医療保険とは
「医療保険」とは、医療費が高額になった場合に備えるための民間の保険です。しかし、現在の日本には「国民皆保険制度」がありますので、医療費がそこまで高額になることはありません。しかも、医療費が一定額を超えた場合には「高額医療費制度」によって超過分については、払い戻し支給される仕組みがあります。
この一定額については後述しますが、これだけを聞くと、わざわざ「医療保険」に入る必要性があるのかどうか疑問に思うかもしれません。しかし、「公的医療保険制度」ではカバーしきれない部分があるために「医療保険」が必要とされているのもまた事実なのです。
国民皆保険制度とは
「国民皆保険制度」とは、全ての国民を「健康保険」に加入させる制度のことです。保険の加入者が保険料を出し合い、病気やケガになった場合に安心して医療が受けられるような仕組みになっています。「健康保険」には、自営業者などが加入する「国民健康保険」や各種組合(国家公務員共済組合や各企業の保険組合など)が管掌する「健康保険」があります。
その組織に所属する人が被保険者となり、その配偶者と扶養家族も加入できます。諸事情により働けない人は、「国民健康保険」に加入しますが、保険料減免措置があります。独身で健康な方は保険料が高いと感じるかもしれませんが、働いていない配偶者や扶養家族がいる方にはお得な制度です。
現在は共働き世帯が多いので、配偶者でも扶養家族に入っていないケースもあります。「健康保険」は「医療保険」のように、年齢ではなく収入で保険料が決まります。収入の高い人が低い人を支える相互扶助の仕組みです。高度成長期の日本だったら、50代・60代になれば収入も高くなりました。
しかし現在は、年齢と収入はリンクしなくなっています。病気になりやすい高年齢層でも安い保険料を支払うだけで、最新の治療を受けることができますし、50代・60代の独身者も珍しくなくなりました。
60代以上を高齢者とすると、毎年増え続けます。一方で60代以下の現役世代は減少を続けます。そうなると現役世代の負担を大きくするしかなくなり、「国民皆保険制度」は危機的な状況になると言われています。独身者が増え続けているので、「独身税」などという言葉まで聞こえてきました。
過去にブルガリアで「独身税」が導入された実績がありますが、逆に出生率が下がってしまい廃止されました。日本では2004年に国会の小委員会で話題になったことで一気に広まりました。
政治家は、独身が暮らしやすい社会ではなく、家族を作りたくなる社会を作ることができれば、「医療保険」の問題も含めて、様々な問題の解決の糸口になるでしょう。
高額療養費制度の自己負担額とは
「高額療養費制度」とは、同一の月に支払った医療費が一定金額を超えた場合に、超過した分についてはそれ以上負担をしなくてもよい制度のことです。一旦窓口では支払う必要はありますが、自分の年齢や年収に応じて決められた上限額を超過した分については、後日払い戻し支給されます。
ここでは「自己負担限度額」についてご説明します。「自己負担限度額」は「標準報酬月額」に基づいて、5段階に分類されます。「標準報酬月額」とは、基本給に加えて通勤や残業、家族、役職などの各種手当などを含めたものを1月当たりの報酬に平均化したものになります。臨時賞与や一定期間ごとに支払われる期間賞与は除きます。
「自己負担限度額」として区分アの方は、252,600円+(総医療費-842,000円)×1%となります。区分イの方は、167,400円+(総医療費-558,000円)×1%となります。区分ウの方は、80,100円+(総医療費-267,000円)×1%となります。区分エの方は、57,600円となり、区分オの方は、35,400円となります。
区分ア、標準報酬月額83万円以上。区分イ、53~79万円。区分ウ、28~50万円。区分エ、26万円以下。区分オ、低所得者(市区町村税の非課税者等)と区分されます。この区分は、70歳未満の方の区分となっており、70歳以上の方についての区分は別となります。
20代から60代までのサラリーマンとして想定される最も人数の多い層である、区分ウを例にとって計算してみましょう。総医療費が100万円かかった場合には、80,100円+(1,000,000円-267,000円)×0.01で、87,430円となります。区分ウの方は、医療費が100万円を超えると、「自己負担限度額」の上限は87,430円となります。
一時的に支払う必要はありますが、窓口で支払う30万円(3割負担)との差額(300,000円-87,430円=212,570円)が、後日払い戻し支給されます。
医療保険の必要性①自己負担額が高額
医療費がどんなに高額になっても、「自己負担限度額」以上の金額を支払う必要はありません。しかし、入院時の食費や差額ベッド代、身の回り品の購入費、病院への往復交通費などは公的保健の対象にはなりませんので自費で支払う必要性があります。入院が長期化すると、それだけ費用の負担も大きくなります。
実は差額ベッド代は病院の収入源の1つになっているため、高級病院では1日20万円を超えるところもあるようです。本人は望まなくても、病状によっては個室でないと対応できないということで個室を割り当てられて、退院時に差額ベッド代を請求されることもあります。
独身の方は大部屋でも気にならないかもしれませんが、家族のいる方はお見舞いがあったり、仕事の電話があったりと、個室の方が気を使わないと選ばれることが多くなっています。現在、差額ベッド代の全国平均が個室で約8,000円です。10日の入院で8万円、1か月の入院で24万円です。「医療保険」に加入する重要性がわかるのではないでしょうか?
これは女性限定になりますが、正常分娩の場合は公的医療保険の対象外となります。なぜなら病気ではないからです。ただ、「出産一時金」として、一児当たり42万円を支給する制度があります。正常分娩の平均的な費用は50万円程度ですので、窓口での支払いができれば「医療保険」の必要性はありません。
ただしこの金額には、妊娠中や出産時のトラブルは一切考慮されていません。しかも、子どもが生まれるので、当然物入りになります。何かしらのトラブルによって「高額医療制度」の適用になったとしても、一時的に窓口で医療費を支払う必要があります。
「医療保険」では、妊娠出産時の「入院・手術」費用、プランによっては「差額ベッド・産後リハビリ」まで補償されるプランもありますので、安心して出産に対応することができます。また、出産年齢は20代・30代が最も多くなります。20代・30代ではそこまで多くの貯蓄がある訳ではないので、「医療保険」の重要性はさらに高くなります。
女性の方に向けた「女性専用医療保険」も増えてきました。妊娠前に加入しているとお得な場合が多いので、20代・30代の独身女性、妊娠前の女性には「女性専用医療保険は」定番商品となっています。
高額療養費制度について
「高額医療費制度」について、いくつか重要な点があります。その1、一人もしくはその世帯で複数の診療科(内科や外科)を受診した場合や、入院と外来を受診した場合には、「自己負担額」を世帯で合算することができます。ここでいう世帯とは、被保険者とその扶養家族のことです。
その2、「高額医療費」として払い戻しを受けた月数が、直近の12か月で3月以上あった時には、4月目からは「自己負担額」がさらに引き下げられます。これを「多数該当高額医療費」と言います。区分ア、140,100円。区分イ、93,000円。区分ウ、44,400円。区分エ、44,400円。区分オ、24,600円。が自己負担上限となります。
前述の上限金額と比べていただくと、「高額医療費」の上限額がさらに引き下げられているのが確認することができます。
70歳未満の方の「自己負担額」の区分については既に述べました。70歳以上75歳未満の方の区分は少し複雑になりますので後述します。
自己負担額の内容
「自己負担限度額」については、年齢と所得で区分されます。前述した区分は、70歳未満のものになります。70歳以上75歳未満の方についてはこれから述べる通りとなります。また、75歳以上については「後期高齢者医療制度」となり、保険制度自体が変わるのでここでは触れません。
70歳以上でも、現役並みに収入のある方からは医療費を徴収する制度に変わりました。しかし、年金暮らしの方や、フルタイムでは働いていない方などはきちんと優遇されています。
75歳以上でも、現役並みに給料をもらっている方の負担は現役と同じになります。区分アは、現役並み所得者Ⅲとなり、「自己負担額」も同額です。区分イは、現役並み所得者Ⅱとなり、「自己負担額」も同額です。区分ウは、現役並み所得者Ⅰとなり、「自己負担額」も同額です。
低所得者Ⅰは、被保険者とその世帯全員の収入から控除額を引いた後の収入がない方で、個人毎の「自己負担額」は8,000円で、世帯毎の「自己負担額」は15,000円となります。低所得者Ⅱは、被保険者が市区町村税の非課税者等である方で、個人毎の「自己負担額」は8,000円で、世帯毎の「自己負担額」は24,600円となります。
現役並み所得者にも低所得者にも当てはまらない方は、一般所得者となり、個人毎の「自己負担額」は18,000円で、世帯毎の「自己負担額」は57,600円となります。はじめから医療費が高額になることが分かっている場合や、一時的にでも「自己負担額」が払えない方は「限度額適用認定証」を使用することをお勧めします。
「限度額適用認定証」は、加入している健康保険組合に事前に申請することで発行してもらうことができます。「限度額適用認定証」があれば、窓口での支払いは限度額までとなります。そして後からの払い戻しもありません。
医療保険の必要性②働けない期間がある
病気やケガによって働けない期間が発生した場合に、その期間の収入減少を補償するには「医療保険」の中でも後述する「就業不能保険」が適しています。大企業の会社員であれば、しっかりとした休業補償が準備されていることでしょう。しかし、自営業や個人事業主などでは、休業はそのまま収入減少に直結してしまいます。
20代・30代の方よりも、50代・60代の方がかかりやすい病気としては「糖尿病」「高血圧」「心疾患」などの生活習慣病由来のものがあります。年代に関係なく発症する慢性疾患は「腎臓病」「アレルギー性疾患」などがあります。これらの慢性疾患は、「高額医療制度」の対象になりにくいのです。
検査費用や教育入院などはありますが、「医療保険」の給付対象となりやすい「手術」や「入院」などの条件に適合しないのです。
症状が安定していれば定期的な通院と服薬治療で済みますが、治らない病気が多いので一生付き合う必要があります。20代・30代のうちに「医療保険」に加入していれば保障されることもありますが、50代・60代になってからでは、免責となってしまいます。
貯蓄がない場合は医療費が生活費を圧迫する
ケガや病気は、いつなるかがわかりません。そのため備えが重要になりますが、その備え、つまり貯蓄が十分でない20代や30代の方には「医療保険」が強い味方になります。50代・60代であれば十分な貯蓄もあるでしょうが、それでも高額の医療費は家計の大きな負担となります。
一時的に窓口に支払う金額、そして「高額医療費」の払い戻しまでの期間、治療期間などを考慮すると、最低でも半年から1年程度の生活費に加えて治療費や入院費が必要です。「医療保険」はこの不足部分をカバーするようになっています。
所得補償保険(就業不能保険)の利用を考える
「就業不能保険」とは、契約上の就業不能状態に陥った際に、給与と同じ形式で、毎月一定額の保険金を受け取ることのできる保険のことです。「就業不能保険」では、「医療保険」では対象になりにくい、長期療養(90~120日以上)や在宅治療・療養も補償されることが特徴です。
保険金額は5万円ごとに任意で設定が可能で、設定した金額によって保険料が変わります。就業不能になったら、満期まで保険金を受け取ることが可能です。似たような保険で、「所得補償保険」があります。こちらは、保険金額の設定は収入の60%程度となり、更新は1~5年、支払期間も1~3年となります。
大雑把に言ってしまうと、「就業不能保険」が生命保険に近い終身タイプの商品です。なので20代・30代から加入すれば、掛け金が安く済みます。一方で「所得補償保険」は損害保険に近い定期タイプの商品です。ですから、「所得補償保険」の効果的なかけ方としては、住宅ローンの支払いが一番厳しい40代・50代の方が10年間だけかける。
50代の方が、2人の子どもの大学進学が重なる5年間だけかける、などがおすすめです。もともとかけている「医療保険」の特約に「就業不能保険」が付けられればそれが一番なのですが、ない場合には、新たに「就業不能保険」だけ加入するのもよいかもしれません。
傷病手当金を受ける場合
「傷病手当金」とは、病気やケガなどで会社を休んだことにより十分な収入が得られない場合に支給される手当になります。ただし、条件が厳しいのでしっかりと受給資格を確認してください。その1、業務外の病気やケガであること。業務内での病気やケガになると労働災害となりますので、取り扱いが異なります。その2、就業できないこと。
その3、4日間以上仕事に就けなかったこと。この場合、仕事を休んだ3日間(待機期間)については、給与の支払いの有無は関係ありません。ですので、金曜日の夜にケガをして、月曜と火曜を休み、水曜から出勤した場合、土、日、月、火と4日間仕事に就けていませんので、支給対象となります。
その4、休んだ期間に給与の支払いがないこと。給与が支払われている間は、「傷病手当」は支給されません。
「傷病手当」が支給されるのは最大で1年6ヶ月までとなります。そして支払われる1日当たりの金額は、「標準報酬月額」÷30日×2/3となり、これに休業した日数をかけたものが支払われます。
医療保険の必要性③先進医療・自由診療など高額医療を受けたい
高度な医療技術のうち、厚生労働大臣が認可したものを「先進医療」と言います。一方で国内で未承認の治療法や薬剤などを用いた医療行為を行うことを「自由診療」と言います。「先進医療」は保険診療との併用が認められていますが、「先進医療」にかかる費用は全て自己負担となります。
「自由診療」は医師法・医療法の範囲内で行われる医療行為で、患者と医療機関の契約によって治療行為が行われます。「医療保険」の中には、この「先端医療」や「自由診療」を補償している商品もあります。
先進医療について
「先進医療」は厚生労働省に認められている治療法ですが、費用負担と実施できる施設が限られることが一般に普及しない理由です。なので、実施可能施設が多く「医療保険」での補償がされるようになってきた「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の実施例は年間1万件を超え、「先進医療」で最も術例が多くなっています。
平均費用も58万円と、手の届く値段になっています。その次に多い「陽子線治療」では、平均費用は276万円となりかなりの費用負担となります。病気の時に、費用負担が理由で「先進医療」をあきらめたくないという方は「先進医療」の補償が充実している「医療保険」に入ることをお勧めします。
自由診療について
「自由診療」は公的医療保険は全く適用されません。しかし、「医療保険」の中には「自由診療」による「入院」や「手術」であっても、給付金を受け取ることのできるものもあります。ご自分の保険の契約内容を確認してみてください。がん保険の中には、「自由診療」を補償してくれる商品も発売され始めてきました。
「がん」は遺伝性疾患であることが知られています。リスクの高い方は、がん保険を調べてみて「自由診療」を受けられる「医療保険」に入ることがおすすめです。そうすれば金銭面の負担を考えずに、最先端の治療を受けることができる可能性が高くなります。
医療保険の必要性④貯蓄が少ない
何度か書いてきましたが、「高額医療費」として後から払い戻しがされるにしてもまずは支払う必要があります。通院にしても、入院にしても長期になれば金額もそれだけ高額になります。貯蓄の少ない方にとっては、支払が滞ることで適切な治療が受けられなくなってしまうリスクがあります。
そうならないためには、お金がない、貯蓄がない20代・30代の若い方ほど「医療保険」に入る必要性が高いと言えるでしょう。
20代やフリーランスは貯蓄が少ない
貯蓄の少ない20代やフリーランスの方は、病気やケガであっという間に職を失ったり収入が得られなくなったりすることがあります。そうならないように、健康管理することはもちろん大切ですが、まだ保険料も安い年代ですので、「医療保険」に入っておくことで、将来に向けての安心を買うことになります。
年齢が上がってから「医療保険」に入ろうとすると、掛金が高いのに驚くと思います。若い独身のうちからしっかりと将来設計しておくことが重要です。
医療保険の必要性・年代別まとめ
病気やケガなどの緊急時の医療費については、年代に関係なく多くの人が心配しており保険や貯蓄などの形で備えをしていることが分かっています。また、生命保険会社のアンケートにはなりますが、「医療保険は生命保険よりも重要」と考えている保険加入者が多いことも分かっています。
「医療保険」の中でも貯蓄型が人気なことから、将来への備えとして「医療保険」を捉えている方が多くいます。
20代・30代前半の必要性
20代・30代前半、しかも独身であれば、気力も体力も充実しているし「医療保険」の必要性は感じないと思います。しかし、20代・30代がかかりやすい病気、例えば男女共通では糖尿病やうつ病などです。女性であれば、甲状腺疾患や月経関連の病気が20代からでも発症します。また、働き始めてから年数も少ないので十分な貯蓄もないことが考えられます。
そうした状況を考えると、「終身保険」への加入がお勧めとなります。「終身保険」は契約期間がなく、補償が生涯継続するタイプの保険です。格安な保険料で、補償が受けられます。年齢が若いうちに加入すると保険料が安いというメリットがあります。
40代なら40代、50代なら50代、60代なら60代になって、年代相応の補償内容プランに変更すればよいのです。「医療保険」の特約やプラン変更などは簡単にすることが可能です。
独身の場合
20代・30代で独身の方は、保険のことなどあまり考えたこともないかもしれません。なのでまずは、ケガや病気で働けなくなった場合のことを考えて、「死亡保障」よりも「入院保障」や「通院保障」の充実したプランを選ぶようにしましょう。そして余裕があれば、「就業不能保険」に入ることも検討してください。
自営業の方は、働けなくなるとそのまま収入がなくなってしまいます。そうならないためには「就業不能保険」への加入は重要です。特に独身の方は、入院した際に身の回りを助けてくれる方がいないと、意外に費用がかかってしまいます。
20代・30代といった年代もそうですが、独身、家族構成なども保険加入には重要の要素となります。独身であれば「医療保険」は必要ないと言われることもありますが、大きな病気をするリスクは独身・既婚には関係ありません。
30代後半・40代の必要性
30代後半・40代になると、配偶者や子供もいることが想定されます。教育費やマイホーム費用などの出費もあるでしょう。今までのような貯蓄を継続することは困難で、場合によっては貯蓄を取り崩しながら生活している方もいるかと思います。そんな30代後半・40代の方へは「定期保険」「定期特約」がお勧めです。
「定期保険」は、割安な保険料で大きな補償を受けられるのがメリットになりますが、掛け捨ての保険となります。ですから、人生の中で最もお金の必要なとなる数年間だけ、補償を厚くするという使い方には適しています。
もちろん今まで加入していた「医療保険」の見直しも必要です。20代や30代のような補償内容ではなく、40代には40代の補償内容があります。生活習慣病やがんのリスクが高くなる時期ですので、そういった特約を付与したり、場合によっては「医療保険」を丸ごと見直すことも必要になるかもしれません。
50代の必要性
50代になると、子どもも独立してお金がかからなくなり、住宅ローンのゴールも見えてくるころです。ここから先は長期入院などのリスクが高くなるので、「医療保険」の内容を充実させる必要性があります。また、将来を見据えた「介護保険」や「年金保険」の検討を始める時期となります。
50代では持病を持っている方も多くいます。また、死亡保険金が高額に設定されすぎているせいで、保険料が高額になっていることもあります。50代で保険を見直すポイントは、子どもの独立による費用負担減少と定年退職後の生活費です。
60代の必要性
60代になると「医療保険」の必要性は減少してきます。65歳になれば年金の支給が始まりますし、70歳になれば医療費もさらに安くなります。ですので、50代ほど「医療保険」は必要ありません。解約して、本当に必要な「医療保険」のみを残すようにしましょう。そうして老後の資金を蓄えて資産を減らさないようにしましょう。
60代以降になると、死亡率が上がってくるので「定期保険」の死亡保障の金額が安くなってきます。その割には、掛け金は変わりません。ですので、解約してしまって掛け金の分を生活費や貯蓄に回すことも有効です。
60代になれば、そろそろ人生の手仕舞いを考慮するべきであり、最低限の医療保障と葬祭費用のみあれば、高額な「医療保険」に加入し続ける必要性はあまりないと言えます。
独身なら死亡保険はいらない?
日本だけでなく、世界的にみても独身の人口が増えています。「苦労してまで結婚にこだわる必要がない」という考え方が広まってきているようです。その考え方自体はよいと思いますが、それならばしっかりと20代・30代のうちから資産形成をして将来に備える必要性があります。
50代・60代になってからでも結婚することはできます。しかし、資産形成は難しいでしょう。貯蓄が少ないのであれば、病気にかかった際のリスクはかなり高くなります。そうならないためには、50代・60代になってからではなく、もっと早い段階から「医療保険」に加入しておかなければなりません。
20代・30代で「医療保険」に入っていないと、50代・60代では条件がよくない状態での加入となってしまいます。
せめて葬祭費用特約は付けるように
「医療保険」なんて必要ない。貯金もない。という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、死後周りの方に迷惑を掛けないためには、葬儀費用くらいは残しておく必要があります。そのためには、最低限度でもいいので「生命保険」に加入して、「葬祭費用特約」を付けるようお勧めします。
そうしておけば、50代・60代になってから不慮の事態があっても誰かが金銭的な負担を負うこともなく、穏やかに葬儀が執り行われます。
医療保険で元はとれない
「医療保険」は民間企業が提供している保険です。つまり、被保険者が得をするようには設計されていません。そんな中でも、日本人がなりやすい病気で、保険会社も保障を手厚くしているのが「三大疾病」です。これは、「脳血管障害(脳卒中)」「心疾患(急性心筋梗塞)」「悪性新生物(がん)」のことです。
日本人の50%以上が罹患し、しかも、治療や入院も長期間になるケースが多くなります。「がん」であれば、「先端医療」や「自由診療」を検討する必要もあります。そんな時に、三大疾病特約のついた「医療保険」がお勧めです。
「脳血管障害」「心疾患」は50代・60代になってからの病気というイメージでしょうが、「がん」は、20代からでも発症する病気です。しかも若いと進行が早く、危険です。独身だから、「高額医療費制度」があるから、といって「医療保険」を検討しないのは、後で後悔することにもなりかねません。
医療保険が不要論
日本には「国民皆保険制度」があります。さらには「高額医療費制度」まであり、一定金額を超える医療費については、それ以上自己負担することはありません。さらに、業務上のケガや病気の場合には、労災保険から休業補償給付が支給されます。(通勤途中のケガなどであれば休業給付となります)
これは、賃金が支給されない日が4日以上あるときに、4日目以降から「基礎日額」の60%相当の金額が支給されるというものです。この「基礎日額」は直近3ヶ月の平均賃金とされます。
これだけ公的な保険が手厚いのに、「民間の医療保険が果たして必要なのか」という声は確かにあります。しかし、本当にそうなのでしょうか。詳細に検討してみましょう。
社会保険が手厚いので不要
「社会保険」が手厚いという声があります。しかしそれは、被雇用者のみ、つまりサラリーマンに手厚い制度なのです。必然的に自営業の方やフリーランスの方には補償が手薄になります。もうひとつ、「高額医療費制度」には、大きな落とし穴があることを理解しておく必要があります。
ひとつ目は、月をまたいだ医療費の合算ができないことです。医療費が高額になっても、同一月でなければ合算対象にならないので、2月に分かれてしまうと「高額医療費制度」の対象にならないことがあります。
ふたつ目は、同じ保険証を使用していないと医療費の合算ができないことです。現在は共働き世帯が多いので、保険証も家族内で異なるケースがあります。そうなると、保険証が異なるので、医療費の合算ができません。「高額医療費制度」上の同一世帯とはみなされないからです。
そんな時に頼りになるのは「医療保険」です。契約時の条件はありますが、入院一時金、先進医療、高額医療、差額ベッド代、など想定されるさまざまなコストに対応しています。
貯蓄で備えた方がいいので不要
「高額医療費制度」によって、医療費は既定の範囲内で収まります。それなら、しっかりと貯蓄することで対応できるので、掛け捨てとなる「医療保険」は不要ではないかという説です。確かに、公的保険では対応できない、交通費や差額ベッド代などくらいであれば長期入院であっても貯蓄で対応できるかもしれません。
しかし、勤務できないことによる収入減少が一番の問題となります。大企業や福利厚生がしっかりとしている企業に勤務している方は問題ないでしょう。それ以外の方は長期に職場から離脱することで、貯蓄は減るし、雇用の継続にも大きなリスクが伴います。
「医療保険」では、「休業補償保険」や「就業不能保険」に加入ができ、自営業者やフリーランスの方、貯蓄の少ない20代・30代の方でも安心して治療に専念することができます。
使い勝手が悪いので不要
「医療保険」で給付を受けることができるのは、契約上の条件に適合した場合だけになります。現在「医療保険」で主流の商品は、入院や手術に重きが置かれています。通院だけが長くなる慢性疾患の方には、不利な条件となっています。また、それぞれの「医療保険」毎に疾患の定義が異なったり、給付対象も異なったりするケースもあります。
誕生日をまたいで年齢が変わったことで60代となり、給付対象から外れたり、A保険では給付対象となる「高血圧」が、B保険では給付対象にはならかったりします。このような複雑な「医療保険」にわざわざ加入せずとも貯蓄や「高額医療費制度」で対応可能、という意見の方も一定数います。
医療保険は医療費が高い場合や貯蓄がない場合必要性が高い
「医療保険」の重要性は、自分自身が病気になった時に分かります。支払い金額が高額になりますので、収入の少ない方は貯蓄がどんどん減っていきます。それを見ると、このまま治療を続けられるのか不安になると思います。ですので、将来起こるかもしれない危機に対して、一定の保険料を払う代わりに補償を約束してもらうのが「保険」です。
「医療保険」は医療分野に特化したものです。20代・30代でもかかる病気もあれば、50代・60代にならないとかかりにくい病気もあります。当然ですが、リスクに見合った保険料が設定されています。
家族に費用のかからない独身の時にしっかりと「医療保険」を検討して加入しておくことで、将来のリスクを減少させることができます。
「医療保険」は万能ではありませんが、「高額医療費制度」の保障できない部分をカバーするようにして、「医療保険」を掛けすぎないように、適切な保障を設定することが大切です。「医療保険」を掛けすぎると、保険料が高額になりすぎて、支払いが負担になります。安すぎると、いざとなった時に金銭的な負担が大きすぎます。
貯蓄が少ない、医療費が高額になってくる50代・60代以上、独身でも病気になるリスクが高い、などの場合には「医療保険」の必要性が高いと言えます。