一級建築士の平均年収や給与ボーナスは?
皆さんは「一級建築士」という職業をご存じでしょうか。最近では問題を抱えた家をリフォームできれいにする、といった内容の番組が複数放送されており、人気の職業の一つと言っても過言ではありません。
一方で、あまり表に出て活躍する職業ではないため、直接的に「一級建築士」の仕事内容やこの職業への就き方、年収など知られていないことがたくさんあります。
今回はそんな意外と知られていない「一級建築士」という職業についてご紹介します。気になる年齢ごとの平均年収や仕事内容、必要な資格についてご紹介します。憧れている方も多い職業なので、この機会に「一級建築士」について詳しくなりましょう!
一級建築士の仕事内容
まず「一級建築士」はどのような仕事をするのかについてお話します。「一級建築士」の主な仕事は文字通り「建築」を行うことです。
建築物のデザインや設計はもちろんのこと、工事現場の監理も行います。「一級建築士」には、デザインを考える創造力、依頼者の要望に応える理解力やコミュニケーション力、安全面や効率的な建築を行うための計画力や計算力、現場の監理を行う統率力など、様々な能力が必要となります。
また「一級建築士」はデザイナーや依頼者、現場監督、などのあらゆる人と話し合いを行い、それぞれの人々を繋ぎまとめる架け橋です。
一級建築士の平均年収と給与ボーナス
「一級建築士」の仕事内容についてご理解いただけたでしょう。次は皆さんが一番気になるといっても過言ではない、平均年収についてです。
「一級建築士」の平均年収は「643万円」と言われています。これは全職種の平均年収と比べるとおよそ「190万円」高い金額になります。職業別の年収ランキングでは129職種中「14位」と高額な給与をもらっています。
しかし「一級建築士」と言っても、一概にほとんどの建築士が同程度の給料をもらっているわけではありません。年齢の違いやフリーの建築士もいれば企業に所属する建築士もいます。
また家専門、ビル専門、など請け負う設計内容が異なる場合もあります。その他にも出来高によってボーナスが入ったり、年齢によっても違いが見られます。全ての「一級建築士」を平均にならした場合の年収なので、あくまで目安として認識してください。
業種別の年収と一級建築士の年収を比較
「一級建築士」の仕事内容と年収についてご紹介しました。次はもう少し支視点を変えて、業種別の平均年収についてお話します。
「一級建築士」の他にも建築士と呼ばれる資格を持つ職種があります。それが「二級建築士」と「三級建築士」です。資格は数字が小さいほうがより高い資格を意味するので、「一級建築士」が最上の建築士の資格です。
自ずと資格が高い方が給与は高くなりますが、その詳しい平均年収についてご紹介します。一つ資格が変わるとどれくらいの差が出るのかを予想しながらご覧ください。
一級建築士の平均年収
「一級建築士」については前述したように、平均年収は「634万円」です。ただし職種によっては「300~1,000万円」とばらつきがあります。
「一級建築士」の業種としては個人で建築設計事務所や建設会社、ハウスメーカーに勤務、地方自治体が運営する建築部門に所属したり、さらには個人で事務所を経営している人もいます。企業内での階級や事務所の経営状況などが、年収に影響してくるでしょう。
どの業種の年収が高いのか気にあるところですが、これらの業種については後程年収含め詳しくご紹介します。
二級建築士の平均年収
「二級建築士」の平均年収をお話する前に、簡単にですが二級建築士という職業についてご説明します。この資格は国が行う国家試験である「一級建築士」と異なり、都道府県が試験を行う資格になります。
二級建築士は扱える建物の規模や用途が規制されており、どんな建物でも設計できる「一級建築士」に比べると制限があります。ですが一般的な戸建住宅などの建物であれば設計は可能です。
では、この二級建築士の平均年収ですが、およそ「300~700万円」と言われています。「一級建築士」と同じように、様々な業種で働くことが可能なため、所属場所によって年収にもばらつきが生じます。
二級建築士の資格を取得した人は現場で腕を磨きつつ、より上の「一級建築士」の資格を取るために勉強に励みます。
三級建築士の平均年収
三級建築士は正確には「木造建築士」という資格です。木造建築士も二級建築士と同様に、国家資格ではなく、都道府県で行われる資格になります。
この資格は文字通り設計が可能な建築範囲が木造建築物に限られており、二級建築士以上に様々な制限があります。例えば、延べ面積が300㎡を超える建物や3階建て以上のものは設計することが出来ません。
木造建築士の平均年収はおよそ「350万円」です。木造建築士の資格が求められる求人はあまりないので、正確な年収を出すことが難しいので、大工の年収から予測した年収になります。
一級建築士の年齢別予想推移
ここまで業種別の平均年収についてご紹介しました。次は年齢別に見た平均年収の推移についてお話します。「一級建築士」も最初から高所得という訳ではありません。長年の経験を積むことで、少しずつ年収が増えていきます。
初任給は22万円前後
まずは「一級建築士」としてのスタートである初任給について見ていきましょう。「一級建築士」の初任給はおよそ「22万円」です。年齢は20~24歳時の給与になります。
この年齢だと大学を卒業し「一級建築士」の資格をまだ持っていない人も多いです。建築士を志望する人は基本的に大手ゼネコンやハウスメーカーなどに就職することが多く、それらの企業では資格保有の有無に関係なく採用する傾向にあります。
「一級建築士」の資格は就職した後、現場で経験を積みながら勉強し、取得するという流れが多いとされています。
ピーク時の年収
逆にピーク時の年収はどうでしょうか。「一級建築士」のピーク時の年収はおよそ「800万円」です。年齢で言うと、45~49歳くらいになります。
この世代は重要な役職に就いたり、プロジェクトの中心として活躍するようになります。責任は重くなりますが、その分得られるやりがいも給与も大きくアップします。ただし、この年収の中には時間外労働賃金も多く含まれているため、そのことを念頭に置いた上で参考にしてください。
生涯年収
着実に実績を上げていった場合、最終的に「一級建築士」の生涯年収はどれくらいになるのでしょうか。「一級建築士」の生涯年収は賃金構造基本統計調査によると「約2億6,000万円」です。
しかし、これはあくまで目安であり、「一級建築士」全員が同様に稼げるとは限りません。個人の事務所を持ち自立した場合、役職や働く企業によっても給与には違いが生じてきます。また、男性の建築士に比べて、女性の建築家は年収が「90万円」ほど低くなっています。
一級建築士の年収と働き方との関係
ここまで業種別、年齢別に「一級建築士」の年収についてご紹介しました。次は働き方による給与の違いについてお話します。「一級建築士」には様々な働き場所があります。
例えば、建築設計事務所や建設会社、ハウスメーカー、地方自治体の建築部門などです。さらには雇われる側から雇う側へ、独立して個人事務所を経営している人もいます。これらの働き方別に給与の違いやその特徴についてお話します。
建築設計事務所
「一級建築士」の働き方、1つ目は「建築設計事務所」です。建築工事の契約に関する手続きや書類の制作、設計図の作成、工事全体の監理など、建築における様々な工程において幅広く役割を担っています。
特に大きい設計事務所は組織系建築設計事務所と言い、日建設計や三菱地所設計、NTTファシリティーズなどがそれに当たります。
通常の建物の他に、ビルや橋などの大規模で大掛かりな建築設計を請け負うことが多いです。規模が大きいな、大手の事務所に就職、あるいはそこで役職に就くことが出来れば、高収入を得られるでしょう。
建設会社
「一級建築士」の働き方2つ目は「建設会社」です。建設会社は建築における計画や設計、実際の工事に至るまでの一連の業務管理を請け負います。特に規模の大きい会社はゼネラルコンダクター、通称ゼネコンと呼ばれます。
例えば、大成建設、清水建設、フジタなどが有名なゼネコンに相当します。大規模な建築はもちろんのこと、何かのイベント施設など話題性の高い事業を扱っていることが多いです。
設計事務所と似た業務が多いですが、建設会社はあくまでも会社なので、福利厚生や給与などの待遇がより充実している傾向にあります。大手のゼネコンで大きなプロジェクトを統括するような役職に就けば、かなり高額な給与が得られるでしょう。
ハウスメーカー
「一級建築士」の働き方3つ目は「ハウスメーカー」です。設計事務所や建築会社と違い、請け負う建築物は戸建て住宅などの一般建築がメインになります。
ハウスメーカーで働く場合「一級建築士」としての建築業務だけでなく、販売や企画などを担当する職種もあります。ハウスメーカーは通常の建築士として以外の働き方があり、建築の知識を生かして様々な働き方が出来ることが魅力の一つです。
特に販売や企画を業務とする場合、実績に応じてインセンティブが発生する企業もあり、成績が出れば出るほど収入として返ってくるでしょう。
地方自治体が運営する建築部門
「一級建築士」としての働き方4つ目は「地方自治体の建築部門」です。これは都道府県や市町村などの地方自治体にある建築部門に所属し、都市開発や施設の管理を行います。地域に必要な施設の建設計画や建築物のメンテナンス、建築基準の審査など、地域に根付いた働き方が特徴です。
この働き方は会社員ではなく、公務員として建築士の仕事を行います。そのため、企業にあるようなインセンティブや大規模プロジェクトなどの成功報酬はありません。
しかし、基本的には暦通りに休日が取れ、何より年収を安定させることが出来ます。しっかり休みが取れ、リストラの心配もほとんどない安定した「一級建築士」を目指したい場合は建築部門が良いでしょう。
個人事務所の経営
「一級建築士」の働き方5つ目は「個人事務所の経営」です。建築家であれば、誰しも一度は憧れる独立。成功すれば、雇われる側にいるより、雇う側にいる方が確実に年収はアップします。
もちろん独立する場合は建築業務の他に、経営についても学ばなければなりません。社員の采配や報酬、請け負う顧客層や仕事内容など、自分で全ての決定を行う必要があります。大抵の場合は設計事務所や建設会社に入り、経験やコネクションを作り上げてから独立する流れになります。
依頼が入りやすく、軌道に乗れば高収入が得られます。しかし、独立が必ずしも成功するとは限らないということは覚悟しなければなりません。
売上の少ない依頼が多かったり、そもそも依頼が少ないと安定した収入が得られず経営が苦しくなります。独立する際はしっかりと綿密に計画を立てた上で、余裕を持って行う必要があります。相応の覚悟が必要になるでしょう。
一級建築士は年収1,000万円も夢じゃない?
「一級建築士」の平均年収は「643万円」とご紹介しました。しかし、これはあくまで平均であり実際は「300~1,000万円」とばらつきが多いともお話しました。
これは働き方の違いやそもそも年齢が若い場合自ずと年収が低くなるのは、どの職種でも言えることです。では、1,000万円を稼ぐ「一級建築士」はどのような働き方をしているのでしょうか。最後は「一級建築士」の中でも上位の給与を得ている人達の働き方についてご紹介します。
前章で紹介した働き方の中にも年収1,000円もあり得るものがあります。どの働き方なのか予想しながら読んでみてください。
大手ゼネコンによる働き方
年収1,000万円もあり得る「一級建築士」の働き方1つ目は「大手ゼネコンで昇進する」ことです。建築会社は大規模なプロジェクトを請け負うことも多く、そのため売り上げも多いです。
配属されている社員の年収も比較的高いものになります。その中でもさらにキャリアを積み、重役になれば間違いなく年収は大幅にアップします。大規模なプロジェクトでは多くの人が携わるので、その大人数をまとめ上げるマネジメント能力が求められます。
会社ではそういった能力を持った人を大変重宝するため、上に行けば行くほど年収も上がるでしょう。年収1,000万円もあり得るのです。
独立して建築設計事務所を持つ
年収1,000万円もあり得る「一級建築士」の働き方1つ目は「独立して建築設計事務所を持つ」です。成功すれば間違いなく年収1,000万円得られるでしょう。責任も仕事も桁違いに増えますが、雇われる側よりも雇う側の方が得られる年収は高くなります。
事務所を持つには「管理建築士」の資格が必要
「一級建築士」として独立して成功するというのは、「一級建築士」という職業において一つの夢あるいは到達点であったり、憧れです。
ただし、「一級建築士」が独立する上で注意しなければならないのが「管理建築士」という資格が必要だと言うことです。建築設計事務所には必ず「管理建築士」を一人以上置くように法律が定められています。これは管理建築士講習という講習を修了することで取得することが出来ます。
一級建築士の年収は働き方と規模で大きく変わる
いかがでしたでしょうか。今回は「一級建築士」の資格や業種、年齢別の平均年収や仕事内容などをご紹介しました。建築におけるリーダー的存在とも言える「一級建築士」の魅力に気づけたでしょう。皆さんの周りの建物のすべてに建築士が携わっていることを、ぜひ気に留めてみてください。