「ご報告いたします」の意味とは
まず初めにこちらでは「報告」という言葉の意味を説明しましょう。報告とは既に終了した任務・調査や業務を行った際に、その経過や結果について知らせる行為・内容を指します。
この経過や完了したことを知らせるのが報告で、ビジネスシーンにおいては報告するのは部下から上司へ、後輩から先輩へという流れになるのが一般的です。また社外の方へ報告する場合も多いので、上司・先輩・社外の方を敬う「ご報告いたします」という言葉を使用することになります。
「ご報告いたします」の由来
報告の「報」は音読みだと「ほう」訓読みでは「むくいる」と読み、知らせる・むくいる・こたえる・お返しをするという意味があり、「告」は音読みだと「こく」訓読みでは「つげる」と読み、話して知らせる・教える・広く知らせる・訴える・申し出る・つげるなどの意味があります。
これらのことから「報告」の由来は、「告げ知らせる」から来ているということが言えます。そしてビジネスのシーンにおいては、尊敬語より謙譲語が使われることが一般的であることから「報告する」の謙譲語である「ご報告いたします」が使われるようになりました。
ちなみに今やビジネスシーンで基本となる「報・連・相」は、1982年に山種証券の山崎社長が風通しの良い会社作りの手段としてこの言葉を思いついたことが由来となっています。
「ご報告いたします」の特徴
社内での打ち合わせ・会議、取引先との話し合いなどビジネスシーンで多く使われる「ご報告いたします」は、とても便利な敬語表現です。大勢の人の前で行うプレゼンテーションなどでも使用されることがあるのではないでしょうか。
そんな「ご報告いたします」という言葉は、使う場面や相手によって使い分けをしなければならない敬語表現だという大きな特徴があります。
使い方を間違えると常識のない人だと思われたり、大勢の前で恥をかいてしまうかもしれません。こちらでは「ご報告いたします」の特徴・使い方や注意点・例文を交えて説明していきますので、良識あるビジネスマンとして「ご報告いたします」の正しい使い方をマスターしましょう。
「ご報告いたします」は間違い敬語ではない
ビジネスシーンで頻繁に使われる「ご報告いたします」という表現ですが、間違った敬語だと思っている方もいるのではないでしょうか。しかし「ご報告いたします」は、間違った敬語ではないのです。
「ご報告いたします」は適切な使い方をすれば、ビジネスシーンで上司・先輩・取引先との信頼関係を深めることも可能なので是非こちらの記事を参考にしてみてください。
「ご報告いたします」を間違い敬語と感じてしまう理由
「ご報告いたします」は正しい敬語表現であるにも関わらず、なぜ間違った敬語だと認識されてしまうことがあるのでしょうか。その原因は「ご報告」の「ご」の部分に隠されています。
敬語は大きく分けると尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類があります。相手自身や相手の物・行動を高めて敬意を表す尊敬語。謙譲語は自分自身や自分の行動を謙譲し、へりくだることで相手を高めて敬う表現方法。丁寧語は「お・ご・御」などの接頭語を付け、聞き手に直接敬意を表す敬語です。
ビジネスシーンで一般的に使用される謙譲語にも二種類の使い方があります。まずは自分を低めて相手に敬意を表す使い方、もう一つは聞き手に敬意を示すために使う敬語で「いたす」の他に「もうす」「おる」「まいる」などがあります。
「ご報告」は尊敬語の「ご」を使って敬語にしているように見えます。尊敬語とは相手の行為に使うものなので、「ご報告」を尊敬語とし使っているなら「ご報告いたします」は間違いです。
しかし「ご報告いたします」は、尊敬語ではなく謙譲語として使っている点がポイントです。先にも説明しましたが、ビジネスシーンにおいては尊敬語ではなく謙譲語を使用するのが一般的。「ご報告いたします」も謙譲語として使用しているので正しい敬語なのです。
社内の人間のことを社外の方に話すとき「弊社の○○がおっしゃっていました」という使い方は間違いで、正しい使い方は「弊社の○○が申しておりました」と謙譲語を使う表現になります。
「ご報告いたします」が正しい敬語である理由
「ご報告いたします」が正しい敬語である理由は、先にも記したように「報告」の尊敬語として「ご報告」としているのではなく、「報告する」という行為を謙譲語として表現していると判断すれば敬語として正しい使い方だと言うことが出来るのです。
謙譲語の基本である「ご~いたす」の語尾に「ます」が結びついた「ご報告いたします」は、基本にかなった敬語。「ご挨拶いたします」「お願いいたします」も同じ使い方で正しい敬語です。
しかし「お伺いいたします」という表現は、「行く」の謙譲語である「伺う」を使っているのに、更に「お~いたす」という使い方をしているので二重敬語となります。この場合は、「伺います」「お伺いします」という使い方をしましょう。
この「いたします」は、「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語の「ます」が付いた言葉で、相手への敬意を払う表現となります。また謙譲語にさらに丁寧がついた「いたします」には、「~させていただきます」と率先して自分から相手のために何かをするという意味も含まれています。
また「いたします」には漢字表記もありますが漢字の「致します」は通常の動詞で、ひらがな表記の「いたします」は補助動詞となります。
このことから「ご報告いたします」もひらがなで表記するのが正しい使い方で、ビジネスシーンで最も多く使われる「よろしくお願いいたします」もひらがな表記が正しい書き方となるのです。
「ご報告いたします」の類語
「ご報告いたします」の類語としては、「ご連絡いたします」があります。連絡は「知らせる」という点において同じ意味を持つ類語ですが、報告は既に終了していることに関して知らせるという意味に対し、連絡は現在進行形の事柄について知らせるという点に違いがあります。
「ご報告いたします」には物事の展開や結果を伝える意味があり、「ご連絡いたします」には事実や予定などを知らせることを指します。連絡は自分の感情は一切関係なく客観的に知らせる行う作業をすればよいだけですが、報告は自分のミスなども伝えなければなりません。
ミスを伝えなければならない場合は精神的に気まずさを感じることもありますが、報告とは現状を上司や関係者に正確に伝えることを指すので、自分のミスを報告するのもとても重要な業務です。
「ご連絡いたします」と同じように使用する「ご連絡申し上げます」の二つに明確な違いはありませんが、「する」の謙譲語である「いたします」より「申し上げます」の方が丁寧な表現です。
それでは「ご報告いたします」と「ご報告させていただきます」は、どのように違うのでしょうか。「ご報告させていただきます」は相手の許可を受けている・恩恵を受けている場合に使用する表現で「させてもらう」という気持ちを伝える時に使います。
「ご報告いたします」の英語表現
ビジネスシーンにおいては、英語を使用することも多々あります。日本語でもビジネスに適した使い方があるように、英語もビジネスシーンに適した表現があるのです。
社内で上司や先輩と情報を共有することは重要で、円滑に業務を進めていくために報告は欠かせません。ビジネス英語を用いて業務の進捗状況や営業結果などをメールで報告するには、どのような表現が好ましいのでしょうか。
こちらでは「ご報告いたします」の英語例文をご紹介しますので、英語でビジネスメールを送る時の参考にしてください。
件名のポイント
件名は英語でビジネスメールを作成する際に、意外とおろそかになってしまうもの。件名が分かりにくいとメール自体を読んでもらえない可能性もあります。また英語のビジネスメールは日本語以上に分かりやすさ・簡潔さが求められます。こちらでは件名についてのポイントをご説明します。
基本的なことですが、本文と同じように件名の最初の一文字目は大文字にするということです。重要なキーワードを目立たせるために、途中にある単語の一文字目を全て大文字にするという使い方もあります。この時は接続詞・冠詞・前置詞は件名に入っていても小文字にしましょう。
次に英語でビジネスメールを書くときに気を付けたいポイントは、スパムメールと勘違いされないようにすることです。「Hello」「Important」「Hurry」などは具体性に欠けており、スパムメールだと思われるかの可能性が高い件名です。
件名は相手が内容を想像できるよう具体的なものにしましょう。相手の方は毎日たくさんのビジネスメールを受信しているはずですので、なるべく早く開封してもらえるように簡潔で親切な件名に工夫することが大切です。
報告メールのオープニング例文
ビジネスメールで報告をする場合には、いきなり本題に入る前に、何について報告するのかを明確にするために「~についてご報告します」という一文を入れましょう。こちらでは、そのオープニング例文をご紹介していきます。
まずご紹介したいのは「I would like to report on ○○.」という例文です。「させて頂きたい」という丁寧な「would like to」はビジネスシーンで頻繁に使われる英語表現で、「report on ○○」は○○について報告するという意味です。
具体的な例文として「I would like to report on the development of product △△△.」があり、製品△△△の開発状況についてご報告いたしますという意味になります。
「Let me give you an update on ○○.」こちらは会議を始める時などに便利な例文で、○○の最新情報をお伝えしますという意味。「Here’s a report on ○○.」は、シンプルな○○の報告ですという英語表現。プレゼン資料に用いたり口頭で使うのにも便利です。
「This is an update on ○○.」も、○○のご報告をいたしますという意味ですが、This isを使ってハッキリと主旨を伝える簡潔な例文です。「This is to report on recent sales results.」は、本メールで最近の販売実績をご報告いたしますという意味。「This is to~」も便利な表現です。
「The following is ~」は以下が~ですという英語表現で、「The following is an update on where we are now.」というように使い、以下に現在の状況をご報告いたしますという意味になります。
良い報告の時の英語例文
次はビジネスが順調に進んでいる・新製品が完成したなど、良い報告をする時の英語例文を見ていきましょう。
「I am pleased to inform you ~」は、喜んで~をご報告いたしますという英語表現で、具体的には「I am pleased to inform you that sales of the new products have been increasing.」という表現で、新製品の売り上げが伸びていることをご報告いたしますという意味です。
「The sales of the new product have been increasing.」は新製品の売り上げが伸びているという意味で、「Everything is on schedule.」は全て予定通り進んでいますという英語表現です。
悪い状況を報告する時の英語例文
上記ではビジネスが順調に進んでいる時の英語例文を紹介しましたが、売り上げが停滞・苦戦している状況を報告するには、どのような英語表現を使えば良いのでしょうか。
「Unfortunately, we will need to put this contract on hold.」こちらは残念ながら・遺憾ながらという意味を持つUnfortunatelyという副詞を使った例文で、残念ながらこの契約は保留せざるを得ませんという意味になります。
「I’m afraid that the negotiations aren’t working out.」こちらはI’m afraid that~という期待や要望に応えられないという構文で、残念ながら交渉はうまくいっていませんという意味です。「We are having difficulties.」Difficultiesは困難状況を伝える単語で、苦戦しておりますという意味。
報告メールの文末例文
良い報告でも悪い報告であっても、メールの文末には「随時ご報告いたします」や「質問があればお問い合わせください」などの一文を入れて報告を締めくくるようにしましょう。
「I will keep you posted on the progress of the project.」は、このプロジェクトの進捗について随時ご報告いたしますという意味です。~させるというLetを用いた「Let me share with you what we have learned.」新しいことがあれば共有いたしますという例文も締めに用いる表現です。
「Please ask me any questions you have about the documents.」資料についてご不明な点は私にお問い合わせください。
「Don’t hesitate to contact me if you have any questions.」ご不明な点があれば遠慮なく私にご連絡ください。どちらも報告メールの文末にふさわしい英語例文となります。
「ご報告いたします」の使い方
先程は「ご報告いたします」を使用した英語表現についてご説明しましたが、こちらでは日本語での使い方を見ていきましょう。ビジネスシーンでの報告やプライベートな出来事を上司に報告する文例などを用意していますので参考にしてみてください。
例文①
ビジネスメールでは「【ご報告確認依頼】売り上げ目標の進捗報告」のように件名は一目で分かるようにします。本文も項目別に箇条書きにするなど簡潔さを心がけましょう。
「お世話になっております。営業部の○○です。今月の売り上げ目標の進捗状況について報告いたします。1.目標100万円 2.現状58万円 3.達成率50% 4.前年比30%」
「今月は天候不良が続いたため前年比30%までダウンしてしまいました。今後は天候に留意しながら季節ものを取り入れていく予定です。お忙しいところ恐縮ですが、ご確認お願いいたします」
例文②
こちらではトラブルを報告する文例を紹介します。「販売部の○○です。標記の件についてご報告いたします。1.クレーム内容:お客様より返品。購入時すでに包装部分が汚れていた。一部商品まで汚れが付着していたので交換してほしい。2.対応:△月△日、商品の状態を確認後に新品と交換」
「3.在庫確認:□月□日、在庫商品を確認したところ同じ日に納品された同一の商品にも汚損が発見された。4.結果:卸先に問い合わせをしたところ、倉庫内で保管している間に生じた汚れであることが判明。抗議のうえ返品・交換を依頼。×月×日に交換済み。」
トラブルは責任の所在をはっきりとさせることと、対応の仕方・トラブルが起きた時系列が重要になってきます。こちらの例文のように分かりやすく簡潔にすることが大切です。
例文③
次は結婚報告の例文になります。「お仕事中に失礼いたします。私事で大変恐縮ではございますが、この度縁があり〇月〇日に入籍する運びとなりました。」
「職務については、これまでと同様に続けてまいります。結婚披露宴につきましては〇月〇日に△△ホテルで行うことを予定しており、□□課長にもぜひご出席していただきたいと思っております。披露宴の招待状につきましては、後日、改めてお渡しさせていただきます。」
「直接ご報告するべきところを、メールでのご連絡となり申し訳ございません。結婚後も仕事と家庭を両立できるよう精進して参りますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
例文④
こちらは出産の報告メールの例文です。この時注意したいのは上司にだけ報告すればよく、全ての人に報告する必要はないという点です。誰に情報をシェアするかは上司に任せましょう。
「大変ご無沙汰しております。営業部○○です。さて、私事ではございますが△月△日に長女を出産したことを謹んでご報告いたします。誕生した長女には□□と命名いたしました。お陰様で母子ともに健康に過ごしております。」
「休暇のため、しばらく皆様にはご迷惑をお掛けしますこと、ご容赦いただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。甚だ略儀ではございますが、まずはメールをもちましてご挨拶申し上げます。」
「ご報告いたします」の注意点
「ご報告いたします」は報告をする時に使える丁寧な表現ですが、正しく使わなければ常識のない社会人と認識されてしまうかもしれません。ここまでに特徴・意味や正しい使い方についてはご説明してきたので、こちらでは「ご報告いたします」の注意点もお伝えします。
「取り急ぎご報告いたします」はNG
取り急ぎには「急いで」「さしあたって」という意味なので、ビジネスメールなどでは「とりあえず急いでこの報告だけはしておきます」ということになり余りおすすめできません。本当に至急の報告時のみに使用する表現だと理解しておきましょう。
また「さしあたって」という意味合いもあるので、上司・先輩・社外で使用することは失礼にあたります。もし「取り急ぎご報告いたします」と使うなら、同僚や先輩でも特に親しい間柄の人だけにしましょう。小さなことですがビジネスマンとしてのマナーとなります。
何度も使用するなら置き換える
「ご報告いたします」は正しい敬語でビジネスシーンにおいて頻繁に使用する表現ですが、何度も連発してしまうとしつこい印象となってしまいます。先にもご紹介した「ご報告させていただきます」「ご報告申し上げます」という、より丁寧な言葉に置き換えても良いでしょう。
上司・先輩・社外の方に使う場合、「ご報告まで」に置き換えるのはおすすめできません。どうしても使いたい時は「取り急ぎご報告まで、詳細は追ってご連絡いたします」という正しい敬語表現を使いたいものです。
「ご報告いたします」は経過や結果を知らせるという意味
経過や結果を知らせるという意味がある「ご報告いたします」は、正しい敬語表現であることをご説明してきました。またこちらの記事では、特徴・意味とともに日本語・英語の例文をあげながら使い方もご紹介しています。
「ご報告いたします」を適切に使えば、上司・先輩・取引先の方との信頼関係を深めることが可能になります。ぜひ皆さんもこちらの記事を参考に正しい使い方をして、円滑なコミュニケーションをとりビジネスで成果をあげてください。