奨学金を返済する前の確認事項
経済的に厳しい環境にある学生にとって、奨学金は非常に有益な制度です。その一方で、約8%の奨学金利用者が、その返済を3か月以上滞納している事実もあります。そこで、奨学金を利用する人が、奨学金の滞納といった事態に陥らないためにも、返済する前に確認しておきたいことを解説します。
返済額の確認
奨学金の返済を滞らせないためには、その返済額を正確に確認することが大切です。しかし、奨学金の返済には利息がかかってきますから、計算が非常に複雑になります。
そこで、奨学金が貸与される前であれば、日本学生支援機構が提供する「奨学金貸与・返還シミュレーション」で返済額を確認するとよいでしょう。簡単な情報を入力するだけで、返還額がわかりますので、面倒な計算は必要ありません。
現在奨学金を利用している奨学生であれば、同じく日本学生支援機構が提供する「スカラネットワークパーソナル」と呼ばれるシステムが便利です。ここでは、返還総額に加え残額を確認することができます。
スカラネットパーソナルで確認できること
奨学金を利用している人に便利なシステムが、日本学生支援機構が提供する「スカラネットパーソナル」であり、日本学生支援機構の奨学生のみ利用可能です。奨学生番号、生年月日、性別、氏名といった基本情報を登録することで、返済総額、返済までの残り回数、残高、現在の請求額、保証人情報、利用可能な手続きが確認できます。
さらに、スカラネットパーソナルでは、繰り上げ返済の申込や、猶予期間短縮願の提出書類の印刷・提出といった手続きも完結できますから、日本学生支援機構の奨学金制度利用者は、登録しておきたいシステムです。
返済日・返済期間の確認
奨学金の返済がスタートするのは、貸与の完了月から6か月後の10月からとなり、毎月の返済日は原則27日です。詳細については、返還額の確認と同様に「奨学金貸与・返還シミュレーション」もしくは「スカラネットワークパーソナル」で確認することができます。なお、毎月の返済にはリレー口座が必要ですから、返済開始に向けて口座を開設します。
リレー口座とは
奨学金の返済にかかる「リレー口座」とは、毎月の返済額を自動的に引き落とす、金融機関の預貯金口座(口座振替)のことを指します。もちろん、引落とし手数料は無料ですから、利用しやすいのが特徴です。
リレー口座は、ゆうちょ銀行、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信託銀行(三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行のみ)、信用金庫、労働金庫、信用組合、農業協同組合、信用漁業協同組合連合会および一部の漁業協同組合で取り扱いが可能です。
なお、リレー口座の「リレー」とは、「奨学生の返済額が後輩奨学生の奨学金としてリレーされる」との意から名付けられています。
奨学金返済額の計算
奨学金の返済額や返済日・返済期間が確定すれば、毎月の奨学金返済額を計算をしてみましょう。なお、奨学金には第一種奨学金と第ニ種奨学金がありますが、第一種奨学金は利息が不要ですから、単純に貸付金額を返済月数で割れば毎月の返済額となります。
これに対して第ニ種奨学金は、0.01%~3.00%の利息がかかりますから、返済額の計算が非常に複雑になります。なお、返済額の詳細については、日本学生支援機構が提供する「奨学金貸与・返還シミュレーション」を利用すると簡単に計算できます。
奨学金の返済額の平均
奨学金を必要とする最大の理由は、大学に必要な学費が非常に高額であることです。私学と国公立の別や学部によっても大きく異なりますが、私学の場合だと年間平均80万円、国公立の場合だと年間平均50万円の授業料がかかります。
したがって、平均すると大学を卒業するまでに200万円〜500万円のお金が必要です。そのため、奨学金の返済額の平均は284万円にも上り、卒業後の奨学生の生活を圧迫しているのが実態です。ここでは、返済期間に応じた、奨学金の返済額の平均について解説します。
2年間の返済額の平均
奨学金はあらかじめ定めた期間において、毎月一定の金額の貸付を受けるものです。奨学金の下限である、3万円(1か月)を2年間借りたとすると、大学を卒業した際に平均72万円の債務を抱えることになります。
毎月の貸付金額が5万円だと平均120万円、10万円だと平均240万円の債務を抱えることになります。毎月の貸付金額だけを見ると、大きな返済額に感じない人もいますが、返済総額にしてみると非常に大きな債務であることがわかります。
4年間の返済額の平均
前項では、奨学金を2年間借りた場合の返済額の平均を計算しましたが、奨学金を利用する人の大半は、4年制大学に通っています。そこで、4年間にわたって奨学金の貸付を受けた場合の返済額の平均を計算すると、毎月3万円の貸付だと平均144万円、5万円では平均120万円、10万円になると平均240万円にも上ります。
全ての奨学生の返済額の平均は284万円ですから、4年制大学に通う奨学生の多くは、毎月平均10万円程度の奨学金を借りていることがわかります。つまり、第ニ種奨学金だと、ここに利息分が加わりますから、さらに大きな返済金額になります。
借入総額で返済額は違う
奨学金の借入額の平均については、前項で説明しましたが、実際の返済額は利息の加わる第一種奨学金と第ニ種奨学金では異なります。また、第ニ種奨学金の利率についても、2種類の計算方法があります。つまり、借入総額と返済額は違うことを理解しなければなりません。ここでは、奨学金の返済額の計算方法について解説します。
奨学金の計算方法
毎月の返済額を正確に把握するには、借入総額に対する利息を計算しなければなりません。その上で、月々の返済金額を算出しますが、奨学金の利率には、利率固定方式と利率見直し方式がありますから、さらに計算が複雑になります。
そこで利用したいのが、日本学生支援機構が提供する「奨学金貸与・返還シミュレーション」もしくは「スカラネットワークパーソナル」です。両方とも簡単な情報を入力するだけで、月々の返済金額が計算できます。
第一種奨学金(利息なし)の計算方法
第一種奨学金には利息がありません。したがって、4年制大学で毎月3万円を借りた場合、借入総額は144万円です。これを、返済期間13年(156回)で割ると、毎月平均9,230円返済する計算になります。
利息がかからないのは大きなメリットですが、13年間支払い続けることを考えると、決して小さな負担ではありません。また、返済が遅れた際には年率5%の延滞金が課せられますので注意が必要です。
第二種奨学金(利息あり)の計算方法
第ニ種奨学金かかる利率には、上限が3%までと定められています。また、利率固定方式と利率見直方式では利率が異なりますので、どちらかを選ばなくてはなりません。
2016年1月から2017年11月までの利率の推移は、利率固定方式が0.14%から0.33%で推移しているのに対し、利率見直し方式は0.01%で動きませんでした。つまり、利率の上限は3%であるものの、かなり低い利率で推移していることがわかります。
とりわけ、利率固定方式は適用された利率が変更されませんから、第二種奨学金を利用する場合には、しっかりと利率を確認しておくことが大切です。なお、返済が遅れた際には、第一種奨学金と同様に率5%の延滞金が課せられます。
利率固定方式と利率見直方式
利率固定方式とは、文字どおり返済完了まで同じ利率で返済する方式で、奨学生の8割以上が選択しています。利率は奨学金の貸与が完了した月のものが適用され、それ以降変更されることはありません。
利率見直し方式とは、市場動向により利率が変更される方式です。5年ごとに利率の見直し・変更が行われます。昨今の金利動向であれば、大きな景気の変動がない限り、利率固定方式の利率を上回ることはありません。ただし、5年ごとに変更されるので、ややリスクのある方式であることは否めません。
奨学金の返済額を減額する方法
奨学金の返済額については、利息が付加されるため大半で借入総額よりも大きくなります。また、返済期間も10年を超えることから、経済的な基盤を持たない奨学生にとっては、大きな負担になります。
とりわけ、大学卒業後の10年間は結婚や出産など大き出費を伴う事態が起こることも多く、奨学金の延滞にもつながりかねません。奨学金を無理なく返済するには、毎月の返済額の変更も検討しなければなりません。そこで、奨学金の減額・変更方法について解説します。
返済額の減額方法①奨学金制度の変更
奨学金の借入を検討している段階で検討したいのが、奨学金制度の変更です。奨学金制度といえば、日本学生支援機構が運営しているものが一般的に知られています。しかし、その他の機関においても、様々な奨学金制度が運営されています。
もちろん、貸付を受けるにはそれぞれに条件が異なりますが、平均すると日本学生支援機構の奨学金よりも低い利率で借り入れることができます。なお、日本学生支援機構の奨学金を一旦利用してしまうと、変更は困難ですから、事前に検討しておく必要があります。
市町村が運営する奨学金制度
いくつかの市町村では、その地域の大学に入学することなどを条件として、独自の奨学金制度を運営しています。これは、その地域若年層を集めることを目的としたものであり、日本学生支援機構との並行利用も可能です。
志望する大学のある地域で、市町村が運営する奨学金制度が運営されているもであれば、平均すると日本学生支援機構の利率よりも低くなりますから、とても有利な条件で奨学金制度を利用できます。
学校側が運営する奨学金制度
独自の奨学金制度を導入する大学も増えています。これは、自校に優秀な学生を集めることが目的であり、低金利であることは当然として、無金利や学費免除の制度もあります。大学は限られますが、志望校に導入されていれば、とても有利に利用できるので、志望校を選ぶ際の検討材料とするのもよいでしょう。
返済額の減額方法②一括返済
大学卒業後、一定の収入が得られるようになった場合に利用したい変更方法が一括返済です。一括返済とは、その言葉どおり、借入残高を一括で返済する返済方法ですが、第ニ種奨学金制度の場合、返済を早めた分だけ利息の負担がなくなります。
このことを利息軽減効果と呼びますが、奨学金の利率は他のローンと比較して低いとはいえ、長期間にわたって利息を払い続けることを考えるとかなりの負担になります。とりわけ、大学卒業後は結婚や出産など出費が多くなりますから、早い段階で一括返済に変更することは、その後の将来設計においても有効です。
返済額の減額方法③繰り上げ返済
奨学金を一括で返済する経済力はなくとも、少しでも余裕があるなら、繰り上げ返済に変更するのも有効です。繰り上げ返済とは、毎月の返済金額を増額することで、返済期間を短縮するものです。したがって、一括返済同様、利息分を節減できるといった、利息軽減効果を得ることができます。
就職して、しばらくすると基本給もアップしますが、将来設計を考えると無駄遣いは禁物です。奨学金の返済に目途がつくまでは、できる限り早い段階で繰り上げ返済に変更しておきましょう。
奨学金の返済期間の確認
奨学金の返済期間については、日本学生支援機構が提供する「奨学金貸与・返還シミュレーション」もしくは「スカラネットワークパーソナル」により確認可能です。その際、その期間に起こり得る出来事や想定される給与を当てはめてみると、よりリアルな返済計画が見えてきます。返済金額だけを確認して、返済の可否を判断するのはリスクが大きくなります。
奨学金の返済期間の計算例
例えば、4年制大学に進学し、月の貸与金額を5万円、利息3%とすると、貸付総額は240万円となり、月返済額は1万6,769円、返済期間は15年になります。この間、結婚や出産、マイカーやマイホームの購入などを当てはめてみると15年にわたって1万6,769円を支払い続けることが、大きな負担になることがわかります。
返済期間の繰り上げは可能
前項の例でも明確なように、奨学金を長期間にわたって支払い続けることは、とても負担が大きくなります。そこで検討したいのが、一括返済もしくは繰り上げ返済への変更です。返済期間の変更は可能ですから、例えば、結婚を一つの目標として、それまでには返済の目途をつけておくのもよいでしょう。
なお、一括返済もしくは繰り上げ返済にかかる手続きについては、日本学生支援機構が提供する「スカラネットワークパーソナル」から簡単に行うことができます。
奨学金の返済期間の変更
ここまで、奨学金の平均返済額や、大学卒業後、少しでも短期間で奨学金を返済する変更方法について解説してきました。もちろん、奨学金の返済期間は短い方がよいのですが、必ずしも順風満帆に物事が進むわけではありません。
例えば、就職した会社が倒産したり、病気や怪我で働けなくなることもあります。災害に巻き込まれる可能性もゼロではありません。そこで、有事の際にも奨学金の返済が滞らないようにするための、返済期間の変更制度について解説します。
返済期間を変更する制度①返還期限猶予
返還期限猶予とは、災害や傷病などを理由に返済が困難となった場合に、返済期限を猶予できる変更制度です。その内容や対象となる奨学金制度により、「一般猶予」と「所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予」があります。
なお、収入にかかる利用条件としては、給与収入の場合、年間給与所得が325万円以下、自営業者の場合だと、収入から経費を差し引いたものが年間225万円以下であることです。また、被扶養者がいる場合、所得から一人あたり38万円を控除できます。もちろん、これまでの返済期間において、延滞がないことも大きな条件です。
返済期間を変更する制度②一般猶予
一般猶予とは、1回の申請で1年間は返済期限を猶予できる変更制度であり、最大で10年間の猶予期間を得られます。返還期限を変更することにより、完済までの期間が長くなりますが、猶予期間中は利息がかからないので、総返済金額が変わることはありません。なお、申請にあたっては、経済困難となった理由が証明できる書類が必要です。
返済期間を変更する制度③所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予
所得連動返還型無利子奨学金の返還期間猶予とは、2012年以降の第一種奨学金の利用者に認められた猶予制度であり、給与水準が一定額に達するまで、返還期限を猶予できるものです。なお、猶予期間は無期限である上、そもそも第一種奨学金は利息がつきませんから、総返済額も変更がありません。
返済期間を変更する制度④減額返還制度
返還期限猶予と同じく、日本学生支援機構が設けているのが「減額返還制度」です。返還期猶予は、一定期間、奨学金の返済が猶予されますが、減額返還制度では、猶予ではなく月々の返済額を変更できるのが相違点です。返済額を減額することで、完済月は変更となりますが、返済が滞ることはありません。なお、適用条件などは返還期限猶予と同じです。
奨学金の返済が不可能なときには
返還期限猶予や減額返還制度といった、返済額の返済期限を変更する対応を行っても、奨学金の返済が不可能な場合、債務整理を検討することになります。
奨学金の返済に債務整理が適応されるのか、疑問に感じる人も少なくありませんが、奨学金の返済も「債務」にあたります。したがって、債務整理は適用可能です。そこで、奨学金の返済額について、返済が不可能となった際の、債務整理の方法を解説します。
債務整理をする
債務整理とは、借金の返済が不可能となった際に、債権者と交渉するなどして返済方法を変更したり、裁判所を通じて債務の返済義務を免責する制度です。奨学金の返済における負担は軽減されますが、新たに各種ローンが使えなくなったり、ブラックリストに掲載されるといったリスクもあります。ここでは、主な債務整理の方法について解説します。
任意整理とは
債務整理を行う上で、最初に検討するのが任意整理です。任意整理とは、債権者と交渉することで、利息分を免責して3〜5年の間で元本を返済する方法です。債権者との交渉は、弁護士や司法書士が行います。
任意整理の場合、対象とする債務を選択できますから、奨学金の返済は対象とせず、他の債務だけ任意整理することも可能です。任意整理のメリットは、裁判所を介さないので官報に掲載されることがありません。また、連帯保証人に迷惑をかけることもありません。
ただし、元本を3~5年で完済しますから、毎月の負担は大きくなること、さらに5年程度は各種ローンが組めないことがデメリットです。したがって、ある程度の収入があり、債務総額が少ない人に向いた債務整理の方法だと言えます。
個人再生とは
任意整理では返済できないと判断された場合に、検討するのが個人再生です。個人再生とは、債務者が支払い可能となるよう、奨学金を含む全ての債務を5分の1程度に圧縮し、3〜5年で完済する方法です。
裁判所を介しますから、一般的には弁護士や司法書士に手続きを委任することになります。個人再生のメリットは、連帯保証人に迷惑をかけることなく、債権を圧縮できることです。
ただし、裁判所を介することで官報に掲載されますから、僅かではありますが、周囲に漏れることがあります。また、各種ローンが5年~10年は組めないことがデメリットです。したがって、ある程度の収入があり、債務総額が多い人に向いた債務整理の方法です。
自己破産とは
個人再生でも返済が見込めない場合、自己破産を検討することとなります。自己破産とは、奨学金を含む全ての債務について、返済義務が免責されますが、自己が所有する概ね20万円以上の財産が差し押さえられる制度です。
個人再生と同様に、裁判所が可否を判断しますが、専門的なスキルや経験が必要なので、弁護士や司法書士に委任するのが一般的です。自己破産のメリットは、債務がなくなりますからそのプレッシャーから解放され、前向きに生活できるようになることです。
デメリットは、何といっても高額な財産を失うことです。さらに5~10年は各種ローンが組めませんから、将来設計を大きく変更することになります。なお、奨学生が自己破産した場合、債務は連帯保証人に移りますから、連帯保証人に支払義務が発生します。連帯保証人が返済できな場合、債務整理を行うことになりますからリスクの大きい方法だと言えます。
奨学金の返済期間と将来設計の考え方
奨学金の返済については、その返済期間を漫然と返済するのではなく、自身の将来設計と現状の収支の状況を照らし合わせながら、絶えず確認と計算を繰り返し、その都度、返済額を変更することが大切です。
特に結婚や出産、マイホームの購入は20歳代から将来設計として考えておかなければいけない項目ですから、奨学金の返済にも大きく影響を与えます。そこで、奨学金の返済に影響する将来設計の考え方について解説します。
結婚にかかる費用
大学卒業後に起こる、最初の大きな出費は「結婚」である人が大半です。平成25年度に発表された日本人の平均的な初婚年齢は、男性が30.7歳、女性が29.0歳でした。奨学金を返済している人であれば、男女とも返済期間中であることが確認できます。
なお、結婚にかかる費用は平均440万円の計算になりますが、これは披露宴や新婚旅行にかかる費用になります。この他に、新居や家財道具などが必要ですから、それらの費用を計算した上で、必要な費用を確認します。したがって、男女とも大学卒業と同時に、奨学金の返済と並行して、結婚にかかる費用を積み立てる必要があることを確認しておきましょう。
出産にかかる費用
平成25年度に公表された、出生時の女性の平均年齢は第1子が30.1歳、第2子が32.0歳、第3子が33.2歳です。つまり、奨学金の返済が終わる前に出産する女性が多いことが確認できます。出産にかかる費用は、正常分娩では30万~70万円といった計算になります。平均的な費用としては40万~50万円と考えておくとよいでしょう。
出産については、男性の収入もあり、各種補助金もありますから、大きな負担とはならないものの、その後の養育費を考えると、例え1万円でも奨学金の返済は大きな負担となることが確認できます。
マイホームにかかる費用
マイホームは「人生で最大の買い物」と言われることもありますが、奨学金の貸付を受ける時点では、実感が湧かない人が大半です。しかし、将来設計を立てる上では、絶対に外してはならない項目です。
マイホームを購入する人の平均年齢は、「分譲戸建住宅」で39.6歳、「分譲マンション」で44.1歳です。この年齢だと、奨学金の返済は終わっていることが確認できますが、購入の際の自己資金の平均は800万円~1,000万円程度です。つまり、20歳代のうちから、購入資金を貯蓄しておかないと、住宅ローンを組む際に慌ててしまうことになりかねないのです。
年代別の平均年収から考えること
年収については、同じ年齢であっても職種や都道府県などによって異なりますが、奨学金の貸付を受ける時点では、どういった職場に就職するかは決まっていませんから、平均年収を確認することになります。年代別の平均年収では、奨学金の返済期間にあたる20代が346万円、30代が452万円となります。
単純に1か月あたりで計算すると20代で28.8万円、30代で37.7万円となります。ここから、生活費や税金が差し引かれ、結婚やマイホームのために資金を貯蓄するのですから、いかに奨学金の返済が負担になるのかがよく確認できます。
将来設計の考え方とは
奨学金の貸付を円滑に完済するには、将来設計が重要ですが、そのポイントは結婚、出産、マイホーム購入といった高額な出費を想定することです。それぞれに何歳頃に、どのくらいの金額が必要なのかを想定します。
その上で、必要な金額に対する貯蓄をいつから頃から、毎月どのくらい貯蓄すればよいのか計算し、そこで算出された金額と、1か月あたりの奨学金の返済金額、生活費の合計が毎月必要な金額(=支出額)となります。この金額と年代別の平均月収を比較すれば、奨学金の返済額が適当であるか否かが確認できますので、必要に応じて修正を加えていきます。
奨学金の返済額は減額・返済期間は延長できる
奨学金の返済額は、平均284万円と高額であること、また、返済期間は平均すると10年を超えることから、その返済に苦慮している奨学生が極めて多いのが実態です。そのため、返済を3か月以上滞納している奨学生が全体の8%にも上る非常に深刻な問題となっています。
こういった事態を回避するには、奨学金を利用する前に返済額や返済期間を確認しておくことが重要となります。とりわけ、大学卒業後10~15年間は結婚や出産、マイホームやマイカーの購入など大きなお金が立て続けに必要な時期です。また、思わぬ災害に巻き込まれたり、傷病などによって、思うように奨学金の返済ができない事態も考えられます。
奨学金の返済については、一括返済や繰り上げ返済を行うことが可能ですから、返済期間を短縮することができます。反対に一定期間、減額したり返済期間を延長できますから、これらの制度をしっかりと理解して柔軟に返済していくことが大切です。