育児休業給付金の目的
育児休業給付金とは、育児期間中の生活を保証するため、育児休業によって仕事を休んでもそれまで得ていた給料の一部を、給付金の形で受け取ることができる制度です。
給付金を得ることで、育休中も安心して生活できるように保証するだけではなく、育休後に職場復帰できるように支援するという目的もあります。
「育児休業法」との関係性
育児休業は会社が制度として定めていないと取得できないと思われがちですが、そうではありません。「育児休業法」という法律によって定められていますので、条件さえ満たせば誰でも取得することができます。
育児休業は男女関係なく取得できますし、正社員だけでなく、派遣社員や契約社員、パートやアルバイトといった勤務形態であっても、所定の条件さえ満たせば取得することができます。
パパ・ママ育休プラス制度とは?
育児休業は、対象となる子供が満1歳を迎える前日まで取得することができますが、保育所に入れない場合は、2018年4月より満2歳まで取得できることになりました。
また、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用する場合、1歳2ヶ月の誕生日前日まで取得することが可能となりました。加えて、通常の育休は1人の子供につき1回しか取得できませんが、ママの産休中(生後8週間まで)にパパが一度育休を取得すると、ママの職場復帰後に再度育休を取得することが可能となります。
ただし、「パパ・ママ育休プラス制度」であっても、休業の上限は満1歳を迎える前日までであることには注意してください。しかしながら、これはあくまで法律の内容ですので、勤務先が独自に設定しているルールがないかどうか、確認するようにしましょう。
育児休業給付金の期間について
育児休業の期間については先に説明した通りですが、注意しなければいけないことは、育児休業給付金が給付される期間とは異なる、ということです。「育児休業中はずっと給付金がもらえる」わけではありません。
育児休業は、会社によっては満3歳を迎えるまで取得できるとしているところが多く見られます。しかし、育児休業給付金は会社が給付するのではなく、雇用保険から給付されますので、会社のルールとは異なる点に注意してください。
支給される条件
育児休業給付金を受け取るために必要な条件は5つあります。「1歳未満の子を育児していること」「雇用保険に加入していること」「育児休業に入る前の2年間で11日以上働いた月が12ヶ月以上あること」「育児休業期間中に以前の月の賃金の8割以上を受け取っていないこと」「育児休業期間中の勤務日数が1カ月に10日以下であること」の5つです。
すべての条件は、正社員であれば満たしていないケースはそうそうありません。派遣社員やパート、アルバイトなどで、フルタイム勤務でない場合は、自分が給付条件を満たしているかどうか確認しましょう。
育児休業給付金の支給申請はいつまでに実施する?
育児休業給付金の申請は、基本的に勤務先が実施します。いつまでにどういった申請を行う必要があるのかは、勤務先の担当者が把握しているはずですので、気になる方は確認しましょう。何らかの事情により、勤務先にて申請ができない場合の対処方法については、後ほど説明します。
支給額の計算方法
支給金額は、休業前の6ヶ月間の給与(ボーナス除く)の合計÷180を休業開始時賃金日額とし、これを育児休業を取得する日数に応じて、180日までであれば67%、残り期間は50%が給付されます。
仮に休業開始時賃金日額が7,000円だった場合、31日ある月に支給される金額は、7,000円×31日×67%=145,390円となります。180日以上経過した場合は、7,000円×31日×50%=108,500円です。
ただし、育児休業中は社会保険料や健康保険料が免除となりますので、住民税などを除いた手取りで考えると、休業前の80%ほどがもらえる計算になります。
育児休業給付金はいつまでにもらえる?(初回給付)
初回の育児休業給付金はいつまでにもらえるのでしょうか。これは男性と女性で初回給付月が異なります。育児休業給付金は2ヶ月ごとの給付が基本ですが、給付開始日が男性と女性で変わります。
女性の場合は、出産日の翌日から8週間は産後休暇となりますので、給付開始日は産後休暇の終了後の約2ヶ月後となり、初回の給付は出産日から約4ヶ月後となります。男性の場合は、産後休暇がありませんので、出産日から育児休業を取得する場合は、初回の給付は約2ヶ月後となります。
育児休業給付金をもらえる期間
育児休業給付金は、原則として子供が満1歳になるまで受け取れますが、保育所に入れない等、職場復帰ができない場合は、給付期間を延長することができます。ただし、延長給付を受けるためには所定の条件を満たすことが必要です。
最初の延長では1歳6ヶ月となるまでですが、1歳6ヶ月になっても保育所へ入れない場合は、再度の申請によって2歳まで延長することが可能です。ただし、2歳以上の救済措置はありません。また、給付額は180日以降はずっと50%のままです。
なお、育児休業を使い切る前に職場復帰する場合は、職場復帰の前日までが給付対象期間となります。出産日から1年分を必ず貰えるわけではないため、注意してください。
育児休業給付金の申請に必要なもの
続いて、育児休業給付金を受け取るために必要なものについて説明します。ただ、本人が準備するものは基本的に「母子手帳」と「振込先口座に関する情報」だけで、それ以外の書類はハローワークか勤務先が準備するものになります。手続きも面倒ではありませんので安心してください。
育児休業給付金に必要な書類
「育児休業給付受給資格確認通知書」「(初回)育児休業給付金支給申請書」が勤務先から送られてきます。「(初回)育児休業給付金支給申請書」に必要事項を記入して勤務先へ送り返します。その際に、「母子手帳の写し」と「通帳の写し」を添付する必要があります。
母子手帳の写しは「1歳未満の子を育児していること」を証明するため、通帳の写しは給付金を振り込むために必要となる情報です。
「育児休業給付受給資格確認通知書」には、受給を開始する年月日や支給金額等、育児休業給付金に関する内容が具体的に記載されていますので、必ず目を通すようにしましょう。
育児休業給付金の申請方法
勤務先へ「(初回)育児休業給付金支給申請書」を送り返したあとは、基本的に勤務先とハローワークの間で必要な書類のやり取りが行われます。勤務先がハローワークへ提出する書類に不備がなく、受給要件を満たしていることが確認されれば、大体1週間程度で育児休業給付金が申請した口座に振り込まれます。
雇用主が申請する場合
先程も説明した通り、書類を送り返したあとは、基本的に勤務先である雇用主が手続きを行います。その際にハローワークへ提出する書類には「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」「賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、またはタイムカードなど」があります。
賃金日額が正しいことを証明する書類と、支給要件を満たしていることを証明する書類となります。これらの書類の内容を確認して、ハローワークが対象者へ給付金を支給することになります。
雇用主が申請できない場合
なんらかの事情によって、まれに勤務先である雇用主が申請できない場合があります。そのような場合は、自分で申請することになります。
本人が申請を行う場合は、勤務先を管轄しているハローワークに出向くことから始まります。そこで「育児休業給付受給資格確認票」「(初回)育児休業給付金支給申請書」と「休業開始時賃金月額証明書」を受け取り、必要項目を記載してから雇用主の承諾を受け、ハローワークに提出することになります。
「賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、またはタイムカードなど」も必要になりますので、こちらは雇用主から取得する必要があります。以後、2ヶ月おきに同様の申請が必要になりますので、どういった書類が必要になるか、担当者へ事前に確認しておくと良いでしょう。
仕事復帰できない場合に育児休業給付金はいつまで延長できる?
保育所へ入れないなどの理由で、仕事復帰できない場合もあります。特に都市部では、以前から待機児童が問題となっているほど、保育所の余裕がなく、保育所へ入れないケースを想定する必要があります。
保育所へ入れないのに育児休業給付金は打ち切られる、となったら生活が苦しくなる一方ですので、期限付きではあるものの、給付期間が延長できる救済措置が設けられています。では、いったいいつまで延長できるのでしょうか。
育児介護休業法の概要と延長
平成29年度に改正された育児休業法には「1歳6か月に達した時点で、保育所に入れない等の場合に再度申出することにより、育児休業期間を最長2歳まで延長できる」「上記に合わせ、育児休業給付の支給期間を延長する」と記されています。ただし、次で述べる延長条件を満たす必要があります。
育児休業給付金の延長・給付金延長の条件
「①育児休業に係る子が1歳6か月に達する日において、労働者本人又は配偶者が育児休業をしている場合」「②保育所に入所できない等、1歳6か月を超えても休業が特に必要と認められる場合」の2つを満たした場合に、最大で2年間の育児休業給付金の給付を受けることができます。
保育所は規定がある
仕事復帰のために保育所へ入所させるとしても、保育所であればどこでも良いのかというと、そうではありません。法律である以上、法律で定められた保育所であることが必要です。
法律で定められた保育所とは、児童福祉法第39条に規定する認可保育所や認定こども園のことをいい、無認可の保育施設ではありません。無認可保育園に入れなかったからといって、延長給付を受けることはできませんので、注意してください。
育児休業給付金の延長対象者は?
では、延長給付の対象となるのはどのような場合になるか見ていきましょう。ここでは、延長給付の対象となるのはいつまでに産まれた子供か、また延長給付の条件を満たすにはどのようなことをしなければいけないかを説明します。
なお、改正法は2年前に施行されていますので、「いつまでに産まれた子供か」の条件については無視しても問題ありません。
延長の対象はいつまでに子供が生まれたかで決定
平成29年度4月1日より施行された法律であるため、4月1日時点ですでに満1歳6ヶ月を超えている場合は、改正法による延長給付の対象となりません。当時は少しの差で6ヶ月分の給付がもらえるかどうかが分かれました。ただしこれは先にも述べたように、すでに施行されてから2年が経過していますので、この条件は無視して構いません。
2回の育休延長が必要な場合
特に注意しなければいけない点はこちらです。2回の延長育休が必要な場合に延長給付が認められます。つまり、1歳を迎える時に保育所へ入れないため延長し、1歳6ヶ月を迎えても保育所へ入れないから再度延長することが必要となります。
育休延長の申請は、6ヶ月ごとしかできませんので、1歳と1歳6ヶ月で2回の延長申請を行うことが、2年間の給付を受けるための条件です。
育児休業給付金の延長申請の方法
では、具体的に育児休業給付金の延長給付を受けるためには、いつまでに、どのような申請が必要となるのか説明します。見落としがちなポイントもありますので、「延長給付が受けられない!」といった悔しい思いをしないためにも、必ず確認しておいてください。
特に、延長申請に必要な書類を用意するためには、「いつまでに何をしておかなければいけないか」が重要となります。
申請に必要なもの
2ヶ月に一度、育児休業給付金をもらうために記入する「育児休業給付金支給申請書」に「支給対象期間延長事由ー期間」という欄があります。ここに必要事項を記入して必要書類を添付することで、延長給付を受けることができます。
必要書類とは、「保育所へ入所できないことを証明する」ものである必要があります。市町村が発行した保育所の入所不承諾の通知書などが当たります。
注意すべきことは、入所できないからといって申込み自体をしていない場合、入所不承諾の通知書も発行されませんので、延長給付を受けることが出来なくなってしまいます。ダメであることがわかっていても、延長給付のためには申込みが必要です。
延長申請はいつまでに行う必要がある?
育児休業給付金の延長申請に具体的な申込期限はありませんが、先にも述べたように、1歳時点と1歳6ヶ月時点とで、保育所へ入所できないことを証明する必要があります。これらを考えると、1歳になる前と1歳6ヶ月になる前の育児休業給付金支給申請書を出す際に、「支給対象期間延長事由ー期間」にて申請する必要があります。
保育所の入所不承諾通知書に関する注意点
入所不承諾の通知書は、保育所への入所を希望したものの、定員オーバーなどで入所できなかったことを通知する書類です。つまり、子供が保育所へ入所しての保育が行われていない事を確認するためのものです。
ただし、これがあれば保育所へ入所していないことの証明として成り立つわけではなく、いくつか注意点があります。
いつまでの日付を入所希望日とするかが重要
まず、1歳6ヶ月までの延長を希望する場合は、入所希望日が満1歳未満、つまり誕生日以前となっていることが必要です。誕生日を超えての入所を希望しても、既に満1歳を超過しているため、延長の対象とはなりません。
たとえば職場復帰のタイミングと合わせるために、入所希望日を誕生日以降にして、入所できずに職場復帰もできないとなった場合、仮に育児休業の延長は会社の制度として認められても、育児休業給付金は給付されません。
また、2歳まで延長する場合は、入所希望日が1歳6ヶ月を超過していない日付としていることが必要です。加えて、どちらの場合も、不承諾の通知書に入所申込日や入所希望日が記載されていない場合は、いつを入所希望日にしたかがわからないため、入所申込書の写しも必要です。
無認可保育園へ入所できないだけではNG
延長給付を受けるためには、法律で定められた保育所に入所できなかった時だけです。家から最も近いなどの理由で無認可保育園だけを希望して入所できなくても、延長給付は受けられません。
延長給付を受けるためには、多少家から遠くとも、法律で定められた保育所への入所を希望し、入所できないことを証明する書類が必要です。
市町村によっては毎月1日の入所希望でなければいけない場合も
これは市町村に依りますが、入所希望日が誕生日以前であればよいのではなく、誕生月の1日であることを条件にしているところもあります。例えば3月20日生まれの場合は、3月1日を入所希望日としていないと、延長給付の対象とならないこともあります。
こちらのルールは市町村によって異なりますので、必ず市役所等で確認するようにしてください。
育児休業給付金はいつまで支給されるのか把握しておく
基本的な支給は1年間ですが、保育所への入所ができない場合などは申請によって最大で2年間の給付を受けることが可能です。ただし1年間を待たずに職場復帰する場合は、職場復帰前日までが支給期間となります。
ただし、いくつか注意しなければいけない点もありますので、いつまでにどういった手続きが必要なのか、事前に確認しておくことで、給付漏れといった悔しい事態を回避することができます。