全国チェーンの大手予備校の超有名な人気塾講師までを全部取り入れて平均した年収の数値です。
次に示したのは同じ塾講師でも、正社員として勤務する塾講師と学生アルバイトの非常勤塾講師など非正社員として勤務する塾講師の平均年収の違いです。正社員として勤務する塾講師の平均年収は約395万円、非正社員として勤務する塾講師の平均年収は約260万円と大きく違いました。
今度は塾講師の平均年収に差が出る原因として先ず企業による平均年収の差を取り上げてみます。大手予備校と中小規模の塾の塾講師とでは平均年収に差が出るのは当然ですが、同じ大手でも企業による差があります。次に塾講師の年齢による平均年収の違いにも注目します。
企業による平均年収の比較
塾講師の平均年収の企業による違いを考える上で、先ず企業の規模による違いの統計を見てみます。以下は国税局の平成29年、「民間給与実態統計調査結果」の、「学術研究・専門技術サービス業、教育・学習支援業」という業種に関するデータで、従業員数によって分類した平均年収の数値です。
従業員数 10人未満が平均年収 312.1万円、従業員数 10~29人が383.7万円、従業員数 30~99人が361.1万円、従業員数 100~499人が401.3万円、従業員数 500~999人が441.8万円、従業員数 1000~4999人 が415.4万円、従業員数 5000人以上が473.9万円となっています。
上記のデータは塾講師だけに絞らず、研究職や教職員も含めた平均年収ですが、やはり企業の規模が大きいほど年収が増える傾向が読み取れます。但し、小規模でも医大・医学部関係の塾などは受講生から高い授業料を取り、優秀な塾講師を高い年収で雇うところもあります。
年齢による平均年収の比較
次に塾講師の年齢による平均年収の違いを見ます。以下に示すのは厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」の中の「産業、性、年齢階級別賃金」に見る年齢階級別、男・女別の平均年収です。
20-24歳は男性223万円,女性205万円、25-29歳は男性264万円,女性235万円、30-34歳は男性327万円,女性272万円、35-39歳は男性389万円,女性297万円です。
40-44歳は男性438万円,女性334万円、45-49歳は男性479万円,女性362万円、50-54歳は男性525万円,女性395万円、55-59歳は男性545万円,女性425万円、60-64歳は男性504万円,女性431万円、65-69歳は男性487万円,女性445万円です。
上の塾講師の平均年収の年齢、性別による違いのデータを見ると、先ず男、女共に年齢が上がるほど年収が増えることに気が付きます。但し男性の場合、ピークは50代後半で,60代になるとやや下がります。また同じ年齢でも男性の方が女性より年収が高く、40代以後は差が大きいです。
塾講師の月収・ボーナスの平均
以上に塾講師の年収についていろいろな観点から検討しました。先ず大手予備校から個人経営の塾までにわたる様々な規模の全国の学習塾の塾講師の平均年収について、厚生労働省の賃金構造基本統計調査に基づく数値として約373万円という値を出しました。平成27年度の調査による値です。
次に塾講師の立場、つまり正社員か、非正社員かによる違いに注目して正社員の塾講師の平均年収は約395万円、非正社員の塾講師の平均年収は約260万円であることがわかりました。さらに企業の規模と年齢による違いにも注目して、規模が大、年齢が上ほど年収が増すことも確認しました。
この節では塾講師の年収ではなく月々の給料である月収、それから普通年に2回支給される賞与、つまりボーナスについて見て行きます。これは平成30年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査に基づいて塾講師の毎月の給料とボーナスの年齢別のデータと全体の平均値を見ます。
平均ボーナス額は43万円
では、先ず上記の統計調査による月々の給料、月収の年代別の値を見ます。20歳代が17.9万円、30歳代が21.9万円、40歳代が26.7万円、50歳代が29.3万円 、60歳代が22.2万円となります。そして塾講師全体の平均の給料月額は、男性が30万円、女性が25万円、平均は28万円となります。
次に月々の給料の4か月分と仮定して出したボーナスの年代別の値を見ます。20歳代が43.7万円、30歳代が59.7万円、40歳代が69.2万円、50歳代が73.5万円、60歳代が54.7万円となります。ところで全体の平均のボーナスは、男性が50万円、女性が32万円、平均は43万円というデータがあります。
上記の塾講師の給料月額とボーナスの平均値を公立小・中学校と公立高校の教員の平均値と比べてみます。公立小・中学校教員の給料月額の平均値は40.0万円、ボーナスは180万円、公立高校教員の場合は給料月額が41.6万円、ボーナスが187万円です。塾講師とかなりの差が見られます。
塾講師の生涯の給料の平均予想図
先に平成28年という時点におけるいろいろな年齢層の塾講師の年収(年間給料)の厚生労働省の統計調査に基づくデータを示しました。今度は一人の塾講師と日本全体の平均の年収(年間給料)が年齢の増加に伴って変わって行く様子を昇給のデータを考慮しながら予想したデータを示します。
塾講師の年収推移予想:20-24歳が214.8万円、25-29歳が279.8万円、30-34歳が322.4万円、35-39歳が353.3万円、40-44歳が380.8万円、45-49歳が402.5万円、50-54歳が419.4万円、55-59歳が413.3万円、60-69歳が309.8万円となり、50-54歳がピークです。
日本全体の平均年収推移予想:20-24歳が263.5万円、25-29歳が343.3万円、30-34歳が395.5万円、35-39歳が433.3万円、40-44歳が467.1万円、45-49歳が493.8万円、50-54歳が514.4万円、55-59歳が507.0万円、60-64歳が380.1万円となり、やはり50-54歳がピークです。
生涯の給料は日本の平均に比べやや低い
上に示した塾講師の年収の年齢の増加に伴う推移予想と日本全体の平均年収の年齢の増加に伴う推移予想を比べてみると、どの年代においても塾講師の方が日本の平均より低く、その差は20代前半では48.7万円であったものが、ピーク時の50代前半では94.5万円と大きくなります。
それでは今度は生涯にわたってもらう給料の合計、すなわち生涯賃金について考えてみましょう。2016年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると塾講師の平均年収(平均年間給料)は391万円、日本全体の平均年収(平均年間給料)は422万円です。
上記の塾講師と日本全体の平均年収の年齢に伴う推移予想も考慮して、20歳から65歳まで勤めたと仮定した時の生涯賃金の予想額は塾講師が1.55億円、日本全体の平均生涯賃金は1.90億円となります。塾講師の方が日本全体の平均より3500万円ほど低くなる予想です。
塾講師の仕事の内容と勤務形態
さて今度は塾講師の仕事の内容と勤務形態について考えてみましょう。塾講師はどんな仕事をしているか、ということと、勤務の仕方はどうなっているのか、すなわち勤務する時間帯はどうなのか、また休日はどのように取るのか、勤務時間を超えて勤務する時の時間外手当は出るのか、などです。
塾講師の仕事で一番大事なものは授業と個々の生徒に対する学習指導です。生徒にわかりやすく説明すること、また受験指導なら入試の難問を解くための考え方や短時間で答えを出すためのテクニックなども教えることが求められます。そのための準備をするのも塾講師の仕事になります。
しかし塾講師の仕事は決して授業とその準備に尽きるわけではありません。非常勤は別として常勤スタッフとして勤務している塾講師には目に付かない仕事があり、これに多くの時間を取られます。
先ずその塾で使う教材を作る仕事があります。また度々行われる模擬試験の問題を作り、その答案を採点する仕事もあります。更に担当している生徒と毎週面接して個別指導をする仕事もあります。
夜型が中心
塾は生徒が相手の仕事ですから勤務時間は生徒が来る時間を中心に決まります。普通、小・中・高校のいずれも学校が終わる時間は午後3時頃です。そうすると生徒が塾に来られる時間は3時以後になり、塾の授業が終わるのは9時~10時となります。塾講師の勤務時間は1時~10時が多いです。
従って塾講師の仕事の時間は夜に偏り、夜型中心の仕事ということになります。その代わり午前中はフリーなので勤務時間が特別長い仕事ではありません。言わば夜間の学校、定時制高校と同様の勤務時間です。但し決してのんびりと時間の余裕のある仕事ではありません。
時間外手当は出ないところが多い
塾講師の勤務時間8時間の内、半分以上が授業に使われます。その残りの時間は授業や教材、試験問題作成などに使われますが、この仕事に必要な時間は実はたいへん長く、とても勤務時間中に済ませることはできません。
つまり塾講師、特に専任のスタッフとして勤務している塾講師は勤務時間外に長い時間を費やして仕事をしていますが、塾の場合は時間外手当は出ないのが普通です。この点は教員や研究職も同様ですが、教員の場合は目下オーバーワークが重大な問題になっています。
休日はシフト制が多い
学習塾は土曜日が言わばかきいれ時で午前から授業があるため休日にできません。従って休日は日曜日と他の週日1日を交代で取るシフト制のところが普通です。
また日曜日も模擬試験の日は出勤して他の日に振り替えとなるし、夏期講習や冬期講習など臨時の特別なスケジュールに当たる時期はもちろん日曜日も休みになりません。
塾講師の年収は塾によって変わる
以上に塾講師の給料や仕事の内容、また勤務形態などについて調べました。給料については塾講師の平均年収の値や平均年収の企業や年齢による違い、月収やボーナスの平均値や年齢による違い、生涯賃金のシミュレーションなどを調べ、生涯賃金は日本全体の平均より少し低いことがわかりました。
企業による平均年収の違いについては、従業員数によって階級分けした平均年収の違いを調べ、概ね企業の規模が大きくなるほど年収も増えることがわかりました。但し医大・医学部進学塾などは、高い授業料を取り、優秀な講師を高給で雇っていることもわかりました。