一級建築士は難易度が高いってほんと?
自分の設計した建物が地図にのったり何十年も存在し続けることに意義を感じたり、建築物を見て感銘を受けたり、自分でデザインしたりモノ造りが好きという人は建築士になりたいと憧れる人も多い職業です。そんな建築士になるためには、どのような方法があるのでしょうか。
建築士の仕事をするために必要な資格は、大きく分けると木造構築士・二級建築士・一級建築士の3種類があります。二級建築士や木造構築士は建築学科のある短大を卒業すれば、実務経験なしで受験資格を得ることができます。
建築士の仕事に必要な資格は全て国家資格なので簡単ではありません。合格率の平均は木造構築士が34%、二級建築士が23%となりますが、一級建築士はその上をいく難易度となります。
一級建築士ってどんな資格?
建築士とは建築物の設計および工事管理を行う職業の資格ですが、二級建築士と木造構築士の資格は各都道府県知事が交付し、一級建築士の資格は国土交通大臣が免許を交付します。この点を見ても一級建築士の方がより大きな権利を与えられていることが窺えます。
一級建築士の試験は二級に比べてより幅広い専門知識を必要とするため試験の難易度も高く合格率も低くなっており、一級建築士の資格取得には膨大な勉強時間が必要となります。
二級建築士の資格では設計できる規模と構造に制限があります。簡単に言うと戸建住宅規模が対象です。木造建築の場合3階建てまでが基本となり、建物高さ13m以上軒高9m以上・延べ面積1,000㎡以上の建築物設計は認められませんが、一級建築士は設計する建物に制限はありません。
このように一級建築士と二級建築士の資格には登録する機関や設計する建物の大きさなどに違いがあり、受験資格においても実務経験の有無などの違いが見られます。これらの点においても一級建築士の資格は、より高度な知識が求められる難易度の高い資格だということが分かります。
一級建築士の仕事内容
建築士の仕事の内容は設計と工事管理ですが、一級建築士の場合は二級建築士・木造構築士と違い設計・工事管理する建築物に制限がないので、鉄筋コンクリートや鉄骨造の延べ面積300㎡を超える建築物でも業務範囲となります。
一級建築士の仕事内容として戸建住宅はもちろん、高層ビルから大規模な建築物も取り扱うことが可能です。そのため一級建築士には豊富な経験や高いスキルが求められるのです。
一級建築士は設計事務所でデザイン性の高い建築物を設計したり、大規模商業施設や大型プロジェクトに参加したりします。ゼネコンで大規模構築物の設計・施工業務を請け負ったり、ゼネコンに発注する立場のディベロッパーで設計だけでなく工事管理の面でも重要な役割を果たします。
またハウスメーカーでアパートやマンションなどを扱ったり、官公庁や地域密着型の工務店など一級建築士の仕事内容は多岐に渡っています。
一級建築士にしかできないこと
一級建築士は規模・構造形式・構造材料共に何でも設計可能なので大規模な設計・建築に携わることができますが、一級建築士にしかできないこととは具体的にはどんなことなのでしょう。
鉄筋コンクリート・鉄骨造・石造・無筋コンクリート造・コンクリートブロック造・レン瓦造、かつ延べ床面積300㎡、高さが13mもしくは軒の高さが9m以上ある建造物。木造の高さが13mもしくは軒の高さが9m以上ある建造物。延べ床面積が1,000㎡を超える2階以上の建造物。
学校・病院・劇場・公会堂・集会場・百貨店など延べ床面積が500㎡以上などの大規模な建造物は、一級建築士にしか取り扱うことができません。また大規模な商業施設・学校などのほか国立競技場など国規模の建造物も一級建築士にしか携わることができないのです。
一級建築士の難易度
ここまでにも一級建築士は豊富な知識と高度なスキルを求められる資格だとお話してきましたが、これから試験を受けようと思っている方は合格率を上げるためにも一級建築士の難易度を知ることが大切です。難易度を知ることで、勉強の仕方や時間を組む参考にしてください。
合格率が1割
一級建築士の学科試験は毎年25,000人~26,000人が受験していますが、合格者はそのうちの約1割で合格率は非常に低く難易度の高い試験だということが分かります。合格率が1割と聞くと不安になってしまうかもしれませんが、数字に捉われず自分がどこまで頑張れるかが肝心です。
一級建築士の試験は難易度が高いものと理解したうえで、どんな対策をしていけば良いのか・自分にはどのくらいの勉強時間が必要なのかを明確にしていくことが合格率を上げるポイントです。
一次試験から高難易度
一級建築士試験は学科試験と設計図試験の二つに分けて行われ、学科試験に合格した人だけが設計製図試験を受けることが可能であり、学科試験に合格すれば3回製図試験を受けることができる仕組みとなっています。この時、学科試験は免除となります。
一次試験である学科試験の合格率は約18%、製図試験の合格率は40%となっています。ここでわかるのは一次試験から難易度が高いということです。学科試験を通れば製図試験では4割と合格率は上がってくることからも一次試験の難易度が分かります。
1回で取れる人はまれ
一級建築士の試験は難易度の高い試験だと分かっていても、学科・製図ともに年に1度しか受験できないので一発で合格したいと思う人も多いのではないでしょうか。しかし、何度もお話しているとおり一級建築士は難易度の高い資格なので、残念ながらそう簡単にはいきません。
1回で受かる人はまれなので結果が不合格だったとしても諦めない事が大切です。難易度の高い一級建築士の試験に合格するのに一番重要なことは、諦めずに継続して勉強すること。分かっていても難しいことですが、必ず合格できるという強い意志を持って勉強を続けていきましょう。
一級建築士試験の難易度の推移
一級建築士全体の合格率を年度別に見てみると、平成25年が12.7%・26年が12.6%・27年が12.4%・28年が12.0%・29年が10.8%と推移しています。平成25年~29年5年間の平均合格率は12.1%となり、どの年をみても難易度は高いということが分かります。
試験の難易度は上がっている
一級建築士試験の合格点は毎年変動し、125点満点中何点以上正解かで合否が決定します。以前は100点満点中60~70点取れば合格水準でしたが、現在は125点満点中90点以上取る必要があります。正答率は60~70%から最低でも72%へと試験の難易度は上がっています。
また50~60代の一級建築士の資格を持った人に話を聞いてみると「自分たちの頃より出題範囲が広がった」「選択問題が5択から4択に減って難しくなった」などの意見もあるので、やはり一級建築士の試験の難易度は上がっていると言えます。
合格率は横這い
上記の項で試験の難易度は上がっているとご説明しましたが、合格率自体はここ数年横這いという状況が続いています。難易度は上がっているのに合格率が横這いということは、受験者のレベルが上がっているということです。
ちなみに令和2年からの改正試験では一級建築士の受験資格は大きく変わります。受験時に必要だった実務経験が撤廃されます。但し免許登録時には所定の実務経験が必要となります。また学科試験免除の仕組みが見直され、毎年受験する必要がなくなり勉強時間が長めに確保できそうです。
このような受験資格の緩和により学生のうちから一級建築士の資格試験を受けることが出来るようになるなど、これから建築士試験を取り巻く状況は変化していくかもしれません。
難易度が高い一級建築士試験の勉強方法
難易度の高い一級建築士試験の勉強方法とは具体的にどんなものなのでしょうか。勉強を始める時期・学科試験に力を入れた方が良い理由のほか、一級建築士の試験に合格するために一番大切なモチベーションを維持するための時間の管理について説明していきましょう。
6カ月前から勉強を始める人が多い
一級建築士の試験勉強を始めるにあたり主な時期として上げられるのは、3カ月前・半年前・1年前となるようです。最短でも3ヶ月は必要であると言われていますが、それでもギリギリの知識しか得られず例え合格したとしても後で自分が苦しむことになる場合も多いようです。
やはり難易度の高い一級建築士の資格をとるためには、なるべく多くの勉強時間を確保したいもの。長すぎてもモチベーションが維持できないことも考慮して、半年間という時期を設定し6カ月前から勉強を始める人が多いと言われています。
まずは学科試験に力を入れよう
先程もご説明したように一級建築士の学科試験の合格率は10%台と一次試験をパスするだけでも至難の業なので、まずは学科試験を突破できるように力を入れて勉強しましょう。
一級建築士の試験は学科の試験が7月に製図の試験が10月に実施されますが、製図の試験は試験日の約3カ月前に試験課題が発表されるので対策もしやすいこともあるので学科試験に時間を多く取って勉強を進めていくことが重要になります。
また学科試験をパスすれば、もし製図試験が不合格になってしまっても向こう2年間は学科の試験は免除され次の年は製図試験に集中できるので、一級建築士の合格率を上げるような中身の濃い勉強ができるのです。
毎日勉強時間を確保しよう
一級建築士の試験合格に必要な勉強時間は全くの初学者なのか実務経験を積んだ人を想定するかによって大きく変わりますが、難易度の高い試験なので勉強時間を多く確保する必要があります。
勉強時間の目安としては実務経験者やある程度知識のある方でも800~1000時間、初学者の場合であれば900~1300時間と考えられています。一級建築士の試験合格に必要な時間を900時間と設定した場合、半年間勉強する期間があるとすると1ヶ月で150時間となります。
1週間だと約37時間の勉強時間が必要となり、単純に1日あたりの勉強時間を計算すると約5時間です。毎日5時間の勉強時間を確保するのは大変なことですが、一級建築士の試験に合格するためには休日に勉強時間を増やすなどして、とにかく毎日勉強を継続していくことが重要です。
時間配分を考える
一級建築士の試験勉強の工程表を作って時間配分を考えるのも有効な方法です。仕事をしながら試験勉強をしている方が多いはずなので、仕事が比較的暇な時期に勉強量を増やしたり通勤途中の電車の中、昼休みなどのスキマ時間を利用することも大事です。
一級建築士の試験に合格した方のなかには、平日は3時間、休日は8時間勉強すると決めて、そのノルマが達成できればお酒や遊びでリフレッシュしていたという方もいて、このくらい柔軟性のある考え方を持つ方が勉強も長続きするのかもしれません。
自分なりの時間配分を考え、スケジュールをうまく管理し一級建築士の試験に合格するため勉強時間を確保していきましょう。
睡眠時間を削りすぎないようにしよう
一級建築士のような難易度の高い試験を受ける場合、勉強時間も多めに確保しなければならないため睡眠時間を削ってしまう方も多いかもしれません。
しかし睡眠時間を削り過ぎてしまうと、まず業務に支障が出てしまいます。生活の基盤である仕事がおろそかになってはいけません。また、新しい知識の記憶は睡眠によって定着するという考えもあるので、睡眠時間は削り過ぎず少なくとも5~6時間はきちんと眠るようにしましょう。
一級建築士の試験対策としてできること
難易度の高い一級建築士の資格に合格するためには、試験対策として出来ることは何でもしておきたいもの。試験対策ノウハウを得るために予備校に行くことと、少しでも時間を節約するためにスマホアプリを使うことをおすすめしたいので詳しく見ていきましょう。
予備校に通う
先にも勉強方法をご説明する際に毎日勉強を続け、勉強する時間を確保することが大事だとお伝えしました。そこでおすすめしたいのは予備校に通うことです。仕事があり、また家族がいる場合もあるなかで毎日の勉強時間を確保するのは難しいものです。
予備校に通うことで強制的に時間を確保し、勉強するという環境も手に入れることができます。予備校に通うことで机に向かう癖をつけ、自分なりの勉強方法の確立を目指していきましょう。
そして予備校では講師から助言を受けたり、一級建築士に合格するためのテクニックを教わることで膨大な勉強時間の効率化を図ることが出来るのです。こちらでは3つの予備校をご紹介しますので、資料請求などもしたうえで自分にぴったり合う予備校を選んでみてください。
合格率を上げる予備校①日建学院
建築士業界のなかでも知らない人はいない一級建築士予備校の老舗です。全国に多くの学校を持ち認知力・ブランド力ともにトップの予備校。古くからある歴史の長い予備校であり、特に地方都市においては日建学院しかないというほど絶大な力を持っています。
日建学院の学科講座スタイルは動画、製図講座スタイルはライブの授業となっています。学科講座の費用は税別650,000円、製図講座の費用は税別450,000円あわせて税抜1,100,000円。
日建学院の第一の特徴は、絵を中心に説明するクオリティと学習効果の高い映像講義。建築関係の情報誌を提供する出版会社が独自のノウハウを使ったオリジナルテキストも特徴のひとつ。そしてパーソナルアドバイザーがメンタル面までフォローしてくれるサポート体制も完備されています。
合格率を上げる予備校②総合資格学院
首都圏の建築関係の方々が多く通っているのが総合資格学院です。最近では地方都市でも学校数が増え、一級建築士の資格取得の予備校として勢力を増やしています。
学科・製図共に講座スタイルはライブの授業となっています。学科講座の費用は税別735,000円、製図講座の費用は税別480,000円あわせて税抜1,215,000円と費用は高めになっていますが、全ての講座を講師による生の授業形式をとっているための人件費と考えられるでしょう。
平成29年においては学科・製図、全国ストレート合格者の70.7%が総合資格学院の受講者であり、県ごとの統計を見てみると山梨県や佐賀県はストレート合格者2~4名中100%という独占状態です。このように具体的な数字を出してくるほど合格率には自信を持っている点が特徴です。
合格率を上げる予備校③TAC
一級建築士の資格を取るために通う予備校といえば、いままでは日建学院と総合資格学院の2択という状況でしたが、資格学校としては大手でありコスパの良いTACも食い込んできています。
TACの学科講座スタイルは動画とライブから選べ、製図講座スタイルはライブの授業となっています。学科と製図講座合計の費用は税別で約662,000円となっており、総合学院資格の約半分、日建学院に比べても2/3程度の費用とコスパの面では大変お得になっています。
TACは販促費・設備費・広告費などの営業関連のコストを下げていることも受講料のコスパの良さに繋がっています。大手の安心感・サービスの良さに重きを置くかコスパの良さを取るのか、自分の考え方やライフスタイルに合った一級建築士試験対策の予備校を探してみて下さい。
スキマ時間にアプリ学習する
難易度の高い一級建築士の試験に合格するために、スキマ時間にアプリで学習するのもおすすめの対策です。無料のものから有料のものまで種類も様々。
通勤時間や寝る前のちょっとした時間に勉強するのに大変役立ちます。片手でスマホを持ち過去問を5問~10問解くことを習慣にしていけば、知らない間に実力がついていくこと間違いなしです。
一級建築士資格取得におすすめのテキスト・問題集
一級建築士の合格率を上げるためにテキストや問題集は必須で、テキストを読んで理解することが重要です。しかしテキストを読み込んで理解できたと思っていても、実際に問題を解いてみると理解できていないことが浮き彫りになります。
勉強をするにはインプットとアウトプットの割合が3:7であることが良いと言われているので、テキスト3、問題集7で一級建築士の勉強を進めていくと効率的です。こちらではおすすめのテキスト・問題集をご紹介していきます。
一級建築士学科過去問スーパー7
一級建築士の合格率を上げるのに、おすすめな市販の問題集は総合資格のスーパー7です。日建学院のチャレンジ7も良いですが、持ち運びに優れているのはスーパー7。両方の問題集に共通しているのは解説が充実しているところです。
問題を解いた後に解説をチェックした時、解説が少ないと意味が分からず丸暗記する事になってしまいますが、こちらは解説が充実しているので似たような問題が出た時に対応可能になります。
そしてもう一つおすすめなのは、過去の過去問題集を入手するということ。最新の過去問題集で7年前までの設問が手に入るので、友人や古書店にあたって過去の過去問題集を探して入手できれば大きな安心感に繋がります。
法規のウラ指導
過去問題集の次に手に入れたいのは最新の法令集です。法規のウラ指導は一級建築士試験受験対策として有名な教材です。法規のウラ指導とは法規の過去問題が1肢ずつ解説と法令集への線引き部分の指示とともに分野別にまとめられた本です。
こちらの本の良い点は問題を解きながら解説を読んで、それと一緒に解いた問題部分の線引きもできるので、ただひたすら線を引くという無駄な時間が無くなり一級建築士の合格率をあげるために効率的な勉強ができるのです。
また、こちらの本は解説が詳しいという特徴もあります。特に建ぺい率・容積率・建物高さ等の計算が絡む問題についてはかなりのページ数がさかれ、解き方の過程が丁寧に解説されています。
スピード学習帳
建築知識のスピード学習帳はテキストがコンパクトにまとまっていて無駄がなく、頻出問題がセットになっているところが特徴です。解いて分からなかった問題をすぐにテキストで確認できるメリットがあるのです。
一級建築士の試験であまり出ることのない知識を覚えることがなく時短になります。また覚えるべき最小限の知識がまとめられているので、ある程度の網羅的な勉強ができるのがポイントです。
ポイント整理と確認問題
計画、環境・設備、法規、構造、施工の5科目が1冊にまとめられ要点が整理されています。各項の最後に例題が用意されていますので、必ず取り組み問題に慣れておくことが重要です。この1冊を全て理解し覚えておけば合格率が上がることは間違いなしです。
一級建築士は高難易度!対策を忘れずに
ここまでお話してきたように一級建築士の試験は高難易度なので、できる限りの対策は忘れずにしっかりやっておきたいものです。
一級建築士の試験の難易度は上がっていて合格率は一割程度なので、1回で受かる人の方がまれです。たとえ一度で合格できなくても諦めずに、勉強を続けていくことが大切。それには毎日の勉強時間を確保して、モチベーションを下げないようコントロールすることも重要となります。
自分にあった予備校を選び効率よく勉強をすすめ、合格率を上げる問題集を入手して数多くの問題をこなすことも大事。ぜひこちらの記事を参考に、建設業界の中で最難関資格である一級建築士の資格取得に挑戦してみて下さい。