宅建(宅地建物取引士)の平均年収は500万円前後
いきなり結論から書いてしまうと、宅建(宅地建物取引士)の平均年収は500万円前後です。特殊な資格の職業である割にはそれほど高い平均年収とは言えないかもしれません。サラリーマンの平均年収と同じくらいです。
宅建の年齢別の平均年収
宅建全体の平均年収がわかったところで、今度は年齢別の平均年収を見てみましょう。少し煩わしくなりますが、順番に年齢別に載せてみます。まず年齢が20代では平均年収が300~380万円くらいで、4か月分のボーナスは86.45万円程度です。多いとは言えませんが、低すぎることはないです。
次に年齢が30代の宅建の平均年収は少し上がって400~480万円くらいで、ボーナスは112.8万円程度です。年齢が40代になると立場も上になっていきますが、平均年収が500~600万円で、ボーナスは143.1万円程度です。仕事盛りの40代は年収も多いです。
続いて、年齢が50代の宅建の平均年収は600~650万円で、ボーナスは161.4万円程度です。この年代は高い役職に就いている人も多いことから最も平均年収もボーナス額も大きくなっています。60代についても見てみると、平均年収が450~600万円、ボーナスは109.4万円です。
宅建の役職別の平均年収
当然のことですが、宅建も役職に就いているかどうかで平均年収も変わってきます。役職がない働き始めの年齢が20代の新入社員の場合は、平均年収は300~400万円程度で、ボーナスは年間40万円くらいです。月ごとの手取りで見ると、15~23万円くらいです。
この数字は日本人の平均年収よりも低く、宅建という特殊な資格が給与に反映されていません。やはり年齢を重ね、役職に就くようにならないと宅建としての評価は高くならないようです。
では役職に就くと平均年収がどうなるかというと、主任では平均年収が463万円くらい、ボーナスが115.8万円程度です。係長の場合は、平均年収が576.7万円前後、ボーナスが144.2万円程度です。課長はどうかと言うと、平均年収は762万円、ボーナスは190.5万円です。
部長ともなると、平均年収は842.4万円、ボーナスは210.6万円です。さすがに部長ともなると、ほかの役職よりも平均年収・ボーナスともに高いです。年齢別の平均年収とボーナスも見てみましたが、年齢+役職で大きくアップします。
宅建の男女別の平均年収
男女平等の社会に徐々になりつつあるとはいっても、まだまだ格差はあります。それは平均年収にも表れていますが、宅建の場合も男女で額に差があります。その平均年収の額ですが、男性の場合は381~713万円、女性の場合は278~538万円です。
宅建は地域別に年収が変わる
いろいろなデータから宅建の平均年収を比較してみましたが、その比較項目には地域が含まれます。同じ宅建でも地域によって平均年収が違います。少し不公平なような気もしますが、地域ごとに一般的な平均年収も異なってくるので、それが額にも現れています。
年収が高くなるのは都市部
宅建の地域別平均年収ですが、都市部の方が地方部より高い傾向にあります。いくつか具体例を挙げてみると、東京に在住の宅建の場合、平均年収は756万円です。大阪なら648万円、愛知なら594万円、福岡なら540万円などとなっています。
では地方に在住の宅建の場合の平均年収はいくらかと言うと、秋田は432万円、福島や山形や山梨や岐阜や鳥取は486万円、沖縄や宮崎は432万円となっています。こうしてみると、地域によってずいぶん差があることがわかります。
沖縄や宮崎の宅建の平均年収がかなり低いですが、これは一般人の平均年収の低いことに起因するようです。全体的にこれらの地域では中小企業が多く、給与も大企業よりも低くなりがちで、それが宅建の平均年収にも反映されています。
不動産業界で実績を残すと年収が上がる
宅建の地域ごとの平均年収を見た人の中には、もう少しアップさせる方法はないものかと考えるかもしれません。中には年収1000万円を目指したいと思っている人もいるでしょう。しかし、不動産会社の一宅建という立場では、この数字は達成しがたいです。
ではいい方法がないのかと言うと、勤めている不動産会社で営業の業務もしてみるのです。営業自体は宅建の仕事内容からは外れますが、収入のアップにつながります。契約を獲得できれば、売り上げの2割程度が歩合として入ってきます。
このように不動産会社の営業部門で活躍し、本来の宅建業務を重ねていけば、収入の大幅アップも夢ではありません。つまり、不動産会社で業績を積むことがとても大切というわけです。
独立開業した場合は人それぞれ
地域ごとに平均年収の差がある宅建ですが、どの地域で活動しているにしろ少しでも年収アップを図りたいというのが本音でしょう。その目的を達成する手段の一つに独立開業があります。不動産会社を起こして、そこで業務をするのです。
独立開業がうまく行くと、宅建という仕事でも年収1000万円の可能性はあります。ただし、あくまでもうまく行くとという前提です。独立開業には、事務所経費や活動費などを最初から準備しなければならず、少なくとも500万円くらいは必要です。
もし失敗したら、年収1000万円どころではなく、大きな損失を生みます。特に賃貸に出せる不動産を持っていない人は、不動産会社を起こしてもそう簡単には成功に導けません。つまり、独立開業と言っても、人によって成功する場合もあればうまく行かない場合もあるのです。
宅建の仕事内容
宅建の資格を得て、年収をアップさせようと考える人もいますが、そもそも宅建とはどのような仕事をする職業なのか知らない人もいるでしょうからその点について解説します。宅建の仕事内容には、本来の業務と別の業務があります。
重要事項の説明など専業の仕事
宅建の本来の業務は、重要事項の説明です。不動産の売買契約や賃貸契約、委託契約の際には、宅建が重要事項説明書に基づき契約上欠くべからざる重要なポイントについて説明をしなければいけないことになっています。
重要事項説明とは、契約内容や物件の状態、契約におけるメリット・デメリットなどを含めて徹底的に消費者に解き明かし、相手に納得してもらうことです。消費者としてもこれらの情報がなければ安心して契約できませんから、とても大切な業務となります。
宅建がもし十分な重要事項説明を行わなかった場合は、宅建士ではなく、宅建業者(不動産会社)が処罰の対象になります。そのため、宅建は不動産や契約などの問題についてよく理解し、相手にわかりやすく説明する義務があります。
重要事項説明書への記名と押印
宅建が重要事項説明書に基づき重要事項の説明をした場合は、その書面の内容と口頭での説明が一致していなければいけません。それを証明するために、宅建は重要事項説明書に記名・押印することになっています。
口頭説明だけして、重要事項説明書への記名・押印をしない宅建は規則違反となります。なお、記名・押印が済んだ重要事項説明書は、不動産の売買契約の場合は買主へ、賃貸契約の場合は賃借人に渡されます。
持ち主に重要事項説明書を交付する必要はありません。持ち主は重要事項の説明がなくても、重要なポイントはみな頭に入っているので、交付しなくてもいいのです。ただし、不動産の交換の場合は、双方の関係者に交付するようになっています。
37条書面への記名・押印
37条書面とは、簡単に言うと契約書のことです。重要事項説明書は契約前に必ず交付するものと決められていますが、37条書面は契約後速やかに交付するよう定められています。その書面には、支払額または賃借額、支払方法、引き渡し時期などが記載されています。
37条書面の内容に不備があっては大変なことになりますから、宅建はその内容をよく確認し、もし問題がないということになれば記名・押印をします。宅建の記名・押印がされた37条書面は契約当事者のそれぞれに交付されます。
営業など専業以外の仕事
重要事項の説明や記名・押印などは宅建の専業の業務となりますが、宅建がそれだけの業務に携わっているとは限りません。専業以外の営業や事務を行っている場合もあります。場合があるというよりも、ほとんどの宅建はやっています。
宅建の資格をとるメリット
不動産取引においては絶対に必要な宅建という存在ですが、ただ必要な存在というだけでなく、宅建の資格にはほかにもメリットがあります。その資格にどのようなメリットがあるのか解説しますが、もしその解説で興味を覚えたのなら、資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
資格手当が支給される
宅建の資格を持っている人には企業が資格手当を支給する場合があります。すべての企業というわけではないのですが、多くの企業がそのように配慮しています。そのため、年収が上がる場合があります。
資格手当は企業ごとにその額が違いますが、多いところでは5万円支給というケースもあります。この額ならかなり年収も良くなり、大いに満足できるでしょう。宅建の資格が活かされる例とも言えます。
ただし、5万円の資格手当となった場合、基本給や他の手当てが引き下げられるケースもあります。5万円という額は大きいので喜びたくもなりますが、他の給与との兼ね合いについてもチェックしておく必要がありそうです。
ボーナスは企業によって出るか出ないか違う
宅建の資格で資格手当が支給されるのは喜ばしいことですが、ボーナスについては支給する企業としない企業があります。ボーナスがないのかと残念がる人もいるでしょうが、ほかの基本給などが多くなっているので、年収自体が大きく下がることはありません。
転職・就職に有利
宅建の資格は、就職や転職時には有利に働きます。不動産会社をはじめ多くの業界で宅建資格所有者を歓迎するムードがあります。宅建資格者がいると、不動産業務がスムーズに行えるためで、大きな戦力として期待されています。
宅建資格があっても未経験では就職や転職がしにくいのではと思っている人もいるでしょうが、そうとは限りません。宅建資格さえ持っておけば、必要な業務は一通りこなせるのですから、就職や転職で未経験が不利になるというわけではありません。
ただし、経験や実績があるかないかは年収には影響があるようです。やはり経験や実績が多い人のほうが年収は高くなるようです。したがって、いったん就職したら、経験や実績を積み、年収アップに向けて頑張ってください。
更新は一生不要
宅建資格のいいところは更新が不要な点です、いったん資格を取得すると一生利用できます。ただし、証明書である「宅地建物取引士証」には5年という有効期限があるので、更新を忘れないようにしましょう。
宅建の資格をとる方法
宅建の資格を取って、年収を稼ごうという人のためにその資格取得の方法を解説します。宅建は国家資格であり、試験に合格することで取得ができるようになりますが、試験後にもいくつかのステップがあるので、それを紹介します。
資格をとる方法①宅地建物取引士試験に合格
宅建試験の正式名称は宅地建物取引士資格試験と言いますが、特に受験資格が定められているわけではありません。ということは、誰でも受験可能ということです。そのための勉強が必要なことは言うまでもありませんが、この試験に合格するが第一関門です。
合格率は約15%
誰でも受験可能な宅建試験ですが、残念ながら合格率は非常に低いです。平成30年度の合格率はわずか15.6%です。このうち男性の合格率が15.0%で、女性が16.8%です。低い合格率の中でも女性の合格率が高いです。
資格をとる方法②実務講習の受講
宅建試験に合格したら、すぐに業務を行えるわけではありません。登録実務講習を受ける必要があります。そして、講習を受けたのちに発行される登録実務講習修了証が必要です。ただし、実務経験が2年以上ある人は、講習も修了証も不要です。
資格をとる方法③宅地建物取引士の登録
宅建としての実務経験が2年以上か登録実務講習修了証が交付されていれば、登録ができるようになります。登録はしなくてもいいことになっていますが、登録しないと業務を行えませんから普通は登録します。
資格をとる方法④宅地建物取引士証の交付
宅建としての登録が済むと、申請によって宅地建物取引士証が発行されます。これが交付されて受け取って初めて宅建としての業務を開始できます。以上のようにただ宅建試験に合格すればいいというのではなく、いくつかのステップを踏んだのちに完全な資格が取得できます。
なお、宅建としての登録は試験に合格してから1年以内に行う必要があります。1年を過ぎると、新たに法定講習の受講をしなければいけません。それは面倒でしょうから、試験合格後にはできるだけ早く諸手続きをするようにしましょう。
宅建は勤め先次第で年収が高くなる職業
ここまで、宅建(宅地建物取引士)の平均年収、地域別年収、その仕事内容などについてお伝えしました。宅建の平均年収はそれほど高いわけではありませんが、勤め先や実績によっては上がる場合もあるので、年収アップを目指して頑張ってください。