TOEFLのテストとは
TOEFLとは英語を母語としない人を対象に実施されている、米国非営利教育団体(ETS)が運営する国際基準の英語能力測定試験です。主に英語圏の大学や大学院への留学を希望する際に、英語力の証明の為スコアの提出が必要となるため、受験する人が多い試験です。
ところで留学の際の語学力証明の手段としてのイメージが強いTOEFLですが、TOEFLにはiBTテストとITPテストの2種類の試験があります。iBTテストは多くの人がイメージする通り主に留学希望者が受験する試験ですが、ITPテストは主に大学や企業で語学力測定のために導入されている試験です。
以下の記事ではITPテストとiBTテストの特徴について、その利用目的や試験形式の違いについても触れながら説明していきます。
TOEFLのITPについて
TOEFL ITPとは、過去に実施されたTOEFL PBT(2017年7月に廃止されています)を再利用した紙ベースのテストであり、受験者の英語力を多方面から、かつ客観的に判断できるテストとして高い評価を得ています。TOEFL ITPで得たスコアは英語力の証明として活用することができます。
またTOEFL ITPは個人で受験することはできません。企業や大学など、団体単位で申し込む試験であり、日程も主催する団体によって決まります。その分、公式のTOEFLテストよりもリーズナブルな価格で受験できることが特徴です。
しかしこのTOEFL ITPのスコアは多くの場合、海外の大学や大学院出願に用いるスコアとしては用いることができません。英語力の証明には十分有効なテストですが、留学の際の英語力証明の為に使おうと考えている場合には注意が必要です。
ITPはLEVEL1・LEVEL2がある
TOEFL ITPテストはLEVEL1とLEVEL2の2レベルがあり、どちらのテストもマークシート形式の選択式の問題から構成されています。問題の内容も実際に英語圏の学校で学ぶ際に出会うシチュエーションを想定して作られています。
LEVEL1は従来のTOEFL PBTと難易度が同じで、スコアは310点から677点です。これに対しLEVEL2は問題数がTOEFL PBTより少なく、やや易しい問題で構成される簡易版で、スコアは200点から500点です。LEVEL1もLEVEL2も同じ数字のスコアの場合レベルはほぼ同じと考えられ、LEVEL1、LEVEL2とも500点の人は、ITPでは同じレベルと見なされます。
TOEFLのiBTについて
TOFEL ITPが団体向けのテストで個人では申し込めないのに対し、TOEFL iBTは公開テストで、個人で申し込んで受験するテストです。TOEFL iBTで得たスコアは公式なスコアとして英語力の証明に使用することができます。主にアメリカやカナダと言った北米の大学への留学を目指す人を対象として作られている試験です。
試験形式はTOEFL ITPとは違って紙ベースではなく、インターネット版のテストで、コンピューターを使用しての受験となります。
TOEFL ITPとTOEFL iBTでは試験問題の構成にも違いが見られます。TOEFL ITPはリスニングと文法問題、リーディングで構成されているのに対し、TOEFL iBTでは文法問題がなく、その代わりスピーキングとライティングが課されます。試験に要する時間もTOEFL ITPは約2時間ですが、TOEFL iBTは約4時間とタフな試験内容となっています。
TOEFLのITPのスコアレベルの目安
冒頭の章ではTOEFL ITPの概要についてと、数字で示されるスコアが何点から何点という点なのかという点についても説明してきました。では具体的にスコアの数字が示す英語力のレベルがどのくらいなのか、また留学を志す人にとってはどの程度のレベルが目安として求められるのかについて、以下の章で書いていきます。
なお、従来のTOEFL PBTと公式テストであるTOEFL iBTと同じレベルでの比較をしやすくするため、ここではTOEFL ITPのLEVEL1を受けることを前提として話を進めていきます。
スコアの算出方法
TOEFL ITPの問題は前述した通り、リスニングと文法問題、リーディングという3つのセクションで構成されています。そして、この各セクションごとにスコアが算出されます。リスニングセクションのスコアは31~68、文法セクションのスコアは31~68、そしてリーディングセクションのスコアは31~67の範囲で算出されます。
この3つのセクションのスコアの素点を足し算して合計した数字に、10を掛けて3で割った数字の小数点以下を四捨五入したものが、最終的なTOEFL ITPのスコアとなります。
上記のような計算方法を取っているため。TOEFL ITPのスコアは満点で677と中途半端な数字になるのです。
スコアが示す英語力はどのくらい?
TOEFL ITPのスコアは310点から677点の間で算出されますが、この点数が占めるレベルは次の通り分類されます。最も高いC1レベルは627点から677点、優秀なB2レベルは543点から626点、その次のB1レベルは460点から542点、459点未満がA2レベルと分類されます。これはTOEFL PBTのスコア基準とほぼ同じです。
TOEFL ITPのスコアがC1レベルだと、優れた英語運用能力があるとみなされます。B2レベルだと英語を理解でき、使用することができる、B1レベルはシンプルな英語は理解できると判断されます。A2レベルでは英語での意思疎通は難しいという判断となります。
留学に必要なITPのスコア
一般的にTOEFLのテストを受ける人は、英語圏への留学を考えている場合が多いでしょう。前述した通り、TOEFL ITPは直接的には英語圏の大学や大学院への出願に用いるスコアとしては使うことができませんが、自分が留学に必要な英語力を持っているのか?を判断する基準とはなり得ます。留学をするにあたり、どのくらいのスコアが必要なのでしょうか?
基準のITPのスコア
これから述べる話はあくまで一般的な話であり、実際に出願する際には自分が希望する大学や大学院の出願要件を確認することが大前提とはなりますが、英語圏の大学へ留学する場合には、最低でも500点以上のスコアが目安となります。更に大学院を目指す場合には550点以上が目安とされ、より高い英語力が求められます。
TOEFL ITPでの500点は日常生活レベルで、大学の講義もある程度理解できるとみなされます。ただし、この数字はあくまで「目安」で「最低ライン」であることは覚えておきましょう。出願先によってはより高い英語力を要求されることもあるので、注意が必要です。
TOEFLのITPのスコアアップの方法
TOEFL ITPのスコアとそのスコアが示す英語力のレベルを知ったところで、「TOEFL ITPで〇点は取りたい!」という目標ができた人もいると思います。そこでスコアアップの為に対策を立てて勉強を進めたいところですが、どのような方法で試験対策をすれば良いのでしょうか?
公式ガイドブックを活用する
TOEFL対策の参考書は実はTOEICや英検と比較すると数は少ないです。TOEICや英検がビジネスや学業上の理由から英語力を測る目的で受ける人が多いのに対して、TOEFLは基本的に留学を志す人の為の試験なので、受験者の絶対数が少ないからです。
従って、まずはTOEFLの試験の全容を知る上でも公式ガイドブックの活用がお勧めです。米国非営利教育団体(ETS)が出している公式ガイドブックと公式問題集でTOEFLの傾向と対策を掴み、その上で学習計画を立てましょう。公式問題集なのでレベルは実際の試験に合わせられていますし、ガイドブックの英語を読むのもリーディング対策となります。
フォレストやロイヤル英文法を学ぶ
ただし、英語力の土台となる基本的な文法の知識が不十分なままで、いきなり公式ガイドブックや問題集などを読んだり問題を解いたりするだけでは、実際の試験で満足のいく結果が得られる可能性は極めて低いです。
公式ガイドブック等で試験の全容を掴み、問題を解いてみて自分の弱点が見えてきたら「フォレスト」や「ロイヤル英文法」といった定番の文法書をおさらいしてみましょう。英語は一にも二にも基礎が重要です。自分の弱点である文法単元を当たっていくやり方でも良いですし、一通り1周こなしてみるというやり方も良いでしょう。
TOEFL用の参考書を使う
TOEFL ITPは留学を志す人向けの試験ということで、試験に出てくる語彙にはアカデミックなものが非常に多いです。日常会話レベルは問題ないという人でも、知らない語彙が多すぎると読解問題等では致命的です。語彙の増強はTOEFL用の参考書を探して、学術用語に慣れておきましょう。文法も重要ですが、外国語の学習ではある程度の語彙は絶対に必要です。
パターンを分析する
TOEFL ITPに限った話ではありませんが、大抵の試験では何かしら傾向があり、そして採点基準や出題基準といったものも少なからず存在しています。同じ難易度の試験でも傾向や試験形式について若干でも予備知識があるのとないのとでは、予備知識があったり、出題や採点の基準を知っている方が、高いスコアを出せる可能性は高くなります。
文法や語彙の対策と並行して、試験問題のパターンを掴む為に問題集を徹底的にやりこみましょう。問題集は一度解いて終わりではありません。解説もしっかり読み、その解説を丸々覚えてしまうくらい繰り返して勉強してください。
リスニングに慣れる
コツコツと地道な努力が必要な語学の学習ですが、その中でもリスニングのスキルは一朝一夕に身につくものではありません。日頃から英語ニュースや海外ドラマ等でリスニングの練習をしたり、公式ガイドブックについているCDをスマートフォンや携帯型音楽プレーヤーに入れて、通勤時間中に聴く等して、耳を慣らしておきましょう。
専門的・学術的な英語を読む
ビジネス上の英語力を示す試験のTOEICとは違い、TOEFLは実際に大学で授業を受けたり、討論に参加したり、論文を書いたりといった勉強や研究を中心としたシチュエーションで作られている試験なので、試験に出る語彙も学術用語等アカデミックなものが多いです。
知らない単語が多すぎるのはやはり特に読解問題に取り組む上では致命的になりかねません。TOEFL用の問題集で学術用語に触れておくのはもちろん、できれば自分の研究分野や興味のあるテーマについての英語の文献についても目を通して、少しでも語彙を増やす努力を怠らないようにしましょう。
TOEFLのITPのスコア換算表
これまでTOEFL ITPのスコアの範囲と該当するレベル、また英語圏の大学や大学院に出願する際の必要とされるスコアレベルの目安について説明してきました。ではTOEFL ITPでのスコアは他の語学試験のレベルと比較するために換算した場合、どのくらいのグレードに該当するのでしょうか?
英検に換算した場合
英語圏の大学へ留学する際に必要なTOEFL ITPのスコアの目安が、最低で500点以上と述べましたが、これは英検に換算すると2級でおよそ高校卒業のレベルです。もっともTOEFL ITPに関しては語彙に学術用語が頻出するという特徴があるため、一概に同じレベルとは言い切れませんが、英検で言うとこの位、といったおよそのレベル感の目安にはなります。
一方、英語圏の大学院留学に必要なTOEFL ITPのスコアの目安が550点で、これを英検に換算すると準1級のレベルです。英検準1級は大学在学レベルと言われているので、大学院への留学に求められる英語力の目安としては妥当なレベルと言えます。
TOEFLとTOEICの違い
これまでTOEFL ITPを中心に試験の概要やそのレベル、出題の傾向やその対策について述べてきましたが、TOEFL ITPとよく引き合いに出される試験に、TOEICがあります。この試験も元々TOEFLと同じく米国非営利教育団体(ETS)によって開発が行われて実施されている試験ですが、ではTOEFLとTOEICの違いはどのような点にあるのでしょうか?
TOEFLは留学や勉学に必要
TOEFLは試験の目的が「英語圏の大学・大学院に留学を希望する人が英語力を証明するスコアを獲得すること」であり、学生を受け入れる大学側は「入学しようとしている学生が基準となる英語力を満たしているか」を判断する材料となることから、主に学術・研究目的で英語が必要な人に需要があります。試験の語彙に学術用語が頻出するのもそのためです。
TOEICはビジネスに便利
一方、TOEICは「ビジネス上で必要なコミュニケーション能力を備えているか」に重きを置いて問題を作成している試験です。そのためビジネスパーソンや就職活動を行う学生に高い需要があります。企業も学生に対しTOEICスコアを採用の基準としていたり、社員に対しても昇進や海外赴任を決定する基準としてTOEICスコアを用いるケースもあります。
また転職活動を行う際にも履歴書上のTOEICスコアを重視する企業もありますし、基準を満たすTOEICスコアを獲得した社員に対して報奨金を出す企業もあります。TOEFLが学術的な場で必要とされるのに対し、TOEICは実社会での英語力を証明する試験と言えます。
TOEFLとIELTSの違い
希望する留学先の入学基準を満たす為、英語力の証明にTOEFLスコアの獲得が必要なことは今まで述べてきた通りですが、留学にあたり英語力の証明に使える試験は実は他にもあります。それはIELTS(アイエルツ)という、海外留学や海外移住を希望する人向けに実施されている、英語力を測る試験です。英国文化振興会などによって共同で運営されています。
ここではIELTSの試験の特徴や、TOEFLとは異なる点等を両方の試験を比較しながら説明していきます。
IELTSは留学だけではなく、海外就職や移民にも利用される
IELTSはアカデミック・モジュールとジェネラル・モジュールの2種類があり、英語力を正確に判断されます。英語圏の大学や大学院等、教育機関への進学を希望する場合はアカデミック・モジュール、海外への移住や企業への就職の場合は、ジェネラル・モジュールを選択して受験します。
IELTSもTOEFL(ここでは留学目的なのでTOEFL iBTとします)も診断される技能は同様です。受験者はリーディング、ライティング、リスニング、スピーキングのスキルを問われ、回答する事でスコアが算出され、出願時に試験で獲得したスコアを元に選考が行われます。
IELTSとTOEFLの最大の相違点は、回答方式です。IELTSの回答は全て紙ベース、またスピーキングの試験は試験官と面接形式で行われます、一方TOEFLは全てコンピュータ上で入力して回答する形式で、スピーキングも音声案内に従い、自分の音声を録音して行います。
留学する国によってはIELTSが必要
基本的にはIELTSとTOEFLのどちらでも、英語圏の大学や大学院に出願基準を満たす英語力を証明するスコアとしては有効ですが、留学先を選ぶ際にはどちらの試験でも受け付けているのかをしっかり確認しましょう。
TOEFLのスコアは英語圏ならどこでも通用すると考えられがちです。実際にスコアで英語力を証明することは可能ですが、現在イギリスの大学・大学院に出願する際にはTOEFLのスコアが使えなくなっています。よってイギリスへの留学を希望する場合には必然的にIELTSのスコアの獲得が必要となります。
アメリカやカナダ、オーストラリアといった他の英語圏の国では基本的にはTOEFLのスコアが使用できると考えて問題ないですが、留学先を検討する場合には出願基準や受け入れ基準を確認すると同時に、TOEFLの獲得スコアで問題ないかをしっかり確認しましょう。
TOEFLは留学など専門的な英語の勉強に必要なテスト
ここまでTOEFL ITP(留学に必要なスコアを獲得できるTOEFL iBTも)について、試験のレベルやスコア、英語圏の大学・大学院に必要なスコアの目安や、英検やTOEIC、IELTSといった他の英語試験との比較もしながら説明してきました。
これからの社会は一層グローバル化が進み、異国の地での文化を吸収したり、あるいは英語圏の教育機関ならではの最先端の研究に携わったことのある人材は、競争の激しい社会で将来経済活動をしていく上でも不可欠な存在となるのは間違いありません。
将来設計を築く選択肢の一つである留学を実現させるには、まずは第一関門ともいうべき英語力を証明できる試験を受けて、一定のレベルのスコアの獲得が必須です。希望の進路を実現させるために、基礎的な英語力を身に着ける努力をしながらも試験についてリサーチを行い、入念な準備を行った上で出願基準を突破できるスコアの獲得に努めましょう。