ネギとは?
ネギは日本に住んでいる私たちの食卓に頻繁に登場する食材の一つです。日本では、薬味として使用されるほか、鍋料理や味噌汁、煮物や焼き物にも用いられています。また、東アジアでもネギは広く食されてきました。この記事では、おなじみのネギの食べ方や種類ごとの違いを紹介します。知られざる、ネギの魅力について改めて知って頂けると幸いです。
ネギ科ネギ属の野菜
ネギとはネギ亜科ネギ属に分類される植物です。漢字では「葱」と書き学名をAllium fistulosumと言います。原産地は中国西部、中央アジアとされています。ネギは独特の辛味と匂いがあることから、様々な料理のアクセントとして使われています。このネギ独特の辛味と匂いは、硫化アリルという成分を有しているためです。
日本でのネギの旬は晩秋から春先とされていますが、ビニールハウスで生産されているため一年中安定してスーパーに置かれています。ネギが好物で欠かせないという人は買い物の度にネギを購入し、ストックしていることが多いでしょう。
それだけネギ好きは多くいて、飲食店でも欠かすことができない食材です。また、天候によっても値差が出やすい野菜の一つです。
ネギの特徴は2つの品種に大きく分かれる
家庭で人気の食材、ネギですが大きな特徴の違いは2つの品種に分かれるという点です。スーパーを覗くとネギと名の付くものが何種類か売られていることに気づくでしょう。この2つのネギについて詳しく見ていきましょう。近所のスーパーでは、何種類のネギが売られているでしょうか。地域によってネギのラインナップも少しずつ異なります。
白ネギ
ネギを大きな2つの種類に分けると白ネギと青ネギに分かれます。まず、白ネギは主に東日本で栽培されているネギです。白ネギの栽培方法は日光にあまり当てず盛り土をするというものです。そのため、根が白く柔らかいネギが出来上がるのです。ネギ畑を見たことがある人は、ネギを植えている畑の土が多いことに疑問を感じたことがあるかも知れません。
ネギが伸びる都度、土を根元に寄せ肥料をやり、長い白ネギを育てていきます。白ネギの主な種類は根深ネギですが、下仁田ネギ、加賀ネギ、曲がりネギも白ネギの仲間です。
白ネギは味がよく、食べ応えもあるため、様々な料理でもメインになり得ます。白い部分に辛味が少なく、柔らかいものが味が良いとされ、様々な料理で重宝されます。ネギの味は料理の出来栄えを左右する大切なポイントです。買ったネギの味を見てからメニューを決めるなどしても良いでしょう。
青ネギ
対する青ネギは、関西で栽培されることの多い、緑のネギです。京都原産の九条ネギや博多の博多万能ネギなどがあります。関西地方の土は植物が根を張りにくい土質で白ネギの栽培には向かないのですが、その代わり青ネギは一年中栽培されています。
青ネギには小ネギや、万能ネギ、わけねぎなどの種類があります。ネギの詳しい種類と違いについては下記にまた説明します。青ネギと言うと、細いものを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、青ネギには白ネギの様に太い種類もあります。東日本にお住まいの方はスーパーでは太い青いネギを見かけることは多くないかも知れません。
その他
その他のネギの種類についてですが、青ネギに似ているわけぎは玉ねぎとネギの中間の雑種です。また、あさつきも純粋なネギとはまた違う種類です。西洋に視点を移すと、ポワローネギや英名でチャイブと呼ばれるネギに似た植物が食用として栽培されています。一口にネギと言っても様々な違いがあることに気づくでしょう。
ネギの種類と特徴の違い
白ネギと青ネギとその他のネギについておわかり頂けたでしょうか。では、ここからは実際にネギの種類ごとに特徴の違いを見て行きます。一口にネギと言っても実は様々な品種があります。ネギ好きの方もそうでない方もお気に入りのネギや食べやすいネギを見つけて、食卓に楽しさをプラスしてみてはいかがでしょうか。
種類①下仁田ネギ
下仁田ネギは他のネギと比べて、全長が15cmから20cmと短く、白い部分が少ないことが特徴です。また、太さは太いもので直径6cmから9cmもあります。甘みも辛味も強く、味が濃いため、薬味より煮物に適しています。また他のネギに比べて天ぷらにしても美味しいと言われています。
下仁田ネギの旬は多少の差がありますが、11月〜1月までの短い時期です。この旬の短さがまた、下仁田ネギの希少性を高め、高い人気の秘密とも言えます。しかもほとんどは業者などに買い占められてしまい一般のお店で見かけることがあまりないようです。
種類②千住ネギ
千住ネギとは、スーパーで一般的に販売されている根深ネギのことです。元々は東京都足立区で江戸野菜として生産されたことが始まりとされています。日本全国、どこのスーパーでも売られており、家庭の食卓に最も多く登場するネギです。
千住ネギは江戸野菜として作られる前は中国西部やシベリアが原産であったと言われています。東京都足立区で初めて栽培された千住ネギですが、広大な面積がないと栽培が難しいため主な産地は次第に東京から場所を移して行きます。
千住ネギの万能さは、誰もが知るところで千住ネギがないと料理の味が締まらない、何か物足りない、というほど広く使われています。その存在の大きさから、逆にネギが苦手という人もいますが日本の代表的な食材として親しまれています。
種類③加賀ネギ
加賀ネギは伝統的な品種です。とにかく柔らかく、鍋に入れるととろりとして甘いことが特徴で、冬の時期に多く出回ります。また、根元から分かれておらず太いネギであることから食べ応え充分で好まれます。
この加賀ネギはメインのおかずとして活躍するほどでその味の良さには定評があります。一方で品種として強くはなく、たいへん手間がかかるネギでした。しかし、地元の人が長きに渡り加賀ネギを守り続けたお陰で今日でもこの味の良いネギは日本中で愛され続けています。
種類④赤ネギ
赤ネギという種類があることをご存知でしょうか。その名のとおり、根元の白い部分が赤い色をしているネギですが、赤い色は表面だけです。栽培している地域は山形県の庄内地方、茨城県は水戸市城里町などです。山形の庄内地方で栽培されているものは「平田赤ネギ」、水戸市城里町で栽培されているものは「レッドポアロー」という名前で販売されています。
味の特徴は生で食べた時はピリッと辛いのですが、火を通すと甘く柔らかになることです。その味の対比に人気が集まり、見た目も赤く綺麗なことから注目されています。しかし、販売している地元以外で見かけることはそれほどないものです。
もしも、見かけたらぜひ味わっていただきたい種類です。見た目は根元から分割されておらず、太い1本になっていて、長さは45cmから60cmほどあります。
種類⑤九条ネギ
先に関西地方で青ネギを栽培していることに触れましたが、代表的な青ネギは九条ネギと言っても過言ではないでしょう。九条ネギは由緒正しい京野菜で、古くから品種改良を繰り返し、大切に栽培されてきました。
九条ネギは、葉にぬめりがあり甘みがあることが特徴で、主に薬味として使用されます。しかし、薬味以外では、煮物や鍋物、味噌汁にも用いられます。関東地方では、あまり青ネギに火を通さないものですが、関西地方ではあらゆる調理方法で食べられています。
目の覚めるような緑色は美しく、料理の彩りとして欠かせません。九条ネギには九条太ネギと九条細ネギがあります。栽培期間が他のネギより長く、背丈は80cmほどにもなります。伝統の京都の街で古くから親しまれた九条ネギは、料理を味の面でも見た目の面でも引き立たせます。
種類⑥曲がりネギ
曲がりネギはくるんと弧を描くように丸まったネギです。実は曲がりネギは自然に曲がっているネギではないのです。曲がりネギ農家の方が、人工的にネギを曲げる作業して美味しい曲がりネギを育て上げます。
曲がりネギは、ある程度成長したネギを一旦抜き、曲がった畝に寝かし、盛り土を行います。こうしてネギにストレスをかけることで、ネギが曲がりその上柔らかく甘くなります。野菜はストレスをかけるとより栄養を吸収しようとし、そのことで味がよくなります。
曲がりネギを曲げる作業を「やとい」と呼びます。この作業は夏の暑い時に行われ、農家泣かせの工程ですが、こうした手間をかけることで美味しい曲がりネギが出来上がります。人が愛情と手をかけたものはより、価値が高くなります。曲がりネギも人の手をふんだんに使い、通常の棒ネギより長い期間をかけて育ちます。
深谷ネギってどんなネギ?
①〜⑥まで深谷ネギの名前が挙がらないことに違和感を覚える方がいるかも知れません。実は深谷ネギとは、品種名ではなく埼玉県深谷地方で栽培されるネギの総称なのです。深谷ネギとは、白ネギで千住ネギ化に属しています。
そのため、埼玉県深谷市以外で栽培されても深谷ネギを名乗ることが可能です。埼玉県深谷市では「ちょっと贅沢深谷ネギ」の名で他とは異なるネギのブランドの販売をしています。ちよっと贅沢な深谷ネギの特徴は長い日照時間で育った、繊維の細かさと味の良さです。
ネギの産地は?
代表的なネギの種類について見てきました。食べてみたいネギや気になるネギはありましたか。一言でネギと言っても、見た目も違い、様々な特徴がありました。それでは、ここからはネギの産地について見ていきましょう。産地以外ではあまり手に入りにくいネギもあるため、近くを訪れた際はぜひ地元のネギをチェックしてみましょう。
下仁田ネギの産地:群馬県下仁田町
下仁田ネギの産地としては群馬県下仁田町が有名です。下仁田ネギはほかの地域での栽培を目指したことがありましたが、群馬県以外で栽培すると同じネギができなかったという情報がありました。それだけ、下仁田ネギの産地は群馬県で安定しています。
地域の特産品として、不動の位置づけである下仁田ネギですが、何と下仁田から数キロ離れただけでも不思議と同じ味が再現できないとのことです。その旬の旬が11月から1月と短いことも合間って、下仁田ネギは幻のネギとも呼ばれています。
千住ネギの産地:滋賀県近江八幡
千住ネギは日本全国どこでも手に入るネギですが、発祥は東京都足立区の辺りと言われています。日本国民に愛され、最も親しまれたネギですが、千住ネギの中でもブランド野菜として販売されているものがあります。それは滋賀県近江八幡で栽培されている「信長ネギ」です。
白ネギは主に関東地方で栽培されてきましたが、2003年ごろから信長ネギは滋賀県近江八幡で栽培が始まりました。白ネギでありながら、フルーツのように糖度が高く、とろりと甘いことが特徴です。関西でも、美味しい白ネギが栽培されるようになり人気を得ています。
加賀ネギの産地:金沢
加賀ネギは「金沢の1本ネギ」と言われています。このことからわかるように、加賀ネギの産地は金沢です。一旦は他の白ネギに市場を奪われたことがある加賀ネギですが、その特徴的な味の良さを絶やしてはならないと農家の方が努力をし品種を守り続けました。
そんな努力の甲斐があって加賀ネギは今日まで愛されて来ました。金沢地方に足を運んだ際には、ぜひともこの加賀ネギを味わって欲しいものです。
赤ネギの産地:山形県庄内地方
目の覚める様なワインレッドが美しい赤ネギの主な産地は山形県庄内地方です。山形県の北に位置する酒田市は昔平田町という地名であったことから、赤ネギは「平田赤ネギ」と呼ばれていました。
山形県の庄内地方でこの平田赤ネギがブランド化されたのは2003年頃と言われています。農家の人が改良を重ね、山形県の庄内地方を代表する名産品として名を馳せるようになりました。価格は一般的なネギの3倍ほどし、贈答品としても人気があります。
九条ネギの産地:京都
九条ネギの主産地は京都府です。京都府南九条地区が産地であったため、九条ネギという名前になりました。現在は京都市淀、久世や八幡市都々城などでも多く栽培されています。九条ネギはラーメン店でも欠かせない存在であり、出荷量は増加しています。
京都といえばかつて日本の首都が置かれていたことから、伝統的で古い建造物が多く、多くの外国人観光客も訪れます。日本の古都が多い京都で伝統的な野菜として、受け継がれて来た九条ネギは地域を超えて日本全国で売られています。
曲がりネギの産地:仙台
曲がりネギの産地としては宮城県仙台市挙げられます。仙台市の岩切地区で明治の末に始めて作られたと言われているのが曲がりネギです。ほかのネギにはないネギを曲げる作業が特徴的です。仙台市の伝統野菜として販売されてきましたが、とにかく手間暇かかることが味の秘密です。
仙台市岩切地区から、近くの宮城県黒川郡にまで栽培方法が伝わり、今では黒川郡でも曲がりネギは栽培されています。仙台では、せり鍋などの鍋も年中食べられているため曲がりネギは欠かせない素材です。宮城では白ネギと共に曲がりネギも根強い人気があります。
ネギを使う主な料理【食べ方】
これまでネギの種類や産地について、見てきました。今まで知らなかった情報がみつかったでしょうか。では、最後にネギの食べ方について改めて見ていきます。どなたでも知っているシンプルな食べ方を見ていきます。普段からあまりネギを好んで食べないという方も、この項目を読んでネギが食べたいと思って貰えたら幸いです。
白ネギと青ネギは薬味
まず、色ネギも青ネギもオススメの食べ方は薬味として食べることです。蕎麦やうどん、ラーメンには薬味は欠かせないという人も多いでしょう。麺好きな方は自宅で麺を食べるためにネギを切ってストックしておくことが欠かせないものです。
小口切りにしてタッパーやジップロックに入れ冷蔵庫に保存しますが、その際ふかふかのキッチンペーパーに包んで保存すると長持ちします。冷蔵庫に入れておくと、味噌汁に入れたり冷奴にかけたり、重宝できます。冷凍する場合は、キッチンペーパーを外して冷凍しましょう。冷蔵では約一週間、冷凍では約一ヶ月持ちます。
生のままでの食べ方
では、ネギを薬味として使う以外にどのような食べ方があるのでしょうか。生の場合は白髪ねぎにすると美味しく食べられます。白髪ねぎの作り方はネギを5cmの長さにカットし、青い部分を一枚剥きます。また、真ん中の緑の部分を取り出し、白い部分を出来るだけ細い千切りにします。
出来上がった白髪ネギを水にさらすと辛さが抜け、しゃっきりとします。こうして、完成した白髪ネギはごま油をかけたり、ポン酢をかけても美味しく頂けます。
汁物にした食べ方
汁物もネギの食べ方では一般的です。ネギは和の食材のようですが、コンソメとも相性が良いため、5cm長さに切って焼いたネギとベーコンでコンソメスープにしても美味しいです。
また中華スープにネギを入れても香ばしく良い味わいです。中華スープに繊維に沿って切ったネギとわかめを入れ、卵を回し入れるだけで定番の汁物が出来上がります。
その他、味噌汁にネギを加えるだけでほっとした日本の味になります。生の輪切りのネギを入れても美味しいですが、5cm長さのななめ切りにしたネギをよく煮込んでもOKです。ネギは余すことなく色々なレシピで使えます。
ネギの種類を活かした食べ方で美味しく食べよう!
これまでネギについて見てきました。馴染みの深いネギですが、ここに紹介しただけでなくまだまだ色々な品種があります。旅先で新しい種類のネギと出会うこともあるでしょう。ネギをはじめとして様々な食材について更に知り、健康的な食生活をお送りいただけたら幸いです。