スニーカーは加水分解で劣化する!
あまり履いていないのにもかかわらず、スニーカーがいつの間にかボロボロになって劣化していたり、ある日突然壊れて、よくみたらソールが劣化していて靴底の強度がなくなっていたという状況に遭遇したことがある人も少なくないのではないでしょうか。
その原因は加水分解と呼ばれる現象です。その加水分解という現象がどういったものか、加水分解を防止するための対策およびスニーカーの修理や接着剤による修復の方法など、以下解説していきます。
スニーカーの加水分解とは
お気に入りのスニーカーのソールがボロボロになったり剥がれたりなどして、結局、スニーカー自体の修理や修復が必要になったり、廃棄したりすることになった人は多いのではないでしょうか。その原因となるのは加水分解と呼ばれる化学反応です。
化学物質と水が起こす反応
加水分解とは化学物質と水が反応して起こす化学反応です。スニーカーには石油からつくられらたいろんな化学物質が使われていますが、特に加水分解に弱いのはスニーカーのソール部分にしばしば使われているポリウレタンという物質です。
ポリウレタンと呼ばれる化学物質が水や空気中の水蒸気に触れて水分を吸収すると、カルボン酸とアルコール、もしくはアミンとアルコールと二酸化炭素に分解されます。
そうした化学反応がスニーカーに使われるウレタン素材で起きている加水分解の正体です。それらの加水分解の反応はすべて不可逆で決して元には戻りません。
ソールがぼろぼろになる原因
スニーカーのソールにはポリウレタンという化学物質が使われています。ポリウレタンは衝撃吸収や耐摩耗に優れているからです。しかし、ポリウレタンは加水分解に弱いです。空気中の水分と容易に結びつき、加水分解を起こします。
加水分解によりソールに使われるポリウレタン樹脂は強度が落ちるとともに縮んでもいきます。また、スニーカー本体と靴底のソールをつなぐソールのりという接着剤も加水分解により劣化し接着力が落ちていくので、ソール自体が剥がれ修理や修復が必要な状態になります。
ウレタン素材は水に弱い
ウレタン素材は水に弱く加水分解を起こしやすいです。スニーカーに使われるもので代表的なのはウレタンゴムやポリウレタン樹脂ですが、工場で合成された瞬間に空気中の水分を吸って加水分解が始まり、環境によっては3年ほどで使い物にならないほど劣化します。
スニーカーの加水分解防止のための対策
大切にしまってとっておいたスニーカーを数年ぶりに取り出してみたら、ぼろぼろになって履けなくなっていたということに遭遇したことがある人は多いのではないでしょうか。その原因は繰り返し伝えている通り、加水分解です。
水は地球上どこにも存在しており、加水分解が起きないように防止する完璧な方法はありません。しかし、加水分解の進行を遅らせる対策はあります。ここでは、加水分解を遅らせ、スニーカーを長持ちさせることのできる対策を紹介していきます。
定期的に履く・洗う
スニーカーのソール使われているポリウレタン樹脂の加水分解を遅らせ、お気に入りのスニーカーを加水分解から遠ざけるためにできる簡単な対策の一つは、スニーカーを定期的に履くことです。
クローゼットに閉まって取っておくことがスニーカーにとってベストではありません。特にお気に入りのスニーカーはここぞという時にしか履かないで、そうじゃない時はクローゼットなどに閉まっておく方も多いですが、それは加水分解で劣化を促進する原因となっています。
スニーカーを定期的に履くことを心がけることで、ポリウレタン樹脂などの素材の換気を良くし空気を入れ替えさせることができます。水分や湿気の滞留を防止し、加水分解の速度を遅らせられます。
加水分解を防ぐのとは別に、スニーカーは履くたびに汚れるので、スニーカーに汚れの定着を防ぐという意味で定期的に洗って綺麗にする必要があります。
ブラシやスポンジを使用して、土汚れや埃などを取り除きましょう。水洗いは加水分解を促進するので行わないほうがいいでしょう。
頑固な汚れにはアルコール成分を含む除菌シートやウェットティッシュを使用して拭き取ります。水洗いや水吹きは水そのものが加水分解の原因になるとともに、シミなどの原因になります。
その点、アルコールは水よりも蒸発が早く、そして何よりも加水分解を引き起こさないので、水よりもポリウレタン樹脂に対して負担が少ない点で優れています。
定期的に洗って綺麗にすることでスニーカーの見た目が綺麗になるともに、使用されている素材の加水分解による異常や劣化に気づきやすくもなります。
ローテーションして履く
多くの人はスニーカーを複数持っていますが、それらのスニーカーをローテーションして履くのも誰でもできる加水分解を遅らせる対策の一つです。
一つのスニーカーだけを集中して履き続けることも加水分解でスニーカーの劣化を早めることにつながります。人間は足の裏からも汗を出していて大量の水分を排出しているからです。
一つのスニーカーだけを履き続けているとその湿気が抜けきらないうちに、同じスニーカーを履くことになって湿気が蓄積していって加水分解を早める恐れがあります。
防水スプレーをかける
購入するのにお金がかかりますが、防水スプレーをスニーカーにかけるのも誰でもできる加水分解を防止する対策の一つです。
晴れの日もあれば、雨の日もあります。雨の日ですが、スニーカーが水に触れることを避けることはできませんが、防水スプレーを吹きかけることで、雨の水分からスニーカーを守り、加水分解が進むのを防止してくれます。
収納方法を工夫する
収納方法を工夫することもスニーカーを加水分解から守り、長持ちさせる対策の一つです。空気中には水分があるので完全に断つことはできませんが、収納方法を工夫することでシューズに触れる水分や湿気を軽減させ加水分解を遅らせることができます。
風通しのいい場所に収納する
スニーカーを収納するのであれば、開閉扉のついたクローゼットよりはできるだけ風通しの良い場所に置くべきでしょう。開放型の棚であれば、風通しもよく湿気がたまることはなく加水分解を抑制することができます。
開放型の棚が好きではない場合、もしくは開閉扉のついたシュークローゼットしかない場合は頻繁に扉を開け放って換気を良くし風通しの良い環境を心がけることが大切です。
乾燥材とともに収納する
風通しの良い環境に置くと同時に、乾燥材をスニーカーの中に入れておくのも、加水分解を抑止する対策の一つです。市販の靴用の乾燥材を買ってもいいですが、お菓子の中に入っているようなシリカゲルの乾燥材でも代用できます。
新聞紙にそういう乾燥材を包んでスニーカーの中に入れておくといいでしょう。新聞紙にも吸湿作用があるので乾燥材との相乗効果が期待できます。新聞紙は湿るのが早いので定期的に交換しましょう。
乾燥材に使われるシリカゲルは無数の穴が開いていて、その穴に湿気や匂いを取り込んで吸着します。乾燥状態のシリカゲルは青ですが、湿気を吸い切ったシリカゲルはピンクに変わります。
しかし、ピンクに変わったシリカゲルもオーブンやホットプレートなどで加温して水分を取り除いてあげることで再び青に戻って乾燥材として繰り返し使うことができます。
プラスチックバッグを利用する
湿気を防ぎ加水分解を抑制するために、風通しの良い開放棚を選んだり、スニーカーの中に乾燥材を入れて対策していても、それだけで不十分だと考える人にはプラスチックバッグを利用する対策もあります。
プラスチックバックにシューズを入れる際にしっかりと空気を抜き、外気と遮断することで湿気の吸収を抑え、加水分解の防止に繋がります。同時にたばこなどの臭いや生活臭、汚れなどがお気に入りのスニーカーに移ることも防止できます。
加水分解を起こしたスニーカーの修理方法
スニーカーが加水分解により、ソールが剥がれた状態になっても、まだ諦める必要はありません。接着剤で修復したり、ミッドソールを張り替えたり、修理業者に頼むといった方法があります。それらの方法を以下解説していきます。
接着剤で修復する
スニーカー本体とソールの間にはソールのりと呼ばれる接着剤が使われています。ソール本体ではなく、ソールのりの劣化のみであれば、接着剤で張り付けて修復することは可能です。ただし、ソール自体が劣化していれば、ソールそのものを張り替えて交換する必要があります。
ミッドソールを張り替える
スニーカーのソールはおおよそ3つの部分で構成されています。靴底のアウトソール、ちょうど足裏に接する部分がインソール、その中間部分でソールの中核を構成している重要な部品がミッドソールです。
歩いたり走ったりの運動での衝撃を吸収したり、履き心地にかかわってくる重要な部品がミッドソールです。ソール自体が加水分解で劣化している場合でも、ミッドソールだけであれば張り替え接着剤で接着することで修理や修復が可能なケースがあります。
修理業者に依頼する
接着剤で張り付けて修復できるものであれば、個人で対応できるはずですが、ミッドソールの交換を伴ったり、それ以上になると個人で修理を行うのは大変です。
スニーカーの修理業者はスニーカーの修理に関しては、豊富な経験と高い技術力をもっています。素人が独自に修理や修復を試みるよりは修理業者に任せるほうが安心です。
スニーカーの加水分解を防いで長く使おう
スニーカーにとっては加水分解を引き起こす水は大敵です。定期的に履いたり、複数の靴をローテーションして履いたり、収納は風通しの良い場所を選んだり、乾燥材を使用したりなど、工夫することで加水分解を防ぎ、お気に入りのスニーカーを1日でも長く使い続けましょう。