育児休業給付金とは?
育児休業給付金とはどんな給付金なのでしょう。産後の育児には何かとお金がかかります。また育休で休めば給料が貰えなくなる場合がほとんどです。
健康保険から出産手当金が支給されますが、これは一時的なお金なので、長い育児休業の間の家計は苦しくなります。これを援助する制度が育児休業給付金です。
育児休業給付金を受け取れるのは、出産した本人はもちろんですが、育児の為に育休をとった夫にも受給資格があります。ただし雇用保険に加入していることが条件になります。
個人事業主やフリーランスの方は雇用保険に加入していないので受給できません。また出産のため退職した場合も育児休業給付金を受け取ることは出来ません。この場合は失業保険を受給することになります。
雇用保険から支給される
育児休業給付金は雇用保険から支給されるので、雇用保険に加入していることが条件になります。パート・アルバイトの方でも、週に20時間以上勤務などの一定の条件を満たせば加入できます。保険料も厚生年金や健康保険に比べてかなり安いので、もし入っていなければ雇用保険加入をおすすめします。会社に申請すれば手続きをしてくれるはずです。
育児休業給付金を受けられる条件
育児休業給付金を受けるには、どんな資格や条件が必要なのでしょう。育児休業給付金を受給するには、雇用保険加入の条件のほか、育休期間中や育休開始前の給与・賃金の条件、勤務日数や時間数の条件、出産した子供の年齢期限、正社員・パート・アルバイトの場合などさまざまな条件があります。これからその条件を詳しく説明して行きます。
雇用保険への加入条件
育児休業給付金を受けるには、雇用保険への加入していることが条件になっていますが、その雇用保険に加入する為にはどんな条件が必要なのでしょう。
65歳未満の会社に常時雇用されている従業員は、試用期間も含め雇用保険への加入が義務づけられています。つまり社員や正社員は自動的に加入していることになります。もし加入していなければ、会社が法令違反で罰則を受けることになります。
派遣社員やパート・アルバイトの場合は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上継続して雇用される見込みがあるときは、雇用保険に加入することが出来ます。雇用契約で期間が31日未満でも、雇用延長が決まった時点で条件を満たすことになるので加入が可能になります。
1歳未満の子供がいる
育児休業給付金を受給できる期限は、生まれた子供が満1歳になる誕生日の前日までです。つまり1歳未満の子供がいることが条件になります。
しかし子供が満1歳の受給期限を過ぎても、保育所が預かってくれる期間が限定されたり、保育所に空きがないなどの理由で、仕事に復帰できない場合があります。そのような場合には一定の条件を満たせば育児休業給付金の受給は最長で満2歳の誕生日前日まで期限延長が認められます。
育児休業期間中と休業開始前の賃金条件
育児休業期間中に会社に出勤して賃金などの支給を受けた場合、その賃金額が休業開始前の給与の80%以上ある場合は、育児休業給付金を受け取ることが出来ません。また13%以上の場合には支給額が少なくなります。
つまり育児休業期間中に会社から多額の賃金を貰っている場合は、育児休業給付金を受け取らなくても生活できると見なされ給付金が受給できないのです。この条件は正社員でもパート・アルバイトでも同じです。
育児休業期間中と就業日数の条件
育児休業給付金を受け取るには、育児休業期間中の就業日数にも条件があります。育休期間中に出社して働いた場合、就業日数が1ヶ月に10日以内または80時間を超えてはならないという条件があります。この条件をクリアしないと育児休業給付金を受け取ることが出来ません。もちろん、その就業によって得た賃金が休業開始前の80%を超えてはなりません。
育児前の2年間と就業日数の条件
育児休業前の2年の期限内の就業日数にも条件があります。育休開始前の2年の間に、賃金支払の基礎日数が1ヶ月間に11日以上ある月が12ヶ月以上あることが、育児休業給付金を受給できる条件になります。
要するに出勤日数が11日以上の月が、2年の期限内に連続していなくても、飛び飛びでも良いから12回あれば条件を満たすということです。
育児休業給付金を申請する前に、これらの様々な条件を良く確認し、自分の場合と照らし合わせてから申請することをおすすめします。
育児休業給付金の支給額や計算方法
育児休業給付金を申請すると、実際にはどのくらいの金額が貰えるのでしょう。育児休業前に会社から貰っていた給与に比べどのくらいの割合で支給されるのでしょう。育児休業給付金の支給額の計算方法や規定、計算例などを説明します。またお得な育児休業給付金の申請方法なども合わせて紹介します。
計算には支給額の規定に注意
規定では、育児休業給付金の支給額の算出は、原則として育児休業開始から6ヶ月間は賃金日額×支給日数の67%、6ヶ月経過後は賃金日額×支給日数の50%となっています。
ただし育児休業給付金の場合の1ヶ月は30日として計算するので、6ヶ月は180日にあたります。実際のカレンダーの6ヶ月とは数日ずれることを頭に入れておきましょう。
賃金日額とは事業主(会社)が公共職業安定所(ハローワーク)に提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」により算出した1日の賃金です。つまり育休開始前の6ヶ月の給料を180日で割った賃金の平均日額のことです。
また賃金日額×30日で算出した賃金月額が449,700円を超える場合は給付金を受け取れません。育児休業給付金の月額の上限は301,299円ということになります。
この規定は、ある程度高額な給与を貰っている人は、育児資金を準備する金銭的余裕があるので、育児休業給付金を支給する必要がないという国の方針なのでしょう。逆を言うと449,700円を超える給与の人は育児休業給付金が貰えないので、事前に預金等で準備をして置きなさいということでしょう。
育児休業給付金の支給額の計算方法
出産してから1週間経ってから、子供の満1歳誕生日の前日までの期限で育児休業を会社に申請した場合、休業期間最後の月の日数は出産した年や月にもよりますが、大抵の場合は約23日となり30日に満たなくなります。
基本的に育児休業給付金の月額支給額の計算方法は、賃金月額×規定%ですが、満1歳の誕生日をむかえる最終月だけは賃金日額×支給日数×規定%となり、日割り計算になります。
たとえば育児休業前6ヶ月の平均月収(賃金月額)が20万円で出産後1週間後から子供の満1歳誕生日前日までの期限で育児休業を申請した場合の例で計算してみましょう。
前半の180日の支給月額は20万円×67%、後半の5ヶ月の支給月額は20万円×50%、最終月の支給額は20万円÷30で算出した賃金日額6,666円×支給日数23日×50%となります。
実際に支給される金額は、前半の6ヶ月間は月額13万4千円、後半6ヶ月間は10万円×5ヶ月と最終月は76,659円となり、支給額の合計は138万659円となります。
仮に休業しないで働いた場合の給与は、20万円×12で240万円なので、1年間育休をした場合の育児休業給付金は育児休業前の給与総額の約57.5%が貰える計算になります。
お得な育児休業給付金の申請と計算方法
夫婦が共に働いている場合、育児休業給付金申請に「パパ・ママ育休プラス」というお得な制度があります。
育児休業給付金の給付期限は基本的に1年間で、育児休業給付金の支給額は前半の6ヶ月が休業前の給与の67%、後半6ヶ月が50%ですが、夫と妻が半年交代6ヶ月ずつ育児休業を申請すれば、1年間を通して育児休業前の給与の67%の育児休業給付金が受けとれ大変お得です。
「パパ・ママ育休プラス」の制度を利用すると育児休業を子供が満1歳2ヶ月未満まで期限延長することが出来、育児休業給付金を長く貰うことも出来ます。また育児休業を夫と妻の両方同時に取ることも出来ますが、色々と条件があるので良く確認してみて下さい。
支給額の計算例
妻に給与収入がなく、夫の月給が30万円、出産の翌日から夫が1年間の育児休業を申請した例で、育児休業給付金の支給額の計算をしてみましょう。
前半30万円×6ヶ月×67%=120万6千円、後半30万円×6ヶ月×50%=90万円で育児休業給付金の支給額の合計は210万6千円となります。
しかしこのケースでは、1年間の家計全体の収入が休業前より減ることになります。育児休業中に会社からある程度の給与保証がある場合は良いのですが、ない場合は休業期間などを調整するなり検討する必要があります。
夫婦共に働いていて妻の月給が20万円夫が30万円でのケースで、出産した妻だけが1年間の育児休業を申請した場合は、前半20万円×6ヶ月×67%=80万4千円、後半20万円×6ヶ月×50%=60万円、育児休業給付金の支給額の合計は140万4千円の計算になります。
妻と夫が半年ずつ交代で育児休業を申請した場合は、前半は妻20万円×6ヶ月×67%=80万4千円、後半は夫30万円×6ヶ月×67%=120万6千円、育児休業給付金の支給額の合計は201万円となり妻一人で育児休業を取った場合より60万6千円も多く給付金が貰えます。
「パパ・ママ育休プラス」の制度を上手に利用して休業期間をお互いに重ねたり、休業期間を1年2ヶ月の延長したりすればさらに多くの給付金を貰えます。夫婦で良く相談をして育児休業給付金を受け取りましょう。
育児休業給付金の支給日・期限
育児休業給付金を申請して何時になれば給付金が貰えるのか、どのくらいの期限まで貰うことが出来るのか、どこに申請すればいいのか、また申請は一度で済むのか、何度もしなければいけないのかなど不安な点や気になることも多いでしょう。これからその気になる点や不安を解消できるように解説して行きます。
育児休業給付金はいつ支給される?
育児休業給付金の申請は、育休開始後2ヶ月経ってから会社を通して手続きを行うことが多く、申請をして支給決定が出てから約1週間後に指定した金融機関の口座に振り込まれます。実際に給付金を受け取れるのは育休開始から3ヶ月後くらいが通例のようです。
原則は事業主(会社)が申請を行うのですが、必要な書類をそろえて自分でハローワークに申請手続きをすることも可能です。
その場合には給付金を受け取れる時期を早めることが出来るかも知れませんが、必要書類に不備がないことと、迅速に行うことが前提になります。
また初回申請のあと2ヶ月に1回の申請手続きが必要になります。2回目以降の申請をしないと初回以降の給付金が受け取れなくなるので注意して下さい。
給付金が貰える期間
給付金が貰える期間は、原則出産した子供の満1歳の誕生日前日までの約1年間ですが、「パパ・ママ育休プラス」制度を利用すれば1年2ヶ月まで期限延長することが出来ます。その他一定の条件を満たせば、最長2歳になるまで延長することが出来ます。その条件については、この後の「育児休業給付金を延長する場合の条件」の中で詳しく説明します。
育児休業給付金の申請に必要な書類
育児休業給付金を申請するには、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書と育児休業給付受給資格確認票、育児休業給付金支給申請書が必要になります。その書類がどういった手続きの為に必要な書類なのか、書類の内容や内容を証明するために必要になる書類も合わせて説明します。
受給資格確認のみを行う場合の必要書類
育児休業給付金を申請するためには、まず受給資格確認手続が必要です。受給資格確認手続をするためには雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書と育児休業給付受給資格確認票が必要になります。
この書類は事業主(会社)が作成するもので、育児休業予定者が雇用保険の被保険者であることの証明と休業開始時の賃金月額、また受給資格があることを証明する書類です。
この書類を会社が作成するためには、育児休業給付金を受給する本人が育休開始予定日、出産予定日などを少なくても1ヶ月前までに会社に伝えておく必要があります。また受給資格確認手続きには、母子健康手帳や出勤簿など提出書類の内容を証明できる書類も必要となります。
受給資格確認手続きと初回申請の必要書類
受給資格確認手続きのあとに、初回の給付金支給申請をするという流れになるのですが、同時に行うことも出来ます。その場合には受給資格確認手続き必要書類に加えて、育児休業給付金支給申請書が必要になります。
この書類は休業開始時賃金月額証明書に基づき計算した初回2ヶ月分の給付金額を申請する書類です。具体的な金額数字を記載した書類になります。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金の申請は雇用主(会社)が行うのが通例ですが、希望があれば本人が直接管轄のハローワークに申請することも出来ます。その場合も必要書類は会社が行うのと同じ書類を揃える必要があります。
個人でやるメリットは自分のスキルを高めるため、ヤッタ感を得るため、上手くやれば受給時期を会社が行うより早くできることです。
デメリットは書類作成の経験の浅い個人の場合、手続き書類に不備があり申請が通らなかったり、訂正を求められて無駄な時間を費やして結果的に会社が行うより遅くなってしまうことです。またネットでの電子申告も可能なので、申請方法は良く検討してから選んで下さい。
申請の流れ
育児休業給付金の申請は会社にお願いしても、自分個人でやった場合でも流れは全く同じです。まずは受給資格があるかどうかが大前提です。受給資格確認手続きが通れば給付金支給の資格が出来ます。
育児休業給付金支給申請書を提出し、支給決定が決まれば指定した金融機関に約1週間後に給付金が振込まれるという流れになります。つまり不備のない書類を作成することがスムーズに給付金を受け取れる方法なのです。
育児休業給付金を延長する場合の条件
育児休業給付金を延長する場合には、次に上げる条件のどれかに該当すれば、最長で子供が1歳6ヶ月までと2歳になるまでの2種類の延長が可能です。
その条件とは、1歳を過ぎても保育所の入所待ちなどで保育が受けられない場合、配偶者が死亡したり、けがや病気・精神上の障害などによって養育が困難になった場合、離婚などによって配偶者が子供と同居しなくなった場合、育児休業期間中に妊娠し6週間以内に出産予定日がある場合、または休業期間中に出産して8週間が経過していない場合などです。
従業員から延長希望を受けた場合の申請
「従業員から延長希望を受けた場合の申請」とは、相手の立場になって考えてみると申請に必要なもの、確認しなければならないことが見えてくるということです。
例えば従業員から保育所への入所待ちのため育児休業給付金受給の延長希望が出された場合、雇用主(会社)は、口頭ではなく市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書 などの書類で、その事実を確認しなければなりません。延長の理由が延長できる条件に当てはまるかどうか理由を証明できる書類が必要になるということです。
2人目以降の申請の対処法は?
育児休業給付金を受給する条件は、育休後に職場復帰するのが大前提です。2人目以降の場合、1人目の育休中に2人目を妊娠または出産するケースや、1人目の育休終了して職場復帰してから妊娠した場合などで対処法が変ってきます。
会社によっては2年〜3年の長期にわたる産休・育休は難しい場合もあります。いちど職場復帰しても働く時間をセーブして1人目の育休前の給与より減っているケースもあります。2人目以降も育児休業給付金を受給するには、事前に会社と良く相談をして対処法を考える必要があります。
2人以降の支給条件
2人目以降も1人目と育児休業給付金の条件に変わりはありません。変わりがあるのは支給を受ける側、本人の労働条件が1人目の場合と違っていれば支給額が変り、また支給の条件に合わなくなっているかも知れません。
1人目の育休期間中に妊娠・出産をして、その育休につなげて2人目の産休・育休を会社が認めてくれた場合は1人目と同じ条件で育児休業給付金が受け取れます。
しかし1人目の育休終了して労働時間をセーブして職場復帰したケースでは、労働時間や日数が雇用保険加入条件を満たしているかどうかがカギになります。
また賃金支払の基礎日数、月11日以上の出勤月が2年間に12回以上あるという受給資格条件を満たしていなければなりません。育休復帰後の働き方には注意が必要ということです。
2人目以降の支給額の計算方法
2人目以降の支給額の計算方法は1人目と全く変りません。1人目のときと労働条件や給与額が同じならば支給額の計算は全く同じです。復帰後の給与が変った場合は、2人目の育児休業に入る直前の6ヶ月の給与額をもとに計算されます。つまり復帰前より給与が増えていれば支給額も多くなり、減っていれば支給額は減少するということです。
申請前にもう一度受給資格条件を確認しよう!
育児休業給付金を受給できる資格や条件には、雇用保険の加入や育休前の出勤日数などの色々と条件があります。申請が却下されたりしないように、もう一度受給資格や条件を確認しましょう。
特に1人目の育休後に職場復帰をした場合などには、育休前と労働環境が変わり雇用保険加入の条件を満たしていない可能性もあります。また出勤日数等が受給条件に達していない事もあるので、会社と良く相談をして申請前に資格や条件を確認することが大切です。
子持ちの方は積極的に育児休業給付金を計算して申請しよう
育児をするためには育児休業を取って会社を休まなければなりません。その間の家計の負担を援助する制度が育児休業給付金です。これまで解説してきたことを参考にして、育児休業前に夫婦お互いの給付金の受け方などを積極的に計算をして、上手に育児休業給付金を申請し、家計の負担を減らせるよう育児に役立てて下さい。