助教の平均年収は550万円程度
大学の研究職の一つに助教と呼ばれる職名があります。大学の研究職のファーストステップに当たる職です。
以前は助教ではなく助手とか研究助手などと呼ばれていました。しかし大学には研究助手のほかに実験助手や実習助手などという職もあります。これらを区別するために2007年に研究助手を助教、教育専門の助手を単に助手と呼ぶことになりました。
この助教の平均年収は約550万円というデータがあります。平成25年度の統計に基づく助教の平均年収です。もちろん助教の年収は大学によっても違うし、年齢によっても違うので、それらの全体を平均した助教の年収です。
助教の年収は大学により4~600万円の違いがある
上に助教全体の平均年収は約550万円という数字を出しましたが、これは国立大学の助教も私立大学の助教も含めた日本中すべての大学の助教の年収を平均したものです。
しかし国立大学の助教と私立大学の助教、また大学病院の助教では年収に違いがあります。国立大学の助教の年収は400~450万円、私立大学の助教の年収は500~600万円、大学病院の助教の年収は550~650万円となります。
助教にもボーナスはある
助教は研究職で大学の常勤スタッフですから、もちろん助教にもボーナスはあります。以下に平成25年度の平均年収と国税庁が出している年齢別階層年収から算出した助教の年齢増加によるボーナスの予想推移のデータを掲げます。
20~24歳は110.4万円、25~29愛は130.4万円、30~34歳は149.5万円、35~39歳は154.7万円、40~44歳は173.8万円、45~49歳は194.7万円、50~54歳は208.6万円、55~59歳は206.8万円、60~65歳は140.8万円となります。全体を平均した値は約120万円となります。
助教の生涯賃金の予想図
助教の平均年収については上に記しましたが、今度は助教の年齢別の年収予想推移とそこから推定される助教の生涯賃金について述べてみます。これは上記の平均年収と国税庁の年齢別階層年収のデータより算出したものです。
年齢20~24歳は年収441.4万円、25~29歳は471.4~521.4万円、30~34歳は497.9~597.9万円、35~39歳は514.7~618.7万円、40~44歳は574.2~695.2万円です。
45~49歳は656.6~778.6万円、50~54歳は724.2~834.2万円、55~59歳は717.3~827.3万円、60~65歳は463.1~527.3万円、となります。
上記のデータより助教の生涯年収(生涯賃金)を推定してみると、2億9,894万円となり日本の平均生涯年収(生涯賃金)より9,275万円高くなります。
助教になる年齢の平均は35~40歳
助教になるには大学院の博士課程を修了して博士の学位を取る必要があるので、最短で27歳以上の年齢になります。従って助教の約90%が30代から40代の年齢層に属します。助教の平均年齢は大体35~40歳です。
日本における30代後半の平均年収は約440万円です。一方、助教の平均年収は初めにご紹介した通り約550万円なので同世代で比較すると助教の方が日本全体の平均より高い年収を得ていることになります。
大学教員の階級一覧
大学教員と言っても研究職の教員の階級についてご紹介します。最高位は教授、その下に准教授があります。准教授はかつては助教授と呼ばれていました。その次に講師、そして一番下が助教となります。
昔は1つの研究室を教授が主宰していて助教授、講師、助手が一人ずつその研究室に属し、上のポストが空くのを待って順に階級が上がって行くという仕組みがありましたが、今は助教は任期制で採用され任期が切れると更新されるかどうかわからない、という厳しい状態に置かれています。
助教と助教授は違うことに注意
2007年4月に学校教育法が改訂され、大学教員の職位の呼び名がいくつか変わりました。そして以前は「助教授」と呼ばれていた職位が「准教授」ということになり、以前は「助手」と呼ばれていた職位の内の研究職の助手が「助教」ということになったのです。
従って助教授は旧制度の職位で「助教」は新制度の職位であり、助教授と助教はまったく別です。また新制度の下でも「助手」と呼ばれる職位はありますが、これは研究職ではない助手のことです。
助教の国立・私立大学の年収の違い
助教の年収の国立大学と私立大学による違いを検討してみます。先ず、国立大学の助教の年収はどのようにして決まるのかを見ます。
国立大学の独立行政法人化は1999年の閣議決定により始まり、2001年に実施されました。これにより国立大学の教員は助教も含めて国家公務員ではなく準公務員となり、年収も各大学ごとに教授会で決定するのですが、大体国家公務員の給料表に準拠しているので年収もほぼ同じです。
これに対して私立大学は一種の私企業ですから私立大学の経営主体である理事会で教員の年収も決められます。従って各大学の経営状況や学生数などによって助教の年収の額にも大きな違いが出て来ます。
年収は国立より私立の方が高い場合が多い
上に国立大学と私立大学の教員の年収の決まり方についての違いをご紹介しました。では助教の年収は国立大学と私立大学のどちらが高いでしょうか?初めにご紹介したように、国立大学の助教の平均年収は400~450万円、私立大学の助教の平均年収は500~600万円です。
もちろん、特に私立大学は上に述べたように助教の年収にも大学間の差が大きいのですが、平均年収で見る限り年収は国立より私立の大学の方が高い場合が多い、と言えます。
上記の数値は助教の平均年収ですが、助教に限らず一般に大学教員の平均年収も私立の方が国立より高いです。しかし年収が高い代わりに私立大学の方が教育義務や経営関係の仕事にも時間を取られて研究はしにくい傾向があり、一概に年収だけで私立大学の方が有利とは言えません。
助教の仕事内容
上に大学の助教という職の年収について検討して、全体の平均年収、国立大学と私立大学の助教の年収の違いなどについてご紹介しました。
さて今度は大学の助教とは一体どんな仕事をしているのかということ、つまり助教の仕事内容について調べてみます。
メインは研究活動
助教は大学の研究職ですから、助教の仕事としてメインになるのは研究です。1990年代の終わり頃から日本の科学技術政策は世界を相手の競争力をつけることに的を絞り、業績主義、成果主義が強調されています。
その一環として大学教員の任期制も導入され、特に助教は任期付きで採用されるようになったので、研究で良い仕事をして業績を出すことが求められます。
講義をすることもある
助教の仕事としては自分の研究の他に学生に講義をすることもあります。但し教授、准教授、講師などに比べれべ講義をする時間は少ないと言えます。他に試験の問題の作成や採点の仕事もあり、また、大学院生の研究の相談相手になることも助教の大事な仕事に数えられます。
実績が増えれば講師になり年収が増える
助教は大学の研究職の一番下の段階で、その上に講師という職があります。助教が良い研究業績を増やせば講師に昇進する機会も出て来ます。
そうすれば年収も増えます。因みに平成25年度の講師の平均年収は724万円で、同年度の助教の平均年収550万円よりはるかに高いです。
助教になる方法
助教は大学の研究職の第1歩です。大学の研究者を目指すのなら、先ず助教になる必要があります。その助教になるためには何が必要でしょうか?
まず必要な学位、次に必要なキャリア、そして助教のポストの推薦をもらう機会や公募の機会などについてご紹介します。
①学士・博士号を習得する
助教になるために必要な学位の第1は学士の学位です。大学の学部を卒業して学士の学位を取得します。その後大学院に進学してまず最初の2年間で修士の学位を取得します。
次に必要な第2の学位、博士号の取得です。大学院で修士の学位取得後さらに3年間の博士課程を経て博士論文を書き、論文審査に合格すればやっと博士の学位が取得できます。
②ポスドクとしてキャリアを積む
博士の学位を取得した後すぐに助教になれるわけではありません。現在の日本では博士号を取得する人の数に比べて助教のポストの数ははるかに少ないです。
従って助教のポストがみつからなければポスドク(ポストドクターの略称)という任期付きの研究職についてキャリアを積み、助教になるチャンスを待たなければなりません。ポスドクの収入は奨学金のような形で支給され、年収は200~300万円と低いです。
③推薦・公募で助教になる
ポスドクとして良い研究成果を出すと、教授から助教のポストを勧められることがあります。その教授が推薦状を出してくれて、その研究室の助教になるというチャンスです。
しかしもっと普通に助教になるチャンスは、ある研究室の助教の公募に応募して選考に合格することです。選考に合格するためには優れた業績を出して評価される必要があります。公募のチャンスもなかなかなく、何年もポスドクを続けた挙句、研究者になる道を諦める人もいます。
助教は大学教員の中では階級が低い
大学の職員で助教と呼ばれる職は2007年にその呼び名が定められた職でそれ以前は助手とか研究助手と呼ばれていました。
大学の研究職の第1歩に当たる職で、大学の研究者を目指すなら先ずこの職に就かなければなりません。
この助教という職の平均年収、国立大学と私立大学の助教の年収の違い、助教の生涯賃金の予想、助教の仕事内容、助教になる方法などについてご紹介しました。現在日本において研究者として歩む道は極めて厳しい競争に曝されています。