ゲートルとは?
ゲートルのことを知らない、または初めて聞くという人が多いのではないでしょうか。ゲートルとは時代劇の映画に登場する旅姿の人や飛脚が足に巻いているもののことです。
実は時代劇だけでなく現代でもいろいろな使い方でゲートルは使われています。スポーツ選手が足にテーピングをするように足を保護する機能と効果があるグッズです。
身近なところにも実は使われています。スパッツやレギンスなどファッションで利用されているものや地下足袋などもゲートルの1種なのです。
足の付け根からふくらはぎの上までの部分をしめつける付け方で、足のむくみや疲れを防ぐ効果があり、その部分に取り付けるタイプや長靴のように履くタイプ、包帯のようにぐるぐると巻くタイプと付け方に種類があります。
脚絆とも呼ばれている
ゲートルはフランス語で日本語では脚絆(きゃはん)と呼ばれています。脚絆は登山をする人や林業従事者、とび職、消防団など主に屋外で作業する人たちが、足の保護や危険な作業で怪我を防止するために使う必須のグッズです。
また雪国では雪遊びをするときや、通学や通園するときに雪が長靴に入ってしまうのを防ぐ使い方で脚絆が活用されています。このように脚絆は意外に身近で、いろいろな場面で活用されているグッズです。
ゲートル(脚絆)の歴史
ゲートルはフランス語で英語ではゲイター(GAITER)とも言います。もともとは長い距離を行軍する軍隊の歩兵のために開発されたもので、足の疲労や機敏性を助ける効果があります。包帯状にぐるぐると巻く「巻きゲートル」が主流で、19世紀から第二次世界大戦まで世界の軍隊の軍装備として用いられていました。
日本の軍隊でも戦前まで使用されていました。昔の軍服の写真などに足元をきりりと縛ったスタイルがよくあります。しかし着脱など使い方が不便で高温多湿の環境下では蒸れてしまい害虫の温床になりやすいことから、編上げ式の半長靴の普及とともに廃れたようです。
江戸時代に流行
日本では江戸時代に長距離を歩く伊勢参りなどの長旅に足の保護のために脚絆(巻きゲートル)が全国的に流行しました。時代劇映画などで旅姿といえばワラジに脚絆をつけ編笠をかぶったスタイルがよく登場します。
現代では膝から下の部分をしめつけることにより、足の疲労や行動性をアップさせる効果が科学的に裏付けられていますが、当時は生活の知恵として考案されたと推察できます。1日の歩きの行程を終え宿に着いて脚絆を外した時の開放感はひとしおだったのではないでしょうか。
飛脚の足の保護に使われていた
江戸時代の職業に飛脚(ひきゃく)という現在の郵便配達のような仕事がありました。当時の交通手段には自転車やバイク、自動車はありません。馬やかごにに乗るのは身分の高い武士以外は許されないので、飛脚は歩くか走ることしかできません。
手紙を届けるのは急を要す場合が多いので、飛脚は走ることが多くなり当然足に負担がかかります。そのために足の保護のために飛脚には脚絆が必須のアイテムだったのです。
ゲートル(脚絆)は鬼滅の刃にも登場!
「鬼滅の刃(きめつのやいば)」は2016年11月号より「週刊少年ジャンプ」に連載されたコミックで、大正時代を舞台にした剣士の物語で、主人公が家族を殺した鬼と呼ばれる敵と戦い、鬼と化した妹を人に戻すことに悪戦苦闘する人気の漫画です。
大正時代といえば日本を開国した文明開化から半世紀が経っています。しかし未だ西洋文明が定着仕切れずに江戸時代の和の文明が混在する時代です。
そんな時代背景をもとに「鬼滅の刃」には江戸時代の名残の「ゲートル(脚絆)」のスタイルがかなり多く登場しています。ゲートル(脚絆)を登場させることで混沌とした大正時代を描こうとしているのかも知れません。
コスプレなどに使える!
「鬼滅の刃」に登場する脚絆(ゲートル)や袢纏などのアイテムが、コスプレファッションとして通販などで販売されているのをご存知でしょうか。
袢纏(はんてん)や脚絆の使い方は、江戸時代などのノスタルジックでタイムスリップ感を表現するアイテムとして利用されています。コスプレで脚絆を着こなせばインパクトがあること間違いありません。脚絆をはいて袢纏をまとい刀をさせば「鬼滅の刃」そのものに変身できます。
タイムスリップやインパクトのあるコスプレに興味のある人や、オリジナリティやサプライズを求める人は「鬼滅の刃」のコスプレに挑戦してみてはいかがでしょうか。
ゲートル(脚絆)の機能性
ゲートル(脚絆)は江戸時代より今日に至るまで様々な分野で色々な使い方をされてきたアイテムです。江戸時代には飛脚や旅支度の必需品として、近世では軍隊の軍服のアイテムとして、現代ではスポーツや登山のグッズ、屋外作業や危険な職業で、ファッションやコスプレなどの使い方がされています。
脚絆は足に装着するグッズです。それでは具体的にそれぞれの分野で、どのような使い方をして、どのような機能や効果があるのかを解説します。
①足を保護
脚絆の基本的な機能は、足を締め上げることにより疲れを軽減させ歩行をサポートすることですが、それだけでなく足を保護し怪我から守る効果があります。
例えば登山や沢歩きでは、足が非常に重要で足が動かなければ遭難につながる危険があります。脚絆は足にかかる負担を軽減するだけでなく、うっかり足を滑らせた時に怪我を防止する機能があります。
また草刈りや山菜採りで草刈り機や鎌を使う場合に、脚絆をつけていればうっかり刃が足に当たって怪我をする危険を防止する効果があります。このように脚絆には足の疲労を軽減する機能の他に、怪我などから足を保護する効果があるのです。
②むくみ防止効果
足がむくむと動きが鈍くなったり、靴が履けなくなっり色々な弊害が出てきます。むくみの原因は血液やリンパ液が脚にたまることで起こります。
長時間立ち仕事をしたり、長い距離を歩いたりすると重力の影響で体の下の方、つまり脚に血液やリンパ液がたまってむくんでしまいます。
脚絆を脚につけることで血液やリンパ液の流れをサポートしてむくみを防止する効果があります。事務仕事などで長時間座ったままの人にも、むくみを防止するのに脚絆が利用されています。
③衣類の汚れも保護
脚絆の機能には、山歩きや庭作業で草木や泥でズボンなどの衣服が汚れるのを保護する効果があります。また脚絆は雪山などで靴の中に雪が侵入するのを防ぎ、体温が低下するのを抑える機能があります。冬山での体温低下は凍傷などで動けなくなる可能性があり遭難や命の危険につながります。
このように脚絆には、足の疲れやむくみ、怪我を防止するだけでなく衣服の汚れや靴に雪や泥などの異物が侵入するのを防ぎ体温低下を抑える機能や効果があります。
ゲートル(脚絆)の種類
一口にゲートル(脚絆)といっても用途や機能により様々な形やタイプがあります。スポーツで使うサポーターやスパッツ型、ソリやスノボーなどのスノーカバー型、屋外作業用、特殊な職業用、登山用、巻ゲートル型など色々です。
また材質も布製、革製、スチールピンの付いたもの、伸縮性があり靴下のように履けるものから、ゴムの長靴と一体になっている脚絆まであります。それでは脚絆の種類別に、機能や特徴・用途などを紹介します。
①登山用ゲートル
登山用の脚絆には、主に縦走など長距離登山に向いているサポートタイツと疲れやむくみを改善するコンプレッションタイツの2種類があります。
サポートタイツは、筋肉に圧力をかけて運動のパフォーマンスを向上させると同時に膝や腰などの関節を保護して怪我の防止の機能を持っています。実際に履いてみると予想以上に締め付け感が強く窮屈なので驚く方が多いようです。
しっかりと締め付けて固定することで、筋肉の不要な動きを抑制して軽快な足運びをもたらす効果があります。安定的なパフォーマンスで登山をする人が好んで履く脚絆(タイツ)です。
コンフレッションタイツは、リンパや血流をサポートするために部分によって着圧が違うタイプの脚絆(タイツ)です。足首の辺りから上に向かって徐々に圧力が弱くなっていき、よく動く部分の血流を促進して疲れにくい登山をサポートする機能があります。
このほか雪山登山や沢登り用は、上記2種のタイツ型とは違い靴と脚絆が一体となっていて、靴底には滑り止めのピンがついて滑落を防止し、靴と脚絆が一体になっているので中に雪や水の侵入を防ぐ機能があります。
タイツ型のような動きやすさより安全や危険防止を重視した重装備の脚絆になっています。この他やや軽装備の防水泥除けなど悪天候対策の機能がある登山ゲーター(脚絆)もあります。
②エイサー用
エイサーとは、沖縄や奄美地方のお祭りで旧盆に先祖の霊を歌と太鼓や踊りで送り迎えする伝統芸能です。エイサーの時に身にまとう白と黒をデザインした独特の衣装として着用されるのがエイサー用脚絆です。
エイサーでは長時間踊り続けるので、足やふくらはぎの疲れを軽減するのですが、独特のデザインが粋でカッコイイと人気があります。沖縄地方だけでなく他の地域の祭りでも使う人がいるようです。
③チェーンソー防護機能脚絆
チェーンソーは山林で木を伐採するときや木材を加工する時に使う電動のノコギリです。チェーンソーは使い方によって思わぬ方向に跳ね上がることもあり危険が伴います。その時に足とすねの保護のために着用するのがチェーンソー防護機能脚絆です。
すねと足の甲をバンドで保護するようにつけることが可能で、ブーツでも足袋でも付け方が簡単な構造になっています。チェーンソーなど危険を伴う作業する時には足の保護のため着用することをおすすめします。
④メッシュの脚絆
メッシュは通気性のある素材なので、足を保護したいけれど暑い季節やスポーツで汗をかく時には通常の脚絆では蒸れることが心配です。そんな時にメッシュの脚絆が重宝です。
またメッシュの脚絆には反射材がついているものがあり、交通事故などを防ぐ効果があります。フリーサイズでしかも着脱はマジックテープなので使い方が非常に楽です。夏場やサイクリング・夜間作業をする人におすすめの脚絆です。
⑤軽作業向け保護脚絆
軽作業向け保護脚絆は、ガーデニングや農作業など屋外での作業向けの脚絆です。ガーデニングなどで鎌やシャベルで足を傷つけたりしないよう保護の目的と泥などで衣服が汚れるのを防ぐ効果があります。
山菜採りなどで山に入った時にズボンの下に身につけておけば、藪などに生えているトゲのある草などから足を守り汚れも防ぐ機能があります。長すぎないので付け方や着脱も簡単なので便利な脚絆です。ただ疲れ防止にはあまり効果がないようです。
⑥消防団向けの脚絆
厚手の帆布(ハンプ)を使った頑丈な脚絆で、消防のポンプを操作する時にすねを怪我しないように保護する消防団専用の製品です。
付け方は牛革製のバンドでしっかりと固定するタイプです。また足首の周りをしっかり覆うような構造のため、靴紐を引っ掛けてしまうアクシデントを防ぐようになっています
⑦巻き脚絆
巻き脚絆は、日本では江戸時代の長旅や飛脚用として西洋では軍隊の行軍用として開発された、もっともオーソドックスなタイプの脚絆です。付け方が難しいことから一時は廃れかけましたが、布の材質の進化やコミックやコスプレファッション、サバイバルゲームなどの影響で人気が復活してきた脚絆です。
巻き脚絆のメリットはフリーサイズで、脚の締め方の具合や締め付ける場所を自由に変えることができることです。そのために一度巻き方をマスターした人には絶大な人気があり、手放せないアイテムになっています。
付け方が難しい
巻き脚絆の付け方は、包帯のように脚に巻きつけていくのでワンタッチではできません。もちろん脱ぐ時にも同様に手間がかかります。付け方は商品の説明書にも書いてありますが、旧日本陸軍の巻き方が参考になります。
まず足首に2巻きしてから3巻き目で折り返します。4巻き目ももう一度折り返します。この折り返すのが付け方のポイントになります。そのあとは膝下までズボンの上から解けない程度に締め付けながら巻き上げていきます。
あまり強く締め付けるとふくらはぎがうっ血して痛くなるので注意してください。巻き終わったら締め紐をひざ下で1周させ斜め下の足首まで伸ばします。
足首で1周させた後バッテンの形でひざ下まで紐を締め上げ残りの紐をぐるぐる巻きにして側面で巻き止めれば完成です。締め紐の止め方は他にも色々あるようです。
ゲートル(脚絆)の使い方
脚絆は、江戸時代に飛脚や長旅をするために生活の知恵として生まれたアイテムですが、現在では様々な用途で使い方や種類も多彩になっています。
趣味やスポーツのグッズとして、作業をする時に脚を保護するため、祭りの衣装のグッズとして、ファッションアイテムなど色々な使い方がされるようになってきました。1度は脚絆を履いてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
効果に合わせて種類を選ぶ
脚絆の種類は数え切れないくらい豊富に販売されています。脚絆を選ぶ際には、使い方と機能・効果を考えて選ぶことが大切です。
効果には脚を疲れさせないため、むくみを抑える効果、足の怪我を予防するため、衣服の汚れを防止するため、など脚絆の種類によってそれぞれ効果に特徴があります。自分が何をするために脚絆を履くのかを考えて、その作業に効果のあるものを選ぶようにしましょう。
ファッションアイテムとしても利用可能
脚絆には、お祭りの粋な衣装としても欠かせないアイテムです。祭りの衣装には機能性とファッション性の両方があります。どちらを優先するかで選び方も変わります。
また実用的なだけでなくファッショナブルなデザインの脚絆もあります。着こなし方を工夫することでファッションアイテムとしても利用できます。特殊な例では江戸文化を現代に取り入れたコスプレにも利用可能なのが脚絆です。
ゲートル(脚絆)を使ってみよう!
ゲートル(脚絆)は江戸時代に流行した脚を保護するアイテムですが、現代では生地の素材や技術の進歩により、使い方や使う場面が多方面に多彩に広がっています。
脚を保護するという基本的な機能だけでなく、趣味やスポーツ、祭りの衣装、ファッションアイテムとしても利用されるようになっています。自分にあった用途やスタイルでゲートル(脚絆)を使って人生を豊かに楽しんでください。