住宅ローンの保証料とは何?
住宅を購入する際に住宅ローンを利用して金融機関から借り入れる方が多いですが、住宅ローンの契約をする際、場合によっては大きな金額が必要となる保証料というものがあります。
保証料とは一体何のためのお金で、どうして支払いが必要なのか、住宅ローンの保証料の仕組みについて解説します。また、保証料の支払いをしている場合は、繰り上げ返済を行うことで、保証料の一部が返還されますので、その仕組みについても説明します。
保証を受けるために保証会社に払うお金
住宅ローンにおける保証料は、もし住宅ローンの返済ができない状態になってしまった場合に、保証会社から借り入れた金融機関に対して、住宅ローン分の費用を支払ってもらいます。
住宅ローンにおける保証料とは、保証会社に対して、何らかの理由で住宅ローンの支払いが出来なくなった場合に、その支払いを保証してもらうための費用となります。ただし、保証会社が肩代わりしているだけで、住宅ローンの返済は、引き続き保証会社に対して行う必要があります。
住宅ローンの保証料の仕組み
まずは、住宅ローンの保証料が、どういった仕組みとなっているのかを解説します。先にも説明したとおり、住宅ローンの保証料は、保証会社に対する費用です。この保証会社というのは、住宅ローンを借り入れる際に、どのような役割を担っているのでしょうか。
以前は、住宅ローンのような数千万円単位のローンを組む場合、連帯保証人というものを設定して、住宅ローンの返済が滞ったり不可能となった場合、連帯保証人が住宅ローンの支払いを肩代わりしていました。しかし、連帯保証人も支払いが出来ないとなると、結局住宅ローンを融資した銀行は、貸し倒れとなってしまいます。
また、連帯保証人を頼めるような人物がいない場合は、そもそも住宅ローンを組むことが出来ず、住宅の購入をするために、現金で一括購入するしかなくなってしまいます。そのような状況を改善するために、保証会社という仕組みが誕生しました。
「機関保証」という仕組み
住宅ローンのような高額の借り入れを、個人ではなく機関に保証させようという仕組みが、住宅ローンにおける保証の仕組みです。これを機関保証と呼び、基本的には保証を業務内容としている法人が、機関保証の役割を担っています。
金融機関から住宅ローンを借り入れる際、多くの場合で「指定した保証会社の保証を受けること」が契約条件に記載されています。指定した保証会社に保証料の支払いをすることで、連帯保証人の役割を、保証会社に担ってもらうのです。
金融機関のローンの貸し倒れリスクを回避
金融機関にとっては、万が一、住宅ローンを借り入れた本人が返済できなくなった場合でも、保証会社が肩代わりして住宅ローンを返済してくれるため、貸し倒れのリスクが無くなります。
銀行が融資を回収できないということは、銀行に入るべき現金が減ることを意味しますので、銀行の破綻という最悪のシナリオに繋がりかねません。こういったリスクを回避するために、保証会社が金融機関と住宅ローンの契約者の間に入る仕組みとなっています。
保証会社が保証できる仕組み
続いて、なぜ保証会社が何千万円という住宅ローンを、数十万程度の保証料で保証できるのか、その仕組みについて説明します。全ての人が保証会社を頼らなければいけないわけではないため、保険と同様に、多くの人から集めた保証料で保証できるのでは、と考えるかもしれません。
実は、住宅ローンを組んで購入した物件の権利は、住宅ローンの返済が完了するまでの間、住宅ローンの契約者だけにあるのではなく、保証会社にもあるということを忘れてはいけません。
「抵当権設定登記」によって物件の権利を保証会社に設定している
抵当権設定登記とは、抵当権を持っているものが、住宅を競売にかけることができる権利のことです。住宅ローンの契約者が支払い困難となった場合、抵当権を持っている保証会社が、その物件を競売にかけることで、金融機関に対して肩代わりした費用を補填するのです。
もちろん、保証会社が所有者に何の落ち度もないのに競売にかけるといったことはできません。あくまで住宅ローンの返済が難しくなり、保証会社が住宅ローンを肩代わりしなければいけなくなった時にだけ、抵当権の権利を行使するのです。
住宅ローンの保証料の手数料
住宅ローンの諸経費の中で、金額の大きな保証料ですが、借り入れる金融機関によっては、保証料が0円であっても、事務手数料が保証料と同程度の支払いが必要となる場合もあります。まずは、保証料と事務手数料の違いについて解説します。
事務手数料は、住宅ローンを借り入れる場合に、借入先の金融機関に対して支払う手数料となります。保証料は、保証会社に保証してもらうための費用です。事務手数料は、保証料が必要な場合も支払いが必要になることがほとんどですが、保証料は保証会社に保証してもらわない場合は、当然不要となります。
一括で3~5万円払う方法
借入金額に関わらず、事務手数料の支払いが3万円から5万円ほどの固定となっている場合は、別途保証会社への保証料が必要になります。この形式は、都市銀行や地方銀行に多く見られます。金融機関はあくまで融資の手続きを行うだけですので、保証料が掛からない場合と比較すると、事務手数料が安くなっています。
融資額の1~2%を払う方法
これに対して、事務手数料の支払いが借入金額の1%から2%程度となっている場合があります。ネット銀行に良く見られるパターンで、保証会社への保証料は不要となります。ただし、保証会社が間に入らない分、返済が滞らないかの審査が厳しかったりしますし、保証料と事務手数料の合計が、事務手数料だけと変わらないケースも多くあります。
保証料が0円だからネット銀行にする、という選び方ではなく、保証料の支払いが必要な場合と、事務手数料のみの支払いの場合とで、必要となる金額を試算して選びましょう。保証料として支払う費用が、事務手数料と名前が変わっただけと解釈しても問題ありません。
いずれの場合でも、住宅を購入する際の他の諸経費や住宅ローンの頭金とは別に支払いが必要となります。仮に2500万円を借り入れて、事務手数料が2%である場合は、事務手数料だけで50万円の支払いが必要となりますので、注意しておきましょう。
保証料が掛からない場合は金融機関を「抵当権設定登記」する
保証料が掛からないということは、保証会社を介さずに住宅ローンを組むことになります。これでは、住宅ローンの返済が出来なくなった場合に、貸し倒れとなる可能性があります。
これを防ぐため、抵当権は保証会社ではなく金融機関に設定して、保証会社の場合と同様、金融機関が物件の競売などを行えるようにしています。住宅ローンの返済が出来なくなった場合は、競売などによって残債分をできるだけ回収できるようにしておくことで、銀行にとって少しでもダメージが少なくなるような保険を掛けています。
住宅ローンの保証料の節約方法
住宅ローンを借り入れる諸経費の中で大きな割合を占める保証料ですが、節約する方法はあるのでしょうか。注意すべき点は、保証料だけで見るのではなく、事務手数料と保証料の合計で比較することが重要です。ここでは、事務手数料が都市銀行などと比較して安い、ネット銀行を例に挙げて説明します。
ネット銀行の住宅ローンを利用する
ネット銀行は、保証料を設定せず、事務手数料のみの支払いとしているところが多くあります。金融機関の多くは、保証料が不要な場合の住宅ローンの事務手数料を2%に設定していますが、ネット銀行はこれよりも安いところがあります。
事務手数料が2%の場合は、保証料を支払う場合と大きな差がなくとも、もし事務手数料が2%よりも安ければ、保証料を支払うよりも、諸経費を節約できることになります。
ネット銀行は手数料が安め
ネット銀行では、事務手数料を1%に設定しているところもあるため、先程の例で行くと、2500万円を借り入れた場合、事務手数料は半額の25万円で済みます。たかが1%ですが、金額が大きいため、節約効果も大きくなります。
このように、保証料と事務手数料の料率をよく確認して借り入れる金融機関を選ばないと、何十万円という単位で損をしてしまう可能性があります。
大きな金額の買い物をする場合は、どうしても金銭感覚が麻痺してしまい、普段はしないような判断をしてしまいます。冷静に考えれば、数十万円も節約できるなら必ずそうしますので、面倒くさからずに、複数の金融機関で借り入れる場合を比較、検討しましょう。
住宅ローンの保証料の支払い方法
先の例では、保証料を借り入れ時に一括で支払う場合を取り上げましたが、この方法は「一括・外枠方式」と呼ばれます。これに対して、借り入れ時に一括ではなく、住宅ローンの返済と合わせて保証料を支払っていく「分割・内枠方式」と呼ばれる方法があります。
それぞれの方法でメリット・デメリットがありますので、保証料の支払いが必要な場合は、どちらが自分にとって合っているかをよく考えてから決めるようにしてください。
【支払い方法①】一括・外枠方式
まずは一括・外枠方式の仕組みについて説明します。先の例で挙げた通り、借入金額と期間に応じた保証料を、住宅ローンの借り入れ時に一括で支払います。住宅ローンの返済とは別で支払うことから、外枠という名前が付いています。それでは、一括・外枠方式のメリット・デメリットを見ていきましょう。
利息組み込み型よりも安くなる総支払い額
次で述べる利息組み込み型(分割・内枠方式)と比較すると、保証料を含めた総支払い額は、一括・外枠方式のほうが安くなることがほとんどです。この仕組みは、何十年も支払うよりも、一括で支払ってしまったほうが安くあがるのと同じ仕組みです。
住宅ローンの返済では、月々いくらの支払いになるのか、よりも、住宅ローンの返済が完了する時点で、総額いくらの支払いが必要になるのか、で比較するようにしましょう。
繰り上げ返済で保険料の一部が返還される
一括・外枠方式で保証料を支払った後、繰り上げ返済をして借入期間を短縮すると、保証が必要であった期間分の保証料の返還を受けることができます。初めから住宅ローンの繰り上げ返済を検討している人には、保証料の返還を含めて考えると良いでしょう。
ただし、繰り上げ返済によって短縮された期間の保証料が全て返還されるとは限らず、返還時の手数料などを差し引くと、思ったよりも返還されないといったこともあります。保証料の返還まで視野に入れる場合は、借り入れ時にあらかじめ、返還に関する疑問は解決しておきましょう。
ちなみに、住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みやメリット・デメリットについて、別の記事でまとめています。章末にリンクを載せていますので、そちらも参考にしてください。
契約時に諸経費が必要
一括・外枠方式では、借り入れ時に保証料を支払う必要がありますので、その分を現金で用意しなければいけません。住宅ローンの頭金や引っ越し、家具の購入などで何かと物入りなタイミングで、数十万円のまとまった費用を支払わなければいけないということは、頭に入れておいてください。
【支払い方法②】分割・内枠方式
続いて、分割・内枠方式です。一括・外枠方式と違い、保証料を借り入れ時に一括で払うのではなく、住宅ローンの返済と同様、毎月の支払いに保証料分を上乗せして支払っていく仕組みとなります。
通常、上乗せ分は借入金利に対して、プラス○○%という形で表現されます。現在は0.2%が一般的となっています。例えば、金利1.8%で住宅ローンを借り入れる人が、保証料を分割・内枠方式にする場合、借入金利が2.0%に増えてしまうということです。
頭金が少なくなる
分割・内枠方式で保証料を支払う場合、一括・外枠方式と比較して、借り入れ時に支払う諸経費を安く済ませることが可能です。その浮いた分でローンの頭金を増やせば、借入金額を圧縮することができ、総支払い額を減らすことが可能です。
ただし、保証料は毎月の支払いに上乗せする形で支払っていますので、仮に途中で繰り上げ返済をして借入期間を短縮したとしても、一括・外枠方式では短縮された期間分の保証料が返還されましたが、分割・内枠方式では返還されませんので注意してください。
しかしながら、保証料の返還は、短縮した期間分に応じた分が、そのまま返還されるわけではありません。多くの場合は少ない金額の返還となります。早い段階から繰り上げ返済を考えている場合は、分割・内枠方式のほうが保証料として支払う金額が少なくなるケースもあります。
一括払いと比べて総支払額が多くなる
デメリットとしては、保証料として支払う合計金額が、一括・外枠方式と比較すると多く支払う必要があるということです。最初に一括で支払うよりも、時間を掛けて少しずつ支払うほうが、より多くの費用を支払うことになる仕組みです。
しかし、分割・内枠方式とすることで頭金を増やせば、保証料分の増額よりも、総支払い額の減額分が多くなり、かえって総支払い額が少なくなることもあります。
どちらのほうが総支払い額が少なくなるのか、金融機関のサイトなどでシミュレーションできますので、これらを活用して試算するようにしましょう。
住宅ローンの保証料が決まる3つの要素
ここまで、保証料の仕組みと方式について解説しました。続いて、住宅ローンの保証料がどのように決定されるのかについて説明します。
とはいえ、住宅ローンの条件(借入金額、金利、期間)は人によって大きく異なりますので、一概に保証料はこの金額となる、ということは言えません。ここでは、あくまで保証料を決める要素について説明します。
保証料は3つの要素で決まる
住宅ローンの保証料は、各金融期間が独自に決めています。他の金融機関とかけ離れて高い場合、その金融機関から住宅ローンを借り入れる人がいなくなってしまいますので、基本的には相場が決まっています。
また、ネット銀行に多く見られる保証料0円で事務手数料のみの場合と比べて、保証料を含めた総支払い額が高い場合も、借り入れる人がいなくなってしまいますので、事務手数料のみの場合と大きな差は無いようになっています。
保証料を決める3つの要素は、借入金額、返済期間、金融機関ですが、相場としては3000万円を35年間借り入れる場合で、60万円から100万円程度と考えておきましょう。保証料に幅があるのは、借り入れる人の属性(年収、経歴、信用情報など)によって大きく変わるためです。
借入金額
保証料を決める最初の要素は、住宅ローンの借入金額です。この金額が大きければ大きいほど、保証料は高くなります。保証料を節約するためには、この借入金額をいかに減らすかを考えるようにしましょう。
親などから援助が受けられる場合は頭金を多く出すことが出来ますし、分割・内枠方式にして少しでも頭金を捻出するといったことも考えられます。また、住宅を購入するタイミングで家具などを一気に揃えるのではなく、後から徐々に準備することで、最初に一括で用意する場合の資金の一部を頭金に回すこともできます。
返済期間
続いての要素は、返済期間です。当然ですが、返済期間が長ければ長いほど、必要となる保証料も多くなります。また、分割・内枠方式とする場合は、長い返済期間の分だけ上乗せされた金利で住宅ローンを返済することになりますので、一括・外枠方式との総支払い額の差が大きくなりやすいです。
ただし、返済期間を短くすると、月々の支払い額が多くなってしまうため、あくまで無理のない返済ができる金額に収まるよう、返済期間を設定しましょう。
金融機関
最後の要素は金融機関です。金融機関によって、借り入れる人の属性のどこに重点を置くかが違いますので、同じ人が同じ借入金額、返済期間で住宅ローンを組もうとしても、金融機関によって保証料に違いが出てきます。
ただし、先にも述べたように、他と比べて特に高い保証料を設定してしまうと、その金融機関から借り入れる人がいなくなってしまいます。金融機関によって差ができるといっても、何か特別な事情がない限り、そこまで大きな金額差にはならないと思っていて問題ありません。
住宅ローンが払えなくなったとしたら?
では最後に、住宅ローンの返済ができなくなった場合、保証会社と金融機関、そして住宅ローンの借り入れ者がどのような立場となるのかを見ていきましょう。
住宅ローンが順調に返済できている間は、保証会社は登場しませんが、住宅ローンの返済が滞ってしまった時に初めて、保証会社が住宅ローン返済の流れの中に登場します。
保証会社が金融機関に支払う
住宅ローンの借り入れ者が、何らかの事情によって返済出来なくなってしまった場合、金融機関は保証会社に対して、残りの住宅ローン残債の取り立てを依頼します。
保証会社はこの取り立て依頼に対して、残りの住宅ローン残債分を、肩代わりして一括支払いします。この時点で金融機関に対する借り入れは0円となりますが、それで終わりではありません。
保証会社から請求が来ることになる
保証会社は、肩代わりした分の住宅ローンについて、引き続き住宅ローンの借り入れ者に返済を要求します。住宅ローンの借り入れ者からすれば、返済する先が変わるだけで、住宅ローンの返済については同じままです。住宅ローンの残債が0円になるわけではありませんので、注意しましょう。
もし、保証会社への住宅ローン返済も出来ないような状況となってしまえば、保証会社は設定されている抵当権を行使して、土地や建物を競売にかけ、肩代わりした住宅ローン分を少しでも取り戻そうとします。
事前の住宅ローンの保証料を確認しよう!
住宅ローンの保証料について、仕組みや支払い方法の違い、返還される場合について解説しました。保証料や事務手数料は、それ自体が金融機関の保険の役割を担っているため、大きく節約することは難しい項目になります。
とはいえ、借り入れる金融機関や保証料の支払い方法などによって節約することは可能です。保証料型と手数料型、それぞれ複数の金融機関でシミュレーションを行って、総支払い額が安く済むところを探すようにしましょう。