美味しいご飯が食べられる炊飯器の保温温度は?
炊きたてのご飯は美味しいと言いますが、忙しくてとりあえず炊飯器で炊いて、保温の状態にして食事の時間に食べるのが普通です。
なので、炊飯器の保温温度は食べる時まで美味しさを保つために適温に保つ必要がありますが、たいていの人は炊飯器を新しく買っても、保温の温度のことはあまり気にしておらず、買ったままの設定で使っています。
しかし、メーカーによっては保温温度の設定ができる炊飯器があります。今使っている炊飯器のご飯が今一つ美味しくないと感じている人は、保温温度が合わないのかもしれません。
ここでは炊飯器の保温温度について、どのくらいの温度設定が美味しく食べられるのか、そして保温の状態でどのくらいまで美味しさが持続するのかなどを、メーカー別の保温温度設定などについて解説します。
炊飯器の保温温度が設定されている理由
炊飯器は米が炊き上がると自動的に保温の状態になります。たいていの人は保温は炊いたご飯が冷たくならないようにするためと思っています。もちろんそれは保温の第一の目的ですが、それ以外にも保温には大切なことがあります。
炊飯器で炊いたご飯をしばらくしてからでも美味しく食べられるには、保温の温度設定が大切ですが、それ以外の役割を果たすためには各々の役割に適した温度設定が必要です。ここではそんな役割と設定温度の関係について解説します。
雑菌を発生させないため
炊飯器の保温温度設定のもうひとつの役割は雑菌を繁殖させないことです。炊飯器に入れておくと、それだけで鮮度が保たれていると勘違いされそうですが、雑菌は60℃以下では繁殖しやすくなり、炊飯器の中のご飯を腐らせてしまいます。
雑菌の繁殖を防ぐために各メーカーの保温温度設定は概ね70℃前後となっていて、そのまま使っていれば、たいていの場合、問題ありません。
高めの温度設定はお米を変色させる
最近の炊飯器は優れたものが多くなったので、新しい炊飯器ではあまり見られなくなりましたが、古い炊飯器を使っている家庭では、翌日以降になるとご飯の色が黄色っぽく変色してしまうことがあります。
これはアミノカルボニル反応の一種であるメイラード反応によるものです。この反応は常温でも進行しますがその速度は遅く、高温になると早くなります。
通常は黄色くなったからといって、特に問題はありませんが、やはり見た目が悪く、味も落ちます。炊き上がってから24時間以内、できれば12時間以内に食べるのが好ましいとされています。
炊飯器メーカー別の保温温度
保温するための温度設定はどのメーカーでも同じではなく、各メーカーで少しずつ違っています。ただし、保温温度の設定ができる炊飯器でも、何℃という細かい設定ではなく、保温温度が「高め」か「低め」の2段階のものが多いようです。
ここではメーカー別の保温温度について紹介します。各メーカーの炊飯器の保温温度を知ることで、自分の好みに合った保温温度のメーカーを選ぶこともできます。
象印の炊飯器
象印の炊飯器は保温温度の設定ができます。ただし、設定は何℃ではなく、「高めの温度」と「低めの温度」の2種類となります。高めの温度は73℃、低めの温度は60℃で、長時間保存したいときには低めの温度に、熱々のご飯を食べたい場合には高めの温度にできます。
ただし、温度設定を「低めの温度」にした場合でも、主犯終了後24時間が過ぎると自動的に「高めの温度」に切り替わります。
タイガーの炊飯器
タイガーの炊飯器の保温温度は72℃です。タイガー炊飯器の保温に関する特徴は、「保温あり」と「保温なし」の2種類から選ぶことができることです。ただし、「保温なし」に設定した場合でも、炊飯が終了後温度が70℃に下がるまでは「つゆ取り加熱」を行います。
三菱の炊飯器
三菱の炊飯器の保温機能には「一定保温」と「食べごろ保温」との2種類があって、それぞれ「一定保温」の保温温度は72℃~74℃、「食べごろ保温」の保温温度は約60℃になっています。
ただし、「食べごろ保温」に設定していた場合でも、12時間が経過すると自動的に「一定保温」に切り替わり、長時間の保温モードになります。
シャープの炊飯器
シャープの炊飯器の保温温度は67℃~73℃、つまり70℃±3℃となっていて、保温温度の切り替え機能はありません。保温温度の切り替え機能はありませんが、機種によっては1時間おきに保温温度を表示してくれるものもあります。
パナソニックの炊飯器
パナソニックの炊飯器は「通常保温」と「高め保温」の2パターンの設定ができます。「通常保温」は低めの保温で、その保温温度は約60℃、「高め保温」の保温温度は72℃~74℃の設定です。
パナソニックの炊飯器の特徴に、「スチーム保温」があります。これは長時間保温した場合、水分が失われてしまいます。これを防ぐために6時間後と12時間後にスチームを投入します。
日立の炊飯器
日立炊飯器の保温機能は「保温低」と「保温高」の2種類があります。保温温度は公表されていませんが、それぞれ切替設定ができる他社炊飯器と同じと考えると、保温温度は「保温低」で約60℃、「保温高」で72℃程度と考えられます。
ただし、この保温設定機能は2020年式のRZ-TS203ではなくなっているようで、保温時間表示は6時間まで1時間単位で、それ以降は現在時刻表示になることから、基本的には6時間以内に食べていただくことを推奨しているようです。さらに72時間で保温が停止します。
東芝の炊飯器
東芝の炊飯器は保温温度は公表されていません。ただし、「最大40時間保温可能」といううたい文句があるとおり、高い保温能力を持っています。
また、東芝製の炊飯器の特徴として「真空保温」があります。これは炊飯終了後、1~3時間後に内釜の空気を抜いて、米の酸化や乾燥、黄ばみなどを防いでくれます。
炊飯器の保温温度を変えることはできるの?
メーカー別に保温温度の設定値が若干番っていることや、保温温度の変更が高め、低めに設定できるメーカーと、できないメーカーがあることを紹介しました。
では一体なぜ保温温度を変更する必要があるのでしょうか。また、保温温度を切り替えるのにはどんな効果があるのでしょうか。それらを以下に解説します。
メーカーや機種によりできるものとできないものがある
炊飯器の保温温度設定はメーカーや機種によってできるものとできないものがあることは各メーカーの保温温度のところですでに紹介済みですが、それぞれの設定モードによる効果については触れていませんでした。
ここでは保温温度の切り替えが有効なのか、有効である場合にはどのような効果があるのかについて解説します。
できるものは高め・低めなどの変更
保温温度の切り替えができるメーカーの炊飯器のところで概ね解説しましたが、低めの保温設定は長時間の保温に適していて、高めの保温設定の場合は長時間保温すると水分がなくなったりして、米そのものの風味が落ちてしまいます。
保温温度の切り替えができる炊飯器の場合は、炊飯後すぐに(概ね3時間以内に)食べるのであれば高めの保温設定に、炊飯後すぐに食べることができない場合は長時間保温できる低めの保温設定に切り替えると、切り替え機能が有効に働きます。
保温温度を変えられるようにしている理由
メーカーにより保温温度の切り替えができるものとできないものとがありますが、もともと保温するのは温かいご飯をいつでも食べることができるためというのが第一の理由です。
しかし、保温温度の切り替えはそれ以外にも温度を60℃以上にしておくことで雑菌の繁殖を抑える効果があります。雑菌の繁殖は60℃以下で盛んになるので、メーカーによっては低めの保温設定にしていても、12時間を経過すると自動的に高めに切り替わる機種もあります。
もう一つ、高めの保温温度にしたばあい、ごはんが黄色く変色しやすくなります。これははじめのところで解説したメイラード反応によるものでが、高めの保温設定は低めの場合よりも短時間でこの反応が現れてしまいます。
長時間保温の場合は保温温度は低めに、短時間保温は保温温度は高めの方が適しているというのはこのような理由からです。
保温したご飯はいつまで美味しく食べられる?
炊飯器を買いに行くと、各機種の炊飯器のところに「30時間保温」のような保温時間の目安が書かれています。これはこの時間内であれば、それほど味や水分量が落ちていなくて、ある程度は美味しく食べられる最長時間のことを指しています。
しかし、実際に炊き立てに近い味や風味を感じながら食べることができるのは、炊飯完了後、いったいどのくらいまででしょうか。
保温3時間を過ぎるとご飯が劣化
炊飯器で炊いたご飯が炊きたてに近い状態で食べることができるのは、概ね3時間以内が一般的です。3時間を過ぎることから劣化が始まり、味や風味が落ち始めます。
炊飯器のうたい文句である「炊飯後24時間」や「炊飯後30時間」などは確かに温かくある程度は美味しく感じますが、それはあくまで保温できる最長時間であって、炊き立ての美味しさを味わうのであれば、やはり炊飯後できるだけ短時間で食べるべきです。
適切な保温温度でご飯を美味しく食べよう!
炊飯器の保温温度について解説しましたが、いかがでしたか。ご飯は炊きたてが一番おいしいのは当たり前ですが、忙しい毎日を送っている人にとってはそうもいきません。
ここで紹介した保温温度や切り替え機能など、いろいろな特徴を知って、自分の生活様式に合った保温温度の炊飯器を選び、いつ食べても出来るだけ炊き立ての味に近い、美味しいご飯を食べましょう。