みなし残業代(固定残業代)とは?仕組みや注意点についても詳しく解説!

みなし残業代(固定残業代)とは?仕組みや注意点についても詳しく解説!

みなし残業・固定残業代は、想定される時間外労働や深夜業、休日労働にかかる割増賃金をあらかじめ支給するものであり、正しく活用すれば非常にメリットの大きい制度です。そこで、みなし残業・固定残業代の仕組みや注意点についても詳しく解説します。

記事の目次

  1. 1.みなし残業・固定残業代とは
  2. 2.みなし残業・固定残業代の2つの種類
  3. 3.みなし残業・固定残業代の適法条件
  4. 4.みなし残業・固定残業代の仕組み
  5. 5.みなし残業・固定残業代のメリット
  6. 6.みなし残業・固定残業代のデメリット
  7. 7.みなし残業・固定残業代廃止の会社も増える理由
  8. 8.みなし残業・固定残業代の問題点への対処法
  9. 9.みなし残業・固定残業代の超過分請求方法
  10. 10.みなし残業・固定残業代を成功させるためのポイント
  11. 11.みなし残業代とは給与に残業代を含ませておくこと

みなし残業・固定残業代とは

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政府主導の「働き方改革」が議論される中で、様々な雇用形態や賃金制度が導入されています。そういった状況下で「みなし残業・固定残業代」は、あらかじめ給与に含まれて支給される残業代として、多くの会社から注目を集めています。そこで、今後多くの会社で導入が予想されている「みなし残業・固定残業代」について解説します。

実際に残業していなくても支払われる手当

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みなし残業・固定残業代とは、あらかじめ、予想される繁忙要素によって、一定の残業代が給与として支給される制度です。例えば、月15時間の残業が見込まれる場合、実際の労働時間に関わらず、給与に15時間分の割増賃金が含まれて支給されます。

もちろん、実際の労働時間が15時間未満であっても、その分の給与を返納する必要はありません。反対に15時間を超えて労働した場合は、上限超過分に対する割増賃金が給与とともに支払われます。ちなみに、「みなし残業代」は正式名称ではなく、法律的には「固定残業代」「定額残業代」が正しい言葉となります。

みなし残業・固定残業代の2つの種類

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みなし残業・固定残業代には「事業内労働」と「裁量労働制」の2種類があります。そもそも事業場の責任者は、厚生労働省の作成したガイドラインにより、そこで働く労働者の始終業時刻を正確に把握する義務を負っています。

ところが、職種や業務内容によって労働時間が把握し難い場合や、残業代を含めた給与計算が複雑になる場合があります。そこで、これらの課題をクリアするため、みなし残業・固定残業代には職種や業務内容によって2つの種類があるのです。

①事業所内労働

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営業職など、一日の大半を社外において過ごし、業務を遂行する職種では、事業場の責任者が個々の社員の労働時間を正確に把握することは極めて困難です。そのため、事業所内労働にかかる時間は従来どおり責任者が管理し、事業所外労働にあたる部分だけ、みなし残業・固定残業代を導入することができます。

②裁量労働制

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裁量労働制は、情報処理システムの分析や新商品の開発など、高度なスキルや経験を必要とする業務や経営企画に関する業務に導入できるものです。これらの職種は業務の波動性が大きく、事業場の責任者がその進行状況を把握するのが困難です。

そのため、労働時間を固定するよりも、労働者にその裁量を与えた方が効率的に業務を遂行できることから、みなし残業・固定残業代が適しているのです。なお、裁量労働制は、適用する職種によって2つの種類があります。

専門業務型

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専門業務型とは、高い専門性や経験を要する業務に限られた裁量労働制です。具体的には、労働基準法によって、公認会計士や弁護士、建築士など19の業務に限られています。また、対象となる業務、みなし労働時間などは、従業員の過半数を占める労働組合もしくは社員を代表する者と労使協定を締結し、就業規則に明記しなければなりません。

企画業務型

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企画業務型とは、企画・立案・調査・分析など、会社経営に深く関わる業務を対象とした裁量労働制です。これらの業務は、会社経営によって非常に重要であり、その業務の波動性も大きいため、事業場の責任者が勤務時間を把握することが困難です。

ただし、適用できるのは、本社の営業企画部門であること、大学卒業後5年以上の経験を有する者に限られます。さらに、会社側は労使委員会において承認を得る必要があり、その決議された日から起算して6カ月以内ごとに、労働基準監督署へ定期報告を行わなければなりません。

みなし残業・固定残業代の適法条件

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みなし残業・固定残業代を導入する際には、会社側において、そのルールを明確にしておかないと「長時間労働の温床になる」「不払い残業代が発生する」「基本給が不明確になる」といった問題を引き起こしかねません。

また、労働者においては、運用ルールや基本給とみなし残業・固定残業代の区別が明確になることで、安心して働くことができます。そのため、みなし残業・固定残業代では労働者の不利益とならないよう適法条件を明確にしています。

①基本給・残業代が明確に区別している

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みなし残業・固定残業代を導入する場合には「基本給」と「残業代」を明確に区別しなければなりません。というのも、あらかじめ定められた、みなし残業代については、実働時間が下回っても給与を返納する必要はありませんが、上限超過分は残業代として支払われなければなりません。

みなし時間が適正であるかチェックする

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みなし時間に求められる業務量が、適切であるかは、非常に大きな問題です。そのため、適正であるか否かを判断する際、基本給と残業代を区別しておくと便利です。さらに、みなし残業・固定残業代を適切に運用させるには、給与の総支給額だけでなく、基本給が適正な金額であるかをチェックしておくことも大切です。

②みなし残業が労働者に明示されている

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みなし残業・固定残業代の支給については、労働条件の一つですから、雇用の際に交わす労働契約もしくは就業規則に明記し、社員がいつでも確認できるよう明示しておく必要があります。また、新たに導入するさいには、特に基本給と残業代の区別や、制度の運営方法を社員に丁寧に周知することが大切です。

社員からの理解を得る

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みなし残業・固定残業代は、会社側が一方的に定めるものではありません。従業員の過半数を占める労働組合もしくは社員を代表する者と労使協議などによって整理し、理解を得ておくと制度の運用がスムーズです。そのためには、社員周知の前に、労働組合との整理を終えておくことが重要です。

みなし残業・固定残業代の仕組み

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労働基準法において、労働時間は1日8時間、週40時間と定められています。それを超える労働や深夜帯、休日労働については、従業員の過半数を占める労働組合もしくは社員を代表する者と労働協定を締結し、基本給とは別に割増賃金を支給しなければなりません。

みなし残業・固定残業代は、これらのルールを踏まえた上で、あらかじめ想定されるみなし残業代を給与に含めて支給する仕組みになっています。この時、基本給とみなし残業・固定残業代は明確に区別しておくことが重要です。

みなし残業採用会社の場合以下の賃金は発生しない

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一般の給与制度を導入している会社であれば、日々の時間外や深夜帯、休日労働にかかる実際の労働時間を記録し、これに基づいて割増賃金を算出し、給与とともに支給します。しかし、みなし残業・固定残業代を採用している場合、あらかじめ、想定される割増賃金が給与に含まれて支給されています。したがって、以下の賃金は発生しません。

①週40時間を超える時間外労働

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労働基準法では、週40時間を超える労働時間については、割増賃金を支給しなければならないことを定めています。しかし、みなし残業・固定残業代を導入している場合、一定の割増賃金は支給されています。

したがって、みなし残業時間を超えない範囲では割増賃金は支給されません。また、実際の労働時間が、みなし残業時間を下回っても、みなし残業・固定残業代を給与から返納する必要はありません。

②夜22時から翌朝5時までの深夜割増賃金

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労働基準法では、社員に夜22時から翌朝5時までの間に従労働させた場合、深夜割増賃金を基本給とは別に支給しなければならないことを定めています。そのため、深夜業が想定される会社では、みなし残業・固定残業代に深夜割増賃金を含めて支給しています。したがって、深夜帯の実労働時間がその範囲内であれば、深夜割増賃金は支給されません。

③休日の仕事に対する割増賃金

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労働基準法には、休日労働に対しても、基本給とは別に割増賃金を支給しなければならないことが定められています。したがって、休日労働が想定される会社では、みなし残業・固定残業代に休日にかかる割増賃金を含めて支給していますから、その範囲内であれば、休日割増賃金は支給されません。

定めた時間の上限超過分は支給対象

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みなし残業・固定残業代を採用している場合、注意したいのが上限超過分の扱いです。みなし残業・固定残業代を採用していれば、基本給とは別に割増賃金を支給する場面はないと解釈している会社もありますが、上限超過分は割増賃金の支給対象となります。

例えば、週40時間を超えるみなし時間を10時間と設定している場合、11時間目からは従来どおり、割増賃金を基本給とともに支給しなければなりません。もちろん、深夜割増賃金、休日労働賃金についても同じ考え方です。したがって、これらに該当する労働時間については、常に正確に把握しておくことが重要になります。

みなし残業・固定残業代のメリット

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みなし残業・固定残業代は、働き方改革における長時間労働の是正に有効であるなど、多くのメリットを持った給与制度です。しかし、制度のメリットをしっかりと理解していないと、十分な効果を引き出せない場合があります。そこで、みなし残業・固定残業代の効果を最大限に引き出せるよう、導入前に把握しておきたいメリットを紹介します。

①仕事が早く終わると高い給与が貰える

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みなし残業・固定残業代を導入すれば、みなし残業にかかる労働時間分の割増賃金があらかじめ給与に含まれて支給されています。つまり、社員の立場からすれば、みなし労働時間の範囲内で仕事を早く終わらせれば、実質的に高い賃金が支給されるといったメリットがあり、モチベーションアップにつながります。

社員のスキルアップにつながる

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みなし残業・固定残業代を導入すれば、社員は少しでも早く仕事が終わるよう、効率的に業務を推進する方法を考え実践します。その結果、社員が自己啓発に取り組むなど、個々のスキルアップにつながり、生産性も向上しますから会社側にとっても大きなメリットとなる給与制度だと言えます。

②従業員同士の不公平感が無くなる

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従来の残業手当をはじめとする割増賃金の支給方法では、仕事の能率が悪い従業員は必然的に残業にかかる時間も長くなりますから、結果的に高額な残業代が支給されます。したがって、仕事の能率が悪い従業員の方が、能率の良い従業員よりも給与が高額になるため、従業員同士に不公平感が生まれます。

しかし、みなし残業・固定残業代を導入すれば、能率が上がるにつれて賃金単価は上がりますから、従業員同士の不公平感が無くなり、モチベーションアップにつながるといったメリットがあります。

③精度の高い人件費計画の策定が可能となる

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会社の予算計画を作成する際、非常に重要になるのが「人件費計画」です。特に人的依存度が高く、繁忙期が比較的長期間にわたる会社では、残業代をはじめとする割増賃金分をいかに推定するかがポイントです。その点、みなし残業・固定残業代であれば、波動性のある割増賃金があらかじめ想定できますから、精度の高い人件費計画を作成できます。

④勤務時間管理・給与計算の簡素化が図れる

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時間外労働や深夜業、休日労働が多い会社では、それにかかる労働時間の管理・集計や、割増賃金の計算に多大な労力を必要とします。しかしながら、多くの企業で、慢性的な要員不足に悩まされている中で、いわゆる非現業部門に過剰な労働力を配置するのは得策ではありません。

その点、みなし残業・固定残業代であれば、あらかじめ割増賃金は支給されていますから、勤務時間管理や給与計算といった非現業部門の労働力を大幅に削減できるといったメリットがあります。

みなし残業・固定残業代のデメリット

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前項では、みなし残業・固定残業代のメリットについて紹介しましたが、その反面、制度の廃止につながりかねないデメリットもあります。この制度のメリットを活かすにはデメリットを理解して、その対策を講ずることが大切です。そこで、みなし残業・固定残業代を導入してメリットを活かすにあたり、事前に理解しておきたいデメリットを紹介します。

①超過分の請求がし難くブラック化しやすい

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一般的な、残業手当をはじめとする割増賃金の支給制度であれば、週40時間を超えた労働時間、深夜帯に従事した労働時間、休日労働時間を記録して請求するだけですから、請求行為はとてもシンプルです。しかし、みなし残業・固定残業代においては、それぞれの上限時間の超過分を把握して請求しなければなりません。

したがって、その管理が非常に複雑になるといったデメリットがあります。また、みなし残業・固定残業代は、割増賃金の請求がないことを前提としていますから、超過分が生じても請求し難く、その結果、ブラック化しやすいといったデメリットがあります。

②基本給の低さを見落とす

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みなし残業・固定残業代においては、基本給と残業手当など割増賃金が合算された金額で給与が支給されますから、基本給よりも給与総額に注目しがちです。特に求人広告では、基本給と残業手当など割増賃金の区別が明確にされていないと、誤解が生じることもあります。

しかし、給与総額から残業手当など割増賃金分を差し引いてみると、基本給が競合他社の給与水準よりも低い場合があります。こういった基本給の低さを見落とさないためには、給与総額に惑わされず、基本給が競合他社と比較して一定水準を充たしているか確認することが大切です。

③みなし残業が多い時には激務

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みなし残業・固定残業代は、残業ありきの制度ですから、基本的に忙しい職場に導入されています。つまり、みなし残業・固定残業代が多い職場では、激務になりやすいといったデメリットがあります。

さらに、みなし残業・固定残業代と求められる業務量にアンバランスが生じていると、上限超過分が増加し、長時間労働になりやすくなるといったデメリットもあります。

みなし残業・固定残業代廃止の会社も増える理由

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みなし残業・固定残業代を導入する会社が増える一方で、廃止を決める会社も増えています。もちろん、給与制度を頻繁に変更するのは、職場が混乱する原因にもなりかねないので、会社にとっても社員にとっても好ましいことではありません。

しかし、そういったリスクがある上で、みなし残業・固定残業代を廃止するには、それなりの理由があります。そこで、みなし残業・固定残業代を廃止する会社が増える理由を紹介します。

①定めた時間以内の社員が多い

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みなし残業・固定残業代を成功させるポイントは、みなし残業として定めた上限時間と実労働時間の乖離を少なくすることです。会社側にとっては、定めた上限時間以内の社員が多ければ、人件費の持ち出しが多くなりますから、制度の廃止を検討せざるを得ません。

とりわけ、社員のスキルに濃淡がある職場では、上限時間の設定が適切でないと、定めた時間以内の社員が多くなる傾向にあります。そのため、みなし残業・固定残業代のメリットを得られず、廃止を検討する傾向が強くなります。

②個別にみなし残業を設定

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同じ部署であっても、個々の従業員で担務は異なりますし、スキルや経験にも差がありますから、同じ上限時間では、実態にそぐわない事態が生じることも考えられます。そこで、社員ごとにみなし残業・固定残業代の上限を設定する会社もあります。

しかしながら、個々にみなし残業の上限を設定すると、その管理が煩雑になるといったデメリットが生じます。その結果、人件費の削減どころか、給与計算、勤務時間管理にかかる人件費が持ち出しとなります。そのため、人件費のみなし残業・固定残業代を廃止し、従来どおりの給与制度に変更せざるを得なくなります。

③上限時間の設定が困難

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みなし残業・固定残業代を導入しても、上限超過分については、割増賃金を支給しなければなりません。したがって、業務の波動性が大きい職場では、上限時間の設定や管理が難しく、上限超過分の把握に多くの労力を費やすことになってしまいます。そのため、みなし残業・固定残業代を導入するメリットを活かしきれず廃止する会社もあります。

みなし残業・固定残業代の問題点への対処法

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みなし残業・固定残業代については、賃金単価がアップする、人件費計画が策定しやすくなるなど、有益な制度である反面、長時間労働の温床になるといった問題点があり、やむなく廃止する会社もあります。

また、労働者側に不利益な問題点については、その対処法がわからず泣き寝入りのなってしまうことも少なくありません。そこで、労働者側から見た、みなし残業・固定残業代の問題点への対処法を紹介します。

①会社側に確認・相談する

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みなし残業・固定残業代の導入や運用、超過分の支払いなどにあたって疑義が生じた場合、速やかに会社に確認・相談しましょう。最近では、いきなり、外部機関に相談する労働者も増えていますが、余計な混乱を招いたり、労使間の対立を深めることにもなりかねません。

会社に確認・相談しても、不誠実な対応であったり、対応そのものを拒絶された場合には、後述する外部機関などに相談しましょう。みなし残業・固定残業代については、制度そのものが成熟されていないため、トラブルが発生することもありますが、会社に申し出ることで解決に至る場合もありますから、まずは会社と話し合うことが重要です。

②労働基準監督署に相談する

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労働基準監督署は、労働基準法の適用に関する監督官庁であり、みなし残業・固定残業代の適用範囲や運用については、法律に基づいた知識を有しています。また、長時間労働の強要や残業手当の不払いなどの労使間のトラブルに関しては、強い指導力を持っています。

したがって、制度の運用や超過分の未払いについて疑義が生じた場合は、労働基準監督署に相談すると良いでしょう。ただし、最初から、会社を告発するスタンスではなく、現状における制度の在り方が、法律に照らし合せて問題がないか、超過分の不払いが請求できるかなどについて、労働基準監督署の見解を聞き出すのが得策です。

そうすれば、会社側も労働基準監督署の見解を無視できませんから、円滑な話し合いが可能となる場合も多々あります。あくまでも、会社と前向きな話し合いを行うことを前提に対応することが大切です。

③弁護士に相談する

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みなし残業・固定残業代にかかる、超過分の支払いに関する疑義については、弁護士に相談するとよいでしょう。ここ数年来、残業代の未払いなどの労働問題は急増しており、こういった案件に特化した弁護士が増えています。

弁護士は数多くの判例を取り扱っていることから、相談内容に応じた適切なアドバイスをしてくれます。なお、相談に際しては費用が気になるところですが、最初は労働問題に関する無料相談窓口を開設している弁護士事務所を利用するのが得策です。また、正式に対応を依頼する際は、費用に関する相談にも乗ってくれますから安心です。

④労働組合に相談する

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みなし残業・固定残業代の導入にあたっては、従業員の過半数を占める労働組合との労使協議を経て、労使間で整理されていることが大半です。したがって、社内に従業員の過半数を占める労働組合がある場合、相談してみるのも良い対処法です。

労働組合は、労働者の処遇改善を目的としている団体であり、会社側とは対等な立場で協議・交渉を行っています。もちろん、相談するには組合員である必要がありますが、親身になって対応してくれますから、加入したとしても決して損ではありません。

みなし残業・固定残業代の超過分請求方法

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みなし残業・固定残業代の課題の一つに、みなし時間の上限超過分に対する割増賃金の扱いが曖昧である点があげられます。そのため、本来、みなし時間の上限超過分は速やかに請求されなければなりませんが、実際には未払いとなっているものも少なくありません。

これは、制度に対する理解が、労使双方において甘いことが原因です。悪い事例では、みなし残業・固定残業代を導入していれば、超過分は支払わなくてもよいと認識している会社もあり、結果、社員からの反発により廃止に追い込まれる事例もあります。そこで、みなし残業・固定残業代の超過分を請求する方法を紹介します。

①会社に請求書を送る

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みなし残業・固定残業代の超過分が未払いとなっている場合、まずは、会社側に申し出て追及を依頼します。しかし、会社側が申し出に応じない、超過分の支払いを拒否する場合には請求書を送付します。

請求書については、今後の手続きのこと考えて、内容証明郵便物にて会社に送付するのが得策です。請求書は、みなし残業代からの超過分を就業規則などで確認した上で、「◯◯の理由により、みなし残業代を超過した◯◯円の残業代が払われていません。ついては、これを請求します」といった文面とします。

なお、超過分の支払いは2年で時効となりますが、請求書を送付することで、一時的に止めることができます。したがって、できるだけ早く、会社に請求書を送付することが重要です。

弁護士名義で請求書を送付する

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会社側が、超過分の請求を申し出た段階で、あまりにも拒絶的な対応に終始する場合、労働審判など今後の展開も想定して、弁護士名義で請求書を送付する方法もあります。最近では、労働問題に精通した弁護士事務所が無料相談を実施していますので、こういったものを利用して相談するとよいでしょう。

②労働基準監督署に報告

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労働基準監督署では、不当な長時間労働の強要や不払い残業に対して、適切な指導を行っており、労働者からの相談にも気軽に応じています。とりわけ、みなし残業・固定残業代においては、超過分の未払い案件が大きな問題となっていますから、状況によっては臨検指導などを実施し、未払いとなっている超過分の残業手当を支払うよう指導します。

③労働裁判

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会社側が断固として、超過分の清算に応じない場合には、裁判に準ずる労働審判において判断を仰ぐ方法もあります。労働審判とは、平成18年4月に始まった、事業主と労働者間における労働問題を解決する制度です。

職業裁判官である労働審判官1名と民間出身の労働審判員2名が、労働問題を審理して解決案をあっせんします。一般の裁判に比較して、迅速かつ簡単な手続きで解決が図られることから、非常に有効な解決手段だと言えます。

みなし残業・固定残業代を成功させるためのポイント

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ここまで、みなし残業・固定残業代の仕組みやメリット、デメリットを紹介してきました。上手く制度を利用している会社では、社員のモチベーションアップにつながる反面、制度の廃止を余儀なくされている会社もあります。

労働者、会社側ともに有益な制度であるにも関わらず、成功する会社と廃止に追い込まれる会社が現れるのは、その運用方法に問題があると言わざるを得ません。そこで、みなし残業・固定残業代の廃止の危機を回避し、そのメリットを引き出し、成功させるためのポイントを解説します。

①みなし残業・固定残業代制度を導入する職場の選定

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基本的にみなし残業・固定残業代の導入に適しているのは、大半の業務が社外で遂行される営業職、専門性の高い職種及び本社に属する経営の根幹に関わる業種に従事する者とされています。しかし、これらの職種に従事しているだけの理由で、みなし残業・固定残業代を導入してしまうと、効果が得られず廃止に追い込まれる可能性が高まります。

みなし残業・固定残業代を導入する上でポイントとなるのは、そこで働く社員のスキルが十分であるか否かです。みなし残業・固定残業代では、上限時間が定められている反面、それに見合った業績が求められます。

したがって、職務に精通していない社員が多く属する職場に導入しようとすると、求められる業績がクリアできないため、上限時間を超過する残業代が必要となるなどの問題が生じます。制度を廃止しないためにも、成熟した職場に導入することが重要です。

②適切な上限時間の設定

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みなし残業・固定残業代の導入において、一番のポイントとなるのが、適切な上限時間の設定であり、制度を廃止した会社の大半が、適切な上限時間の設定に苦慮したと言っても過言ではありません。

適切な上限時間を設定するには、職場実態はもちろん、そこで働く社員のスキルを見極めることが重要です。また、上限時間は変更することが可能ですから、絶えず、運用実態を把握し、想定されるメリットが享受できているのかを振り返る必要があります。

ここで大切なのが、会社の幹部だけで上限時間を決めないことです。あくまでも仕事をするのは現場です。したがって、上限時間の設定には、現場で働く社員や責任者の意見に耳を傾けることです。そして、何度かの修正を重ねながら適切な上限時間を設定することで、制度の廃止を回避することにつながります。

③みなし残業・固定残業代制度への理解を深める

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みなし残業・固定残業代制度を廃止する会社の多くが、制度内容に対する理解が不足しています。最も間違いやすいのが、あらかじめ残業代が給与に含まれているので、上限超過分は支払う必要がないと思い込んでいることです。ここまで、説明してきたように上限超過分は、割増賃金として支払われなければ、残業代の不払いになってしまいます。

基本給を明確にすることの重要性

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基本給とみなし残業・固定残業代の区別を明確にしていない会社も、廃止に追い込まれる傾向にあります。とりわけ、求人募集の際には基本給とみなし残業・固定残業代代を区別しておかなければ、労働者とのトラブルに発展することもあります。

少なくとも、みなし残業・固定残業代は基本給とは別ものであり、超過分は割増賃金の対象となることは、しっかりと理解しておくことで、制度の廃止を回避できるばかりか、そのメリットを十二分に享受できます。

④労働者との意見交換を頻繁に行う

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みなし残業・固定残業代を導入する際、多くの会社では、従業員の過半数を占める労働組合と労使協議などを通じて、円滑に制度を運用する方法を議論します。こういった場での意見を大切にする会社は、制度を上手く運用できますが、社員や労働組合との意見交換をないがしろにする会社は、結果的に廃止に追い込まれています。

意見交換の重要性

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みなし残業・固定残業代を導入した当初は、労使間での意見交換を頻繁に行い、それぞれの職場実態にマッチした運用方法を模索することが大切です。その上で、基本給の在り方や給与への反映方法などを柔軟に対処することで、社員のモチベーションも向上し、制度の廃止を回避しメリットを最大限に引き出せます。

みなし残業代とは給与に残業代を含ませておくこと

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みなし残業・固定残業代は、あらかじめ時間外労働、深夜業及び休日労働にかかる残業代などの割増賃金を給与に含めて支給する制度です。労働者からすれば、効率的に仕事を進めれば、実質的に賃金単価がアップし、不公平感もなくなります。会社側からすれば、精度の高い人件費計画が策定できる、非現業部門の労働力が削減できるメリットがあります。

その一方で、長時間労働の温床になる、みなし残業・固定残業代の超過分が未払いとなるといったデメリットもあり、制度を廃止する会社もあります。このようなデメリットを防ぎ、メリットを最大限に活かすには、みなし残業・固定残業代を理解することが必要です。

なお、みなし残業・固定残業代によって、超過分の不払いなど労働者が不利益を被った場合には、会社に速やかに申し出ることが大切です。それでも、会社側が不誠実な対応を繰り返す場合、労働基準監督署や弁護士に相談するなどの措置が必要です。

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